経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

大事なことは説明しない人達

2013年08月02日 | 経済(主なもの)
 今日の日経には、「消費増税を実施し、名目3%成長でも、2020年度までに基礎的財政収支(PB)の目標の黒字化はできない」ということが書いてある。一般の人は「やっぱり消費増税は必要だ」という印象を持つと思うが、大事なのは、ほとんど説明のない「15年度のPB半減の目標は達成できる」の部分である。だって、7年も先の経済の予測なんて、どうなるか分らないでしょう。

 筆者は、15年度の目標は「過剰」に達成できると予想している。つまり、今の調子で成長していけば、消費税を5%もアップしなくても、目標は達成できるということだ。これは、別に独自の試算をしたわけではなく、昨年8月の内閣府の「経済財政の中長期試算」に書かれていることである。当時は、アベノミクス前だったから、注目されていなかっただけだ。 

 「試算」の成長シナリオ、そうは言っても、今年度1.7%、2014年度1.4%、2015年度1.7%という控えめな実質成長率の数字なのだが、その場合、GDP比で0.6%、3.1兆円の過剰達成になるとしていた。今年度は2.8%成長くらいにはなるから、過剰達成はもっと拡大するだろう。「試算」がなされた昨年の8月頃は、消費増税5%でやっと達成できる「慎重」シナリオの低成長の方が現実的だったけれど、アベノミクスで状況は変化したのである。

 PB半減を達成するには、平成15年度までに税収を53.7兆円にする必要がある。2012年度の決算の税収は43.9兆円まで来ているので、あと9.8兆円である。つまり、消費税は4%上げるだけで十分だ。しかも、3年間に自然増収があれば、その分だけ消費税を上げなくても済む。今年度は、企業収益が急増しているから、2.5兆円は堅いだろう。厳しめに3年間で5兆円としても、消費税は2%アップで良い計算になる。

 筆者は、消費増税の計画について、来年度に1%アップ、その1年半後に2%、更に1年半後に2%ではどうかと考える。これなら、今の計画より消費税10%への到達に1年半遅れるだけだ。むろん、それでも、15年度PB半減は十分に達成できる。来年度、物価上昇率2%は無理だが、その1年半後なら可能性がある。これなら、日銀の物価目標とも整合的になる。物価が2%上がる圧力があって初めて、2%の消費増税は可能だろう。

 「消費増税の計画を緩めると危険だ」と言う人がいるが、緩めても十分に15年度PB半減の目標が達成できるのに、なぜ危険になるのかね。7年先の20年度の目標は、経済の動向を見ながら調整していけば良い。成長していればこそ、次の消費税12%への展望も開けてくる。むしろ、一気の消費税アップで成長を叩き落してしまったら、目標達成どころではなくなる。1年半後の増税第2弾すら不可能になろう。

 どうして、そんな危険を犯す必要があろうか。一気の消費税アップに固執するのは、デフレ下の超低金利が心地よい債券ディーラーとか、財政再建より消費税率引上げが大事な財政当局のお役人くらいのものだろう。日本人よ、現実を見よ。それは、説明されることだけがすべてではないことを知るところから始まる。

(今日の日経)
 電気代、地域差広がる。電力値上げで負担増2兆円超す。公明、消費増税修正に慎重。成長戦略に首相特別枠。財政再建、成長頼み限界、2020年度黒字化できず。レアルが4年ぶり安値圏。米経済は秋に正念場。自社家電の鉄を再利用。経済教室・安易な改革に危険も・猪木武徳。

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