廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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たった1枚のリーダー作

2024年05月19日 | Jazz LP (Time)

Tommy Turrentine / S/T  ( 米 Time Records T/70008 )


トミー・タレンタインのリーダー作はこの1枚しかない。40年代からプロとして活動していたが、そのキャリアはビッグ・バンドのメンバーとしてが
メインで、ソロ活動にはあまり積極的ではなかったようだ。トランペットの腕はしっかりとしているのでポツリポツリとサイドマンとして参加
しているアルバムはあるのだが、そのどれもが印象は薄い。弟のスタンレーとは違い、性格的に前に出ようとするタイプではなかったのだろう。

ただ、ここでの演奏をあらためて聴くと、その輝かしい音色や安定したフレーズに「こんなに上手かったっけ?」と驚かされることになる。
瞬発力で聴かせるのではなく、じっくりと長いフレーズで聴かせるタイプなので聴き手に強い印象を残すことがないのだろうが、よく聴くと
演奏力の高さはすぐわかる。でもリーダー作の割には第1ソロは弟に吹かせたりゲストのプリースターにやらせたり、と自身の演奏スペースは
さほど長くなくて、そういうところも彼の印象が前に出てこない要因になっている。

ビッグ・バンドでの経験からの影響か、3管編成で重奏するテーマ部を持つ曲が多く、アレンジの仕方もビッグ・バンドがよくやる処理になっている
箇所が所々見られる。ハードバップの疾走感を表現するよりは管楽器の重奏パートで音楽に厚みを持たせようとするアプローチになっている。
それがここでの音楽をマイルドな印象に仕上げていて、そういうところにもこの人の人柄が反映されているのではないかと思う。

それでも音楽の基調はハードバップで、トミーが作曲した "Time's Up" や "Two,Three,One,Oh!" などは哀感が漂う名曲で聴き惚れる。
スタンレー・タレンタインは後年のアクの強いプレイとは違ってストレートに重い音色を鳴らしていて見事な演奏を聴かせるし、普段は田舎臭い
雰囲気のプリースターも明るめの音色でクッキリとしたソロを取っていて、演奏全体の纏まり感や質感は非常に高く素晴らしい。
タイム・レーベルらしく音質も良く、これはいいレコードである。



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