廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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ミルト・ジャクソンとワンホーン(2)

2024年04月28日 | Jazz LP (Savoy)
Milt Jackson, Frank Wess / Opus De Jazz  ( 米 Savoy Records MG 12036 )
 
 
ミルト・ジャクソンとワンホーンによる代表作ということになると、やはりこれが筆頭ということになる。フルートをホーンという言葉で扱っていいのか
どうかは微妙な気もするけれど、ジャズの世界では毛嫌いされるフルートでここまで素晴らしい作品となったのはほとんど奇跡のように思える。
 
その成功の原因はとにかくフランク・ウェスがフルートを丁寧に静かに吹いたことに尽きる。そしてなぜフランク・ウェスがそんな風に静かに吹いたかと
いうと、収録された全曲が静かで穏やかなテンポで設定されたからだ。こういう雰囲気の中ではフルートでがなり立てる必要がそもそもなかった。
 
フルートは大きな音を出すようには設計されていないので、元々ジャズには向いていない。なのでジャズの中で大きな音で感情的に吹こうとすると
風切り音になってしまう。それはこの楽器本来の音ではないから、耳障りで不快な騒音としか感じられなくなる。それがわかっているから、ここでは
フルートがその本来の美しい音色を発揮できるよう静かな楽曲が選ばれている。
 
その最たるものが "You Leave Me Breathless" で、この曲を初めて聴いた時の衝撃は凄まじいものがあった。深淵の奥底から立ち昇ってくるその幽玄さは
ジャズというにはあまりに異質で、それでいて目が眩むような美しさを放っている。Opus という単語を使っていることからもわかるように、音楽的な
質の高さに制作側も驚いたのだろうと思う。
 
そして、ここで展開される音楽の総仕上げをするのがヴァン・ゲルダー。クールな残響感で全体を大きく覆い、楽器の音色の美しさを最大限に引き出した
録音と再生は単なる技術論で語るにはあまりに芸術的で、ここでの彼は録音技師としてではなく音楽の創造に携わった芸術家の1人として語るに相応しい。
 
 
 
 
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