箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

今後の私立大学

2023年10月31日 07時56分00秒 | 教育・子育てあれこれ
定員割れを起こす私立大学が急増しています。

2023年度入試で、50%を超える大学が入学者定員を満たすことができませんでした。

2040年になると、大学の総定員の2割を埋めることができない入学者数になるという推計が出されました。

そうなると、大学の数を減らそうという話になるのですが、そう単純な方法では解決しそうもありません。

もとは1990年代に、大学の設置基準が緩和され、都市圏だけでなく、地方にも私立大学が増えました。

地方の大学はそう簡単に減らすことはできない理由があります。

人口の少ない地域で大学がなくなるということは、高等教育を受ける機会がなくなるということです。

大都市圏に住んでいる人は、大学といえば首都圏や京阪神の私立大学を思い浮かべるでしょうが、地方に住み地元の大学に通っている人も、決して少なくはありません。

地域に大学があれば、教員やその家族や学生がその地域に住み、一定の経済圏を構成し、雇用をうむ効果もあります。

大学が地域経済へ寄与する効果もあるのです。

ですから、そう簡単に大学をなくしてしまえという論議にはならないのです。

また、大学の教員はその学部にふさわしい専門性をもっていますので、統廃合で別の研究部門に移るということは容易ではないのです。

それでも、急速な少子化が進行していますので、多かれ少なかれ廃止・統合はある程度進むでしょう。

それでも、いま必要とされているAI社会へ対応する知識やスキル学習や社会人のリスキリング(「学び直し」)の機会を卒業生に提供するなど、私大側の努力も求められます。



いまを生きる

2023年10月30日 05時47分00秒 | 教育・子育てあれこれ

あなたが虚(むな)しく過ごした今日という日は、
昨日死んでいったものが、
あれほど生きたいと願った明日。


(趙昌仁(チョチャンイン)の小説『カシコギ』より)



生きている喜びは、ほかの人とともに生きる生の喜びです。

世界をあらたに知るという知のよろこびです。

また、感性の領域を広げていく感覚の喜びでもあります。

芸術というのはこれらの喜びと深く関係しています。

自分の目の前にある問題やふりかかる不運や不幸にまどわず、現在を生きることの大切さを教えてくれる言葉です。



法整備が必要

2023年10月29日 06時57分00秒 | 教育・子育てあれこれ
アメリカNBAは、LAクリッパーズのドナルド・スターリングオーナーが交際相手の女性に対して「彼ら黒人を試合の会場に連れてくるな」と発言しました。

2014年のことです。

その発言が大きくとりあげられ、彼はNBAからの永久追放の処分を受け、罰金250万ドルが課せられました。

250万ドルといえば、およそ2億6,000万円です。

この事件だけではありません。他にも、厳しい処分はたくさんあります。

一般的に、その厳しさが世界のスタンダードなのです。

一方日本はどうでしょうか。

議員が差別発言をくりかえしています。

重い罰則がないのが日本の現状です。

国連人権理事会からの度重なる勧告を受けても、軽視して改善しようとしないのです。

差別に対しては、厳しく取り扱う法整備が行われてなければなりません。



昔の受験と今の受験 ちがいは

2023年10月28日 07時45分00秒 | 教育・子育てあれこれ

以前の受験は、大学入試にしても、高校受験にしても、中学受験にしても、どれだけ勉強を積んだか、つまり「勉強量」が重視されていました。

 

でも、今は勉強量もある程度は重視されますが、それだけでは対応できない状況にあります。

 

いまは、実生活の中で生じる課題をどう解決するか、また受験者がいかに深く考えて日々の生活を送っているかに関係する問題が出題されるようになっています。

 

もちろん知識は必要ですが、その知識を具体的な実生活の場で他の知識とつなぎ合わせたり、知識をもとに情報を処理したりすることで解く問題にかわってきています。

 

その際、考えることがキーワードになります。

知識を覚えるだけでは、人間は人工知能に匹敵するのが難しくなります。

学び続ける姿勢・態度が強く求められるのが今の時代です。

 

 

 


ヤングケアラーの問題

2023年10月27日 08時14分00秒 | 教育・子育てあれこれ
7.8年ほど前から、「ヤングケアラー」の問題が教育界で取り上げられるようになりました。

しかし、当時はまだそれほど認知はされていませんでしたが、ここ数年で学校現場でも知られることが多くなりました。

子どもが、家で家族の世話や介護をしていて、学校生活にも支障をきたすことが、教育課題として教職員に認知されるようになってきたのです。

家庭の事情で、親に代わり家事や介護、さらにはきょうだいの世話を担うャングケアラーは、学習や友人関係などに支障をきたす可能性もあります。


本人がその問題点に気がつかず、家族だから世話をするのが当たり前と感じて、意識せずにいることもあります。


行政の支援が必要ですが、職員が家庭の中に入り込む必要があり、簡単にサポートできるものではありません。


子どもや家族との人間関係ができないと、支援は進みません。


また、相談体制を整えることも必要です。


不登校といじめの増加

2023年10月26日 07時15分00秒 | 教育・子育てあれこれ
文科省は全国の各校へ、毎年「問題行動・不登校調査」を行っています。

その2022年度に実施した結果がこのたび発表されました。

病気や経済的理由以外で、年間に30日以上学校を休んだ児童生徒の数は、2021年度と比較して、22%以上増え、30万人に近づく数となりました。

もちろん過去最多です。

2020年度が19万人ごえでしたので、2年間で10万人ほど急増したことになります。

この要因としては、新型コロナウイルス感染が拡大して、児童生徒の生活状況が変わり生活のリズムが変調したことが考えられます。

新型コロナ感染症は、落ち着いたとはいえ、子どもに与えた影響はたいへん大きかったといえます。


また、いじめの件数も増えました。

学校が認知したいじめの件数は、小学校で約10%、中学校で約14%増えました。

いじめ重大事態にあたる件数は、30%超えで過去最多となりました。

学校はいま、さまざまな点で疲弊し、課題が山積しています。

子どもたちの安心できる日常にさまざまなしわ寄せが押し寄せています。

その状況下で、子どもの健全な成長・発達をどう保障していくか。

教育行政の適切な舵取りと学校経営者の手腕が求められています。



霜降の頃

2023年10月25日 06時43分00秒 | 教育・子育てあれこれ
昨日10月24日から11月7日までを二十四節気では、霜降(そうこう)といいます。

夜の冷え込みが厳しくなると、外気に含まれる水蒸気が凍り、霜になります。

この頃には、自然と木々も色づいてきます。

色づく木々の代表はなんといってもモミジです。

最近は温暖化のためか、紅葉前線が南に降りていくのが遅くなっています。

紅葉は色見草(いろみぐさ)という別名があります。

初紅葉(はつもみじ)、薄紅葉(うすもみじ)、斑紅葉(むらもみじ)と、徐々に染まっていきます。

これが色見草といわれるゆえんです。

希望とは

2023年10月24日 08時13分00秒 | 教育・子育てあれこれ

困難なことに直面しても、へこたれず、たいへんな思いをせず、前を向いて歩くのはそうそう簡単なことではありません。

 

何か突然に転機となる幸運が舞い込んだり、いいことがおこることは、まずありません。

 

それでも、絶望せずにもちこたえ、踏ん張っていたら、少しずつ何かが変わっていき、ふと気がついたときには、自分は前に進んでいるのです。

 

希望とは、そんなものではないでしょうか。希望は明るく煌々(こうこう)と輝き、足元を照らしてくれるような場合は少ないのです。


コスプレに思うこと

2023年10月23日 06時16分00秒 | 教育・子育てあれこれ
ハロウィンが近づいてきました。

以前はハロウィンの参加者が「仮装する」と表しましたが、いまは「コスプレする」となりまさした。

ディズニーリゾートへ行っても感じましたが、いまやコスプレは特別な文化ではなく、若い世代がつながりあうきっかけになっています。

コスプレをすると、ふだんの自分から離れ、他者に見てもらうことで、ある種の自己肯定感が高まるという効果があるのだと思います。

裏を返せば、いまの若い人たちは、自分に自信をもてる人が少ないとも考えられます。

世の中のルールや規則に縛られず、自由にできる傾向が若い世代に見ることができます。

それを年配世代は、好きなことをして協調性に欠けると言う人がいます。

協調性がたりずに、ときとして人の迷惑に及ぶ場合もあります。

その点では、自覚が必要かとも思いますが、若い人たちの自己表現の機会はあってもいいように思います。







育休とるなら、親が家にいますよね

2023年10月22日 07時32分00秒 | 教育・子育てあれこれ
夫婦の共働きが当たり前になったいま、保育園に子どもを入れている、ある母親が妊娠しました。

そして、親が育休を取得しようとすると、2歳児までは子どもが保育園をやめなければならない事例が散見されます。

それは自治体の対応方針次第になります。

育休で親が家にいるなら、子どもを家でみなさい。

そう決めている場合はやめなければならなくなります。

半年後には、育休が終わり、また園にもどることになるのに、いったんは退園を強いられます。

待機児童が増えるかもしれなくなるからという理由です。

待機児童は10年前と比べると、大きく減少した現状であっても、下ので子で育休をとるなら上の子は保育園をやめてくださいという自治体もあるのです。

一方で、育休で親が家にいるようになっても、子どもが保育園をやめなくてもいいとしている自治体もあります。

やめなければならない場合は、子どもがやっと園に慣れて、安定して生活していたのに、急な環境の変化は、子どもにとっても不安が増し、親子は家のなかに閉じ込められ、たいへんです。

やめなければならないのなら、次の子どもを産み控える親も出てきます。

これでは、少子化対策にも逆行することになります。

子どもをみるのが親だけに限定されやすく、ほかに子育てを頼る人が見つかりにくい現代では、すべての自治体が融通のきく制度を拡充するべきでしょう。





教員を増やすべき

2023年10月21日 07時57分00秒 | 教育・子育てあれこれ
このたび中央教育審議会(中教審)が、教育の労働環境改善に向けた施策をまとめた緊急提言を出しました。

その提言では、学校教育の労働環境がわが国の未来を左右しかねない危機的状況と記述され、提言が示されています。

しかし、この提言を読んでみると、この6年間の一連の働き方改革の取り組みから見て、あまり目新しい施策が提起されているとは思えません。

たとえば、登下校の見守りを地域に移行するとか教員が担ってきた業務を地域の人に委ねるとかが提言されていますが、現場ではもうすでに行っています。

学校がつくる教育過程も、年間授業時数の標準を小学校4年から6年までを1015時間にするように求めています。

それよりも上回って定めている学校が多いからという理由です。

しかし、「ゆとり教育」への批判を受け学校がつくる計画を標準時数を下回らないようにと指導してきたのは国つまり文科省です。

それなのに、上回っているから是正しなさいというのは、現場がとまどうばかりです。

指導内容が増大した上に、思考力・判断力・表現力を伸ばす丁寧な指導が要求され、現場は疲弊しています。

もう、教員を増やし、一人あたりの業務量を減らすしか方法はないのでないか。

できることはやっているのですから。

教員定数を変更して教員を増やすためには、思い切って教育予算を増やすしかないのではないかと思います。

「危機的状況」というのなら、カネと人をつける必要があります。

現場だけに努力を求めるのはもう限界です。



今の時代の孤独対策

2023年10月20日 08時13分00秒 | 教育・子育てあれこれ

孤独について私が考えていることを書きます。

 

アメリカのアーティストJ.D SoutherJ.D サウザー)の1979年の曲に「You're Only Lonely」という曲があります。

「あなたがひとりぼっちで孤独なとき」という意味でしょうか。

 

 

また、日本の楽曲にも孤独をタイトルにしたものがあります。1991年に発表したZARD(当時はZard表記)の「Good-bye My Lonliness」です。「わたしはひとりにさよなら」という意味の歌詞が続きます。

 

さてこの「孤独」には、英語でsolitude(ソリチュード)とlonliness(ロンリネス)があります。

 

solitudeは望ましい孤独、lonlinessはどちらかというと有害な孤独になります。

 

前者は、人との接触や会話に疲れたとき、一人になりたいという感覚です。

一人になって仕事や作品づくりに打ち込みたい。休息や休暇を一人で謳歌したい。

 

いまはやりの、ひとりランチやひとり旅などはそれの延長上に位置づく行為です。

 

これは決して悲観的な孤独ではありません。というよりは望ましい状態ではないかと思います。

 

このsolitudeという孤独は、自分で選んで求めることができるという選択性があります。

 

しかし、後者のlonlinessは、いまでは精神的にも身体的にも疾患リスクを高めるということが明らかになった、有害な孤独です。

 

他者とのつながり、人間関係に乏しい、あるいは人間関係から隔絶された状態、突き進むと「孤立」になるのがlonlinessという孤独です。

 

だれかとつながりたいのだけれど、適切なだれかがいない。選択せずして一人ぼっちに追いやられた場合、その人には苦しみが沸き起こってきます。

 

そうなると、人づきあいにますます消極的にもなりがちで、さらに孤独が深まり、心身の不調にいたることもあるのです。

 

 

福祉の分野では、いま行政は住民の孤独対策・孤立対策を迫られていますが、独りぼっちを防ぐときに、lonlinesssolitudeを区分して、人間関係の選択性・自由性を施策や事業にどう織り込み孤独・孤立を防いでいくかを検討しなければなりません。


言葉にして表す 言語化

2023年10月19日 07時09分00秒 | 教育・子育てあれこれ

ジャニーズの問題に対して、「ひどい」とか「ダメだ」「とんでもない」と多くの関係者が抱ていた感情なのに、その^事実から起こる感情を言葉にしてこなかったために、今回の被害者側の告発によって社会問題化しました。

 

この言葉にする=「言語化」はとても大切なことです。

 

その意味で、メディアが申し合わせたように沈黙を保ってきたことにより被害が広がったという事実は、関係者は重く受け止め自己反省しなければならない。

 

それなのに、その反省をほとんど表明することなく、今もメディアは会社の対応や、記者会見の様子、記者会見の持ち方などで批判を繰り返しています。

 

そもそもある事案に対する意見や感想、つぶやきは言葉にして言語化することで、はじめて共感を呼んだり、反発が起こったりするのです。そして議論が始まるのです。

 

メディアは本来の役割に立ち返るべきです。

 

 


思い切って行動する

2023年10月18日 06時24分00秒 | 教育・子育てあれこれ

現代人に多いのは、物事にあたる前には、そのための条件を整えたいということです。

 

それは大切なことでしょう。十分なリサーチをして、条件を整えてから動き出すと、ものごとはうまくいくことも多いです。

 

織田信長が今川義元を倒した桶狭間の戦い。

 

山から谷を伝い降り、奇襲攻撃をかけました。

 

清洲城から出撃したとき、随行馬はたった十騎だったそうです。

 

兵が集まるのを待っていると時間がかかり、奇襲にならなかったからです。速度優先が第一の作戦でした。


 

危機に瀕したとき活路を見いだす人は、条件が不足していることを嘆きません。

 

それよりもその条件の下で何ができるかを焦点化するのです。

 

 

物事にあたる前に、そのための条件が整わないと、前に踏み出せない、動けない人が多い。

 

でもそれは、動かなくてもいい理由を探しているだけなのかもしれません。

 

危機を迎えたときには、今ある条件の中で思い切って行動する果断さが求められるのです。

 


旅行者が旅行先で築く良好なな関係

2023年10月17日 06時53分00秒 | 教育・子育てあれこれ

コロナ渦が一定程度終息し、街には観光客が増えてきました。

 

6月に京都へ行きましたが、もう修学旅行のピークは過ぎていました。

 

それでも、結構な数の修学旅行生を見かけました。

 

観光客が増え、京都の街には活気が戻ってきています。それは喜ばしいことでしょう。

 

しかし、喜んでばかりもいられません。

 

通勤バスに観光客の長蛇の列ができ、道路にはみ出しての写真の撮影、ゴミのポイ捨て。

 

いわゆるオーバーツーリズムという問題が顕在化しています。

 

修学旅行生はそのようなことはしませんが、おとなの観光客のマナーの悪さには閉口します。

 

このままでは、旅行は持続可能なアミューズメントにはなりません。

 

旅行者と地元の人びとの良好な関係づくりが欠かせません。

 

いま、修学旅行のプログラムとして、旅行先と旅行者が共存していく旅行者であるための「ツーリストシップ」が注目され始めています。

 

「消費する旅」から「豊かな旅」にシフトしていくための旅行者の心構えや行動を旅行者側から起こしていく関係のことです。

 

「調べる」「あいさつ」「聞く」「読む」「守る」「生かす」という6つのアクションを旅行者側から発していくのです。

 

そのようにして、旅行者と旅行先の間に良好な関係を築こうとするものです。

 

その6つのアクションを修学旅行生が当日現地で実行するのがツーリストシップです。

 

学習の深まりに期待します。