経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

ドイツでの消費増税の教訓

2012年06月28日 | 経済(主なもの)
 昨日は忙しかったので、一言コメントにとどめたが、「ドイツは消費税を上げても平気だった」という日経の記事は余りに安易なので、改めて書くことにする。おそらく、これは日興さんの出した「消費増税でゼロ成長に墜落する」というレポートとバランスを取りために、財政当局の御説明ペーパーを引いたものと思われる。

 このペーパーの元ネタは、昨年5/30の「社会保障改革に関する集中検討会議」の資料、「消費税増税のマクロ経済に与える影響について」という報告書である。この報告書は、お役所が御都合に合わせ、まげて書くにも程があるといったシロモノだった。そのことは、出された当時に書いた本コラムの6/2「財政当局の騙しと狂信」6/11「消費税を上げるということ」あたりを参考にしてもらいたい。

 さて、ドイツの場合だが、2007年1月に3%の消費増税を行っても景気に大きな影響がなかったことにはいくつか理由がある。まず2006年の成長率は3.89%と非常に高かったことである。また、物価上昇率は1.79%もあった。日本が消費増税を予定する2014年度の予想はまだだが、各機関の2013年度の予想からすれば、成長率は1%台半ば、物価上昇率はゼロ%台前半が常識的な線であろう。これからすれば、消費増税は、ドイツの半分以下にしなければ危ういという結論にしかならない。

 しかも、ドイツには、こうした好条件があったにも関わらず、やはり消費は低迷し、2007年の成長の足を引っ張ってしまったのである。それでも、2007年に、前年を若干下回る3.39%の成長を果たせたのは、成長の大半を純輸出が稼いでくれたからで、これに伴う設備投資増も大きかった。つまり、外需の追い風があったのであり、それがなければ、ドイツ経済も墜落していたかもしれない。

 思い出していただきたいのは、2006年から2007年にかけては、世界経済が好調だったということである。ドイツにしてみれば、貿易依存度が高いのだから、内需を捨て外需を利用して、財政再建を行い、増税と同時に社会保険料を下げて投資と雇用を促進することは理に適っていた。そんな戦略性も理解せず、「ドイツも大丈夫だったから」などと考えるのは、「鵜のマネをするカラス」となろう。それも、世界経済の減速が心配される今においてである。日本の財政当局は、これほどまでに無能なのである。

 日経の編集委員は、デスクが上げてきた、お役所の資料に基づく記事を安易に通してはダメである。お役所の資料だからこそ、ウラ取りを質さねばならない。特に最近の財政当局の資料は、焦りのせいか、危ういものが多くて、チェックが欠かせない。ドイツの経済統計のデータが頭に入っていなくても、「2006年頃は景気が良かったはず」と気がつけるはずだ。消費増税賛成の社論とは別に、真実を伝えるという新聞人としての果たすべき役割があろう。

※駆け込み需要と反動の問題や更なる増税と成長率の関係も書こうと思ったが、今日も忙しくてね、またにするよ。

(今日の日経)
 再エネ建設費6000億円。東電の株主総会で国有化を承認。米独の日本化・株の利回り長期金利を上回る。震災予算8000億円繰り越し、その他1.2兆円使い残し、税収上ブレ8000億円と合わせ国債2兆円減額。イオンがメーカー品を値下げ。超小型EV3000台をセブンに。経済教室・ユーロ危機・高木信二。

※使い残しの大半は国債費だろう。2兆円も減額できるのだったら、年金の交付国債なんて必要なかった。そういう仕掛けにしていたということ。※超小型EVを普及させたかったら、駐車規制で優遇することだ。

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1 コメント

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Unknown (経済学初心者)
2012-06-29 06:29:26
税率を上げる際に消費者の懸念を払拭するために「ドイツのような事例もある」としてあげるならともかく、実際には「消費税を導入すれば需要が落ちる」という声が出てからそこから目をそらすために言い出してますからね。こういったことを鑑みても、財務省の「はじめに消費税ありき」という姿勢の杜撰さが分かりますね。
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