アベノミクスがゼロ成長状態に陥ったと、このコラムで診断したのが昨年のG.W.だったから、1年が経ったわけである。この間、無策どころか、更なる緊縮財政を進め、2015年度を通じて、まったく成長することができなかった。経済状態を素直に読み、適切に対応していたら、別の結果になっていただろう。
現実には、年明けからの円高株安に驚いて、初めて経済状態の悪さに気づき、慌てて景気対策を言い出す有様である。この国は、株価で経済の舵取りをしているのか? 異次元緩和Ⅱをしたために、株価はアテにできなくなっているのに、これにみずから騙されるなんて、レベルの低さに、情けなくなってくる。
………
連休前に3月の経済指標が一斉に発表され、家計調査は、二人以上世帯の消費支出(除く住居等)が季節調整値で前期比+0.1となった。やれやれ、これで1-3月期GDPの消費は、うるう年効果もあって、プラスを確保できるのではないか。家計調査では、11月を底に、緩慢ながら最悪の状態から脱しつつある。3月は、勤労者世帯の実質実収入が高めで、消費性向に余地ができたことは、良い兆しだ。
1-3月期のGDPは、外需の寄与も期待できるため、設備投資がマイナスであっても、持ちこたえられそうだ。在庫水準が高く、その減少が足を引っ張る可能性もあったが、3月の鉱工業出荷は戻りが弱く、逆に在庫増となった。商業動態からすると、流通在庫は減少したようだが、その他の在庫を含め、トータルの寄与度は-0.1くらいではないか。いずれにせよ、二期連続のマイナス成長を免れたにしても、ゼロ成長状態の範囲内ではある。
多少でも回復している背景には、労働力調査で見られるように、就業者数の増加が続いていることがある。ただし、3月が低めだったのは、気になるところだ。とりわけ、男性が弱く、ここが伸びないと、景気の実感が湧いてこない。女性には消費増税の影響がほとんど見られないのに対し、男性は、消費増税後に下降して、そこから戻り切っておらず、増税時の水準超えを前に足踏みしている。
他方、今年に入って、輸出が堅調であるのに加え、設備投資に関しては、機械受注が非製造業(除く船電)で上向いている。製造業は、鉄鋼業の大型発注で撹乱があったので、底入れとするには、もう少し様子を見る必要があろう。また、住宅着工戸数は、2,3月が高水準となり、秋頃からの低下を切りかえした。このように、消費と雇用がこのまま崩れなければ、次へつながる希望も見られるのである。
(図)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/06/73b7eb9899c2b7ab1785f7ce2795fcb2.jpg)
………
この「アベノミクス・」シリーズを月イチで始めたのは、消費増税の直後だったから、もう2年になる。世間とは異なる見方を書きながら、概ね正確に状況を見通してきたと思う。その狙いは、同時代に在っても、現状を把握して有効な手を打つ可能性があったことを示すことにある。裏返せば、「こうなるのは誰にも予想できなかったのだから、情けない結果も受け入れるしかない」という言い訳を阻もうとするものだ。
アベノミクスは、野放図な金融緩和による円安狙いと、無定見な緊縮財政が特徴であり、構造改革は法人減税くらいのもので、困れば、補正予算での一時的バラマキに走る。日本の復活に必要なのは、需要の安定化による設備投資リスクの除去であり、なすべき構造改革は、非正規の能力を解放するための社会保険の適用拡大である。むろん、今の思潮で、これが受け入れられると思うほど、筆者も若くはない。
人々の考え方が変わるには長い時間を必要とし、現実より遅れるときに悲劇は起こる。この2年が経つうち、正直に言って、気力も体力も、衰えは隠せなくなった。若い頃は、あまり感じなかったが、疲れていると良いものは書けないし、クリエイティブさが失せて、繰言を言っているような気もする。まあ、そう自覚できているうちが花かもしれないな。
(今日の日経)
街の電力を水素で発電。
現実には、年明けからの円高株安に驚いて、初めて経済状態の悪さに気づき、慌てて景気対策を言い出す有様である。この国は、株価で経済の舵取りをしているのか? 異次元緩和Ⅱをしたために、株価はアテにできなくなっているのに、これにみずから騙されるなんて、レベルの低さに、情けなくなってくる。
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連休前に3月の経済指標が一斉に発表され、家計調査は、二人以上世帯の消費支出(除く住居等)が季節調整値で前期比+0.1となった。やれやれ、これで1-3月期GDPの消費は、うるう年効果もあって、プラスを確保できるのではないか。家計調査では、11月を底に、緩慢ながら最悪の状態から脱しつつある。3月は、勤労者世帯の実質実収入が高めで、消費性向に余地ができたことは、良い兆しだ。
1-3月期のGDPは、外需の寄与も期待できるため、設備投資がマイナスであっても、持ちこたえられそうだ。在庫水準が高く、その減少が足を引っ張る可能性もあったが、3月の鉱工業出荷は戻りが弱く、逆に在庫増となった。商業動態からすると、流通在庫は減少したようだが、その他の在庫を含め、トータルの寄与度は-0.1くらいではないか。いずれにせよ、二期連続のマイナス成長を免れたにしても、ゼロ成長状態の範囲内ではある。
多少でも回復している背景には、労働力調査で見られるように、就業者数の増加が続いていることがある。ただし、3月が低めだったのは、気になるところだ。とりわけ、男性が弱く、ここが伸びないと、景気の実感が湧いてこない。女性には消費増税の影響がほとんど見られないのに対し、男性は、消費増税後に下降して、そこから戻り切っておらず、増税時の水準超えを前に足踏みしている。
他方、今年に入って、輸出が堅調であるのに加え、設備投資に関しては、機械受注が非製造業(除く船電)で上向いている。製造業は、鉄鋼業の大型発注で撹乱があったので、底入れとするには、もう少し様子を見る必要があろう。また、住宅着工戸数は、2,3月が高水準となり、秋頃からの低下を切りかえした。このように、消費と雇用がこのまま崩れなければ、次へつながる希望も見られるのである。
(図)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/06/73b7eb9899c2b7ab1785f7ce2795fcb2.jpg)
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この「アベノミクス・」シリーズを月イチで始めたのは、消費増税の直後だったから、もう2年になる。世間とは異なる見方を書きながら、概ね正確に状況を見通してきたと思う。その狙いは、同時代に在っても、現状を把握して有効な手を打つ可能性があったことを示すことにある。裏返せば、「こうなるのは誰にも予想できなかったのだから、情けない結果も受け入れるしかない」という言い訳を阻もうとするものだ。
アベノミクスは、野放図な金融緩和による円安狙いと、無定見な緊縮財政が特徴であり、構造改革は法人減税くらいのもので、困れば、補正予算での一時的バラマキに走る。日本の復活に必要なのは、需要の安定化による設備投資リスクの除去であり、なすべき構造改革は、非正規の能力を解放するための社会保険の適用拡大である。むろん、今の思潮で、これが受け入れられると思うほど、筆者も若くはない。
人々の考え方が変わるには長い時間を必要とし、現実より遅れるときに悲劇は起こる。この2年が経つうち、正直に言って、気力も体力も、衰えは隠せなくなった。若い頃は、あまり感じなかったが、疲れていると良いものは書けないし、クリエイティブさが失せて、繰言を言っているような気もする。まあ、そう自覚できているうちが花かもしれないな。
(今日の日経)
街の電力を水素で発電。