経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・回復も小休止

2017年03月05日 | 経済(主なもの)
 12月は、住宅投資が衰える中、公共事業が息切れを起こして急落し、これに輸出の低下が重なって、経済活動がつまづく事態となった。1月も、これを引きずるため、今一つの状況にとどまる。需要管理がまったくなっておらず、早めの補正予算をしていなければ、どうなっていたことか。幸い、世界経済の拡大で、輸出は上向いている。運に頼り、成り行き任せという経済運営が、この国の特徴と言えよう。

………
 全産業指数の建設・公共を見ると、7-9月期に119.7であったものが、10月116.7、11月110.8、12月108.3と、月を追って下落している。こんなに急では、とても民間工事で補い切れない。10-12月期の建設業活動指数は、前期比-2.5へと後退した。折悪しく、住宅投資が10月に峠を越え、輸出も、急伸の反動で、12月の低下が大きく、追加的需要は、下図のように崩れてしまった。

 デフレ下で緊縮をするとどうなるか。追加的需要が新たな所得を生み、所得次第で消費は動くので、ストレートに悪影響が及ぶ。12月の消費活動指数+は、それまでの好調さと打って変わり、前月比-1.0と大きく低下した。もし、12月が前月比横バイで済んでいれば、10-12月期は、消費で前期比+0.4を確保し、GDPの年率2%成長も望めたから、誠に惜しい結果であった。

 1月は、日銀・実質輸出が前月比-1.2と引き続き減退しており、鉱工業指数の建設財出荷も前月比-1.8になっている。追加的需要は、前月の傾向を引きずっていると考えられる。消費については、1月の商業動態の小売業が前月比+0.5になったため、消費活動指数も同じくらいの伸びは期待できるが、12月の低下が大き過ぎて、前期比では、-0.2程度のマイナス圏にとどまろう。  

 なお、1月の家計調査は、消費水準指数(除く住居等)が前月比+1.5と、かなり高かったが、前月までの水準が異様に低く、参考にならない。しかも、住居等を除かない値は、-0.9になるといった乱れぶりだ。また、勤労者世帯の消費性向は、昨夏の突然の下落から脱し切れておらず、低い状態にある。夏からの景気回復が及ばぬうちに、秋の生鮮高騰に攪乱されたようであり、サンプルの多い家計消費状況調査の結果を待ちたいところだ。

(図)


………
 今後、世界経済の拡大に連れて、輸出は緩やかに増加することが見込まれる。そこで、製造工業予測調査を見ると、春節明けの2月は+3.5と高いものの、3月は逆に-5.0と、秋の水準に逆戻りする形となっている。ただし、3月の原指数は、前年同月比+1.5、前々年比も+1.4である。高下は季節調整による可能性があり、これから変わり得るものと、心得ておいた方が良いだろう。

 他方、建設需要だが、公共事業は、補正予算の効果が出て、そろそろ下げ止まってほしいところである。住宅投資は、1月の着工増は五輪宿舎建設の特殊要因によるものらしく、今後は良くて現状維持であろう。期待されるのは、企業の建設需要で、昨夏から順調に伸びて来ており、これが補ってくれればと思う。今週、公表された10-12月期の法人企業統計では、製造業、非製造業ともに、設備投資が回復しており、景気の波及がうかがわれる。

 雇用については、男性の失業率が3.1%と最低水準の更新を果たしたものの、就業者数では前月比-1万人、雇用者数は-11万人と足踏みであった。むろん、女性は、着実に伸ばしてきている。新規求人倍率は、除くパートが前月比-0.07の1.83倍、パートが-0.04倍の2.76倍だった。高水準ではあるものの、1月は陰りが見られた。産業別に前年同月を確かめると、除くパートでは、製造業が多かった反面、建設業が少なく、パートでは、卸・小売業が減っている。

 物価は、消費者物価指数「生鮮除く総合」の前年同月比が約1年ぶりにプラスとなった。生鮮の高騰は収まりつつある一方、いよいよ円安と原油高の影響が現れ始め、物価上昇の主役が交代しようとしている。円安は、法人企業統計にみられるように、四半期の最高益をもたらし、年金基金に多大な利益を与えたが、消費の面からはうらめしい。税収を押し上げるので、需要管理は要注意だし、今程の円安は無用に思え、FRBの利上げを契機として、金融政策も見直すべき時期に来ている。

………
 計画どおりなら、4月から10%の消費増税か行われる予定だったのだから、成り行き任せの経済運営も、悪くはない結果にはなっている。2014年の消費増税から3年を経て、ようやく成長が戻ってきた。とは言え、家計消費(除く帰属家賃)は、増税前と比べ5兆円も少ないままにある。内需を大事にせず、金融緩和をして、円安・株高にすれば、景気は良くなるという単純な政策の失敗は明らかであろう。

 円安は、企業収益と税収を膨らませたが、雇用や所得を喚起しなかった。輸出はレートより世界経済次第ということが再確認され、無職世帯が増えた今では、物価高は国民生活にこたえると分かった。本当は、教訓に学びつつ、絶妙な需要管理や金融政策が求められるが、望むべくもない。度外れた緊縮に走らないだけましで、フラつきながら回復の道を歩んでいる。2月は、消費動向調査が横バイ、大手百貨店は堅調、自動車販売は良好だ。年度末の盛り上がりを期待して、今日は筆を置くとしよう。


(今日までの日経)
 値上げの春? 原材料高。世界株 時価最大に迫る。ヤマト、残業1割削減 便利さ追求、限界。「3月米利上げ」急浮上。GDP上方修正の公算 年率1.5%増。公的年金、運用益10兆円 トランプ相場追い風。 国保の赤字 慢性化 医療費膨らみ2843億円。輸出企業、円高に耐性 1ドル=100円でも。

※日経は今日から新紙面。横書きに題字が変わるのは、やはり寂しさもある。スタイル面は広告効果も含めグッドだ。地味な読書欄は土曜へ引っ越し。時代の流れかな。

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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-03-07 13:52:38
ヤマト、27年ぶりに値上げ。やっとデフレが終わる。人件費を切り詰めて価格を維持する暗い時代が終わり、給料を上げるために価格を改定する慣れ親しんだ時代が返ってくる。ヤマトには頑張ってもらい、デフレに終止符を打って欲しい。
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Unknown (きんぴー)
2017-03-07 16:22:56
月次GDP下方修正なのでもしかしたら…
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Unknown (きんぴー)
2017-03-08 17:59:34
GDP、変に下方修正にならなくてよかったです(*´◒`*)
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