廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

クロード・ソーンヒル まとめ買い

2022年04月24日 | Jazz LP



エサ箱が干ばつ期のアフリカ大陸並みに干上がって久しい。もう1本釣りすることは叶わないので、こういう買い方をすることが多くなった。

1枚480円で大半がシールドのソーンヒルが纏めてエサ箱に入っていたので、全部根こそぎ拾って来た。ラジオ録音のものは全番号が揃っている
わけではないけれど、こういう機会でもなければ手に入ることはない、それなりに厄介なレコードたち。ビッグ・バンドは人気がないから、
出れば例外なく安いけれど、これがなかなか出回らない。

40年代がピーク期だったこともあり、正規録音が少なく、クロード・ソーンヒルが一番好きな楽団だけにそれが残念でならないけれど、
そういう人は私だけではなかったようで、こうしてラジオ放送音源が残されている。1941年の演奏なんてレコードだとSPしかないから
音質面では期待できないけれど、こういう放送録音の場合は意外に聴ける音質なので、逆にこの方が有難いわけだ。

在宅勤務が定着したおかげで聴く時間はいくらでもあるから、レコードなんて何枚あっても困らない。コロナ禍で世の中が様変わりして
レコード供給も聴く側も状況が一変したので、レコードの買い方もそれに準じて変わっていく。



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サド・ジョーンズを堪能できるアルバム

2022年04月17日 | jazz LP (Metro Jazz)

The Jones Brothers / Keepin' Up With The Joneses  ( 米 MetroJazz E1003 )


サド、ハンク、エルヴィンの3兄弟にエディー・ジョーンズを加えたワンホーン・カルテットがアイシャム・ジョーンズやサドの楽曲を
演奏する、というジョーンズ尽くしの洒落の効いたアルバム。単なるおふざけアルバムのように思われているかもしれないが、
私が最も好きなサド・ジョーンズのアルバムがこれである。

トランペットやフリューゲルホーンを持ち替えながらサドのプレイが最も堪能できるのがこのアルバムのいいところだ。
プレーヤーとして評価されることのない彼の演奏力がこんなにも素晴らしいということがとてもよくわかる。

アイシャム・ジョーンズは20世紀前半に活躍したミュージシャンで、"It Had To Be You"、"On The Alamo"、"There Is No Greater Love"
のような陽気なスタンダードを書いた人。サドはゴリゴリのハード・バップをやるようなタイプではないので、そういう意味でも
アイシャムの書いた曲は彼の音楽性に親和性がある。

ハンク・ジョーンズの上質なピアノが全編に渡って効いており、全体が非常に上品なジャズに仕上がっている。
エルヴィンのブラシが音楽を心地よく揺らしており、素晴らしい。全体的に音数が少なく、隙間感で聴かせる音楽になっている。

おまけに、このレコードは物凄く音がいい。ひんやりとした広い空間の中で、輪郭のくっきりとした彫りの深い楽器の音が心地いい。
内容、音質とも深い満足感に浸れる素晴らしいレコードである。



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レーベルは変われど演奏は変わらず

2022年04月10日 | Jazz LP (Savoy)

Curtis Fuller  / The Curtis Fuller Jazztet With Benny Golson  ( 米 Savoy MG-12143 )


トランペットがアート・ファーマーからリー・モーガンに変わったジャズテットとしての演奏だが、この辺りはすべてベニー・ゴルソン人脈
だから、聴く前からどういう演奏なのかはわかるし、実際、その通りの演奏が繰り広げられる。

ファーマーのくすんだ音色がモーガンに置き換わって大丈夫なのか?と心配になるが、面白いことにモーガンはテーマ部のアンサンブルには
加わらず、ゴルソンとフラーの2管だけでテーマを受け持つ曲が多く、そのおかげでジャズテットとしての音楽が維持されている。
ゴルソン・ハーモニーを基調にしたスモーキーな雰囲気が全体に濃厚に漂い、よく考えられているのがわかる。

ピアノがウィントン・ケリーというのもミソで、他の作品に比べると鮮度が高く清廉な感じがする。この人にしか出せない明るく澄んだ音色が
よく効いていて、音楽を一段上へと押し上げるのに貢献している。チャーリー・パーシップのドラムのキレの良さも抜群。

マイナー・キーの楽曲が多く、彫りの深い翳りを帯びた雰囲気に仕上がっていて、すべての人に愛される理想的なジャズとなっている。
録音はヴァン・ゲルダーだが、ここでのサウンドはサヴォイのメリハリの効いたRVGではなく、蒼くくすんだブルーノートのRVGだ。
程よい残響感の中で、憂いに満ちた音楽が鳴り響いている。

私がこれを拾ったのは6年前。盤は新品同様、ジャケットもPost Box表記の無い初版で当時は6千円くらいだったが、近年は全く出てこなくなった。
ユニオンのジャズ担当も「高額買取の中に入れても入って来なくなった」とボヤいており、レコード不足は灯りが見える気配がない。



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サヴォイの良心

2022年04月03日 | Jazz LP (Savoy)

Eddie Bert / Encore  ( 米 Savoy MG-12019 )


白人版ベニー・グリーンとでも言うような持ち味がエディー・バートの良さだろうと思う。サックスやトランペットと張り合うべく
バリバリと吹くことなんて特に興味はないよ、という感じで、のんびりと伸びやかなトーンで横糸を張る。

数少ないリーダー作を出していたのは50年代で、基本的にはビッグ・バンドの中での活動がメインだったようだ。
そんな感じだったから認知度は低く、誰からも相手にされない。まあ、しかたないかなとは思う。
きっと、本人もそんなことはどうでもよかったんじゃないだろうか。
でも、私はこの人のアルバムが結構好きで、事あるごとに引っ張り出してきて聴く。

この人の音色は芯があって、バンド・サウンドの中でも埋もれることがなく、しっかりとよく聴こえる。だから、アルバム1枚を
聴き終えると、「エディー・バートのトロンボーンの音」というものがちゃんと頭の中に残るのだ。ぼやけがちな他の奏者とは
そういうところが違う。カーティス・フラーなんてその真逆で、聴いた傍からその演奏の印象が薄れていくから、大違いである。

このアルバムはピアノレスのワンホーン・セッションと、J.R.モンテローズやハンク・ジョーンズらとの2管セッションの2種類が
収録されている。ワンホーンのほうは陽だまりの中で心地よくうたた寝するような穏やかな演奏で、2管セッションの方は
マイルドで上品なハード・バップ、と表情がはっきりと分かれている。

2管の方はモンテローズがいい演奏をしていて、強い印象を残す。ブツブツと途切れる例の吹き方ではなく、しっかりとフレーズを
紡いでよく歌っている。サヴォイのヴァン・ゲルダーらしい残響の効いた音場感の中で少し甲高いトーンがよく響いている。
楽曲も適度な哀感が漂っていて、印象に残る。この時の演奏は "Montage" の方にも分けて収録されているが、1枚にまとめるべきだった。
モンテローズが主役を喰っている感じがするが、それでもこの2人の相性は非常によく、ジャケットの仲良さそうな雰囲気そのまま。

何度も言って来たことだが、サヴォイはいいアルバムを作る。オジー・カデナという人がセンスがあったのだろう。
サヴォイの良心の結晶のようなアルバムである。



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