いい加減にしろと言いたくなるほど、日米ともに政権側がスキャンダルまみれになっていて、重要審議はそっちのけ、両政権ともタブロイド紙か週刊誌並みの議論に明け暮れています。
フロリダでのゴルフは、二人にとってそれらから逃げ一瞬の平穏を得るよい口実になったことでしょう。
さて、本題である今後のアメリカ経済を見通すには、どうしてもある程度トランプ政権の行方をみておかないといけないと思い、今年11月の中間選挙までを私なりに見ることにします。
前FBI長官コミー氏がトランプの本質を暴露する本を出版する予定で、出版前にそれを読んだトランプと非難合戦をしています。ロイターを引用します。
「米連邦捜査局(FBI)前長官のジェームズ・コミー氏は15日放送されたABCニュースのインタビュー番組で、トランプ大統領について、危険かつ「道徳的に不適格」な指導者であり、組織や文化の規範を「大きく損なっている」と指摘した。
コミー氏はインタビューで「女性を軽視する言動をし、重要度にかかわらずあらゆることにうそをつき続ける人間は、道徳的見地から米国の大統領にふさわしくない」と語った。
トランプ大統領は15日、ツイッターでコミー氏を批判。「不正直なジェームズ・コミーは史上最低のFBI長官として名を残すだろう」と罵った。」
やくざ者トランプの手口は世界中で発揮されています。暴力を背景に脅すのがやくざの典型的やり口とすれば、トランプはまさにやくざです。アメリカの武力を背景に貿易問題で圧力をかけるやり口は、韓国との貿易交渉で発揮され、韓国はそれに屈しています。「お前たちを守ってやらない」というのは暴力による圧力そのもので、「暗い道では注意しろよ」というやくざの脅し文句と同じです。日本も同じやくざの手口で脅されているとみて差し支えないでしょう。
ではいったい今後このトランプ大統領がどうなっていくのか、当たるも八卦で予想してみます。私の予想は「中間選挙で共和党が下院で過半数を割り込み、議会からの支持を得られない大統領はレームダックになるものの、弾劾まではされない。しかし次の大統領選挙では負ける」というものです。
何故中間選挙で負けると言えるのでしょうか。
根拠1.絶対的トランプ地盤と言われていたペンシルバニアの補欠選挙で共和党候補が敗北した。その前にはルイジアナでも敗北している
根拠2.下院議長であるポール・ライアンの行動に代表される共和党議員のリタイアがあいついでいる
根拠3.アメリカと世界経済の変調
以前から申し上げているようにポール・ライアンは48歳という若さですでに下院の議長という重責を担い、次期大統領候補の呼び声もあるのですが、リタイアを宣言してしまいました。理由は「家族との時間を大事にしたい」ですが、48歳です。そんなわけないでしょう。
彼は大統領選挙中トランプを何度も非難し特に人種差別や女性蔑視の発言の度に非難し続けました。選挙直前のロッカールーム発言でもトランプを正面から非難。しかしトランプ当選後は共和党の重鎮としてウソツキでモラルのカケラもないトランプを支持せざるを得ず、また議長としての役割を放棄もできず、きっと悶々としていたにちがいありません。自分の良心に鑑みて、反トランプを表立って言えない立場に嫌気が指し、リタイアという形で良心に殉じた、というのが私の見方です。
他の不出馬議員達も多かれ少なかれ良心のかけらもないトランプに嫌気がさしているし、共和党たる本質論から際立ってはずれるトランプ政策に反対しているのでしょう。共和党たる本質論とは「小さな政府による財政規律と規制緩和」です。トランプは軍事費増大とインフラへの財政支出増大により大きな政府を目指し、世界中を相手に貿易戦争をしかけ規制で国内産業を保護しようとしています。特に国内産業保護策のつもりの貿易戦争は相手国の報復措置や輸入物価上昇により国内産業を痛めつけ始め、100近い業界団体から保護主義反対のキャンペーンの嵐に見舞われています。保護主義で支持を得るどころか、実際には支持票を失っている可能性の方が大きいのです。
実はこうした反トランプの共和党議員はポール・ライアンだけではなく、不出馬ドミノが起きつつあるというのがアメリカの選挙アナリストの見方です。これが中間選挙で共和党が負ける可能性があると見る私の見方です。
では中間選挙で共和党が負けると、経済にはどのような影響があるのでしょうか。
その前に前々回の記事では世界経済にスローダウンの兆しがあるとして、2点を指摘しました。
1. 中国経済の変調
2. 貿易戦争
今回はそれに以下の2点を加えます。
3. ヨーロッパ経済の変調
欧州全体のPMI低下(昨年末の60台が3月には56台に)、3月の新車販売台数が前年比マイナス5.2%に大きく下落
4. 原油など資源価格の上昇と金利上昇
原油価格ですが、NYのWTIは68ドル、北海ブレントにいたっては74ドルにもなっていて、金利の上昇とともにコストアップ要因になります。金利上昇は好調すぎるほど好調な住宅建設などに徐々に冷や水をかけ始めていますし、法人減税で伸びるとみられていた設備投資も、貿易戦争を見据えて萎縮しつつあります。
世界経済はここまでしばし適温が続くゴルディロックス経済といわれてきましたが、どうやら変調の兆しが世界各地でみられるようになってきています。景況感も相場と同じで、どこかで曲がり始めると修復は容易ではありません。IMFあたりはずいぶん楽観的に来年の世界経済を見ていますが、楽観一色になったときこそ要注意です。すでに株式相場は各国ともそうしたことを読み始め、一方通行での上昇とはいかなくなっています。
つづく