廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ジミー・ジュフリーをさらに見直す

2020年03月07日 | Jazz LP (Verve)

Jimmy Giuffre / In Person  ( 米 Verve MGV-8387 )


1960年8月、ファイヴ・スポット・カフェにて録音されたアルバムだが、これがいい。カルテットで、ジム・ホールが入っているのがミソ。この人は
ジム・ホールと相性がいい。ジムも遠慮することなく、普段よりしっかりと弾いている。

冒頭、クラリネットの楽曲から始まるが、この人のクラリネットは古臭さがない。この楽器はクラシックの世界では非常に洗練された役割をこなす
のだが、ジャズという音楽になるとどうも懐古調の響きをもたらす、いささか厄介な楽器だ。でも、ジュフリーが吹くと、なぜかクラシックでの
この楽器の風情が漂う。不思議だ。"My Funny Valentine" もクラリネットで演奏しているけれど、この楽器で演奏をしているのは珍しいだろう。
他の事例がすぐには浮かんでこない。このモダンな楽曲には合いそうにないにもかかわらず、これがすごくいいのだ。

ベースはビュエル・ネイドリンガーで、セシル・テイラーのバンド以外でこの人を見かけるのは珍しい。テイラーのバンドでベースの演奏を賞味する
のは至難の業だけど、こういう普通の(と言ったら失礼か)人たちの中で聴くと、ものすごく上手い演奏をする人だったんだなというのがわかる。
これにはちょっと驚かされた。

ジュフリーのこのライヴ・アルバムを聴いていると、この人は一体どれだけの「顔」を持っているのだろう、と考え込んでしまう。今まで聴いてきた
どのアルバムとも音楽の感じが違う。クラリネットとテナーを交互に持ち替えて演奏しているけれど、ここでのテナーはゲッツ風でもなく、ロリンズ
風でもない。また違う風味なのだ。不思議だ。

この様々な「不思議」がこの人の持ち味なのかもしれない。深夜のファイヴ・スポットで繰り広げられるこの音楽は、誰にも似ていない。
ハードバップではないし、クールでもない。初めて聴くよう気がするけど、妙に懐かしさも感じる。Intimateな音楽、という語感が一番しっくりと
くるかな、と思う。

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