風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

高校野球

2008-01-28 | 風屋日記
nanaponさんのブログ記事を読んで考えた。
私のように高校野球を身近に感じている人間は
どこの学校の部員かを問わず
球児達がどんな思いを持ち、
どんな練習をしているか知っている。

次男のように無名の選手で強いわけでもないチームにいても
私たち親を含め、どの大人も「無理だろう」と言っても
彼らは大真面目に、真剣に甲子園を目指している。
毎年1回戦でコールド負けしているチームも同じだ。
弱いからといって練習の手を抜いているわけでもないし、
指導者達もどうすれば勝てるかを懸命に模索する。
それでも勝てなくて、周囲の目や自分と戦い続けている。
(本人達の必死さを知らない大人達は
 「また勝てねーのか。無理無理」と平気で本人に言う)
でもね、ひょんなことから強豪に勝ってしまうこともある。
(例えばうちの長男の秋の新人戦、
 翌年夏の甲子園に出た花巻東に延長で勝っちゃった)
だからスポーツってのは面白い。

一方強豪チームはどうか。
こちらはもう具体的に戦う相手が見えている。
対戦相手じゃない。チームメイト達だ。
岩手県内の私立で言えば、盛岡大附属や専大北上あたりは
首都圏や関西方面からうまい選手達がやってくる。
もちろん地元でウデ自慢の選手達も集まる。
1学年20~30人の、しかもうまい選手達が集まってくるので
3年の間にベンチ入りすることすら至難の技だ。
人と同じ練習をし、人並みのスキルではベンチ入りできない。
自分なりの長所、人と違うスキル、特徴を身につけるべく
みんな人知れず悩み、人の見ていないところで黙々と練習する。
ベンチ入りもできなければ、
何のために15歳で親元を離れてこんな寒い田舎にやってきたのか。
そんな悲愴感は地元の公立高の選手達にはないものだ。

しかも野球留学で来た子達は偏見の目にも晒される。
例えば昨夏の甲子園の岩手県代表になった花巻東高は
選手達が集まる私立校とはいえ、みんな県内の選手ばかり。
そうすると一般の人達は
「他県の選手が出てるより地元の選手だけの学校応援するべ」
ということなる。
「遠くから来ても、勝てねーんじゃしょーがねーべ」
と、負けて涙にくれる野球留学生達に心無い言葉を浴びせる。
どこの出身だろうと、彼らが単なる16~18歳の少年であることを
大人達もマスコミもみんな忘れている。
彼らには「勝つ」ことだけが求められているのだ。
大人達によって。
でもどんなに集められた選手達でも負けちゃう時はあるんだよね。
だって彼らも単なる普通の少年達だから。

「純真で、爽やかで、自己犠牲のチームプレーが美しい球児」
というのはマスコミや大人達が作り上げた偶像。
実像はTVも見るし、好きな娘もいるし、かわいいイタズラもする、
そして泣いたり笑ったりする野球が好きな少年達だ。
そしてあの大舞台でプレーすることを夢見ているだけだ。
そこには小難しいアマチュアリズムの概念や
「美しい球児」を演じようという小賢しい下心もない。
彼らのそんな気持ちを手玉に取り、
レッテルを貼り、価値観を押し付け、枠にはめようとするのは
マスコミを中心とする大人達だと思うのだ。
果ては彼らを利用して金を稼ごうという輩までいる。
(選手スカウトのブローカーや一部の学校経営者達)
それは大変不幸なことだし、そういう部分しか見えない人達は
「結局高校野球なんてそんなもの」と思ってしまうだろう。

選手達はもちろん、指導者達も選手達のことを考える。
花巻東の監督は、怪我をしても、調子が悪くても
精神的支柱の子にレギュラー番号を与える。
盛岡大附属の監督はベンチ入りできなかった3年生達全員に
最後の夏の大会は「21」番の背番号をつけさせる。
そういう姿を見ていると、彼らの思いが感じられて
私などはもう鼻の奥がツーンとしてくるのだ。

ところで、私立でも公立でもうまいだけでは勝てない。
そこには(精神論的になるが)気持ちが必要だ。
その気持ちというのはnanaponさんの言う狂気かも知れない。
ちなみにこれは野球部だけじゃないよ。
ハンド部でも、サッカー部でも、ラグビー部でも、
あるいは弓道や卓球、バスケットでも吹奏楽などでも同じこと。
野球だけ特別なんてのは間違いだと思う。
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2 コメント

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むむむム、ムム (平舘)
2008-01-28 21:09:52
あんまり、ささりたくないテーマなのですが・・・何日か前に「平舘」と実名(実はハンドルネーム???笑)が出たところでもあるので。。。

おらは、「勝つ」ことだけが求められている彼ら にいづが勝てるがもしれないどっ! 思って母校を応援しておりやすっ

子どもたちの背景はなんだってよがんすっ

世の中いろったな親もいれば、ガキもおりやんすべっ

工夫に工夫をして、強豪と言われる学校にしがみついて、にじりよって、噛み付いて、食い下がって、屁も一発かましても 可能性、夢を捨てないで行きましょう~!

なんたって、あいでも 高校生で やんすがらっ

小難しいごどは、評論家にまがせやす・・・
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>平舘さん (風屋)
2008-01-29 08:17:22
その通りですね。
私もそれには同感です。
今時の球児達はバットを短く持ったり、
ノーアウトからランナーがでれば即バントなんてしませんが
強豪を倒すためなら自分で考えてそういうこともアリでしょう。
ありとあらゆる方法で強豪と立ち向かって欲しい。

・・・と同時に、
勝つことが当たり前と周囲に言われる私立の彼らも
それはそれで辛い立場だよなーと思ってしまうのです。
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