経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

起死回生の日本と経済社会の未来

2012年01月01日 | 経済
 2012年の日本経済は、どうなるのか。「復興需要もあって、成長回復が期待されるが、欧州危機が懸念材料」なんていうのが、一般的な見方だろう。そのくらいの話では、つまらないし、新春だから、明るく行こう。しからば、今年の日本経済は、予想外の高成長を遂げる可能性があると宣言しておこう。題して「起死回生の日本」である。

………
 この10年の日本経済は、稚拙な財政運営に足を引っ張られどうしだった。輸出を契機に経済が伸びようとすると、緊縮財政で芽を摘まれることの繰り返しである。ところが、今年は、久々の拡張財政になる。これまで、経済ショックに対応して財政出動がなされたこともあったが、今回は、マイナス要因がない中での実施だ。

 これは、偶然によるものである。本来なら、震災のあった2011年に実施すべきものが、財政当局が復興増税を仕掛けたために大幅に遅れ、経済ショックが一段落した後に執行することになった。また、1月の通常国会冒頭で処理される2.5兆円規模の四次補正も、経済成長にプラスに働くだろう。これも、思わぬ金利低迷と、法人減税が実施できずじまいに終わった巡り合わせによる。

 筆者は、今年は3%成長があり得ると思っている。その理由は、消費が意外に伸びるかもしれないからだ。各調査機関の経済見通しは、消費を堅めに見積もっている。例えば、ニッセイは、消費を0.4%増とし、GDPを1.8%成長とするが、もし、消費が2010年度並みに1.6%増となると、3%成長に手が届くようになる。

 震災に見舞われる前の2010年度の消費は、7-9月期が前期比で0.4%増、10-12月期も0.4%であり、そのまま順調に推移すれば、年間1.6%増の勢いであった。3%成長というのは、それに復帰するということなのだ。また、家計調査で足下を見ると、震災の底の2011年3月から10月まで、3か月平均で、1.4ポイントも指数が伸びている。直近の11月の大きな落ち込みは気がかりだが、消費回復の勢いは強い。

 こう言っては何だが、経済見通しというのは、景気回復期には低めに外れ、景気後退期には高めに外れがちである。これは、予測能力うんぬんではなく、経済というのは、好循環や悪循環が働くものだからである。その点で言えば、政府の経済見通しは、消費を厚くし、成長率を2.2%長と高めにしているのは、センスが良いように思う。

………
 今年、日本が3%成長を遂げると、どうなるか。筆者のイメージは、1987年の再現である。円高不況は前年11月まで続いていたが、2月の史上最低の公定歩合への引き下げ、5月の大型の経済対策が相まって、急速な景気回復を見せた。しかも、この景気回復は、輸出が振るわない中で、内需で達成したものである。10月には「ブラックマンデー」という海外金融市場の動揺もあったが、まったく影響を受けなかった。

 何が言いたいか、分かるよね。昨年の日本は、75円台まで進んだ円高に打ちのめされたが、春には大型の補正予算の執行が始まる。日本は内需の国であり、それを大事にしさえすれば、欧州危機がどうあろうと、景気回復は期待できる。むしろ、内需で景気回復の気配が出始めると、不況下ですら企業の利益水準は高いのだから、株価が大きく上昇し、これが更なる好循環へと結びつく。

 いったん、日本経済にエンジンがかかると、2013年は、より高い成長が見込める。物価上昇も始まり、名目成長率は5%に達するのではないか。現時点では、想像もしないような展開であろう。そして、翌2014年4月には、消費税3%アップが待ち受けているのだが、これを跳ね飛ばすようなパフォーマンスを見せているかもしれない。

 1987年の正月には、2年後に大増税ができるなんて誰も思わなかった。しかし、1989年の消費税導入は、むしろ、バブル景気の下での消費を冷やして、物価の安定に貢献する結果になった。ただし、当時は、好況下でも、「増減税同額」にするという慎重さがあった。その後、1997年のハシモトデフレでは、前年の3%超(当時)の成長率に悪乗りし、大規模な緊縮財政で日本を奈落に放り込んでいるし、来る2014年では、2%成長の経済条件すら拒否しているのだから、財政当局の緊縮志向は過激化の一途である。 

 ところが、今年、来年と3%成長が続くと、税収の自然増は相当なものになる。今年度の42兆円から、2007年度並みの51兆円へ、9兆円増の回復も考えられる。そうなると、早くも、2014年度の時点で、プライマリーバランスの達成が見通せるようになる。そうすると、一体、何のために、一気の消費税3%アップをするのか、わけが分からないよという状況になる。むろん、それなら、福祉でも、教育でも、環境でも、国際交流でも、希望を広げれば良い。財政のために生きるにあらずだ。 

………
 いかがかな。日本経済にだって、奇跡も希望もあるんだよ。それに魔法は不要である。ごく平凡な経済運営を行い、無闇な増税や緊縮をしたり、法人減税で財政に大穴を開けたりしなければ良いだけなのだ。大震災は、今日から去年のことになった。昨日までの悲劇は、明日の奇跡のための準備にしなければならない。これが、元旦にあたり、若い人達に用意した、筆者のメッセージである。

(1/2の「経済社会の未来」へ続く)

(今日の日経)
 開かれる知、つながる力、C世代駆ける。社会の課題、次々挑戦。社説・資本主義を進化させるために。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12/31の日経 | トップ | 起死回生の日本と経済社会の未来 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
期待 (KitaAlps)
2012-01-01 13:47:53
 あけましておめでとうございます。
 単にいくつかのトレンドを『総合的に』組み合わせた世間一般の経済見通しと違って、財政政策の有効性重視というシンプルな立場から見た経済見通しですね。私には説得力のある見通しに見えます(これは、おなじ財政有効という視点を共有させていただいているからとも言えますが)・・・そもそものメカニズムとして財政政策の有効性が低いなら、比較的明確に外れてしまいますが。
 ・・・こうなってほしいと思います(就職できない若者(実は身近にもいますので)、失業中の国民、東北の復興、非正規雇用者等々と日本の未来のために)。・・・もちろん、個人的な主張もありますが、それは外れていれば取り下げれば済むことです。
返信する
追伸 (kItaAlps)
2012-01-01 14:00:34
 書き忘れましたが、望むらくは、財務当局が、税収増をそのまま国債発行額の圧縮に使い切ってしまわないことでしょうか。
返信する

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事