ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

投資だけでなく、人間関係も「損切り」が必要なのだと思う(拉致被害者家族の蓮池透氏と横田滋氏の違いみたいなものがその例だろう)

2024-04-30 00:00:00 | 北朝鮮・拉致問題

3月の記事ですが、先週読んでちょっと印象に残ったものを。

18年間見守り続けた里親から590万円盗んだ男…公判でうなだれ「甘えて欲望優先した」

詳細はリンク先からお読みいただくとして、私が興味深く感じたところを抜粋してご紹介。


 3歳から約14年間育ててもらった九州の里親夫妻から計590万円を盗んだとして、里子の男(21)が2月下旬、窃盗罪などで有罪判決を受けた。少年時代から非行に走った男を、夫妻は「私たちを試している」と、見放すことなく受け入れてきた。それでも、2人の思いは届かなかった。裁きを受けた今、「親子」は更生の歩みを模索している。


 昨年8月の朝。夫妻が起きると、自宅の本棚にあった金庫がなくなっていた。通帳や財布、現在養育する里子たちの旅行費用約70万円を入れていた。同3~6月にも通帳やキャッシュカードが盗まれて計約520万円が引き出されたばかり。これまで約20人の里子を育てた夫妻の脳裏に、里子として初めて受け入れた「息子」の顔が浮かんだ。


夫妻から金を盗んでは友達におごり、渡した塾代もかすめた。「捨て子やろ」とからかわれたこともあり、夫妻は自分を見放さないかを確認する「試し行動」と捉えて見守った。「里親の必要経費だ。必ず立ち直る」。そう信じた。

 だが、中学、高校では非行に拍車がかかった。盗み、喫煙、深夜 徘徊はいかい ――。高校を中退した男は「ここにはおられん」と家を出た。焼き鳥店の売上金を盗んで少年鑑別所に入ったが、夫妻は連絡を取り続けた。

 実親の元で始めた鉄筋工の仕事は半年で辞め、職を転々とした。交際女性が出産した後に別れたが、養育費も払えず、社用車で事故を起こすと「修理のため」と夫妻に金を借りた。

薄々わかっていたが
 今回の盗みが始まったのは、職を失った男が夫妻に預けられた里子を世話するために家に出入りするようになってからだ。金はパチンコや新しい交際相手との旅行費用などに消えた。

 夫妻は薄々、男が犯人だとわかっていた。「我が子に手錠をかけたくない」と届けられずにいたが、周囲の説得で被害届を提出。さらに30キロもの金庫が盗まれた際は、「ここまでやるのは異常だ」と迷わず届けた。男は昨年9月に逮捕された。出会って18年。初めて突き放した。

おそらくなんですが、この「里子」は、たがが外れている人間なのでしょうね。一応人間には、「ここまでやるとまずい」「さすがにこれは、見捨てられる」とか考えて、ある程度のところでやめるくらいの常識はあります。ところがこの人物は、そういった能力がきわめて低い、上の引用にもあるように、里親がどこまで自分を許すかといったことを試すみたいなところがあるのでしょう。そしてそれがエスカレートして、このようになったということでしょう。

で、私も、そういった人物を垣間見たことがあります。中学生の時、やたらそういったことを繰り返している人物がいて、最後は施設に送り込まれました。

さらにこの記事を読んでいて私が思い出した人物がいます。夫を亡くした女性が、歌手崩れに入れ込んでしまい、その男が始める店に、自分の経済力にそぐわない援助をしてしまい、けっきょく一文無しになり、生活保護受給者になって死んだというものです。

金をためられる人、財産を残せる人は、けっきょく金にシビアなのだと思う(追記あり)

上の里親の人は、


今回の盗みが始まった

時点で心を鬼にして、警察に届けるべきでしたね。そうすることが、もちろん里親のためにもいいし、この里子にとってもずっと良かったでしょう。上の記事で、


我が子に手錠をかけたくない

というのは確かにそうなのかもしれませんが、おそらくですが、里親らからすると、警察に被害届を出すことが、自分たちの里子に対する対応が間違っていたということを認めることとなり、それがものすごく忍びなかったという側面があるんじゃないですかね。子どもそのものより、自分たちの敗北というのが、ものすごく痛かったのではないか。もちろんそれは、わが子へ手錠をかけるということへの忌避感と表裏一体のものですが、自分たちの子育てが、この里子の悪さをさらにひどくしたということを認めるのは、彼(女)らにとって、すさまじい挫折感ではなかったのではないか。

さてここで、「損切り」という概念にご登場願いましょう。「損切り」とは、Wikipediaから引用すれば、


含み損が生じている投資商品を見切り売りして損失額を確定すること。


投資の後に評価額が下落した場合、難平や塩漬けするとさらに下落が続いて損害が拡大する可能性がある。撤退するための明確な根拠を持って早めに損切りを行うことは、損失の拡大を防止し、資金を守る方法として重要といわれる。ロスカットは、通常は証拠金が無くなる前にロスカットの機能が働くため、預託した証拠金を超える損失を防ぐことができる。

というものです。本来は投資関係の用語ですが、これはさまざまなことに応用できるでしょう。まず男に入れ込んで全財産を失った女性です。

これも、店なんかに金を出すからいけないのです。出すのなら、私はもちろん出さないほうがいいと思いますが、ともかく出せる金額をシビアに査定して、それ以降はビタ一文出せないという態度で行かないとだめでしょう。それで男と縁が切れたらそれは仕方ないというものです。が、けっきょく彼女は、有り金すべてはたいてしまったわけです。もちろん私は彼女に同情する気はありません。何度でも、引き返す、人間関係も、自分がつぎこんだ金も損切することはできたんですから。そういうチャンスをすべて逃して全財産をはたいたのだから、それは同情するには値しません。

この記事での里親たちもそうですよね。里親の関係を解除するかはともかくとしても、家に出入りをさせて金を盗まれるなんて、それは里子のためにも心を鬼にしないと、なんて「鬼にする」なんていう次元のことでもない当然のことでしょうが、これは警察に届けなければいけないし、また記事によれば相当にだらしない生活を里子はしていたようですから、「更生しないかぎり出入り禁止だ」くらいの態度を取ってもよかったのではないか。この里親の「愛情」は、遺憾ながら里子にとっては、「使い勝手のいい金づる」にさせるものでしかなかったわけです、残念な話ですが。

この記事を書いていて、「あ、その典型例があったな」と思いつきました。北朝鮮拉致被害者家族たちです。本日の記事では、蓮池透氏と故横田滋氏についてとりあげます。この2人は、いろいろな点で対照的です。

拉致被害者の兄であり義兄である透氏と、父親である滋氏(以下便宜上名前の表記とします。また滋氏も、拉致被害者の義父でもあるかと思われますが、直接の接触はなさそうなので、その点はこの記事では論じないこととします)とではまた立場が違いますが、自分の意見を述べて(事実上)拉致被害者家族会から追放・除名のような形となり独自の活動をしている透氏と、けっきょく家族会などと縁を切れないままで生涯を終えた滋氏では、実に対照的ですね。けっきょくそれは、透氏は家族会における人間関係を清算できたし、滋氏は、たぶん奥さんが怖いというのが最大の理由かと思いますが、家族会や巣食う会と縁を切れずに、ろくすっぽお孫さんとも会えずに亡くなったわけです。横田の奥さんが、お孫さんと会うことに難色をしめしたのであっても、「いや、自分はどうしても会いたいのだ」と主張すればそれでいいし、そうすれば、最終的には家族会だろうが、巣食う会だろうが、それを阻止はできません。実際なんだかんだといっていましたが、けっきょくご夫婦はモンゴルでお孫さんらと会ったわけです。だったら、単独で滋氏が会いに行っても別に罰は当たらないでしょう。実際その後、家族会もご夫婦を除名とかにはしていない。されたって別に痛くもかゆくもないことですが、滋氏はともかく奥さんは、除名されたら絶対嫌なひとなのでしょう。が、それは奥さんの問題ですから、滋氏は、自分のしたいことをすればいいのです。で、滋氏はすでに故人だし、どっちみち彼は、自分の本音をあけすけにマスコミなどに話す人間でもないでしょうが、彼はたぶんある程度物事を考えられる時点では、自分がお孫さんとろくに会えなかったことを後悔したでしょうね。しなかったと言ったら常識的にうそでしょう。

で、つまりはこういうことが、人間関係の損切りだと思うわけです。たぶん滋氏は、おそらく家族会や巣食う会の連中と縁を切ることは問題がなかったのかもしれませんが、奥さんや息子さんたちとは縁が切れなかったのでしょうね。となると損切りができた透氏とできなかった滋氏、どっちがよかったか。議論するだけ野暮でしょう。透氏は弟さん夫婦と縁は切っていないでしょうが、滋氏は立場が違うのは仕方ないとしても、別に奥さんや子どもさんにこだわる必要もなかったと思いますね。小泉訪朝から今年で22年、まったく状況はよろしくない。家族会とか巣食う会は論外、滋さんにとって横田の奥さんやお子さんも、非常に迷惑な存在だったんじゃないんですかね。奥さんのOKが出たからお孫さんに会えたなんて、非常に馬鹿らしい話だと私は思います。付き合う人間を選ぶというのは、人間が生きていくうえでの最低の常識でしょうが、自分にとって不都合な人間はどんどん損切りするくらいの度胸と決断が必要なのだなと痛感させられます。

なおこの記事は、最初「社会時評」のカテゴリーにするつもりでしたが、「北朝鮮・拉致問題」のカテゴリーに変更したことをお断りしておきます。


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Unknown (bogus-simotukare)
2024-04-30 02:46:08
 透氏の場合「弟夫婦が家族会、救う会べったり」でも家族会、救う会と縁切りした気がしますが、彼の場合「横田滋の妻や息子達」ほどには弟夫婦が「家族会、救う会べったりはなかった点(少なくとも公然と救う会、家族会を擁護し、透氏を非難する発言は弟夫婦からは無かった)」は有利だったかと思います。
>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2024-04-30 23:07:51
おおせの通りだと思います。ただこれもご指摘の通り、たぶん透氏は、そういったこととは別に独自に動いたでしょう。
Unknown (bogus-simotukare)
2024-05-11 02:56:59
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240510/k10014445161000.html
 岸田総理大臣は、アメリカを含めた国際社会の協力を得ながら、日朝首脳会談の実現を目指す考えを示しました。
(引用終わり)

 当然ながら「北朝鮮にとって利益が無いのなら」北朝鮮は首脳会談に応じないでしょう。これを「北朝鮮は無条件で拉致被害者を帰せ」と非難してもどうしようも無い。「客観的事実」として「北朝鮮にとって利益が無いのなら」北朝鮮は首脳会談に応じないのだから首脳会談したいなら「制裁解除」など何らかの「利益の提供(いわゆるバーター取引)は不可避」です。しかしそこから逃げてしまい、結局「首脳会談などしない」のが岸田でしょう。そもそもどこまで首脳会談する気があるかも怪しい。
Unknown (bogus-simotukare)
2024-05-12 03:51:10
https://www.sankei.com/article/20240511-XYP3JFLFFNOP3MOQSIH2E5J7D4/の流用ですが以下コメントします。

日朝は「対話局面」、金正恩氏に「勇気ある英断」強く訴え 拉致家族の悲痛な叫び
https://www.sankei.com/article/20240511-XYP3JFLFFNOP3MOQSIH2E5J7D4/

 日朝は対話局面になどないし、家族会の方こそ「段階的帰国でも制裁解除」という「勇気ある英断」をすべきです。
 なお「拉致の風化」で
赤旗・主張『戦争する国づくり/メディアは危険な中身伝えよ』
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-05-11/2024051102_01_0.html
 テレビニュースは連日、栃木県で起きた殺人事件をトップニュース扱いで報じ、ゴールデンウイークの人出を繰り返し流してきました。
(引用終わり)
で家族会の運動など全く報じられないのは滑稽です(赤旗記事は、経済秘密保護法と改定防衛省設置法をろくに報じないマスコミへの批判で、拉致問題とは直接関係ないですが)。
>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2024-05-17 01:11:41
拉致被害者家族らの体たらくもひどいものですが、マスコミもねえ、自民党支持マスコミはおろか、普段それなりに批判的なところですら実にパッとしないですよね(苦笑、いや笑ってはいけない)。赤旗が、ジャーナリズムで賞を得たことがありますが、政党機関誌に、商業マスコミが負けていてどうする(呆れ)。

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