廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

哀感漂うクラリネットのジャズ

2019年01月27日 | Jazz LP (Urania)

Jimmy Hamilton / Clarinet In High Fi  ( 米 Urania UJLP 1208 )


高名なエリントニアン達がたくさんのソロ作品を残したことを思えば、ジミー・ハミルトンの作品数は少ないかもしれない。 でもそれは彼の評価が低かったから
ということでは当然なく、バップ期以降のクラリネットという楽器の一般的な需要の低さが影響している。 パーカーの出現でバップ期におけるサックスの地位は
不動のものになり、クラリネットは片隅に追いやられた。 管楽器の演奏を習得する場合はまずクラリネットから始めるのがいいというのが教育上の定説だったので、
パーカーも高校時代に最初に手にしたのはクラリネットだったけれど、サックスに持ち帰ることで彼は "バード" になった。

ジミー・ハミルトンのクラリネットの音色はマイルドで哀感がこもっている感じで、例えば先輩のバーニー・ビガードのスーパー・プレイと比べるともっと身近で
親しみやすい。 だから、こういう小編成での音楽には非常に上手く馴染むように思う。 

ウラニアのこのアルバムは2つのセッションから成っていて、1つはジミー・ウッドとサム・ウッドヤードがバックのワンホーン、もう1つはラッキー・トンプソンや
アーニー・ロイヤルらウラニアお抱えのメンバーと演った多管編成。 どちらも穏やかな表情の上質なスイング系の好セッションで、聴いているとその心地よさに
時間が経つのを忘れてしまう。 ラッキー・トンプソンとアーニー・ロイヤルは一切出しゃばらず、ハミルトンの引き立て役に徹しているのが何とも立派。
堅牢なリズム・セクションに支えられて、音楽は流れて行く。

ベイシー楽団のソリスト達のソロ作品はテンポのいい明るいものが多いのに対して、エリントニアンたちのソロ作品はゆったりとした雰囲気のものが多いような
気がするのは無理なこじ付けだろうか。 でも、何となく母体のオーケストラの特質がある程度ソロの方にも自然と反映されているような印象がある。
ハードバップはうるさくて耳障りに感じる気分の時に、こういう音楽の存在はありがたいと思うのだ。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クォーター・モダン という新ジャンル

2014年11月30日 | Jazz LP (Urania)

Ernie Royal / Accent On Trumpet  ( Urania UJLP 1203 )


時間が経つとレコードの印象が変わってくる、というのはよくあることで、以前聴いた時はさしていいとも思わなかったけど、今聴いてみると
結構いいじゃないか、と思ったりすることがあります。 尤も、その逆もよくあることで、何がそう思わせるのかはよくわかりません。

このレコードも昔聴いた時は退屈な内容だな、と思ってほとんど手に取ることもなかったのですが、今聴いてみるとそんなに悪くはないし、
意外に音がいいレコードなんだな、と思うようになりました。

アーニー・ロイヤルのトランペットはその音も奏法も古いスタイルだし、ギターもドラムも同じく古いスタイルでの演奏ですが、集まったメンバーが
やっている音楽は古臭いという感じはなく、瑞々しい新鮮さみたいなものを感じることができます。
ウラニアというレーベルはハードバップとは無縁の音楽に特化してレコードを少し作ったマイナーレーベルで、採用された演奏家もスイング系の人たちが
メインでしたが、その音楽はどれも古臭さはなく、実は選球眼がよかったんだなということがわかります。

このレコードもスタイルはスイング系のスモールコンボのそれですが、音楽がかなりしっとりと落ち着いていて、モダンと中間派の間くらいの
"クォーター・モダン" とでもいうべき地味だけど新しい隙間を縫うような分野をつくっているようなところがあります。 誰もガツガツしたところが
なく、ゆったりとした余裕をもってのんびりと演奏している。

一応、名義はアーニー・ロイヤルのリーダー作ということにはなっていますが、特にこの人が前に出て、というような野心的なところもなく、
全員でこじんまりと音楽をやっているという手作り感が好ましく、たまに聴くとホッと一息つける可愛らしいレコードです。

どうでもいい話ですが、ジャケットに写る顔は眼窩が窪んでいて影になっていますが、よく見ると実はアーニー・ロイヤルの眼は開いています。
これがちょっと怖い。




コメント (3)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする