立石美津子さんという人のブログを毎週金曜日(更新日)を読んでいまして、金曜日の記事ではない臨時更新の記事ですが、次のような記事がありました。
記事自体は、朝日新聞の記事を丸々紹介したものであり、私も読んでみました。記事を。
>空港で出産・殺害、実刑判決の母親が訴えた「境界知能」とは?
新屋絵理2021年9月24日 20時15分
羽田空港のトイレで出産したばかりの女児を殺害したなどとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた母親の北井小由里被告(24)=神戸市=の裁判員裁判で、東京地裁(野原俊郎裁判長)は24日、懲役5年(求刑・懲役7年)の実刑判決を言い渡した。判決は殺害の動機を「自らの将来の障害となる女児をなかったものにするため」と指摘した。
判決によると、大学生だった北井被告は2019年11月、就職活動で上京した際に羽田空港のトイレで出産。直後にトイレットペーパーを女児の口に詰め首を絞めて殺害し、東京都内の公園に埋めた。出産予定日は約1カ月後だった。
判決は、北井被告が事件翌日に就職面接を予定通り受けたことなどから、「就職活動への影響を避けるために殺害した」と認定。事件は突発的としつつも「強い殺意に基づく執拗(しつよう)かつむごたらしい犯行だ」と述べた。
妊娠の相談せず頑張った就活、だけどエントリーシートに空欄
弁護側は公判で、北井被告が知的障害ではないものの知的能力がやや低い「境界知能」であることが事件の背景にあると説明した。さらに、同居する両親に妊娠を隠した経緯をふまえ、親に叱責(しっせき)されて育った家庭環境も情状として考慮すべきだと訴えた。
「境界知能」は知能指数(IQ)が70~85未満とされ、70未満が目安とされる「知的障害」には当たらないグレーゾーンだ。公判前の検査で、北井被告のIQは74で境界知能だと判断された。
弁護側の被告人質問では、北井被告が小学生のころから授業についていけず、就職活動で企業に提出するエントリーシートの質問の意味がわからず空欄が目立ったことなどが明かされた。証人として出廷した母(55)は、こうした状況に気づかず幼い頃から叱責を繰り返したと打ち明け、「苦しい気持ちを何一つわかっていなかった」と泣きながら証言した。
北井被告は、両親がこれまでになく喜んで就活を応援してくれたため「関係が崩れるのが怖い」と思い、妊娠を相談できなかったと説明した。弁護側は最終弁論で「被告には、エントリーシートを埋めるようアドバイスをする人もいなかった。事件についても、相談できる人がいれば起きなかった」と主張した。
しかし判決は、北井被告の知的能力は「低いとはいえ正常範囲内で大きな問題はない」と述べ、母親の叱責も「妊娠を相談するのに支障はなかった」と判断した。
(以下会員限定部分)
記事中にある
>しかし判決は、北井被告の知的能力は「低いとはいえ正常範囲内で大きな問題はない」と述べ、母親の叱責も「妊娠を相談するのに支障はなかった」と判断した。
というのが妥当な判断なのかどうかは当方何とも言えませんが、刑をある程度減じるべきかどうかはともかく、この事件の被告人の女性が境界知能であることが、この事件のポイントであることは間違いなさそうです。
以前こんな記事を書きました。
行政その他の支援がなかったことが非常に悪い事態をもたらした大きな要因と思われる強盗殺人事件の実例
書いたといっても、実際には、中度知的障害者が2件の強盗殺人をして、その死刑が確定したため、その死刑囚の経緯を紹介した毎日新聞の記事をさらに紹介したブログさんから引用をした記事ですが、しかしこの死刑囚の人生は、ひどいにもほどがありますね。裁判(水戸地裁)では、
>十分な矯正教育を受けたにもかかわらず、規範意識は著しく鈍く、犯罪性向はより深化している
という判決だったようですが、どうなんですかねえ。刑務所でまともな矯正教育がされたのか。甚だしく怪しいし、またそもそもこの死刑囚(藤崎宗司死刑囚)が、矯正教育を受けるだけの知能があったかも疑わしい。まさに、私が繰り返しご紹介する「累犯障害者」の典型、そしてそれが最悪の犯罪まで行き着いてしまった事例でしょう。
それで、今回の記事の事件での被告人は、累犯障害者ではないようですが、しかし
>北井被告が小学生のころから授業についていけず、就職活動で企業に提出するエントリーシートの質問の意味がわからず空欄が目立った
というわけで、まあ失礼ながら、まともな意味で学業のできた人ではなさそうですね。そして彼女は、犯行時大学生でした。彼女が通っていた大学は「芦屋大学」というところで、私はこの大学について詳しくありませんが(辛坊治郎が客員教授を務めていたのは知っていました)、あんまりこういう話はするのはよくないので滅多なことは書きませんが、お世辞にもあまり優秀な学生が行くわけではないらしい。それで北井被告が、はたして学業をできたかどうかも疑問ですね。最近の大学は、全入とか過半数の私大は定員割れとか言われますし、彼女もそういうたぐいで入学したし、また大学での進級もそんなに厳しくなかったのかもですが、いろいろな意味で学生生活を続けることに困難があったんじゃないんですかね。よくわかりませんが、たぶんそんなにひどい的外れでもないでしょう。
昔なら、彼女のような人物が大学(特に四大)に行くということはあまりなかったのでしょうが、現在はそんなこともないようです。そして彼女は、どういう学生生活だったかはともかく、大学を卒業できたわけです。これからは、彼女のように根本的に学業をすることに無理がある人間が大卒の資格を持つ(学士)ようになる時代なのでしょう。実際境界知能の人間は、統計学上人口の14%、7人に1人くらいはそうなのであり、私たちの周囲にもありふれています。今にしてみれば、私の公立小学校・中学校の時代に同級生だった人間には、ああ、あいつ境界知能だったんだと理解できる人間、あるいは知的障害者なのになぜか普通学級にいるみたいな人間がいましたね。知的障害者はともかく、境界知能の持ち主は、一般の公立学校なら確実に同級生にいるはずです。
そう考えていると、次のような本もいろいろ参考になりそうですね。
こちらの記事も、よろしければお読みください。
>最近の大学は、全入とか過半数の私大は定員割れとか言われますし
「学力が無いのに誰でも入れるようなFラン校は統廃合すべきだ」という主張がしばしば見られますよね。確かに、お世辞にもあまり学力が優秀でなくとも経済的に余裕があれば行けるような私大が増加していますが。
>これからは、彼女のように根本的に学業をすることに無理がある人間が大卒の資格を持つ(学士)ようになる時代なのでしょう
高校も、北海道では特に郡部においてお世辞にも学力面であまり優秀とは言えない上に、毎年定員割れが続いている小規模高校が少なからずありますからね。あまりこういうことを書くのは良くないのでしょうが、そのような学校は根本的に学業をすることが困難な生徒たちの受け皿にもなっているのでしょう。また、そのような地域に居住している学力の優秀な生徒は、札幌や旭川などの進学校へ行く傾向が強く見られますが、その一方で地元の学力の優秀な高校が定員割れを起こしていますからね。例えば、下記のような記事もあります。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/595054
>高校も、北海道では特に郡部においてお世辞にも学力面であまり優秀とは言えない上に、毎年定員割れが続いている小規模高校が少なからずありますからね。
これは日本中どこもそうでしょうね。子どもが多く、また中卒の人間が激減したことにより、高校をどんどん新設し、それらが時代の波にのまれて、高校がどんどん定員割れしているというところがありますよね。ご紹介の記事などは、まさになりふり構っていられないというレベルの感がありますね。
>定員割れしている
2021年度においては、私大のほぼ半数が定員割れしているという話ですからね。今後、定員割れが続いたり経営難に陥っている私大を中心に統廃合が進んでいく可能性がありますね。
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20210928-OYT1T50212/
>今後、定員割れが続いたり経営難に陥っている私大を中心に統廃合が進んでいく可能性がありますね。
いままで廃校になる大学・短大というのは、そうとうひどい状態でしたが、これからはそうでもなくなるのかもですね。
この事件の母親も、神戸の女性被告と同様に知能指数の低い境界知能で発達障害もあったそうです。彼女の場合、孤立出産で精神的にも肉体的にも負担がかかる上に経済的にも困窮している状態での犯行ということを鑑みれば、重罰にするというのも酷な話でしょうね。障害者でなくても、経済的に困窮している状態での孤立出産・育児はかなり困難を極めますからね。
>赤ちゃん殺害、母親に懲役5年判決 「孤立出産で混乱」などを考慮
石垣明真2023年2月3日 19時30分
赤ちゃんをホテルで出産した直後に殺害し、遺体をコインロッカーに捨てたとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた無職小関彩乃被告(23)の裁判員裁判の判決が3日、札幌地裁であった。井下田英樹裁判長は、孤立出産をした状況や成育歴などを考慮し、「同種事件の中で重い部類とまで位置づけられない」として、懲役5年(求刑懲役8年)を言い渡した。
判決によると、小関被告は昨年5月16日ごろ、1人で札幌市内のホテルの部屋の浴室で男児を出産し、水を張った浴槽内に沈めて窒息死させた。同31日、クーラーボックスに入れた遺体をJR千歳駅(北海道千歳市)のコインロッカーに遺棄した。
判決は殺害の動機として、男児が生まれたことで交際相手との関係が絶たれるのを恐れたことを挙げた。そのうえで、孤立出産という肉体的にも精神的にも負担のかかる状況で相当混乱しており、「助けを求めるなど冷静に判断するのが難しかった」と指摘した。
また、犯行に至る経緯を検討。妊娠後に周囲に相談する機会は十分にあったが、交際相手との関係を優先した背景には、いじめを受けた経験などから自己肯定感が低く、自分を受け入れてくれる相手に依存しがちだったとした。
弁護側は審理の中で、小関被告が知的能力がやや低い「境界知能」であり、注意欠如・多動症(ADHD)の傾向もあると主張。衝動的な行動をとったり、周囲に援助を求めにくかったりする特性があり、そうしたことが事件での行動に影響を与えたとして保護観察付きの執行猶予判決を求めていた。
判決は遺体の遺棄について、「場当たり的な行動に被告の特性が影響していることは否定できないが、事件が発覚しないよう強固な意思が表れた」と述べた。 小関被告は、時折うなずきながら判決の読み上げを聞いた。最後に井下田裁判長から「しっかり自分の生き方を考え直したうえで、社会復帰を目指してください」と諭されると、「ありがとうございます」と静かに答えた。(石垣明真)
このような記事もありますね。
https://www.asahi.com/articles/ASR216K28R21IIPE004.html
>赤ちゃん殺害「目が合い、責められていると感じた」 法廷で母親説明
石垣明真2023年2月1日 21時00分
赤ちゃんをホテルで出産した直後に殺害し、遺体をコインロッカーに捨てたとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた無職小関彩乃被告(23)の裁判員裁判は1日、札幌地裁で被告人質問があった。
「誰にも言えず出産」と検索 赤ちゃん殺害、法廷で浮かんだ母の孤立
小関被告は幼少期から仲間はずれなどのいじめを受け、要領が悪いと親から叱られ続けたという。「自分は社会が求める『普通』ができず、『異常』だと思っていた。自信がなかった」と述べた。
ホテルの浴槽で水中出産をした男児を抱き上げた時の気持ちを弁護人に問われると、「目が合って責められているように感じた。怖くなってとっさに殺してしまおうと思い、再び水の中に沈めてしまった。この子がいなければ、交際相手との関係も続けられるという考えもあった」。遺体をコインロッカーに遺棄したことについては、「後日埋めようと考えていたが、遺体と離れて気が楽になり、現実逃避してしまった」と説明した。
小関被告の母親の証人尋問も行われた。弁護側による精神鑑定で、小関被告は知的障害ではないものの知的能力がやや低い「境界知能」とされた。母親は「障害があると気づいていれば、彩乃はこんなに苦しまずにすんだ。『だらしない』と、彩乃を締め付けて育てた責任は大きい。これからは、彩乃が自分を好きになれるように迎え入れたい」と声を詰まらせた。(石垣明真)
この2つの記事で語られていることが、この事件のすべてのような気すらありますね。彼女も、相当に苦しい人生を送っていたのでしょう。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1006371/
彼女のような生徒たちを受け入れる学校が増加しているのは学校存続という意味合いもあるのでしょう。
宮崎県えびの市だったかの高校が、生徒数減少で廃校のききにあったところで中国人留学生を大量に受け入れて危機を免れたということもありましたしね。いろいろなアイディアを出すこともできるし、それができれば廃校を免れるということもあるのでしょう。