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ポストベルク教授は、今回の発見は、液体の海があると推定される太陽系の他の天体にも、リン酸塩が豊富に存在する可能性があることを示唆していると述べた。

2023-06-20 | 科学最前線

土星の衛星で発見された生命の源…

6大元素の最後のパズルピース見つかる

登録:2023-06-19 05:31 修正:2023-06-19 07:53
 
探査機カッシーニによるエンセラダスからの収集データを解析 
地下の海から湧き出た水柱の氷の粒子から 
6つの必須元素のうち最後に残った「リン」を確認
 
 
エンセラダスの南極の地下の海から氷の表面層を突き抜け湧き上がる水柱。2009年に探査機カッシーニが撮影した写真=NASA提供//ハンギョレ新聞社

 「シムボァッタ!(神の心を見たという意味で、高麗人参の中でも特に効果の高い「山参」を見つけたとき仲間に知らせるために叫ぶ言葉)」

 森の中で山参を探す人たちが叫ぶこの歓声を連想させるほどの物質が、宇宙の観測資料の森から発見された。科学者たちが、土星の氷の衛星エンセラダスから、これまで必死に探していたリン酸塩の形態のリンを探しだしたのだ。

 ドイツのベルリン自由大学を中心とする国際研究チームは、エンセラダスの氷の表面層の下にある海から噴き上がった水柱のなかにある氷の微粒子に、リン酸塩が多数含まれていることを確認したと、国際学術誌「ネイチャー」に発表した。

 リンは生命体を構成する必須元素の一つで、人間の骨や歯、細胞膜を構成する主要成分であり、遺伝子の一次ユニットである核酸(DNA、RNA)や、生命活動のためのエネルギーを保存して運ぶために用いられるATP(アデノシン三リン酸)の中心となる元素だ。だが、地球上でもきわめて存在が少ない元素で、地球以外の天体でリンを発見したのは今回が初めて。

 太陽系には、エンセラダス以外にも地下に海がある天体が多数存在すると推定されるだけに、今回の発見は、今後の地球外生命体の探索によりいっそう関心が高まるものと期待される。

 
 
2005年、探査機カッシーニがエンセラダスから6万1300~1万1100キロメートルの距離に近づいて撮影した写真=NASA提供//ハンギョレ新聞社

生命体の存在への期待が高まる

 直径500キロメートルで土星では6番目に大きな衛星であるエンセラダスは、23万キロメートルの距離で1.3日に1回土星を公転する。科学者たちは、2004年から2017年まで土星を探査した探査機「カッシーニ」の観測データを通じて、エンセラダスには厚さ30~40キロメートルの氷の表面層の下に、深さ約10キロメートルの液体の海があると推定している。カッシーニは当時、エンセラダスの南極で、氷の表面層を突き破り水柱が吹き上がる様子を観測した。科学者たちは最近、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測を通じて、水蒸気の柱の最大の長さは1万キロメートルに近いことを発見した。

 今回の発見は、カッシーニが土星の環の一つであるEリングを通過して収集した345個の氷の微粒子を、宇宙塵分析器(CDA)を通じて詳細に分析した結果だ。科学者たちは、氷の微粒子9個からリン酸塩分子を発見した。Eリングは、エンセラダスの表面に縞のように生じた亀裂を通じて噴出した水柱から宇宙に放出された粒子が作った輪だ。

 研究チームは2020年(発表は2022年)、地球化学的モデリング技法を活用し、エンセラダスにリンが存在することを予想したのに続き、今回の後続研究によって、実際にリンの存在を確認する成果を上げた。

 今回の発見は、炭素と水素、酸素、窒素、硫黄に続き、エンセラダスで生命体の6つの必須元素をすべて確認したという意味がある。6大元素は、原子記号を合わせて「CHONSP」とも記される。これを受け、生命体の存在に対する期待感がよりいっそう高まる見込みだ。

 科学者たちはこれまで、エンセラダスの氷の微粒子から、ナトリウム、カリウム、塩素および炭酸塩含有化合物を発見していた。さらに、コンピュータ・モデリングによって、地下の海が中間程度のアルカリ性であることも推定した。米航空宇宙局(NASA)は「このような要素はすべて、生命体の存在の可能性を高めること」だと明らかにした。

 
 
2006年に探査機カッシーニが観測した土星のEリングとエンセラダス。エンセラダスから210万キロメートルの距離で撮影した=NASA提供//ハンギョレ新聞社

予想よりありふれている太陽系の海

 研究チームの分析の結果、エンセラダスの氷の微粒子内のリンの濃度は、地球より100倍以上高かった。研究チームは「保守的にみても、エンセラダスの地下の海のリン酸塩の濃度は、地球の海より平均で数百倍高いと推定される」と明らかにした。

 研究を率いるポストベルク教授は、リンの濃度がこのように高いのは、エンセラダスの海で炭酸塩が豊富なことと関係があると述べた。ポストベルク教授は「エンセラダスの海は『ソーダ水の海』と呼ぶことができる」としたうえで、「ソーダ水は岩石に閉じ込められているリン酸塩を溶解させる効果がある」と述べた。

 研究チームは、過去25年間の惑星科学で最も興味深い発見の一つは、表面の氷の層の下に海がある世界が、私たちの太陽系ではありふれているということだと明らかにした。エンセラダスをはじめ、木星の衛星エウロパ、土星の衛星タイタン、冥王星などがそうした事例だ。

 地球のように表面に液体の海が存在するためには、エネルギーを供給する星から近くなければならないが、地下の海は、近くの天体との間の重力の摩擦力と回転エネルギーによってエネルギーを得るので、銀河系のどこにでも存在できる。特に、このエネルギーは、天体の奥深いところで生命体の誕生の化学作用を起こすエネルギー源の役目を果たすこともありうる。

 
 
科学者たちは、エンセラダス内部のアルカリ性の海が岩石の核と化学反応を起こしリン酸塩の溶解を促進すると推定している。リン酸塩の存在はエンセラダスの海に生命体が生きているという推論を強く後押しする=サウスウェスト研究所提供//ハンギョレ新聞社

 ポストベルク教授は、今回の発見は、液体の海があると推定される太陽系の他の天体にも、リン酸塩が豊富に存在する可能性があることを示唆していると述べた。

 共同著者である米国サウスウェスト研究所のクリストファー・グライン博士は、「今回の発見によって、エンセラダスの海は生命体の存在を可能にする最も厳格な要件を満たしているという事実が確認された」としたうえで、「次の段階は、その海に実際に生命体が生きているかどうかを調べること」だと述べた。

*論文情報 
doi:10.1038/s41586-023-05987-9
Detection of phosphates originating from Enceladus's ocean.

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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