風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

眠れぬ真珠

2009-03-06 | 風屋日記
「若さ」とは真っすぐさ、ひたむきさの代名詞
・・・ということは一般的には理解しているけど、
自分の時のことを思い返してみるとちゃらんぼらんで
一体何をやっていたんだろうと情けなくなる。

2006年 島清恋愛文学賞受賞作品
「眠れぬ真珠」石田衣良 新潮文庫 を読んだ。

主人公は45歳版画家内田咲世子。
解説で小池真理子さんが書いてたけど、
男性作家がその年齢の女性の内面を描くというのは
これまであまりなかったこと。
しかも(私にはわからないけど)小池さんは
「男性が書いたとはとても思えないほど共感した」
とまで書いて絶賛している。
かといって女性向きonlyの作品だとは思わないけど。
性は違っても(著者が同性だからかもしれないけど)
自分の立ち位置、立場、体の変化、考え方など
同世代としての共感をとても感じる。
男性が描く女性の内面に男性として共感・・・
という複雑さもこの作品の魅力なのかもしれない(笑)

かたや咲世子の相手となるのは映像作家徳永素樹28歳。
若い。そして若さに任せて真っすぐだ。
正直言って、この年齢の男性にしては真っすぐすぎるほど。
まるで高校生か20歳前後のようだ。
咲世子とは逆にそのあたりはちょっとどうかと思ったけど、
それでもその真っすぐさ、直接的には若さが眩しい。
そして17歳歳下に対する咲世子の屈折した思いは
とてもよく理解できる気がするな。
態度が少しカッコ良すぎるけどね(^^;

年齢や性、立場など、現在の私の立場に最も近い存在なのは
咲世子の不倫相手のおっさんなんだけど(笑)
彼の横暴さも、情けなさも、そして情もカッコ良すぎだよ(^^;
何歳になろうと、どんなに大人になろうと、悟ろうと
人間もっとカッコ悪い生き物だと思うんだけどな。
それは私だけなのかな。
23歳の椎名ノアといい、咲世子といい
石田さんは自分と同性の登場人物よりも
異性の登場人物の方を生き生きと描いている気がする。

ところで私が徳永の年齢の時は・・・長男が1歳の頃。
時はバブル時代真っ盛り。
勘違いで仕事もちゃらちゃら出来ちゃってる気がして、
家族とも、友人達とも、同僚達ともアクティブに遊んでた。
でもそこにはどこか地に足がついていないというか、
本質的なものは何もわからずに、
ひとりでヘラヘラわかった気になってた。
徳永のことを「真っすぐ過ぎ」と書いたけど
そうじゃなかったのは私だけだったのかも知れない。
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2 コメント

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Unknown (おこりんぼかあちゃん)
2009-03-07 12:34:49
眠れぬ真珠、読みました。
石田衣良さんは好きな作家さんの一人なので、文庫本でほとんど持っています。

この本は石田さんの名を借りて、女性が書いたのでは?と思えるほどの描写が随所に出てきて、共感したりドキドキしたり。
私も咲世子の年齢に近いせいか、入り込んで読んでしまったので1日で読み終えてしまいました。

風屋さんのように語る事はできないけれど、石田作品の中でも好きな小説になりました。
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>おこりんぼかあちゃん (風屋)
2009-03-07 13:10:39
お読みでしたか。
私も石田さんの本は結構読んでます。
ウエストゲートパークシリーズは
あまり手を付けていないのですが、単発ものは単行本も持ってます。
一番好きなのは「娼年」かな。
繊細な感受性に皆心の殻を溶かしていく。
人の内面を静かにすくい取る優しさが
あの作品の魅力だと思うのです。
「あぁ皆心の中に様々抱えているんだ」と
何だかほっとできるんですよね。
悲しいかな私は鈍感な田舎者の中年オヤジ。
彼とは対極の存在です(^_^;
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