箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

空から色づく葉が降ってくる

2021年11月30日 15時18分00秒 | 教育・子育てあれこれ

落ち葉の季節。木々が鮮やかに色づいています。

夏期には緑色だった木々が赤や黄色になり、はらはらと歩道に落ちます。

葉が緑色なのはクロロフィルという緑色の色素が葉のなかに含まれているからです。

クロロフィルは光の中の緑色の成分を多く反射するので、人びとの目には緑色に見えます。

ところが秋が深まると日照時間が短くなり気温も下がってきます。

すると光合成する効率が下がるので、エネルギーが下がるので、木は葉をつけていることからくる負担を減らすために、葉を落とそうとするのです。

具体的には、枝と葉の接点に「離層」をつくり、枝から葉へ水や養分が行かないようにシャットアウトをします。

これが落葉なのですが、水や養分が届かない葉の中ではクロロフィルが分解されていきます。

すると、それまで隠れていたカテロイドという黄色の色素が台頭してきてイチョウのように葉が黄色くなるのです。

一方、離層ができると光合成でつくられた栄養は枝に送られなくなります。

栄養とはブドウ糖が代表ですが、葉に糖がたまります。そうなるとアントシアニンという赤色の物質が合成され、カエデのように葉が赤くなります。

よく「寒暖差が大きいほど紅葉は鮮やかになる」と言われます。

これは暖かな日中に光合成をしてたくさんの糖をため込み、夜間の冷え込みで糖の消費が抑えられ、アントシアニンがたくさん合成されるからです。

そのような科学的なしくみや理屈はわかったとしても、それだけでは無機質です。

晩秋・初冬に黄色や赤色に変わった木々の葉が落ちるとき、愛しさが着地し、私たちの感情が動き、想いがこみ上げるのです。

そこで、あたたかい愛情を感じたり、寒い冬の訪れを思い淋しさを感じるのです。


家庭とは安らぎの場

2021年11月30日 08時10分00秒 | 教育・子育てあれこれ


中学校教育関係者の観点から子どもの成長を考えると、わたしはおよそ10歳頃がポイントになると考えています。

「10歳の壁」といえるかもしれません。

10歳は課題が増える年齢です。

学校での友だち関係は複雑になってきます。学習でも「具体的思考」から「抽象的思考」が少しずつ求められるようになり、難しくなります。

発達段階的には自分を客観視できる年齢に徐々に入っていきます。すると、悩みが増えるのです。

こんな時期には、家庭での安心感、やすらぎ、満足感が今まで以上に必要になります。

家庭での安らぎがあるからこそ、学校での活動がのびのびできます。

それは子どもにとっていざというときの「戻る場所」があるからです。

思春期になると、その安らぎがさらに重要になります。

家庭に子どもの心が落ち着くやすらぎや「くつろぎ感」がないと、外にそれを求め、家にいる時間が少なくなり、外で遊ぶ子も出てきます。

親に思いっきり甘えて依存する関係で育った子は、その安心感をもちながら外へ出て「トラベル」ができるようになります。

これが「自立」への一歩となるのです。

家庭は今も昔も変わらない大切な役割である「やすらぎ」をもつ場です。

主権者教育を学校で行う

2021年11月29日 07時01分00秒 | 教育・子育てあれこれ

若い人の中にいかに貧困が広がっている実際のところを為政者はあまり知らないのではないかと思うことがります。

新型コロナウイルスが全国に広がったこの1年と半年で、相談機関へはとくに若い女性の相談が急増したのです。

家に帰れず、バス(バスカフェ)の中で夜を過ごす少女たちが、東京の繁華街にはいます。その日の食べ物を求めて集まってきます。

「学費が払えない」「家賃が払えない」「今日食べるものがない」という声です。

また、今の日本には生活に困窮する大学生を支援する公的な制度はありません。

多くの人が受給をためらうと言われる生活保護でさえ、大学生は対象外です。

親が出してくれる学費以外は自分でアルバイトなどをして稼がなければならないのですが、コロナ渦で飲食店のアルバイトが減り、困窮を極めているのです。

若い女性は児童福祉と女性支援の制度のすき間からこぼれ落ちてしまいがちです。

これは社会の制度・しくみの問題です。


「若者は選挙に行かない。政治に無関心」と為政者は言います。「声を上げなければ制度は整わないよ」と言います。

でも、教育関係者としても反省ですが、いままでおとなは子どもに権利を主張する方法を十分に教えてこなかったのです。

マイノリティから声を上げて、社会や政治を変えるというプロセスを保障してこなかったのです。

いまでさえ、声を上げていない人が多いのです。みんなが「サイレント・マジョリティ」です。

声を上げないのは、賛成していることと同じであるとみなされるのです。

また、声を上げている人に対しては、支えなければならないのです。


制度や法令に不備があるなら、声をあげなければならない。

一人の相談者から相談を受け、役所や政治家に働きかける。その働きかけが社会を変えるのです。同じような苦しみを味わったり、同じ境遇に置かれている人への道が開かれていく。

このしくみを、学校教育の中で児童生徒が学習できる教育を提供(主権者教育)するのは、学校の責任でもあります。

「解放」されたい

2021年11月28日 09時23分00秒 | 教育・子育てあれこれ


去年の春に私は、歯の治療が終わったとき、次は歯垢除去をしてもらおうと歯医者さんに相談しました。

すると、ドクターは「こんなにコロナ感染が広がっているのだから、べつに今しなくてもいいのではないですか」と言われました。

「そうですね。また今度にします」といって予約を取らずに帰りました。

このようなことは、クライアントとホストが接近する他の業種にもあるのかと思い、理髪店へ行ったとき聞いてみました。

「お客さんは減っていますか?」

ホストは、「そうですね。たしかにくる回数が減った人もいるし、全然来なくなった人もいますよ」

という返事でした。

ところが、そのホストは続けました。

「ただ、コロナ渦になってから、かえってよくくるようになった人もいますよ」という意外な言葉がかえってきました。

「いままでの髪型を変えたり、髪の毛の色を黒髪からちょっと暗めのブラウンにしたいと言われますよ」ということでした。

テレワークが多くなったので、好きな髪型や髪色にしたいとの思いの表れかと思いました。
それと同時に、コロナ前には仕事上のさまざまな理由で、したいことをできずに我慢していた人がけっこう多いのではないかと感じた次第です。

ただし、理髪店に行かなくなった人と行くようになった人は、根っこではいっしょなんだとも思いました。

つまり、人に会わないことが増えたのだから、少々髪が伸びていても大丈夫だ。

その一方で、人に会わないことが増えたのだから、髪型や髪色を好きにしたい。

この二つには、他者から見られる自分から解放されたという思いと社会と接点をもつ自分から解放されたという思いがそれぞれ併存しているのです。

コロナ災禍はさまざまな制約を私たちに課しました。飲食店に行けない。旅行へ行けない。人との距離を空けなければならない。マスクは絶対つける。さらになかなか出口が見つからない。

それらのことに気をつけて、実行するのはたいへんだったのですが、それとひきかえに根源的な欲求である「解放される経験」をコロナ災禍は与えてくれたと考えることもできるのです。

人間は、多くのしがらみから解放されると、自分らしさを発揮(エンパワメント)できるのです。

学校教育の分野には、「解放教育」(人権教育の一つ)という考えと分厚い実践があります。

少数派の人がさまざまな社会の不合理から解放され、自分らしさを取り戻すことをめざす教育です。

コロナ災禍による影響は、マイナス的なことばかりではなかったと想うのです。

保健師さんって、どんな仕事

2021年11月27日 11時00分00秒 | 教育・子育てあれこれ



「保健所に電話してもまったくつながらない! こちらはいのちがかかっているのに!」

こんな不満の声が、感染ピーク時には人びとのなかからあがっていました。


さて、中学校の学習に保健師さんを招き、ゲストティチャートして中学生に保健指導をしてもらうことがあります。

授業のテーマはさまざまで、あるときは小中学生の自殺を防止する話であり、相談のすすめであったり、健康増進のための講話であったり、赤ちゃん人形を持参して人の誕生からいのちの教育を実践してもらったり、いろいろです。

また、以前には、PTAで母親を対象に乳がんの早期発見についてレクチャーをしてもらったこともあります。

また、歯科関係で、生徒へのフッ素塗布の業務を学校でしてもらったりもしました。

ただ、世間一般では保健師という仕事について、その業務でどんなことをしているかを知らない人が多いように思われます。

保健師は、病気を予防するための、また健康を維持のための保健指導を行う専門職です。

全国には約5万3000人ほどいて、自治体設置の保健所等に勤務している人が多いのです。

しかし、新型コロナウイルス関連で一部報道されましたが、近年保健所の数は減ってきています。

そのため保健師の多忙化がすすむ状況のなかで、新型コロナウイルス感染症が広がったのでした。

患者からのPCR検査についての電話相談が入ります。感染者が出たら患者を医療機関につなぎます。また濃厚接触者を特定し、聞き取りをする疫学調査などの業務が入ってきます。

当然業務が逼迫し、感染のピーク時には1ヶ月に80時間超え(過労死ライン)で残業をした人が多くいました。

また、陽性と診断された人への対応は、陽性者の意向がさまざまであり、それに根気よく向き合わなければならなかったのです。

これ以上仕事を続ければつぶれてしまうという危機感をみずから感じながらも、患者の命の危機感を感じると、やらざるをえないという状況に追い込まれたのが保健師さんです。

「PCR検査で陽性だったのに、保健所に電話してもつながらない。向こうからの連絡を待っているが、まったく連絡がない」。

こんな声をよく聞きました。

このような不満が渦巻くコロナ渦でしたが、保健師さんの置かれた状況を考えれば、批判ばかりするのは気の毒というものです。



就職が氷河期だった人への就労保障を

2021年11月26日 09時06分00秒 | 教育・子育てあれこれ


コロナ災禍の中でも、新卒採用はあまり影響を受けず、堅調に進んでいます。

1回目の緊急事態宣言が出た2020年の春には新卒の内定取り消しや入社時期を遅らせる通知が出されたりしたので、今回も心配されていました。

しかし、2022年春の新卒採用の求人は、いわゆる「売り手市場」となり、1.5倍の求人倍率になっています。

たしかに飲食業や観光業の採用は少ないですが、その他の業界は例年並みを維持しているという状況です。

こうなると、いわゆる「就職氷河期世代」が気になります。およそ1993年~2004年ごろ新卒で就職した人たちの世代です。

いまでは30代後半から40代後半の年齢になります。

当時、バブル崩壊の不況のため、企業が新卒の採用数を厳しく抑えました。くわえて、国が派遣労働を非正規にした制度変更で、企業が大幅に非正規雇用を増やしたので、新卒は非正規雇用になった人が多かったのです。

したがって、生活が安定せず、いまでは働き盛りの時期なのに、結婚/出産を望んでもできないという弊害が起きています。

そこで、国は2019年末に、3年間で正社員を30万人増やすという予算付けをしましたが、正社員になった氷河期世代は約9万2000人どまりです。

また、正社員の中には雇用は非正規のままで、契約期間が無期に変わった人が含まれるため、どれだけの人が実質正社員になったかは不明のままです。

この世代の人たちは、わたしが当時受け持っていた中学生だった人です。

中学卒業時に、将来に夢を抱き卒業していった人たちです。

いわゆる教え子になるのですが、最近では音信不通になっている卒業生も多く、近況が気になります。

この人たちが、中学生の時、世間では「勝ち組」とか「負け組」という言葉が生まれ、格差が広がった時期でもありました。

本来、就労者があらたに資格を取ったり、転職の活動をするには時間もお金もかかります。
でも雇用が安定しないので、先を見てというよりは、いまの仕事を必死にするしかないのです。

いわゆる「自転車操業」で派遣を繰り返し、貯金がしにくい。この世代の人たちに住宅資金などの補助をして、生活を安定させること。そうしないと正社員になるのも難しいのです。

就職超氷河期だった人たちには、とくに手厚い就労保障・生活保障を望みます。

学習計画のすすめ

2021年11月25日 06時31分00秒 | 教育・子育てあれこれ


中学生になると、定期考査(中間テストや期末テスト)があるのが一般的です。

そして、部活動もテスト1週間前からは、原則としてなくなります。

ちょうど今は、2学期末考査の1週間前に入っている中学校が多いです。

この1週間、またはもう少し準備の日数を増やし、テスト前2週間をどう家庭学習に取り組むかは、定期考査用の学習として、とても大切です。

わたしが学級担任をしているころは、生徒に「テスト前学習の計画」を立てるように指導しました。

たとえば、1週間前には、家庭への帰宅時間が早くなります。夕方と夜に何時間の学習時間がとれるかを計算して、1日2科目(3科目)ぐらいのテスト範囲の復習する教科とその内容を表に記入させました。

そして、暗記する学習の場合は1時間学習したら5分の休憩をかねて、さっきまで学習したことをふりかえる。
このようにして記憶を定着させます。

テスト前日は明日のテストがある教科の総復習にあてます。

計画は計画通りにいかないことも多いので、途中に「調整時間」を表に記入しておくようにさせました。

また、学習塾に通っている生徒も多かったので、塾の学習と関連付ける予定を書いた生徒もいました。

クラスの生徒全員の計画表を提出させ、必要な場合は修正を加え、コメントを書いて返却しました。

ところが、いまの教員は忙しすぎて、「テスト1週間目だから、がんばって家で学習しなさい」と言うだけ、または学校でのテスト前学習会(やっている学校もあります)への参加を勧めるだけに終わっていることも多いのです。

でも、生徒が学習計画を立て、それに基づいて学習をしていく習慣づけは、大人になってもかならず役立ちます。

そもそも、わたしは、「勉強」のかわりに「学習」という言葉が使えるときは、すすんで「学習」という言葉を使うようにしています。

勉強は「(つらいことを)勉めて強いる」ですが、学習は「学んで習う」なので、いまの学力観にあうからです。

ただ、「勉めて強いる」側面は必ずありますので、できるだけ後回しにしたいのはみんなが感じることです。

それを後回しにしないために学習計画を立てることを、中学生には勧めるのです。

本屋(書店)が贈る「偶然」

2021年11月24日 06時44分00秒 | 教育・子育てあれこれ

いま、街から書店(本屋)がなくなっています。

かつての本屋は時間を過ごすことができる日常的な場所でもありました。

ふと本屋にはいり、本棚を眺めたりして、ときどき「買おうか」と思う本に出会うことがありました。

でも、今の時代は全国的に見て、本屋が一軒もない市町村が増えてきています。

つまり、本屋へ行くことは日常の行動ではなくなり、本を眺める機会は減ってしまったのです。

街なかの本屋の経営が採算がとれなくなった大きな理由の一つは、インターネット通販が普及したからです。

インターネットなら在庫まで確かめることができ、手軽に注文できます。配達されるのもたいへん早いので、本屋へ行かなくてもすむのです。

かつては、欲しい本が本屋になければ、取り寄せてもらうのでしたが、1週間以上かかることがふつうでした。

インターネットによる本の通販は、その手軽さ、品揃え、スピードの点で、本屋はとうてい太刀打ちできないのです。

このように便利ずくめのインターネット書籍通販ですが、そうなると今の時代、本屋に価値はないのでしょうか。

私はそうは思いません。

インターネットの書籍通販では、自分の購入履歴が反映され、同じ傾向の本が多く紹介されます。

そして、さまざまなジャンルの本に触れる機会がなくなるのです。

しかし、本選びは、偶然のなかから、良書に出会うことも多いのです。

本屋の本棚を眺めていると、その「偶然」にめぐりあうチャンスがあるのです。その本が自分にとっての新しい世界を開いてくれることもあります。

この本屋の人が本にめぐりあわせる役割を見直して、いまカフェを併設して好きなだけ過ごせる本屋が登場しています。

最新では、採算が合うように、1500円程度の入場料をとる店ができています。関西ではアートホテル大阪ベイタワー内にあります。

入場料を払ってでも、立ち寄る人は多く、3~4時間を過ごす、そして3分の1の人は本を購入して帰ってくれるそうです。

大げさかもしれませんが、ふと手に取った本がその人の生き方に大きな影響を与えることもあります。

人がふと見つける「偶然」を大切にしたいと思います。

神戸で学ぶ防災・減災

2021年11月23日 09時02分00秒 | 教育・子育てあれこれ


1995年1月17日、家で睡眠中に突然地下からドーンと突き上げるような衝撃を受け、そのあと左右に何度もガタガタと横揺れがして、「ゆったり揺れる」という言葉ではない、猛烈な揺れに襲われました。

「これは家が潰れる」という感覚の猛烈な地震でした。阪神淡路大震災の地震でした。神戸から70キロほど離れた大阪府の山間部でも、これほどの大きな揺れでした。

学校に出勤しなければと思い、出かけましたが、途中の道の信号は消えており、道には落石というよりは大きな岩が道ばたに転がっていました。

そのあと、職場では書類ロッカーが平行四辺形の形にひしゃげて曲がり、トイレの天井は穴が開き、外れた水道管から水が流れ落ちていました。

しばらくすると、神戸市や芦屋市などの街が壊滅的な被害を受けている光景がテレビで映し出されました。

マグニチュード7.3の直下型地震・阪神淡路大震災では、一瞬にして多くの尊い命がなくなり、街は破壊されました。

今という時代を生きる児童生徒は、誰一人として、その当時の地震の状況を経験していません。

被災地では、市民一人ひとりが手を携えて大震災を乗り越えましたが、26年たった今も、その経験と記憶を風化させないよう、震災で得た教訓を未来に伝える活動が広げられています。

「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」(神戸市中央区)は、震災の経験と教訓を学習し、防災の大切さを世界と未来に伝える防災学習施設です。

東館と西館の二館で構成されています。震災の資料展示と語り部による被災体験談などから、大震災について学ぶことができます。

また、ポートアイランド等では当時液状化現象が起こりましたが、実験ステージでは、防災・減災について実践的な知識を身につけることができます。

資料室では、学習の前後で役立つ資料も多数用意されています。

神戸の街は日本国内だけでなく、海外からもたくさんの支援を受け、市民の努力によって復興を遂げました。

その過程で得た経験・教訓は、現在の日々のくらしに引き継がれ、未来へ継承する活動が展開されています。

神戸は海が目の前ににありますし、すぐ裏手には六甲山をはじめとする美しい山々が連なる自然豊かな街です。

その自然にも触れながらも、防災や減災の意識を高める教育旅行(校外学習や修学旅行)が実施できる場所です。

なおかつ、学校の関係者、児童生徒だけでなく、大人も学習できる街です。一度、訪問されてはいかがでしょうか。

子どもには伝わる

2021年11月22日 08時33分00秒 | 教育・子育てあれこれ


コロナ災禍の影響を受け、失業した父が家にいます。

母はフルタイム勤務で家計はなんとか回っています。

父は仕事を探そうともせず、家でぶらぶらして、子どもにあたります。

子どもの前で夫のことを悪く言わないように母親は気をつけていますが、夫に対してイライラしているのが子どもに伝わるのか、「お父さん大嫌い」と息子は何度も言います。

お父さんはしばらくは冗談と受け流していますが、息子がしつこく言うと我慢できなくなって、息子が泣き出すまで追い詰めます。

このような家庭がコロナ渦が長引くとともに増えたと聞き及びます。

この事例を客観的に見たとき、おそらくこの子どもはお母さんの気持ちを代弁しているのです。

「コロナだからと言って、なんで長い間、家でぶらぶらしているの。私は働きづめなのに」、「それで父親だと言えるの」。

そのようなお母さんの気持ちは、口にしなくても、子どもに伝わるのです。

実際に夫婦で口論にはならなくても、お母さんが困った表情をしていると、子どもはお父さんがお母さんを困らせているように見えるのかもしれません。

お母さんがお父さんの再就職を信じているのなら、子どもはこんなことを言わないと思います。

また、こういう考え方もできます。お父さんが息子にイライラしてあたっている言葉の攻撃は、ほんとうは妻に対して言いたいことのかもしれないのです。

ところが収入がなく、家計のすべてを妻に頼っている身ではけっして言えない言葉なのです。

もし、口をすべらせれば、それこそ元も子もなくなるからです。

以上の見立ては、表面的には父と子の問題ですが、家族の「いま」そのものです。

子どもは、両親の仲良しがいちばん安心できるのです。両親が笑ってたのしく話している様子だけで、心理的に安定できるのです。

このケースの場合、お母さんは「男性は外で仕事をするのが当然」と考えているようです。お父さんも。そう考えているのではないでしょうか。

だから、苦しいのです。

もし、お父さんが外で働くのが当然という考えを捨てられないのなら、どんな仕事であっても、そこでがんばるのがいいでしょう。

お父さんがどうしても、仕事が見つからず家にいるのなら、「家事と育児を一生懸命する人」として、お母さんがお父さんを尊重するしかないでしょう。



学校で歴史を学ぶ意義を問う

2021年11月21日 07時20分00秒 | 教育・子育てあれこれ


昨年から続くコロナ災禍で、何度か耳にした関係者の言葉があります。

「このまま営業の自粛を求め続けると経済が死んでしまう(だめになる)から・・・」。

そうでしょうか。この言葉の視点は「経済=お金」しか念頭にないのではないでしょうか。

しかし、昔に考えられていた「経済」とは「営することで、民衆の苦しみ救う」ので民する、でした。

これには四字の熟語があります。「経世済民」です。江戸時代の考えです。

つまり、人が救われて幸せになることが、本来の意味の「経済」です。

この視点で考えれば、営業自粛を求めることで、お店の経営が成り立たなくなり、営業主が苦しむのなら、「経済」ではないということです。

今まで、大阪の営業主は営業自粛を求められたら、アルコールを出さないとか営業時間短縮の要請に対して実直に協力してきた店が多かったのです。

その人たちが幸せに生きて、営業を続けられることを願ってやみません。


じつは、学校の「歴史」や「公民」の時間は、そのようなことを学ぶためにあるという考えが成り立ちます。

江戸時代には、ハイレベルな循環を基本とする経世在民の社会でした。さまざまな文化を取り込みながら、消化し、元禄文化や化政文化をはじめとする、新しいオリジナルな庶民文化を創ってきました。

つまり、江戸時代を学習することで、いまの日本が背負っている問題がわかるのです。

社会科の教師の醍醐味は、過去の歴史を現在に引き寄せ、生徒たちに現在の問題を見通すように仕向けることにあると、わたしは考えます。

秋の落ち葉に想う

2021年11月20日 07時36分00秒 | 教育・子育てあれこれ


今の時期、掃いても掃いても、また翌朝には落ち葉でいっぱいになります。

それでも、あきらめずに掃き続けます。

この秋の落ち葉がとりもなおさず「人生」なのかもしれません。

また、こんな言葉もあります。

人生は自転車に乗るようなものだ。倒れないためには走り続けなければならない。
(アルバート・アインシュタイン)

アインシュタインはドイツ生まれの理論物理学者です。自転車は動きを止めるとバランスが崩れて倒れてしまいます。だから走り続けなければならないというのです。

休憩も大切ですが、自転車のように一度乗りこなせるようになれば、人生の軸も安定するのです。

心が安定してくると、続けることが苦でなくなります。

だから、落ち葉は掃き続けるものですし、自転車はこぎ続けるのです。

外見至上主義の問題点とは

2021年11月19日 07時18分00秒 | 教育・子育てあれこれ


個人がだれかに「かわいい」とか「かっこいい」とか「きれい」と思うのはその人の自然な心の働きであり、その人の勝手です。

しかし、「イケメン」「きれいどころ」「美しすぎる」が、社会での優劣であるかのように、対人関係やメディアやSNSを使い、見た目だけで人を評価するのはルッキズム(=外見至上主義)と言われる問題表現にあたると思います。

テレビでは、MCやコメンテーターが日常的に違和感なくそのような言葉を使い、視聴者も同じように日常生活で使いますが、問題性にあまり気がついていません。

メディアやSNSが「見た目」という主観的なことがらを受け手に押し付けることになりえるからです。

さらに、たとえばスポーツ選手に対して「かわいい」「かっこいい」というルックスだけを強調することで、アスリートとしての努力や実力を伝えないことになるのも、メディアでの受け手への押しつけになります。

今回の東京オリンピックでは、ジェンダーの問題に加え、いままであまり気がつかれていなかったルッキズムの問題性も明らかになったのです。

パープルリボンとオレンジリボン

2021年11月18日 08時08分00秒 | 教育・子育てあれこれ
11月は児童虐待防止推進月間です。

児童虐待は、相変わらず悲惨な事案が報道されています。

しつけと称して、親から幼い子が虐待を受けるケースが後をたちません。

児童虐待防止の取り組みは、「オレンジリボン」が目印になっています。


そしていま、大阪の太陽の塔は紫色にライトアップされています。

これは、女性への暴力を防止する運動が11月12日から始まっているからです。

こちらは、オレンジリボンではなく、「パープルリボン」が目印であり、太陽の塔も紫色にライトアップされているのです。

パープルリボンには、DV(ドメスティックバイオレンス)などの根絶の願いが込められています。

11月25日までの2週間が取り組みの推進期間であり、「一人で悩まず、相談をぜひしてほしい」というメッセージを反映しています。

学校教育でも、子どもにアザがあったり、ケガをしているのを教職員が発見することから、児童虐待が明らかになることがあります。

また、高校で多いですが、女子生徒が男子生徒と付き合うなかで、男子生徒から暴力を受けて、SOSを発せず服従する関係になり、それが常態化するデートDVの問題があります。

多く場合、保健室の養護教諭が発見し、支援にあたるケースが報告されています。

DVや虐待の問題は、学校では、教職員の感知力を研ぎ澄ましておくことが、深刻化する前の対応につながります。

技能実習生を知ることから

2021年11月17日 08時05分00秒 | 教育・子育てあれこれ


国連に「人種差別撤廃委員会」があります。日本では、入居差別(外国人は入居お断りなど)、就職差別(外国人は就職させないなど)、店舗での入店拒否(外国人は入店禁止)などの外国人差別≒人種差別があります。

また、本委員会は日本の技能実習制度を「虐待的であり、かつ搾取的な慣行」と非難しています。

技能実習生は年々増加しています。いま日本に暮らす外国籍の住民のうち、技能実習生は12.5%になっています。

この数字は、永住者に続いて多いのです。大学等で学習するという側面と建設業、農業、漁業、介護などさまざまな分野働くという側面で、日本社会や地域を支える役割をしています。

ちなみに留学生は、自国では経済的にも豊かな家庭の出身が比較的多く、高度な知識や技術を身につけ、卒業後は母国や日本で活躍する道が開かれています。

でも、技能実習生の場合は、故郷の家族が豊かな暮らしができるように、借金をしてでも日本で働く人もいます。

地域の中では、技能実習生の存在を知っている人は少なく、人間関係のつながりがある人は多くないのです。

できるだけたくさん働き、多くのお金を持って帰国するという目的で、一生懸命に働く技能実習生がほとんどです。

まず、私たちは技能実習生を知る必要があり、まずはここから始まるのです。