経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

「もっと痛みを」は選挙での風物詩

2016年06月26日 | 経済
 参院選告示後の日経社説(6/23)は、「ツケ回しせず経済再生の道筋示せ」と題して、痛みから逃げずに改革をと訴えている。まあ、毎度のことであり、もはや、選挙での風物詩となっているが、今回は、3年前と比べると、消費増税もあって、財政収支は大幅に改善している。これは、2年間、成長ができなかった痛みを代償に得たものである。一体、いつまで痛みを求められるのだろうか。

………
 6/17に日銀から2015年度の資金循環が発表され、一般政府の資金過不足は、前年度比で7.2兆円改善した。2014年度の7.5兆円に続く、大幅なものである。すなわち、国、地方に社会保障(公的年金等)を合算した政府部門全体の財政収支が、名目GDP比で1.5%も良くなったということである。これだけ資金を吸い上げれば、年度内の成長がゼロになるのも当然だろう。もし、財政が中立だったら、どれだけ成長していたかと思う。日本の潜在成長率は、人為的に抑制しなければ、かなり高いと考えられる。

 資金過不足を四半期で見ると、この3年の回復ぶりが分かる。注目すべきは、国(中央政府)の改善ぶりもさることながら、公的年金等の改善ぶりも目立つことだ。2015年度には、地方とともに黒字となるところまで来たから、社会保障の破綻を心配する向きは、ひと安心するのではないか。それと同時に、景気回復期は、期せずして成長のブレーキにもなるということだ。日本以外では当たり前だが、社会保障を含めた需要管理が欠かせないゆえんである。

 財政再建に関しては、この3年間に大きく進展し、2012年度に名目GDP比で-8.6%もあったものが、2015年度は-3.5%へと5%も改善した。むしろ、2014,15年度の実質成長率が-0.9%,0.8%と、2年通しで、まったく成長できなかったことを踏まえれば、急速過ぎたと、むしろ、反省すべきところである。「緊縮財政はするほど良い」と絶対視し、十年一日、痛みを求め続けるのは、事態の推移を見ていない証拠であろう。

(図)



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 経済論壇では、「財政再建を早く進めなければ、将来世代の負担になる」という物言いがなされるが、早く進め過ぎて成長を失速させれば、若年雇用を直撃し、多くの若者の就職や結婚という平凡な幸せを奪うことになる。不況で年金や貯蓄は減らないから、困るのは働くしかない若者だ。反対に、高成長で物価が上がる方が、年金や貯蓄を目減りさせるから、余程、若者や持たざる者の利益になる。

 英国は、政権が意図せぬ国民投票の結果で、EUを離脱することになった。様々な分析がなされているが、反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮が背景にあるとされる。主義にかかわらず、成長を実現し、大衆の生活を豊かにすることなしに、民主主義での勝利は在り得ない。日本には、苦難に直面したときに矛先が向かう移民問題はないにせよ、時に応じて、「敵」を探すようになっている。「恒産なくして恒心なし」を思い起こさねばなるまい。


(今週の日経)
 英離脱後に包括協定。英がEU離脱を選択、市場が内外で大荒れ。自民が単独過半数に迫る・参院選序盤情勢。パート賃上げが正社員超え、流通・外食で今年2.20%、人手不足映す。 リスク資産に最大6兆円・ゆうちょ銀、運用難で。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-06-26 11:23:32
名目GDP比の債務比率もピークアウトしてますね。メディアがこれらの事実を全く報道せず(というより認知してないのでしょうが)、更なる緊縮を煽ってるのですから頭抱えてしまいます。2014年度の消費増税も景気回復を目指す上では失敗だったと批判する大手メディアも遂に登場することはありませんでした。メディアがこのザマだと、我が国は持続的な成長路線に回帰するのは難しいのかもしれないと思っています。憂鬱です。
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