7/17に政府の月例経済報告があって、6か月ぶりの基調判断の上方修正となった。古傷をえぐるようで悪いが、1998年度の経済見通しを思い出したよ。消費増税から9か月たち、民需が総崩れになる中で、翌年の実質成長率の見通しは1.9%。結局、1年後には-2.2%へと改めざるを得ないはめとなった。
基調判断は、消費総合指数が5月にバウンドしたことを根拠にしているようだが、筆者には「急落では死んだ猫さえ弾む」ようにしか見えない。各種指標がいかに深刻かは、三菱UFJの片岡剛士さんの7/17「L字型を示唆する消費税増税後の回復過程」をご覧いたたければと思う。今日のタイトルは、ここからいただいた。
………
その消費総合指数だが、これは家計調査などの需要側の統計に、販売統計など供給側の統計を総合して作られる。5月は販売側が良好だったので、前月に続き低下した家計調査よりもマシな結果となっている。家計調査は、二人以上の世帯であり、多少のゆとりがあるせいか、駆け込みと反動が強く出ているようだ。そのあたりは、家計消費状況調査の動きからもうかがえる。
したがって、家計調査には、まだ戻す余地があると考えられるのだが、政府が頼る消費総合指数はどうか。5月の消費総合指数の106.4というのは、駆け込み前の2月の108.9と比べて2.5ポイント低い。実は、家計調査の実質実収入の2月と5月の差-2.7とほぼ同じなのである。つまり、消費総合指数は、既に、増税による実質的な収入の低下を差し引いたくらいのレベルには達しており、戻す余地は少ないということである。
6月の消費については、今月末の家計調査などの発表を待たねばならないが、消費総合指数は横ばい程度になる可能性が高い。内閣府の「消費税率引上げ後の消費動向等について」を見ても、5月より6月が良くなったという感じはなく、7月は更に悪い。そこで、6月が横ばいと仮定すると、4-6月期の平均は、前期より-5.2も少ない105.9にとどまる。
(図)
………
消費総合指数は、GDPの家計消費と同様の算出方式とされ、これを予想するのによく用いられる。これが-5.2となると、消費はGDPの概ね6割なので、GDPを3%も引き下げてしまう。年率にすれば-12%だ。その一方、在庫増や輸入減がGDPを押し上げることは確実だが、消費の落ち込みはあまりに大きく、年率2ケタのマイナス成長への転落さえなくはない。そんな恐るべき状況である。
片岡さんは「7月ESPフォーキャスト調査の予測値総平均4.9%減を超える実質GDP成長率の落ち込みが生じる可能性が高まっている」としているが、それは、こうした状況にあるからだろう。万一、本当にそうなると、「想定外」は誰の目にも明らかで、景気に対する見方が一変することが考えられる。それは1997年にも起こったことである。
おっと、先走りが過ぎたようだ。取り越し苦労をしても仕方がない。半月ばかり静かに答を待つとしよう。今回の片岡さんの論考は、先行きを考える上で大いに役立ったが、最も興味深かったのは、雇用者報酬の動きである。1997年5月は、前年比が名目で3%、実質でも1%あったのに対し、今年5月は、実質が-1.9である。これだけのギャップを埋めるのは絶望的にさえ思える。
今週の日経ビジネスは、今更ながら「消費回復、ベア効果は期待はずれ」としているが、実質賃金がプラスになるためには、円安に伴う物価上昇で1%、消費増税で2%の計3%が必要だったのであり、今年の賃上げで、それが実現できない高さであることは、消費増税を決めた頃から分かり切っていた。マイナス成長を避けるには、増税幅の圧縮しか道はなかったのである。
(昨日の日経)
人民元決済が世界で拡大。設備投資の減税1.4兆円申請。米・有望企業に先端研究。百貨店売上高4.6%減、7月上旬も6%減で推移。バイト時給前年比0.8%高、時給上昇に天井感。
(今日の日経)
待機児童1年で1割減、17年度ゼロは遠く。理論も導く「日中冷和」。
※訂正(7/22) 旧-5.7→新-5.2
基調判断は、消費総合指数が5月にバウンドしたことを根拠にしているようだが、筆者には「急落では死んだ猫さえ弾む」ようにしか見えない。各種指標がいかに深刻かは、三菱UFJの片岡剛士さんの7/17「L字型を示唆する消費税増税後の回復過程」をご覧いたたければと思う。今日のタイトルは、ここからいただいた。
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その消費総合指数だが、これは家計調査などの需要側の統計に、販売統計など供給側の統計を総合して作られる。5月は販売側が良好だったので、前月に続き低下した家計調査よりもマシな結果となっている。家計調査は、二人以上の世帯であり、多少のゆとりがあるせいか、駆け込みと反動が強く出ているようだ。そのあたりは、家計消費状況調査の動きからもうかがえる。
したがって、家計調査には、まだ戻す余地があると考えられるのだが、政府が頼る消費総合指数はどうか。5月の消費総合指数の106.4というのは、駆け込み前の2月の108.9と比べて2.5ポイント低い。実は、家計調査の実質実収入の2月と5月の差-2.7とほぼ同じなのである。つまり、消費総合指数は、既に、増税による実質的な収入の低下を差し引いたくらいのレベルには達しており、戻す余地は少ないということである。
6月の消費については、今月末の家計調査などの発表を待たねばならないが、消費総合指数は横ばい程度になる可能性が高い。内閣府の「消費税率引上げ後の消費動向等について」を見ても、5月より6月が良くなったという感じはなく、7月は更に悪い。そこで、6月が横ばいと仮定すると、4-6月期の平均は、前期より-5.2も少ない105.9にとどまる。
(図)
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消費総合指数は、GDPの家計消費と同様の算出方式とされ、これを予想するのによく用いられる。これが-5.2となると、消費はGDPの概ね6割なので、GDPを3%も引き下げてしまう。年率にすれば-12%だ。その一方、在庫増や輸入減がGDPを押し上げることは確実だが、消費の落ち込みはあまりに大きく、年率2ケタのマイナス成長への転落さえなくはない。そんな恐るべき状況である。
片岡さんは「7月ESPフォーキャスト調査の予測値総平均4.9%減を超える実質GDP成長率の落ち込みが生じる可能性が高まっている」としているが、それは、こうした状況にあるからだろう。万一、本当にそうなると、「想定外」は誰の目にも明らかで、景気に対する見方が一変することが考えられる。それは1997年にも起こったことである。
おっと、先走りが過ぎたようだ。取り越し苦労をしても仕方がない。半月ばかり静かに答を待つとしよう。今回の片岡さんの論考は、先行きを考える上で大いに役立ったが、最も興味深かったのは、雇用者報酬の動きである。1997年5月は、前年比が名目で3%、実質でも1%あったのに対し、今年5月は、実質が-1.9である。これだけのギャップを埋めるのは絶望的にさえ思える。
今週の日経ビジネスは、今更ながら「消費回復、ベア効果は期待はずれ」としているが、実質賃金がプラスになるためには、円安に伴う物価上昇で1%、消費増税で2%の計3%が必要だったのであり、今年の賃上げで、それが実現できない高さであることは、消費増税を決めた頃から分かり切っていた。マイナス成長を避けるには、増税幅の圧縮しか道はなかったのである。
(昨日の日経)
人民元決済が世界で拡大。設備投資の減税1.4兆円申請。米・有望企業に先端研究。百貨店売上高4.6%減、7月上旬も6%減で推移。バイト時給前年比0.8%高、時給上昇に天井感。
(今日の日経)
待機児童1年で1割減、17年度ゼロは遠く。理論も導く「日中冷和」。
※訂正(7/22) 旧-5.7→新-5.2
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