Bは馬鹿のBではない。似ているが。
演奏会に出かける楽しみというものは、たとえそれが毎日であろうが、コンディションを整え、前夜からのイメージ・トレーニングを積み、精神集中を徐々に高め、頂点になったところで演奏に臨む。頭が張り、肩が凝るがこれは大事なことなのである。作曲者そして表現者の精神の中を垣間見るためにはこのような準備が大事なのである。
それで、おもむろに自席に座り、開始の時を待つ。演奏が始まる。
そして全てを壊す人間界の3大Bが巣くっていることをあらためて知るのである。
棒を振る客。
貧乏ゆすりをする客。
ブラボー客。
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この3点セットで全てが壊れる。ときとしてこの3点セットを一人の人間がおこなうといった離れ業もあるようだ。
・棒を振る客。指揮者がいるのに棒を振るしぐさをおもむろにはじめ、目障りこの上ない。棒を振る専門家がいるのに何故この期におよんで棒振りを始めるの?
ピクピクしてやめる気配がない。几帳面なおじさんに多い。会社で指図できない分ここで棒を振ってるのか。退場してほしい。
隣に座ると最悪。あまりの棒にそっと手の甲に向けて押さえつけるようなしぐさをしてあげると、そのときはやめる。しかし、音楽にリズムが戻ってくるとまたピクつく。そういえば、アダージョでは棒はふらない。テンポによるのかもしれない。早い話、音楽のことがわかっていないようだ。本当にたちが悪い。
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・貧乏ゆすりをする客。せっかちで落着きの無い都会人らしさがよく出ているが、これも退場してほしい。この病気は注意しても止まない、というよりも、注意すると自分で自分の足を押さえたりしているから、自覚症状があるようだ。でも止まらないというのはやっぱり病気なんだろう。最近はあまり見かけない。このような人間たちはコンサート・ホールに来ちゃダメなんだ。
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ブラボー客。買われたブラボー屋、フライングブラボー専門家、など感動とは対極にいるようなとってつけたような大声。とにかく見苦しく、聞き苦しく、うるさくて、何の足しにもならない。自然の発露の声なんて久しく聞いていない。フライングブラボーは音楽知らず、恥知らず、即刻ゴーホームしてもらいたいが、後を絶たない。この種の人間、声を出さないと注意できないので始末が悪い。また、演奏後に現れる現象のため退場は難しい。ひところ、苦情があり、演奏後の馬鹿声は音楽の美観を損なうので少し静かにしろ、というおふれがまわるような演奏会もあったが最近はあまり見かけない。
日本人は催しものの種類によるが、野球などのうるさい応援などでもわかるように静かな時間と空間を保つのに、はにかむ、気恥ずかしい、といった気持もあるようだ。静寂で場が白けるのを変に気をまわして騒がしくしてしまう傾向がある。野球はアナウンサーも含め、騒音の限界に達している。声を出していればカネはもらえるという感覚に近い。駅員のアナウンスも同じ。
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3大B以外にも、ガムクチャ人間や、プログラムめくらー、咳人間、などあげたらまだまだある。河童はほとんど遭遇しているが、一番印象に残ってるのがガムクチャ人間。カミタソの最初から最後までクチャクチャ噛んでいた。何回注意してもやめないというよりやめれない。癖だと思う。反対隣の連れらしき人物にもかなり言われていたが、ガムをポイしても口の動きがガムクチャなのだ。まるでパブロフの犬。音楽を聴くと口が動くらしい。もう演奏会には来てほしくない人たち。カムタソになってしまった。
一番の良客は、言わずもがな、いびきをたてないですやすや寝ている客。理想的だ。
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