廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

今週の成果

2015年02月28日 | Jazz CD
先週末、DU新宿ジャズ館ではフリージャズ・セールがあったようで、平日の空いた時間に寄ってみるとその残滓が並んでいました。

DUさんはいつもいろんなセール企画を打って、普段ジャズのディープな話をする相手がいなくて淋しい思いをしている孤独なマニアの
心を癒してくれる稀有な存在です。 その内容は偏りのない幅広いものなので、マニアの多様なニーズに答えてくれます。 豊富な買取で
確保した商品をただ棚に並べるだけではなく、それらをいろんな切り口で編集して見せるということですが、そういうのを我々マニアと
一緒になって楽しみながらやっている、という感じが好ましいところなんじゃないでしょうか。

私の場合、そういう○○セールという企画の中で今のところ唯一興味を惹かれるのがフリージャズ・セールなのですが、それでも休日にわざわざ
それだけのために出かけるのはちょっと、というやる気のなさなので、毎度の周回遅れの買い物です。 整理券を貰うために並んで、阿鼻叫喚の
中をかき分けて~、というおもしろ話をご披露できない(30年前ならきっとやってた)、退屈な記事がダラダラと続きます。

今回は価格帯はぼちぼちという感じのラインナップで、量もちょうどいい感じです。普段は全然見かけないのは、こういう風にストックされて
いるからなんだなあ、と改めて思います。 ここ2カ月ほどレコードも買っていないので、エヴァン・パーカーを軸に少し多めに買いました。





■ Evan Parker / Process And Reality  ( FMP CD 37 )

1991年ベルリンのFMPスタジオで録音されたソプラノのソロ演奏。 空白を恐れるかのような循環呼吸による切れ目のない音で埋め尽くされた
演奏です。 16曲収録されているということになっていますが、一体どこから次の曲に変わったのかなんて全然わかりません。 
わかっているのはもしかしたら本人だけなのかもしれません。

この手の音楽の性質上、また演奏力に自信があることもあってかソロの作品が多い人ですが、まだ他のソロ作品は聴いていません。 時系列に
聴いていくと演奏の質が上がっていくことがよくわかるんだそうですが、なんせ中古で出てこないものでそういうところがまだわからないのが
残念です。 

本領発揮の演奏が展開されて、音楽を聴いているという感じは一切なく、楽器の異形な音をただひたすら聴いていくだけという感じです。
楽器としての可能性を極め尽くそうとするかのような音が最後まで続きます。 でも、それでいいのです。 そういうのを聴きたくて
買ったわけですから。 

家のスピーカーでこの音盤を聴くと、ネコが驚いて部屋から走って逃げて行きます。 そういう内容です。


■ Evan Parker, Barry Guy, Paul Lytton / at Les Instants Chavires  ( psi records 02.06 )

1997年モントリオールで行われたライヴ録音で、ピアノレス・トリオによる演奏。 エヴァン・パーカーの演奏はフレーズはフリーのそれですが、
かなり知的に抑制されており、よくライヴで聴かれる感情の赴くままにというような演奏ではありません。 尺八のような音で吹いてみたり、
ロリンズみたいに吹いてみたり、と表情はクルクルと変わります。

ベースとドラムがいるおかげで楽曲の土台はしっかりしていてハチャメチャな印象はなく、安定感のある演奏に終始します。 コードを無視した
フレーズばかりで和声とは無縁の音楽だとは言え、ここまで安定感がしっかりしていると特に不安な気持ちになることもなく聴き通せます。

テナーの音もしっかりしていてとにかく上手い人なので、いい音楽を聴いたなあという率直な感想を覚えるから不思議です。 
こう考えると、音楽が人を感動させる要素って本当に例の3原則だけなのか?と疑問が出てきます。

ちなみに、これだと猫は逃げません。 何なら、スピーカーの前で寝てたりします。





■ Evan Parker, Barry Guy / Obliquities  ( Maya Recordings MCD9501 )

1994年英国のスタジオで録音されたベースとのデュオ作品。 

ベースが大きな音で縦横無尽に駆け回るのが印象的ですが、そのせいか、とても伸びやかでなめらかな質感の音楽になっています。
パーカーも比較的中庸な(彼にしては、ですが)演奏で、ベースとの交流を楽しんでいるかのような雰囲気があります。

個人的にはこれが一番気に入りました。


■ Steve Lacy & Evan Parker / Chirps  ( FMP CD 29 )

尊敬するスティーヴ・レイシーとのデュオ録音で、1985年ベルリンでの録音。 右チャンネルがレイシー、左チャンネルがパーカー、と
親切に書かれています。 ソプラノ2本だけの録音なので、まあ、必要な情報です。 FMPっていつも素っ気ないパッケージで、そんなのは
音楽には関係ないでしょ、という冷たいイメージですが、実は意外に親切なんだ・・・・・

パーカーは自我を抑え、レイシーに寄り添うかのような演奏に終始しています。 だからフリー特有のうるさい咆哮などは全くなく、まるで
2羽の鳥がさえずりながらクルクルと絡み合って大空を行ったり来たりしながら飛んでいるような音楽になっています。

スティーヴ・レイシーはもちろんソプラノ・フリーの草分けですが、メインストリームとの距離の取り方が他のフリー奏者とは少し違った人で、
聴く者を置き去りにするようなことはなく、常にこちらを見ているような親密さがどこかあるように思います。 この音盤にもそういう
ところがあって、一般的なフリーのイメージにはまったく当てはまらないこの人独自の音楽になっていて、パーカーはそれにうまく歩調を
合わせて微笑ましいのどかな雰囲気に満ちています。 


普段はあまり出会わないエヴァン・パーカーなのでいい機会と思いまとめて聴いてみましたが、色々感じるところもあり、いい猟盤でした。
他にもいくつか買っていますが、また次の機会に。




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パッケージの大切さ

2015年02月22日 | Jazz LP (Savoy)

Kenny Burrell, Pepper Adams / Jazz Men Detroit  ( Savoy MG-12083 )


何とも言いようのないジャケットセンスのせいで、名盤としてはマニアはともかく一般的には認知されてこなかったし、これからもされることは
なさそうなレコードですが、1956年春の演奏として考えた場合にここまで洗練されたハードバップになっているのは驚異的なことです。
ポール・チェンバースは当然まだマイルスのバンドにいたし、トミー・フラナガンはサキソフォン・コロッサス録音の直前。 アメリカでは既に
ハードバップが完成していて、革新的な音楽家ではない普通の演奏家たちがこういうレコードを量産できるくらいに当たり前に演奏していた、
ある意味で幸せな時期の一コマを切り取ったかのようなとてもいい内容です。

ドラムがケニー・クラークだったおかげでリズムセクションが趣味の良さを保てたこと、やかましいトランペットがいないこと、ペッパー・アダムス
が控えめに全体を誘導するかのような演奏に終始していることなどが幸いして、非常に調和がとれて高い質感の演奏を聴くことができます。

サヴォイは保守的なレーベルで革新的なことは嫌ったし、ミュージシャンに無理強いもしなかったので、このアルバムのメンバー達のような
保守主流系の受け皿としては最適でした。 だから、時代を変えるようなアルバムは1枚もない代わりに、愛好家の心にじんわりと響くような
作品には事欠かないし、パーカーの遺産もあって一流レーベルの地位を維持できたのはよかった。 

これ以降、アメリカのジャズはシーン全体を大きく動かすような人たちとジャズそのものを下支えする保守系の人たちとに分かれていきますが、
後者の人たちが残したアルバムの原風景とも言えるような音楽をこのレコードから聴くことができるように思います。

ただ、ジャケットがなあ・・・・



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今週の成果

2015年02月21日 | Jazz CD
強烈に仕事が忙しかったにもかかわらず、憂さ晴らしも兼ねて、今週もしっかりつまみました。





■ Ray Drummond, Billy Higgins, Hank Jones / The Essence  ( dmp CD-480 )

例によって、激レア盤の復刻だそうです。 なんだかよくわかりませんけど。
とにかく大好きなハンク・ジョーンズなので、当然買います。

先日の "The Oracle" は鋭い感性と緊張感をもって作られた作品でしたが、こちらは"三人の賢者の会話"という風情の静かに落ち着いた、
とても深みのある作品に仕上がっています。 録音も品の良い残響を活かした素晴らしいサウンドです。

ハンク・ジョーンズの鍵盤の上に指を置いていくようなタッチが素晴らしく、どの曲も筆舌に尽くしがたいレイドバックしたリズム感で
ゆったりと進んでいきます。 若いピアノトリオには絶対に真似できないこの懐の深さには陶酔を覚えます。 "Whisper Not" の原曲を
大事にした扱いは過去の管楽器の名演たちを上回るし、タイトルの "The Essence" は哀しみを帯びたドラモンド作の名曲です。

おそらく、ハンク・ジョーンズの作品では筆頭の1つではないでしょうか。 傑作です。



■ Art Ensemble Of Chicago / Nice Guys  ( ECM 1126 827 876-2 )

最後に聴いたのはもう10年近く前になるかもしれないなあ、と思いながら手にとりました。 本当に久し振りに聴きます。

一応、フリーという扱いになっていますが実際はそういう音楽ではなくて、中身は純度の高いブラック・ミュージック。 
黒人音楽が聴けないと、このグループの音楽を受け入れることはきっとできない。

ECMがレーベルのコンセプトには合わないこのグループの作品をなぜ作ったのかはよくわかりませんが、そのおかげで体臭のきつさは抜けて
不純物のない透き通った結晶のような音楽になっています。 レゲエのリズムや張り詰めた緊張感あるアンサンブルが自由に交差する中にも
どうしても染み出てしまうブラックミュージックの匂い。 大好きな作品です。 また、少しずつ買い直していこうと思います。




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成熟した豊かさ

2015年02月15日 | Jazz LP (Verve)

Stan Getz / And The Oscar Peterson Trio  ( Verve MG V-8251 )


スタン・ゲッツの愛聴盤の中でも、特に好きな1枚です。 オスカー・ピーターソン、レイ・ブラウン、ハーブ・エリスのトリオをバックに
流れるようなゲッツのアドリブともメロディーともつかないようなフレーズが延々と紡ぎ出されるワンホーンの傑作。

ドラムレスでハーブ・エリスのリズムギターがその代役をしていますが、このおかげでバックのサウンドがうるさくならず、とてもいいです。
ピーターソンも音数を少なくして余裕たっぷりの伴奏をしており、一流の大人のリズムセクションを形成しています。

このレーベルでは初期の "Plays" が人気ですが、テナーのプレイはこの盤あたりのほうが遥かに成熟しており、長めの演奏時間のおかげで
ゲッツのテナーの魅力が爆発、コルトレーンも憧れた素晴らしいフレーズがしっかりと聴けます。 
プレイだけではなく高い音楽性を常に望んだ人なので、大編成のオケをバックにつけたり、サントラをやったり、といろんなことに手を出して
どれも素晴らしいとは思いますが、こういうシンプルな構成でやられるとジャズ好きとしては完全に参ってしまいます。

"I'm Glad There Is You" の落ち着いた佇まいが素晴らしい。 インストではなかなかうまく魅力が伝わらないこの曲をここまで魅力的に吹いた
例は他にないんじゃないでしょうか。

この人が吹くと、スタンダードがまったく別の魅力ある楽曲に化けるようなところがあって、そういう重層的な音楽をいとも簡単に創り出す
ところに我々は惹かれるのだと思います。 ただ演奏が闊達なだけではここまで人気が出ることはなかっただろうし、大成もしなかった。
優れた音楽家だったということです。

録音もバックの音を抑えてテナーの生々しい音を前面に押し出したマスタリングになっており、音楽の快楽を倍増させています。
とてもいいレコードです。



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若き日の Sarah Vaughan その2

2015年02月08日 | Jazz LP (Vocal)

Sarah Vaughan / Sings with John Kirby and his orchestra  ( Riverside RLP 2511 )


これは、1946年にジョン・カービーのスモール・コンボのSP録音に若きサラ・ヴォーンが招かれて数曲歌ったセッションを1955年に10インチLPとして
切り直されたもので、22歳の時の彼女のみずみずしい歌声がきける愛すべきレコード。 収録された8曲のうち、4曲で歌っています。

オペラ歌手の唱法を取り入れた独自のヴォイシングが早くも聴ける、素晴らしい出来です。 たった4曲だけで、しかもどの曲も短いですが、
それでも1度聴いたら忘れられない印象が残ります。 彼女のお気に入りの "It Might As Well Be Spring" もちゃんと聴くことができます。

更に嬉しいことに、残りの4曲で聴けるジョン・カービーのコンボの演奏が上品で洗練されたオールド・ジャズで、これが素晴らしい演奏です。
ラッセル・プロコープ、バスター・ベイリー、ハンク・ジョーンズという顔ぶれが嬉しい。 これを聴けば、カービーのレコードを買いに
レコード屋へ思わず走り出したくなります。

サラ・ヴォーンの若い頃の歌声が聴けるLPは限られていますが、そのどれもが珠玉の内容です。 LP化されていないSPもたくさんあるので、
そういうのもそのうちに少しずつ聴いていきたいと思っています。 レコードを聴くというのは、本当に果てしない所業です。



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今週の成果

2015年02月07日 | Jazz CD
平日のお昼ごろにDUの新宿ジャズ館に行くと、廃盤CDがやたらとたくさん置いておりました。 よく考えたら先週末に廃盤セールをやっていたことを
思い出しました。 すっかり忘れていたので、なんだか得をした気分です。

並んでいるのは知らない音盤ばかり、大量に産み出されて流通するCDはまるで川の流れの如くあっという間に目の前を通り過ぎて廃盤になって行きます。
普通の人はその流れの早さにはついて行けず、だから廃盤セールには事欠かないわけです。 いくつか面白そうなものはあったのですが、
今回のセールは値段設定が平均的に高く、手が出せませんでした。 マイナー廃盤のヒット率は低いので、値段が高いとやっぱり躊躇します。

量が多くてどれも内容がわからないのでじっくりと見ていったのですが、見終わるのに40分以上かかってしまいました。 その中で興味と値段が
折り合ったこの2枚を買いました。 どちらも2,000円強です。





■ Tony Oxley Quintet / The Baptised Traveller  ( Columbia 494438 2 )

1999年にSBMリマスターとして発売されたものですが、長らく廃盤になっています。 英国フリーの初期の傑作として誉れ高いものです。

トニー・オックスレーは元々は有名なロニー・スコット・クラブのハウスドラマーだった人ですが、フリージャズ・ムーヴメントにいち早く賛同し、
60年代終わり頃から積極的にアルバムを発表しています。 大手コロンビアがこの手のアルバムを出すのは珍しいことです。

エヴァン・パーカー、ケニー・ホイーラー、デレク・ベイリーという豪華メンバーで1969年に録音されており期待は高まりますが、内容は意外にも
おとなしめです。 ちゃんと最初にテーマ部があって、テナーとトランペットがユニゾンで奏でます。 デレク・ベイリーも割とギターっぽく
弾いており、ドイツのフリーとは趣きが違います。 この辺はお国柄だなあ、と思います。 エヴァン・パーカーもかなり抑制された吹き方で
正直物足りない感じです。 メジャーレーベルだからちょっと遠慮したのかなあ、と思ったりします。

それに、リマスターにも関わらず、音があまりよくありません。 コロンビアには時々こういうまずい録音のものがあって、困ります。 
年代の早い遅いに関係なく見られ、録音機材の問題なのか、スタジオの問題なのか、エンジニアの問題なのか、いずれにせよ困ったものです。


■ Hank Jones, Dave Holland, Billy Higgins / The Oracle  ( Emercy 846 376-2 )

ハンク・ジョーンズは大好きなピアニスト。 デイヴ・ホランドの名曲 "The Oracle" をやっているので、これは買わずにはいられません。

このトリオの演奏は本当に素晴らしいものでした。 すべてが調和していてバランスがよく、地味目の選曲が功を奏して非常に高級な
ピアノトリオになっています。 その質感の高さは圧倒的です。 

ハンク・ジョーンズは、なぜ50年代のハードバップ期にアルバムが作られなかったのでしょうか。 わずかにサヴォイやクレフにアルバムが
数枚あるだけです。 ピアノトリオが得意だったプレスティッジやリヴァーサイドが彼のアルバムを創らなかったのかが不思議です。
まあ、彼のピアノは保守的なので、そういうところがワインストックヤキープニュースには気に入らなかったのかもしれません。

でも、キャノンボールのサムシン・エルスはこの人がピアノを弾いたから世紀の傑作になったわけだし、ピアニストに人一倍こだわるマイルスが
1回限りのレコーディングセッションだとはいえ参加を認めたわけですから、その個性は折り紙付きです。

その遅れを取り戻すかのように晩年はアルバムが乱発されましたが、時すでに遅し、という感じで残念なことです。
この素晴らしいアルバムを聴いたら、ピアノトリオは嫌いなんて戯言は言ってられないなあと思います。
私が知らなかっただけで、このアルバムは通には有名な作品だということも後で調べてわかりました。 出会えてよかったです。



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孤高のテナー

2015年02月01日 | Jazz LP (Prestige)

Coleman Hawkins / Plays Make Someone Happy from Do Re Mi  ( Moodsville MV 31 )


1904年に生まれて1969年に亡くなったコールマン・ホーキンスが一番活躍したのは1930~40年代だったので、残された録音の大半がSPです。
LP期にも録音はありますが、プレスティッジやインパルスのような若手が中心のレーベルと契約したため、本人のカラーとレーベルの雰囲気が
イマイチしっくりと馴染まず、出来上がったレコードは居心地の悪さが目立ちます。 本当はノーマン・グランツが彼のレコードをつくればよかった
んでしょうが、プレスティッジとの契約が邪魔をして手が出せなかったのでしょう。 

アルバム作りが上手いレーベルにいたお蔭でレスターは晩年に統一されたカラーを持ったレコードを固め打ちしており、これが今でも一定の人気を
得ている要因になっていますが、ホークは複数のアルバムコンセプトの下でレコードが残されたので散漫な印象が強く、どうも人気がパッとしない。

そんな中で、唯一この人の魅力をうまく捉えていると思えるのが一連のMoodsvilleへの録音です。 トミー・フラナガンのトリオをバックにワンホーンで
ゆったりと吹いていく様子が素晴らしい。 このレーベルのコンセプトはバラードではなくミディアムスローテンポを主軸にすることですが、品の良い
ピアノトリオの心地いいテンポに乗って吹いていく上手さはさすがで、他の奏者ではこうはいかなかったでしょう。 また、インストものでは
普通は取り上げないような楽曲をメインに演るので、どの曲も新鮮味があります。

テナーの音の魅力ということにかけてはこの人の右に出る人はいません。 結局、誰もこんな音で吹くことはできなかった訳で、そういう意味では
神々しいくらいに孤高の存在ですが、そういうところが少し近寄り難いのかもしれません。 

でも私にとってはこの人は別格の存在で、他のアーティストのように手垢にまみれていない現在の状態くらいでちょうどいいと思っています。
事あるごとにこのレコードを取り出しては、"Climb Every Mountain" の美メロに酔います。 RVGの深くエコーの効いた音場も素晴らしいです。



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