経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の教え

大増収の消費税と冷える景気

2016年01月10日 | 経済
 日経平均は、戦後初の年初来5日連続下げとなった。別に日本だけのことではなく、米国が利上げに踏み切ったのだから、世界的に株安が進むのは、むしろ、自然である。問題は、アベノミクスの看板が円安株高であるにもかかわらず、そうした世界的潮流を無視し、更なる緊縮財政へと邁進していることである。日本の経済運営は極めて単調だ。

 緊縮の実情は、1/5に公表された11月税収に如実に表れている。消費税収は、大きく上ブレし、予算額を1.4兆円程度上回る勢いである。税収が揚がっているのだから、十分な経済対策を用意し、財政を中立に持って行く財源がないわけではない。それにもかかわらず、ゼロ成長状態に喘ぐ中、経済に還流されることなく、夏の決算まで伏せられたままとなる。

………
 年末の軽減税率の与党折衝では、不可解な一幕があった。1兆円規模で収まりそうだったのに、財政当局が、突然、外食を含む1.3兆円に拡大すべきと言い出したのである。できるだけ減収を抑えたいはずなのに、逆の主張をするとは、どういうことか。これは、消費税収が1.4兆円も上ブレする実態を知って、ようやく納得できる行動だろう。

 予定以上に税収が揚がることは、決算までに明らかとなる。そうなれば、政治は、軽減税率の財源に充てようとするだろう。既存の歳出を削減したり、別途の増税をなすより、ずっと容易だからだ。財政当局は、それを止められないと見越して、先取りをしていたわけである。新聞や野党は、財源をどうするのかと批判しているが、時が経てば、おのずと解決される。

 そもそも、2015年度予算の消費税収は、異様に低く設定されている。2014年度の決算額は16.0兆円であり、8%増税の平年度化分1.7兆円が加わる予定だったから、2015年度は17.7兆円はないとおかしい。ところが、当初予算は17.1兆円である。上ブレによって、少なくとも6000億円程度の財源が出ることは、容易に予想できる。

 軽減税率の議論では、加工食品まで広げて1兆円規模にするのに、更に6000億円の財源が必要とされたが、2015年度の消費税収の設定を分かっていれば、何の心配もいらなかった。官邸が強気で調整に当たった背景には、こうした事情があろう。もし、補正予算の段階で、財政当局が6000億円の上方修正をしていれば、大立ち回りにならずに済んだはずだ。むろん、その時点では、生鮮食品の4000億円規模に抑えるつもりだったから、隠しておくしかなかったのである。

………
 消費税収は重要なので、ややテクニカルだが、本コラムが消費税収をどう予想しているかを詳述しておく。方法は至ってシンプルなものだ。11月までは実績を使い、12月以降は、前年度実績を名目成長率の2.7%で膨らましたものを足し合わせただけである。これによる予想値は18.5兆円であり、予算額を1.4兆円上回る。実績は前年度を37%も上回っているのに、先行きの伸びを成長率にしてあるのだから、堅い予想と言えよう。

 とは言え、直近11月の前年同月比が41%増なのに、12月以降が2.7%に失速するというのは、逆に不自然かもしれない。そこで、国の分の消費税率が4%から6.3%へ1.6倍になっていることを踏まえ、12月〜4月の税収が前々年から6割増になると仮定して計算すると、予想値は19.5兆円になり、2.4兆円もの上ブレとなる。これは予想しうる最大値であろう。

 ただし、昨年5月の税収は、前年同月比137%増と異常に高い値を示しており、この中には特殊要因が含まれている可能性がある。そのため、5月は前々年の6割増にとどまり、高かった前年5月よりも大幅に減ると仮定すると、予想値は18.1兆円に縮み、1.0兆円の上ブレになる。これを最小値としておく。

………
 消費税は1%当たりの額も重要であり、堅い予想の場合は2.9兆円になる。財政当局が見込んでいた2.7兆円より2000億円も多い。今回の5%の消費増税においては、税と社会保障の一体改革がうたわれ、使い途が定まっていた。つまり、予定外の税収は、使い途の決まっていない財源が現れたことを意味し、この1兆円を何に使うかとなる。

 むろん、軽減税率の財源にするのであれば、予定していた社会保障の総合合算制度の導入を見送る必要もなくなる。そうして使い切っても、既存の5%分の上ブレもあり、これは財政再建に充てることができる。もし、軽減税率の財源で騒動になっていなければ、世の中に知られることもなく、すべて財政再建に入れられていたであろう。

 ところで、消費の低迷にもかかわらず、消費税収が上ブレするのはなぜだろう。いくつか考えられるが、本当のところは徴税の部外者にはうかがいしれない。例えば、転嫁がしっかりなされた、みなし仕入れ率が引き上げられた、外国客の消費増があった、還付を受ける輸出が減った、住宅投資や設備投資に係る税収が伸びたなどである。いずれにせよ、景気に大きく左右される所得税や法人税とは違い、恒久的財源と位置づけられよう。

………
 せっかくだから、税収全体も眺めよう。下表の税収予想は、前年度の決算額を名目成長率で伸ばし、税制改正要因を加減したものだ。その上で、11月までの実績を踏まえ、成長率を超える分を上乗せしてある。ただし、法人税だけは、5月にまとまって納税されるものであり、実績を使うのが必ずしも適当でないため、証券各社の増益予想とパラレルに伸びると仮定して計算している。(法人税は補正予算で上方修正されたが、実績は前年を下回る状況)

 その結果、2015年度は、1.9兆円上方修正された補正予算より、更に2.4兆円上ブレし、58.8兆円となった。2014年度の場合は、補正で1.7兆円、決算で更に2.2兆円の上ブレだったから、常識的な線ではないだろうか。2015年度の予想をベースに、2016年度まで広げると、税収は61.2兆円となり、予算額より3.6兆円の上ブレとなる。

 過去の税収の最高は1990年度の60.1兆円であったから、26年もかかって、これを超える。ちなみに、その年の法人税収は19.0兆円であり、予想の13.1兆円とは比ぶべくもない。経常利益は過去最高を更新しているのに、バブル期の1990年度はともかく、リーマン前の2006年度の14.9兆円と比較しても見劣りする。言うまでもなく、管政権、安倍政権と税率を下げてきたためである。

(表) 



………
 税収は絶好調だが、吸い上げられる民間の景気は冷えつつある。11月の毎月勤労統計は、季節調整値で、常用雇用が前月比0.0であった。10月は+0.2と持ち直したかに見えたが、やはり、8月以来の+0.1ペースに鈍っているようだ。また、9,10月と伸びが止まっていた現金給与総額はマイナスに落ち、定期給与も0.0である。総実労働時間は+0.7でも、前月のマイナスが大きく、水準は8,9月より低い。

 11月の景気動向指数も公表され、これを半年くらいのスパンで眺めると、先行指数は夏場から低下局面にあり、一致指数も揺れつつ下がり気味で、遅行指数は緩やかに下降している。現下の評価は「足踏み」とされるが、景気は少しずつ弱まっている。とても、更なる緊縮財政に挑むような局面ではない。

 世間は、前年度より小さい補正予算なのに、景気対策をした気になっている。今回の国債償還額は前回より少なく、表面上は緊縮に見えないが、順当に消費税収の上方修正をしていたら、明からさまになっていただろう。軽減税率の財源にされぬよう隠したことが、実態を見誤らせている。こうして、いつものごとく理由も分からぬまま、日本経済は沈んで行くのである。


(今日の日経)
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-01-10 12:31:26
消費税は多くの場合前年納付額の1/12を毎月前払いして、最後5月に確定額との差を精算するので、3%増税影響のほとんどが昨年5月に効いてます。

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