駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

はるかなる『ポーの一族』によせて――

2017年05月24日 | 日記
 2018年1~3月、宝塚大劇場・東京宝塚劇場の花組公演にて、宝塚歌劇団が『ポーの一族』を上演…!!!

 私は、どこで知ったのかは覚えていませんが、イケコがずっとやりたがっていて、萩尾先生にも申し出ていて先生もそれを了承していて、だから先生がよそからの企画を断り続けているらしい…というようなことは知っていたので、そういう意味では驚きませんでしたが、イケコはともかく(オイ)モー様が何しろお若くてコンスタントに新作をバリバリ描いてて現役感ハンパないので、そういう意味でなんとなく実現はまだまだ先になるんじゃないかと漠然と考えていたので、やっぱり驚きました。でも今やるなら確かにみりおだよね。てかイケコってホントみりおが好きなんだね…
 私はなーこたんがやった『アメリカン・パイ』も生で観ていてうっかり泣いたりもしたのですが、でも当時はまだなかった言葉だけれどなんとも言いようのない「コレジャナイ」感も味わったものでした。私はモー様の『この娘うります!』や『フラワー・フェスティバル』みたいな、わりと単純なラブ・ストーリーも大好きなんだけれど、モー様はその真髄としては意外と宝塚歌劇とは軸足を置く位置というか求めるものというかが違うんじゃないのかな、という懸念もあります。あと、スタジオライフ『11人いる!』を観たときにも舞台としての良さを私は今ひとつ感じられなかった記憶があるので、そういうもろもろもあって、『ポー』の舞台化は実現しないまま夢物語で終わってしまえばいい…と思っていた、というところはあるかもしれません。
 が、決まってしまったからには仕方がない。応援しますし、期待しますし、もちろん観にいきますよ初日から。三年連続ムラ年越しですよ笑っちゃいますねー、人生楽しいなー!(ヤケクソ)

 で、まず、では私がいつどのようにしてモー様作品に出会ったのか、ちょっと遡ってみることにしました。
 引っ越ししたりなんだりのたびにコミックスを処分して減らし、でもまた豪華版や文庫版を買いなおしてしまう…といったことは多くの方に経験があることだと思いますが、私は最初に読んだときの『ポーの一族』のコミックスを未だに持っています。小学館の少女漫画のコミックス、いわゆるフラワーコミックスは、『ポーの一族』第1巻がFCナンバー1です。ここからレーベルが創刊されたのです。1974年、昭和49年のことです。
 ただし私が持っている第1巻は1981年の第25刷のものです。そして2巻と3巻は初版を持っています。つまり私はこの2冊を偶然町の古本屋さんで買って読み、前後の巻は見つけられなかったので新刊書店で購入して揃えたのでした。小学校6年生のときでした。『トーマの心臓』はすべて初版で持っていて、これは『ポー』ののちに古本屋で揃えたんだったと記憶しています。
 弟と共に週刊少年漫画誌4誌を読み、自分のお小遣いでは「りぼん」を買っていた子供でしたが、このころから買う雑誌は「LaLa」(1976年創刊)に移っていったように記憶しています。そして徐々に、花とゆめコミックスと、主に「別冊少女コミック」(今は「ベツコミ」)系のフラワーコミックスを買い揃えるコミックス派になっていったんじゃないかなと思います。成田美名子や清水玲子、渡辺多恵子や吉田秋生です。
 雑誌の「プチフラワー」を買うことはまったくなかったので、モー様でリアタイしているのはずっと大人になってから、『残酷な神が支配する』あたりからだと思います。でもたとえば、赤い背表紙の萩尾望都作品集(第1期)や七色グラデの作品集(第2期)は愛蔵していて、『マージナル』もプチコミックスで持っていますし、一連のバレエもののコミックスもちゃんと買っていました。ずっと読み続けてはいたんですね。
 『ポー』に関して言えば(これは『トーマ』でも同じですか)、萩尾望都Perfect Selectionが出たときの衝撃は忘れがたいですね。これは連載当時のカラー扉などもそのまま収録した豪華版だったのですが、これで読むと「連載としての切れ目はここだったのか!」と全然テンポが違って感じられましたし、カラー扉の裏の1ページが、ストーリーとは直接関係がないアバンみたいな、ポエジーなネームだけのページだったりすると、今までは省いてしまって収録しないですませてきたということがわかった、とかの新たな発見がありすぎたのでした。
 さらに去年、復刻版が出たので、特典ポスカ付きの限定BOXを買いましたが、謎の誤植を見つけたりもしましたね…(^^;)あと、ポスカのうちの1枚が『11月のギムナジウム』の扉絵だったのは本当に謎です。これは『トーマ』に紐づく作品で『ポー』とは関係ないのですから。この2作は初期の二大傑作と言っていい作品だと思いますが(モー様は今でも精力的に作品を発表し続けているし他にも傑作はたくさんあるので、萩尾望都といえばこの2作、としていつまでも語られることには違和感しかありません。他を読んでないことを白状してるだけですやん)、そこで描いていることはけっこう違っていて、どっちが好きかとかどっちがどうとかという議論は根深いものがあってマゼルナキケンだと私は思っているのですよ…
 ともあれ私は『ポー』に出会い、そこからたくさんのことを学びたくさん影響されて育ちました。個人的に『ランプトンは語る』のラストの年表が大好きだったんですよね、ホントおたくですよね…
 40年ぶりの新作『春の夢』も、当初は世間の騒ぎに比して内容がアレレ…とか思っていましたが、連載になってからはさすがにおもしろく、単なる過去の名作の焼き直しなどに落ちていないところは安心しました。『王妃マルゴ』の新巻も楽しみにしています。
 リアル世代としては私より10か15歳くらい上の人がドンピシャなのかもしれません。お若い方の中には、名前は知っているけれど実は読んだことがなくて…とか、実は全然存在を知らなくて…とか言う方も多いでしょうね。それは別に恥ずかしいことではありません。でもこれを機会に、読んでみていただけたら嬉しいな。新書版コミックスでたったの5巻、文庫版で3巻ですからね。電子版も配信されています。
 そしてゼヒ感想を聞かせていただきたい、感想を語り合いたいです。簡単に言うと、14歳のときの姿のまま吸血鬼として生き続けている少年、エドガーを主人公にした、一連の連作短編シリーズです。
 ただ、今どきの、「Sho-Comi」や「別マ」で連載されている学園もののような、コミックス1冊が下手したら15分で読めてしまうような構造の漫画ではありません。古いというのとは違うけれど、もっと複雑で多重的なコードで描かれている物語…とでも言うのかな。
 発表順、収録順のどちらで読んでも物語の中の時間が行ったり来たりしてわかりづらく感じられるかもしれないし、でももちろんそれがいいというところも多分にあります。一番大きいのはモノローグで、今なら書体を変えるところが普通の台詞と同じアンチになっていますよね。フキダシに入れられない、宙に浮いた、あるいはシッポが小さないくつかの丸でつなげられるタイプのフキダシに入れられた、ナールで打たれた文字はモノローグであり、ストーリーの主人公にしか基本的には許されていない…のが最近の漫画の基本的なルールのひとつでしょう。視点人物が揺らぐのはあまり良くないとされているのです。でも『ポー』ではいろいろななキャラクターのモノローグが入り乱れることが多く、またどのキャラクターのものともつかないある種のポエムのようなネームが宙に漂っていることも多く、それがまた作品全体のムードを統率していたりするのです。そういった味わいは、今でも通じるものと私は信じているけれど…なんせ私は暗誦できるくらいに魂に刻み込まれてしまっているので、もはや私には正確な判断がつけられません。これから初めて読むという方々にも楽しんでいただけることを祈るのみです。

 さてしかし、実際に宝塚歌劇でやるとなると、どうするんだろうねえ…一本ものだけれど、一幕と二幕で違うエピソードをやって、みりおエドガー以外はみんな二役、とかたとえばどうかしらん?
 一幕が『メリーベルと銀のばら』なら、みりおエドガー、ゆきちゃんメリーベル、キキがオズワルドでカレーちゃんがユーシス。二幕は『エディス』で、みりおエドガー、ゆきちゃんエディス、キキはロジャーでカレーちゃんアラン、みたいな。
 あるいはオリジナルのエピソードでやるにせよなんにせよ(だが『るろ剣』のオリジナルエピソードっぷりは下の下だったと私は思っているのですが…)、主人公のエドガーが14歳の姿のまま生き続けている吸血鬼である、という点は外してもらいたくないのですが…
 心配なのは、別にみりおは14歳を演じられるだろうし舞台のいろんな魔法もあって14歳に見えるだろうと私は信じているのだけれど、イケコや劇団がそう判断するかどうか、ってことですよね。あと、なのでエドガーはあくまで少年であって男性未満であって、通常の意味での恋愛はしないキャラクターなんだけれど、宝塚歌劇はどうしても色恋を描こうとしてしまうものなので、そこがどう合致するのかな?という点ですよ。恋愛は他のキャラクターにさせればよくて、たとえば同じ14歳の吸血鬼でもアランは恋愛するタイプなんだけれど、とにかくエドガーは違うので、彼を主役にするなら主役がする恋愛は描くなよなってことです(彼がヒロインから惚れられてしまう、とかはかまわないけれど)。そのあたり、どうなんだろう…
 22歳、とか26歳、とか中途半端に年齢設定を上げてきたりすることもありえるのかなー…でもそれはエドガーではないし『ポー』ではないんだけどなー…それはただの別の吸血鬼ものですよ…だって彼はリデルに言ったんですよ? 「ぼくたちは……大きくならない」って。そこは押さえてくれるよねイケコ?
 でもとにかく心配なので、おそらく現時点では何も決まっていないんだろうし(オイ)、とりあえず早速イケコにお手紙を書いてみた私だったのでした…頼みます、本当に…

 とりあえず『All for One』が楽しみです!!!(ヤケクソ)
 あ、その前に話題の(笑)『ギャツビー』も拝見します、暴れたらすみません!!!








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