経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

デフレ円高と企業経営

2011年10月22日 | 経済
 今日の日経一面トップは、「円最高値75円78銭」である。日本が週末に入ってからであり、瞬間最高値というところだろう。既に、今朝の時点で76円台に戻っている。それでも、輸出企業は、ここまでの円高で、かなりの打撃を被っており、気が気ではなかろう。しかし、これは自業自得なのだから、甘んじて受けなければならない。

 日本の経済界は、財政再建が大好きである。賛成と引き換えに、財政当局から法人減税の飴玉をもらえるからだ。8/21に詳しく書いたように、緊縮財政をすれば、デフレになり、デフレになれば、円高になる。そうなると飴玉どころの話ではないのだが、経済界は、こうしたマクロ経済のメカニズムに無知なので、「とにかく円高を何とかしてくれ」と叫ぶだけなのである。

 財政当局にとっては、円高によって経済界が財政再建の陣営から離反し、内需拡大を求めるようになることが怖い。それゆえ、円高対策には積極的で、経済界の悲鳴には敏感に反応する。むろん、対策とは言っても、需要を拡大する以外の、あまり効果のないものに限ってということになるが。

 昨日は、三次補正の閣議決定がなされると同時に、「円高への総合対応策」も決定された。普通なら、財政も拡大するし、円高対策も加わるわけだから、円安に振れてもおかしくないのだが、ここで円買いを仕掛けるあたり、投機筋も洒落たことをする。もっとも、ロイターなどが伝えるように、日銀は、10月の展望リポートで、2013年度の物価上昇率でも0%台半ばとするようであり、復興需要でデフレ脱出とは、誰も思っていない。

 三次補正は、額ばかりが大きいが、すぐに需要に結びつくような中身ではない。成立する頃には、被災地は冬である。公共事業関係の予算を積まれても、消化に3年はかかるのでないか。本コラムの9/17を見てもらえば分かるが、2012年度予算と連結すれば、復興需要どころか、財政デフレの様相すら呈しかねない。きちんと数字を把握している人にとって、日銀の見方は当然とも言えるものだ。

 経済界には、早く目を覚ましてもらいたい。わずかの法人減税の飴玉くらいでは、割に合わんのではないか。今日の日経では、パナソニックがテレビ事業を縮小することを報じているが、そもそもは、サムスンなどとの設備投資競争に敗れた反省から、逆襲を期しての思い切った大規模投資だった。いま流行の「選択と集中」である。

 ところが、急激な緊縮財政で内需を抜かれた上、十分な経過措置なしにエコポイントを打ち切られてしまう。駆け込み需要では、タマ不足で商機を逃し、反動減では、価格下落に苦しむ展開になった。その上、緊縮財政によるデフレで円高に見舞われては、出口がない。デフレ財政をする国での設備投資はリスクが高く、そんな経済運営とは無縁の中韓台の企業との競争に適うわけがない。経営ではなく、経済の問題なのである。

 こんな有様では、リスクを取って積極的に設備投資を国内でしようとする経営者は絶滅してしまう。政府の円高対策で、ドル資金を融通してもらえるというなら、国内でなく、海外で投資をしようということになるだろう。立地補助金や雇用助成金をもらったとしても、国内に需要が乏しく、海外市場を円高で塞がれるようでは、どうやって投資を回収するのか。これでは、日本の成長力は衰えていくばかりである。

(今日の日経)
 円最高値75円78銭。テレビ消耗戦に見えぬ勝者。太陽電池の生産見直し・円高背景。ミャンマーに新規ODA。社会保障改革、給付抑制の大物先送りへ。三次補正案12.1兆円。ヘッジファンド1.6兆円流出。欧米銀行に信用リスク・SDS高止まり。ギリシャ再建、緊縮では困難・アルゼンチン元経財相。TPP推進論が米で拡大。コンビニ節電へ地中熱。資源国通貨の下落一服。鉄鉱石、供給過剰で下落。

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