廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

好感度の高いピアノトリオ

2019年09月16日 | Jazz LP (Mode)

Joanne Grauer / Joanne Grauer Trio  ( 米 Mode MOD-LP-113 )


アルバム1枚残して消えた人だから・・・と情報を求めて調べてみると、意外にも色んな記事に出くわして驚いた。 いわゆるジャズ・アルバムはこの1枚
だけのようだが、その後幅広く活動していてジャンルにとらわれない作品も少し残していたりしているようで、この後の足跡がわかってしまう。
美人は得だ。 放っておいても誰かがフォローしてくれる。

大方の女性のピアニストがそうであるように、彼女もピアノの基礎がしっかりとした弾き方をしているのがよくわかる。 このアルバム録音時はまだ
10代だったそうだが、演奏が安定しているのが凄いところだ。 フレーズに迷いがないし、ジャズの雰囲気を上手く出していてそんな若い歳だとは
とても思えない。 もちろん、この人だけの何かを感じるところまでいっているとは思わないけれど、これだけ弾ければまずは立派だと思う。

非常に清潔感漂う音楽で、それがいいか悪いかはともかく、聴いていくうちに好感度がどんどん上がっていく。 ウェストコースト臭さはなく、
いい意味で中庸的だし、何より新鮮な感じがあってそこがいい。 収録された曲が平凡なので、もっといろんな楽曲を弾いてもらいたかったし、
違うレーベルの音でも聴いてみたかった。

1枚の作品でそのアーティストを知るのは難しいが、彼女の場合はこのアルバムの出来がいいので愛好家にはいい印象が残っているのではないかと思う。
MODEレーベルのレコードは特定のものを除けばどれも安いし流通量も多いので、このアルバムも変なプレミアが付かずにすんでよかった。
ピアノトリオを気軽に愉しむのにはうってつけのいいレコードだと思う。


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食わず嫌いは直さなければ

2019年04月30日 | Jazz LP (Mode)

Marty Paich / Marty Paich Trio  ( 米 Mode MOD LP 105 )


最近のヘビロテNo.1はこの安レコ。 マーティー・ペイチをピアニストという目線でまともに聴いたのは最近のことで、これが驚いてしまった。
食わず嫌いは直さなければいけないと自戒しているつもりだけど、どうやら聴き逃しているものはまだたくさんありそうだ。

MODEレーベルのレコードは大量に流通していてエサ箱の常連だから、値段は高くない。 それでも触手が伸びないのは私がウェスト・コースト・ジャズが
嫌いだからに他ならない。 聴かないレコードは買ってもしかたがない。 それに加えて、彼の書いたホーン・アンサンブルのアレンジが嫌いだから
というのもある。 この人が書くスコアは教科書的凡庸さでまったく面白くない。 息子の方が遥かに才能があると思う。 そういう先入観が邪魔して
これまで手に取ることなくきたが、値段の安さに負けて試聴してみると、イメージとは違うピアノが鳴りだして驚くことになった。

意外に重たい音で、口数も少ないところが気に入った。 このレーベルのサウンドはカラカラに乾いた軽いものが多い印象があるけれど、このピアノは
音が濡れている。 雨上がりの後、アスファルトに溜まった水溜まりに映る街の風景を見ているような気分になる。 レッド・ミッチェルのベースも
メル・ルイスのドラムも重い。 しっとりとしたサウンドで、演奏も非常に落ち着いている。 こんなに素晴らしい演奏だとは思わなかった。

よく知られているように、このレーベルのレコードは程度の差はあるにしても基本的にカゼをひいている。 だから現物を試聴しなければ買えない。
このレコードも疵はないのに所々で薄くチリチリいう。 こだわるならカゼをひいていないものを気長に探せばいいのだろうけど、私はこれ以上は
深追いしないでおこうと思う。 このレコードに関してはそういう話に終始するよりは、内容の素晴らしさを語るべきだと思うからだ。


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