語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【買収】猪瀬都知事、「個人の借り入れ」で済む話か ~徳州会から5,000万円~

2013年11月30日 | 社会
 (1)11月22日付け朝日新聞は、猪瀬直樹・東京都知事が、昨年の都知事選前に、医療法人「徳州会」グループから5,000万円を提供されていた、とスクープした。
 昨年11月上旬、猪瀬知事は病院(神奈川県鎌倉市)に入院中の徳田虎雄・徳州会創設者を訪ね、都知事選に出る、と報告。病気で口がきけない虎雄は秘書を介して、応援する、と応じた。同月中旬、猪瀬は、徳田毅・衆議院議員から手渡しで5,000万円を受け取った。現金なのは、「足がつかないようにしろ」と虎雄から指示があったためだ。

 (2)11月26日、猪瀬は緊急記者会見を開き、カネはあくまでも「個人的な借り入れ」であったと強調した。証明するために借用書を示した。
 カネは、今年9月に秘書が全額返済した、とされ、政治資金収支報告書にも徳州会に係る記載はない。
 だが、都知事選前とあって、選挙費用のためのカネであった疑いはいまだに濃厚だ。
 疑惑を深めているのは、猪瀬が返済したとされる時期と、一貫しない説明だ。

 (3)9月17日、徳州会に東京地検特捜部の強制捜査が入った。昨年の衆院選で徳州会が毅を応援する際、違法な選挙運動をしていたという容疑(公職選挙法違反)で。
 9月末、猪瀬が5,000万円を返済した(とされる)。強制捜査の直後であった。
 猪瀬の説明も、二転三転した。
  ・11月21日・・・・「知らない」
  ・11月22日午後1時・・・・「選挙のための応援」
  ・11月22日午後3時・・・・「個人のための借り入れ」
 「個人のための借り入れ」だから、政治資金収支報告書に記載する義務はない、という理屈だ。

 (4)11月23日、「市民連帯の会」は、猪瀬知事、徳田虎雄、徳田毅の3人に対する告発状を東京地検特捜部に送付した。容疑は、公職選挙法違反(虚偽記載など)。
 この事件の本筋は買収事件。猪瀬がカネを返却したとしても、買収したこと自体が消滅するわけではない。返却された現金5,000万円の出どころや使途についても解明されるべきだ。【三井環・「市民連帯の会」代表/元大阪高検公安部長】
 猪瀬は、徳州会が都内で病院を経営していることは知らなかった、と発言しているが、それ自体知事の見識が問わる。【山内れい子・都議/2020年オリンピック・パラリンピック招致特別委員】
 徳州会に強制捜査が入らなかったら知らされることさえなかった。都知事選告示前のできごとだが、公開討論会ではおくびにも出さなかった。公職選挙法なら選挙運動費用収支報告書に、政治資金規正法では政治資金収支報告書などに記載すべきもの。病院などの許認可権が絡めば贈収賄事件にもなる。【宇都宮健児・前日本弁護士連合会会長】

 (5)猪瀬の贈収賄疑惑が明るみに出た背景に、徳州会の内紛がある。
 徳州会グループは、虎雄がワンマン経営者として君臨してきた。彼が病気になると、妻、娘などが経営に関与してくるようになった。そのファミリーと、虎雄の最側近だった能宗克行の内部抗争が2、3年前から起き始めた。最終的には、能宗が切られた。追放された能宗は、古くから付き合いのある「週刊新潮」OBや「産経新聞」記者らと通じて、東京地検特捜部にも内部資料を持ち込んだ。特捜部が徳州会に踏み込む当日(9月17日)、「産経」がスクープしている。
 猪瀬の裏金疑惑は、徳州会の内紛の結果として出てきたにすぎない。

 (6)猪瀬は、明らかにウソを、しかも稚拙なウソをついている。危機管理能力がまったくない。都民を見てない。いまは刑事責任をいかに逃れるか、しか考えていない。検察庁を意識した発言に終始し、しかも説明が二転三転する。都知事個人のことでこれほどのパニックを起こし、醜態をさらす人は、もし東京で大災害が起きても対処できまい。安心して都政を任せられない。都民はリコールを真剣に考えるべきだ。【佐藤優】

□本誌取材班「徳州会からの5000万円 「個人の借り入れ」で済む話か!」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)
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【本】先行き不安な今の世を図太く生き抜く知恵 ~『人に強くなる極意』~

2013年11月29日 | ●佐藤優
   

(1)目次
 まえがき
 第1章 怒らない
 第2章 びびらない
 第3章 飾らない
 第4章 侮らない
 第5章 断らない
 第6章 お金に振り回されない
 第7章 あきらめない
 第8章 先送りしない
 ※各章末に2冊ずつ、参考文献を紹介。

(2)さわり【第1章】
 (a)怒りには類型がある。
   ①感情的になってキレる。神がかり的になる。怒りが降りてくる。 → とにかく逃げる。避難するのが正しい対処法。
   ②怒りによって相手(敵、etc.)をフリーズさせる。
    <例1>工事現場で明らかに誤った操作をしている時、怒鳴ってフリーズさせる。危険は体で憶えさせる。
    <例2>外務省で、若い研修生に、基本的な事務作業は怒鳴って憶えさせた。致命的なミスは、初歩的な事務的なところから生まれる。
    <例3>鈴木宗男は、役人が嘘をついた時、激しく叱責した。誤魔化されて怒らないと、役人にナメられる。
       鈴木:○○さん、もういいよ。ほかの先生に説明してくれ。
       役人:大臣、これが嘘をつく男の目ですか?
       鈴木:これは嘘つきの目だ。
       役人:ウーッ(と唸り声)。 → その場でアルマジロのように丸くなって床に転がった(死んだふり)。
   ③戦略的に(お芝居的に)怒る。
    <例1>ミスした部下を取引先の目の前で怒ることで、その場を収める。。
    <例2>外務省で、課長が不満を持っている部下を、首席事務官(他の省庁では筆頭課長補佐)が怒鳴りまくる。その結果、課長はその部下をきつくあたらずに済ませる。
   ④政治家が怒鳴って「つべこべいわずにこうしろっ」と言われると、やりたいが責任をとりたくはない役人は、責任を負わなくて済む、とやっと動き出す。このあたりは阿吽の呼吸。

 (b)若いうちは、怒り方より、怒られ方を学ぶほうがよい。
 そもそも若いうちから、しょっちゅう怒ったり大声をあげたりしていると、情緒不安定と見られる。

 (c)ムカムカしたり、ドッと怒りが湧いてきたら、論理的に感情の糸をほどく。その作業自体で冷静になれる。
 紙に自分の感情を書き出す。箇条書きにしたり図にする。 → 自分を見るもう一人の自分がいることに気付く(メタ認知)。
 ただし、自分の感情の糸をほどいていくには、それなりの知識や経験がいる。一人の人間が経験できることは限られている。小説や映画で疑似経験をするとよい。

 (d)怒りは、溜めずに昇華させてしまうこと。
 能など芸能、芸術、文芸は、不満や怒りを昇華し、カタルシスを得る役割を果たしてきた。

 (e)はっきりとした自覚がないのに怒りっぽくなっていたり、人に対する当たりが強くなっている場合、いい友だちに恵まれていれば、指摘、助言をしてもらえる可能性が高い。
 自分の話をちゃんと聞いてくれる人、あるいは客観的なアドバイスをしてくれる専門家を身近に持つとよい。

(3)所見
 (a)本書は、「BIG tomorrow」誌に連載の「佐藤優の人生修業」に加筆・再構成したもの。
 (b)発売から1ヵ月余で発行10万部。出版元によれば、読者層は30~40代が多い。
 (c)長引くデフレ経済、企業のブラック化、隣国との不穏な関係、秘密保護法案にTPPといった先を見とおせない社会情勢の中で、図太く生き抜く知恵を伝授する。
 (d)知恵の中心は感情のコントロールにあり、その具体的な対処法として著者の外交官体験を少なからず引く。
 (e)本書は、これまでロシアや日本のきわどい社会情勢を分析し続けてきた佐藤優が、多数の人間の観察と自己省察の果てに醸し出した人間学である。

□佐藤優『人に強くなる極意』(青春新書、2013.10)
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【本】現実社会を生きぬくための読書 ~『世界と闘う「読書術」』~

2013年11月28日 | ●佐藤優
   

(1)目次
 はじめに--「AKB48と宗教」 佐藤優
 第1章 宗教・民族と国家 
 第2章 家族と国家
 第3章 戦争・組織
 第4章 日本とアメリカ
 第5章 沖縄・差別の構造
 第6章 日本・日本人
 第7章 文学・評伝・文芸批評
 第8章 社畜とブラック企業
 第9章 未来を読む
 おわりに--異能の人との連帯 佐高信
 佐高信が選ぶ、ジャンル別・必読「新書」リスト

(2)さわり【第1章】
 2013年2月、ローマ教皇が生前退位した(ベネディクト16世→フランシスコ)。
 前回の生前退位(グレゴリウス12世)は1415年で、598年ぶり。当時、ローマとフランスのアヴィニョンに大分裂し、教皇が3人鼎立していた。この中で一番力を持っていたのはローマ側のヨハネス23世。彼の前歴は海賊だった。海賊からローマ教皇になって権力を握り、好き放題にやった。教会がめちゃめちゃな状態になった。そこで、コンスタンツ公会議を開き、3人とも廃位となった。その後、1417年に改めて教皇を選び直し、教会を統一した。
 こうした歴史を踏まえれば、今のカトリック教会は、当時と同じぐらい危機的な状況に陥っていることがわかる。今回の生前退位は、バチカンのイスラム戦略だ。前教皇のベネディクト16世は、バチカンのネオコン(保守中の保守派)だった。2007年、イスラム教のジハードを批判する演説を行い、イスラム教徒から反発を受けた。
 だから、カトリック教会を中東において巻き返す、という戦略を持っている。1980年代のカトリック教会の保守化路線を中心になって引っ張った。バチカンは共産主義に対して巻き返し、その目的が達成された今、次の巻き返しはイスラムだ、というわけだ。
 ところが、ベネディクト16世は高齢で健康状態が不安だ。そこで、自分の目が黒いうちに戦略的に引き継いだ。
 カトリックが本当に改革をしてリベラルな勢力になるか、むしろ反動的になっていくかは2015年にわかる。コンスタンツ公会議から600周年の年に。フスの名誉回復がなされたら、ある程度リベラル化している、と見てよい。フスは、コンスタンツ公会議で異端とされ、火刑になった。
 しかし、たぶんフスの名誉回復はない。
 今、日本も世界も、経済も政治も危機的な状況にある。これは、近代システムの危機だ。この危機をポストモダンによって乗り切ろうとする運動は、まさにバブルの頃にあった。けれども、それでは今の危機を乗り切れないだろう。
 となると、「プレモダン」で乗り切ればよい。つまり、近代以前の基準で動けばいい。近代以前の基準で動くなら、カトリックが強い。
 その意味でも、カトリックの動きをよく見守る必要がある。

(3)さわり【第3章】
 『戦争と人間』には統計・数字の話が出てくる。数字が一つの抵抗の武器になり得る場合と、逆にトリックとして使われる場合がある。
 新日本製鉄の副社長から九州石油の社長になった飯村嘉治は、若き日に朝鮮は清津にいたとき、1回憲兵に捕まった。国債をどんどん増発していった場合、はたして大丈夫なのか、ということで、歌を詠んだ。「かにかくに架空の数字あげつらい国策ひとつ生まれつつあり」。それでひっくくられた。アベノミクスでも紙幣をどんどん刷ると言っているが、それを「大丈夫か」と言っただけで引っ張られるようなものだ。
 皇軍の伝統は、数字なんか蹴飛ばす。
 主観的願望によって客観的情勢が変わる、という話だ。これを小室直樹は、『ソビエト帝国の崩壊』で「念力主義」と名づけた。元寇がよくなかった。神風で助かった、という神話ができたから、ここから念力主義が生まれた。
 日本の軍隊について語る場合、絶対にふれないといけないのは『統帥綱領』と『作戦要務令』だ。『統帥綱領』のポイントの一つは、独断専行だ。それが部隊レベルに下りた『作戦要務令』でも、独断専行を非常に重視している。
 日本の会社とまったく同じだ。うまくいけば上司の手柄、まずくなったら部下の責任。
 旧軍の伝統が、そのまま会社に引き継がれている。日本人の組織論とか、ものの考え方が全部凝縮されている。

(4)さわり【第4章】
 日米開戦期に、米国に対して日本陸軍参謀本部は謀略放送をやっていた。その実録が『日の丸アワー』だ。著者、池田徳眞は徳川慶喜の孫で、元鳥取藩主の当主。戦時中に、対米プロパガンダ放送(日の丸アワー)をやっていた。同じ著者に『プロパガンダ戦史』がある。
 この本の現場感覚は今でも使える。巻末に、自分たちが戦時中に付くって、敗戦のときに持ち出した冊子が再録されている。「対敵宣伝放送の原理」だ。今、広告代理店の電通や博報堂のやっていることの原型だ。いかに戦争を自国に有利なように宣伝するか、ということなので、いかにうちの商品に関心を向けて商品を買わせるか、ということにつながる。
 最後のところで、「プロパガンダのほうが武力戦よりもずっと安上がりだから」とあるのは面白い。今の安倍チルドレンなどとは、全然方向性が違う。
 ここで池田が主張しているのは、「反復法」、「暗示法」、適宜音楽を絡めると良い、とか。宣伝ということが非常によくわかっている。
 それから、米国人はニュースがないと宣伝できない、と分析している。だから、人に影響を与えるように物事を記述する英国人の発想を全然わかっていない、と。
 ドイツ人については、理屈でがんじがらめに攻めてくるので、説得力はあまりない、と。
 日本のエリートはドイツ的なところがある。
 『プロパガンダ戦史』でもう一つ重要なのは、エリートと大衆を完全に分けていることだ。そして、エリートに対しては論理的に、大衆に対しては感情的に、これが英国方式の要諦だ、と言っている。これはすべての世界に通用する。論理連関と感情を動かすことの間には関係がない。それを見ながら、巧みなプロパガンダを展開している。これは英国のやり方だ。
 この著者がものすごく英国をひいきにするのは、近代になってから、英国は一度も戦争に負けたことがないからだ。英国は、負ける前に常に名誉ある撤退をしてしまう。それに対して、米国はやっぱりベトナムで負けている。アフガニスタンやイラクでも負けているようなものだ。
 英国は負けない。英国は、最初から勝つことに目標を置いていない。負けないことに目標を置いている。これは微妙に違う。
 やはり国民性というものはあるのだ。

(5)所見
 (a)本(主に新書)をめぐる佐高信と佐藤優の対談。各章末に、①対談でとりあげられた本、②対談でとりあげられなかったけれども追加して両者が推薦する本・・・・を付す。
 (b)本について語りつつ、今の現実社会を見直し、見破る。本というものは現在、現実を生き抜こうとする人が読むものだ、ということを改めて感じさせる1冊。

□佐高信/佐藤優『世界と闘う「読書術」 思想を鍛える1000冊』(集英社新書、2013.11)
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 【参考】
【本】佐藤優の熟読術・速読術「超」入門 ~『読書の技法』~
書評:『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』

【新聞】経営者の関心は秘密保護法より軽減税率

2013年11月27日 | 社会
 (1)10月22日18時過ぎ、首相官邸前に400人の市民が集まり、特定秘密保護法案に反対するアピールを行った。

 (2)同法案の狙いは次の2つで、この狙いに対する危機感が(1)のアピールに見られる。、
  (a)政府が重要な情報を漏洩から守る。
  (b)集団自衛権の行使を認めようとする安部政権下にあって、米国との間で軍事情報の共有化を一層進めるための「戦争法制」の整備の一環である。

 (3)この日(10月22日)、朝日新聞は夕刊1面に「秘密保護法、成立の公算」との四段見出しの記事を掲載した。
 同日、自公両党で法案を了承する党内手続きが終了し、衆院でも法案を審議する特別委員会委員長に額賀福志郎・元防衛庁長官(自民党)を選出したことなどから、12月6日までの短い臨時国会であっても成立の条件が整った、と判断したわけだ。
 公明党が法整備の必要性を認めたことで、産経新聞が11日に早々法案の成立を報じた。読売新聞も、18日朝刊1面で「秘密保護法成立の公算」との四段見出しの記事を掲載した。
 政局の流れはハッキリしているのかもしれない。
 しかし、両紙と異なって朝日は、今年9月に政府が秘密保護法案の概要を発表し、国民に意見を募って以降、曲がりなりにもその問題点を指摘し続けた。新聞の存率基盤さえ破壊しかねない法案に対して、「成立報道」には抑制的であるべきであった。

 (4)(1)のアピールは、10月25日の閣議決定を前に行われた。初めての大規模な街頭行動だった。
 しかし、翌23日の朝日朝刊は、第三社会面のミニニュースで取り上げただけだった【注】。
 少数意見をすくい上げることこそ、本来、新聞の得意とするところであったはずだ。
 朝日と同じく法案に反対の立場の毎日新聞も、第二社会面のミニニュースだった。
 東京新聞だけが、第二社会面のトップ級の扱いで、写真も掲載していた。
 世論が変われば、与党が拙速な審議に慎重な姿勢に転じる可能性だってあるはずなのに。

 (5)10月16日、鹿児島市で、新聞大会が開かれた。今年のテーマは、「消費税8%を乗り越える新聞経営--協調と競争」。
 新聞協会は、大会に先立ち、10月2日付けで秘密保護法案に係る「意見書」を発表している。「国民の知る権利」が損なわれる危惧を表明している。が、この意見書には「法案反対」の文字がない。
 法案は、2010年9月(民主党政権下)に、沖縄・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突映像がインターネット上に流出したことを受けて、仙谷由人・官房長官が設置を指示した「有識者」会議の報告書(2011年8月)がたたき台になっている。
 これを受けた新聞協会の意見書(同年11月)には、少なくとも「反対」の文字があった。
 ところが、今回はなかった。
 むしろ、「取材・報道の自由は侵害しないとの明文規定を盛り込むべきだ」と注文さえしている。この注文は、後に閣議決定に盛り込まれた。新聞大会が開かれた時期は、注文が既に条文に盛り込まれる方向性になっていたから「反対」の文字がなかったのか。
 白石興二郎・新聞協会会長/読売新聞グループ本社社長/読売新聞東京本社社長のあいさつは、消費増税に絡む新聞の軽減税率問題が大半を占め、秘密保護法には触れていない。新聞大会決議も同様だ。軽減税率をめぐっては、特別決議まで採択している。
 新聞界は本気で反対しているようには見えない。軽減税率を求めて遠慮しているのではないか。【日本新聞労働組合連合会関係者】
 法案をめぐる新聞経営者の薄い危機感は、何のために新聞を発行しているのか、疑問を感じさせる。

 (6)1985年に自民党が国会提出した国家秘密(スパイ防止)法案に対して、新聞協会は同年11月に「強く反対する」見解を発表した。
 同月、朝日、毎日は社説で自民党に撤回を求めた(読売社説には撤回要求は見当たらなかった)。  
 結局、当時の自民党は立法化を諦めた。
 しかし、このたびの秘密保護法案については、足並みが揃っていない。
 毎日はもっとも早く、10月21日に「反対」を表明し、日経も10月20日に政府案に異議を唱えた。朝日は10月25日に社説で「反対」した。
 一方、読売の10月24日社説は法案への危惧を指摘するものの、見直しまでは踏み込まず、むしろ「漏洩を防ぐ法律が必要なゆえんである」などと説くほどだ。新聞協会が「意見書」を出したすぐ後の10月6日朝刊に、葛西敬之・JR東海会長の「対テロ・安保協力に有益」「国会標準の法整備を急げ」とする寄稿を1、2面に載せているから、本音は賛成と目される。
 産経に至っては、10月22日社説で、法案通過を前提に、早くも運用面での注文に移っている。

 【注】衆院の強行採決(11月26日)には、さすがに翌27日の朝刊で大きく取り上げている。1面トップ、2・3面全部、4面の一部、7面には4党修正案全文、36面の一部と37面に市民の声。

□神保太郎「メディア批評第回」(「世界」2013年12月号)の「(2)秘密保護法案と軽減率問題 -新聞経営者の関心は」
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【旅】冬の旅

2013年11月26日 | □旅
 11月22日。米子鬼太郎空港ターミナル店「炉端かば」にて。「海鮮ちらし」。
 
  


 同。米子鬼太郎空港の上空にて。大山、日野川、米子平野。

 


 11月24日。上野にて。国立西洋美術館付近。

  


 同。国立西洋美術館正面。次回展覧会の「モネ」の掲示が見える。

  


 同。国立西洋美術館前庭にて。「秋思」とでも題すべきか。

  


 同。国立西洋美術館「常設展」にて。ピーター・ブリューゲルの長男による「鳥罠のある冬景色」。
  


 同。東京都美術館にて。「【特別展】ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master」の掲示が見える。

  


 同。東京都美術館入口付近。

  


 同。東京国立博物館日本館。
 
  


 同。東京国立博物館平成館。「特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」。

  


 同。東京国立博物館。「秋の庭園開放」。

  


 同。東京国立博物館。「秋の庭園開放」。

  


 11月25日。八重洲ブックセンターにて。

  


 同。羽田空港第2ターミナルにて。「御門屋」の「揚げもち」。

  


 同。米子鬼太郎空港にて。国内線手荷物受取所。

  

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【原発】東電か、電力改革か ~除染費用の支払いを拒否する東電~

2013年11月25日 | 震災・原発事故
 (1)東京電力は、除染費用の支払いを拒否している。
 環境省は改めて支払いを求め、井上信治・環境副大臣のもとに出頭させた。しかし、石崎芳行・東電副社長は、「支払えない」と回答。
 かくて、東電は、環境省から請求されている除染費用404億円のうち、300億円以上をいまだに「知らぬ顔の半兵衛」している【注】。

 (2)これは、「債務不履行」だ。債務を履行しない、ということは、東電はすでに破綻していることを示すのではないか。
 除染費用は東電が負担する、と定められている【放射性物質汚染対処特別措置法】。形式としては、国がいったん肩代わりした上で、東電に請求する流れとなっている。
 東電の言い分が、国がいったん肩代わりした分が本当に除染費用なのか否かをチェックしなければならないから待ってくれ、というものならまだ理解できる。
 ところが、石崎副社長は、「事務作業に時間を要しているうえ、経営状況が思わしくない」と支払い拒否理由を述べている。
 そのくせ、企業としては破綻したくない、という。虫がよすぎる言い分だ。

 (3)いま、国・地方自治体が予定している除染費用は3兆円。
 これはすべて東電負担だ。が、東電が直ちに支払えば、東電は破綻する。
 渡欧伝の今年3月末連結決算で、
  (a)資産・・・・14兆9,891億円
  (b)負債・・・・13兆8,513億円
  (c)資産超過額・・・・1兆1,378億円
 いま3兆円を負担すれば、即時、債務超過になる。

 (4)除染費用は、今後徐々に発生していく。その間に電気料金値上げによって対処していくから破綻しない。・・・・これが東電のロジックだ。
 しかし、除染費用は3兆円にとどまらない。
 除染に伴う廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設に、1兆円。
 さらに、生活再建に向けたインフラ整備まで考えると、幾らかかるか、予想はつかなくなる。

 (5)除染費用に東電が悩んでいるのは明らかだ。東電は、放射性物質汚染対処特別措置法を改正して全額国費で対応してくれ、と自民党に要請している。
 これまで東電にたかってきた自民党は、法改正に前向きだ。
 これまでに計画された除染費用2兆円は東電負担とするが、「追加除染」や中間貯蔵施設は東電負担から国費投入に変更する、という。【10月31日に自民党東日本大震災復興加速本部がまとめた方針】

 (6)(5)の自民党方針が通れば、東電負担は2兆円で済む。それを電気料金値上げでカバーするから破綻しない。・・・・という東電のロジックは、依然としてマユツバだ。
 東電がこうしたロジックを振りまわすのは、「競争がない独占企業」であることを宣言しているのと同じだ。
 普通の企業なら、料金値上げしたらライバルが現れて売上減・収益減になる。しかし、東電の場合は料金値上げがそのまま売上増・収益増につながる。・・・・こういう前提が、東電にはあるのだ。

 (7)(6)の理屈を自民党政権が許せば、自民党政権のいわゆる電力自由化はマヤカシでしかない、ということを認めることになる。
 今国会で電気事業法改正案が成立するだろう。同法による電力改革で、大手電力会社による地域独占体制を見直し、新規事業者の参入を促して、競争を通じて電気料金の値下げを目論む・・・・はずだ。
 これが、東電を温存させるための「絵に描いた餅」になりそうだ。
 東電を守るか。東電を速やかかに改組して、新規参入、電気料金値下げに導くか。どちらを選ぶか、重要な選択をする秋だ。

 【注】11月15日、東電は、残っている負債のうち87億円の支払いに応じることを明らかにした。残る未払い分は250億円。【2013年11月16日付け朝日新聞】

□ドクターZ「電力自由化のまやかし ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2013年11月23日号)
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 【参考】
【原発】電力自由化はまず関電から ~ドクターZは知っている~

【原発】福島被曝の実態を過小評価 ~国連科学委員会に抗議文~

2013年11月24日 | 震災・原発事故
 (1)原子放射線の影響に関する国連科学委員会(ウォルフガング・ワイス委員長)は、10月25日、開催中の68期国連総会に、福島第一原発による放射性被曝の程度と影響に係る調査報告書を提出した。
 日本の各団体は、この内容を事前に入手。
 10月24日、国際環境団体FoEJapan、「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」など64団体は、同委員会の「福島報告」について、「現地調査もせず、実態を反映していない」とする抗議声明を発表した。

 (2)問題とされたのは、
   ・「一般市民への被曝量は、最初の1年目の被曝量でも障害被曝量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い」
   ・「福島県の成人の平均生涯実効被曝量は10mSv以下であり、最初の1年の被曝量はその半分か3分の1であると推定する」
など、根拠不明な楽観論をふりまく記述だ。

 (3)これに係る抗議声明は、同委員会が「福島原発事故後、原発事故周辺地域に公式の事実調査に訪れたことは」ないことから、報告書は「(情報開示の姿勢に重大な問題がある)日本政府、福島県等から提供されたデータのみに基づいて」一方的な予測をしている、と批判した。

 (4)問題の背景には、国連科学委員会が原発事故の影響調査をするにあたって日本政府内で協力するチームが組織されたこと、しかもそのチームは米倉義晴・放射線医学総合研究所理事長など、大半が低線量被曝の危険性を無視する「原子力ムラ」の御用学者で構成されていること、といった事実がある。

 (5)ワイス委員長は、ドイツ連邦放射線防護庁長官だ。
 しかし、ドイツ放送局3satは同報告書に関して、「チェルノブイリ事故の時と同じような『無害化』が見て取れる」という専門家の意見を紹介し、原発事故の影響を過小評価しているのではないか、という疑問を投げかけた。

□成澤宗男(編集部)「国連科学委に抗議文を提出 福島被曝の実態を過小評価」(「週刊金曜日」2013年11月1日号)
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 【参考】
【原発】銀行の債権を守るための国費(税金)投入
【原発】米国の原発の相次ぐ閉鎖 ~費用対効果~
【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~
【原発】東電が隠す放射能拡散のリスク ~4号機核燃料の搬出~
【原発】秘密裡に銀行が進める債権保全策 ~東電と経産省~
【原発】ベトナム原発の建設調査に国税25億円
【原発】コントロール不能の汚染水漏れ ~6つの危機~
【原発】汚染された排気筒倒壊の危機 ~「アウターライズ地震」~
【食】偽装の背景 ~消費増税により偽装が拡大~
【原発】放射能と食の現在 ~福島産の魚、茨城産の栗~
【原発】除染道路の4割が効果なし ~福島県田村市~
【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~
【原発】【食】原子力問題と伝子組み換え(GM)問題の共通点 ~ムラ~
【原発】震度6でフクイチが崩壊する日 ~液状化~
【原発】東電による汚染と、東電の「汚染」 ~隠蔽体質~
【原発】太平洋に拡散する放射性物質 ~シミュレーション~
【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~
【原発】【食】魚への影響 ~過去・現在・未来~
【原発】銀行はボロ儲け ~汚染水に国費投入~
【原発】【食】関東の食材からセシウム ~安部首相的「安全」の実態~
【原発】最悪の事態を防いだ2つの幸運 ~失われた沃野と海~
【原発】汚染水を浄化できるか ~福島第一原発はどうなっているのか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(3) ~次の震度6~
【原発】今、そこにある汚染水危機(2) ~汚染水は海で薄められるか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~
【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~
【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~
【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~
【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~
【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~
【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~
【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~
【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~
【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~
【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~
【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~
【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出

【食】返金する企業 ~食材偽装~

2013年11月23日 | 社会
 (1)一連の食材偽装問題の発端は、今年5月、東京ディズニーリゾート(TDR)のホテルで発覚した食材偽装だった。
 ホテルミラコスタ(東京ディズニーシー内)の中にあるレストランで、「車海老」と表記しながら、格安の「ブラックタイガー」を使用。TDRの3ホテルでは計5つの食品偽装があり、少なくとも1,490食を提供した。
 ホテルの運営会社は、該当料理を食べた人には1,000円を返金する、と発表した。
 これ以降、「食材偽装 → 返金」のパターンが相次ぐことになった。

 (2)阪急阪神ホテルズが社内調査を開始したのも、TDR問題を受けてのことだった。
 食材偽装が明らかになると、すぐ、10月22日に公表。
 11月8日午前9時までに1,546件の返金希望を受け付けた。直営8ホテルと1事業部の計47メニューが対象で、支払額は31,029,000円にのぼる。同社は、返金に必要な予算として1億円を組む。

 (3)阪急阪神ホテルズに続いて、「一流」と呼ばれるホテルや百貨店が次々と食材偽装の事実を公表した。
 偽装を公表した企業の多くは、メニューの誤表記や確認の不徹底などと説明した。
 しかし、意図的と疑わせる事例もある。
 <例1>松屋・・・・「自家製バニラアイスに既製品を使用」
 <例2>東急・・・・「贅沢霜降りハラミ重に、牛脂注入入処理をした肉を使用」

 (4)なぜ食材偽装が、これほど常態化したのか。
 スーパーなど小売店の商品表記は、過去に偽装問題が発覚したため日本農林規格(JAS)法の罰則が強化された。他方、外食産業は基本的にJAS法の適用外。行政による監視もされていない。要するに、外食産業は「性善説」の業界だったからだ。【垣田達哉・消費者問題研究所代表】
 「性善説」によって、一流ブランド企業は堕落した。

 (5)食材偽装を公表した企業の多くは、該当メニューを食べたり購入した客に返金する方針も公表している。
 ここでは、企業名だけ挙げておく。
  (a)ホテル
   ①阪急阪神ホテルズ
   ②東急ホテルズ
   ③ホテルオークラ
   ④近鉄旅館システムズ
   ⑤東武ホテル
   ⑥東京ディズニーリゾート
   ⑦小田急リゾーツ
   ⑧その他(施設名)・・・・名鉄グランドホテル、ハイランドリゾ-トホテル&スパ上海菜館

  (b)デパート
   ①松屋
   ②大丸松坂屋
   ③東急
   ④そごう・西武
   ⑤三越伊勢丹
   ⑥小田急
   ⑦高島屋
   ⑧東武

□西岡千史(本誌)「回収を急げ! “偽装”食材返金メニュー一覧」(「週刊朝日」2013年11月22日号)
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 【参考】
【食】韓国やEUに比べてお粗末な日本 ~GM食品表示~
【食】偽装表示と景品表示法違反 ~問題の本質が隠蔽~
【食】食材偽装の真の原因 ~円安政策の犠牲者~
【食】消費者へお詫びしない体質 ~多発する食品偽装事件~
【食】中国から輸入している肉エキスの危険性
【食】「肥満の元凶」は小麦 ~ベストセラー『小麦は食べるな!』~
【食】偽装の背景 ~消費増税により偽装が拡大~
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【食】韓国やEUに比べてお粗末な日本 ~GM食品表示~

2013年11月22日 | 社会
 (1)日本、韓国、EUのGM食品の表示制度を比較すると、
  (a)表示対象食品
    【日】食用油・醤油など大半の食品が表示対象外
    【韓】同上
    【EU】全食品表示

  (b)表示の対象で、原材料・上位品目に限定の扱い
    【日】上位3品目に限定
    【韓】上位6品目に限定
    【EU】全て(限定なし)

  (c)混入率をどこまで認めるか(どこまでなら「GMO不使用」とするか)
    【日】5%まで
    【韓】3%まで
    【EU】1%まで

  (d)表示の方法
    【日】表示義務食品に4通り・・・・「使用」・「不分別」・「不使用」・表示なし
    【韓】表示義務食品に3通り・・・・「含む」・「含む可能性・表示なし
    【EU】全食品で「GMO」が表示(表示なしは不使用)

 (2)韓国は、日本とよく似ている。
  (a)自給率が低い。日本と同じく、たくさんのGM食品を日常的に食べている。
    ①自給率・・・・22.6%(日本より低い)。
    ②トウモロコシ・・・・0.8%(日本:0.0%)。
    ③大豆・・・・6.4%(日本:7.3%)。
  (b)制度もよく似ている。
    ①遺伝子組み換え生物の国家間移動塔に関する法律(日本:カルタヘナ国内法)
    ②農水産物品質管理法(日本:JAS法)
    ③食品衛生法(日本:食品衛生法)

 (3)韓国は、日本と異なる点も多く、基本的には日本より厳しい。
  (a)最も違う点は、日本ではGM作物の栽培自体は認められているのに、韓国では禁止されている点だ。日本でも、北海道などの自治体が独自に栽培規制条例を定め、一定の歯止めをかけているケースもあるが、基本的には栽培は禁止されていない。
  (b)GMの食品表示制度も、基本的には日本より厳しい。例えば食用油・醤油など、DNAや蛋白質が分解されたものには表示義務がない(日韓共通)。しかし、日本より厳しくなっているのが混入率だ((1)-(c))。もともと日本の5%については、その根拠が示されていなくて、高すぎる、という批判にさらされてきた。EUの1%に比べて突出して高い。
  (c)加工食品での原材料と食品添加物の表示も、韓国は日本より厳しい。EUはもっと厳しい((1)-(b))。
  (d)表示義務のある食品での「不使用」のケースは、韓国と日本の最大の違いだ。表示義務のある食品は日韓共通で数少ない((1)-(a))が、その一つ、豆腐を見ると、韓国では3通り、日本では4通りだ((1)-(d))。韓国では日本のような「不使用」の表示はなくて、不使用の場合は表示なし、となる。もっとも、日本の不使用表示も任意表示だから、豆腐の場合は表示なしは「遺伝子組み換え大豆不使用」と同じになる。

 (4)現在、日本では新たに成立した食品表示法に基づき、消費者庁によって新たな表示が検討されている。しかし、GM食品表示で変更が検討さrている、という情報はない。もっとも厳しい表示義務を課しているのがEUであり、韓国ではEU以上か、同等の表示を求める運動が行われている。
 今は一切表示されていない米国でも、表示を求める市民運動が広がり、その可能性が出てきている。
 日本の消費者の「知る権利」は、世界から置き去りにされようとしている。

□天笠啓祐(ジャーナリスト)「遺伝子組み換え食品表示、韓国やEUに比べてお粗末な日本」(「週刊金曜日」2013年11月8日号)
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 【参考】
【食】偽装表示と景品表示法違反 ~問題の本質が隠蔽~
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【原発】銀行の債権を守るための国費(税金)投入

2013年11月21日 | 震災・原発事故
 (1)全国10電力会社の9月中間決算は、
  (a)東京電力、関西電力など5社・・・・経常黒字
  (b)中部を除く4社・・・・大きく赤字を圧縮
 東電に至っては、前年同期の1,662億円の赤字から、まさかの1,416億円の黒字へ急回復した。
 原発の再稼働がなければ経営が成り立たない、などという大合唱は嘘八百であることが判明した。

 (2)電力10社の燃料費は、東日本大震災前には3.8兆円だったが、火力発電の増加で7兆円に膨らんだ。人件費削減といった自助努力だけでは立ち行かない・・・・と電力会社は言う。
 しかし、この論理がいかに都合がいいものか、数字を観れば明らかだ。
 <例>東電・・・・人件費を183億円削ったものの、電気料金値上げで1,770億円も収入が増えた。
 各社の好決算は、昨年9月以降、次々と実施された電気料金の本格改定による値上げのおかげなのだ。
 基本的に、この値上げが燃料費の増加分を穴埋めした形だ。東電の経営は原発事故の損害賠償などで大変なことになっているはずだが、こうした費用が決算に響かない制度になっているから、黒字になって当然なのだ。
 逆に言えば、原発を動かしていなくても黒字になる。
 では、なぜ電力会社は再稼働にこだわるか。廃炉にすると、原発の毎年の減価償却が一括償却になって債務超過に陥るからだ。総括原価方式のもとでは、原発が停止していても、維持費、減価償却費はすべて電気料金に含まれる。
 要するに、電力会社が破綻しないための費用を国民が払っているのだ。

 (3)このタイミングでの東電の黒字化は、単なる偶然ではない。そこには、明確な意図が巧妙に隠されている。
 前政権は、政府が関与しないで東電に事故対応をやらせる道を選んだ。
 安部政権は、これを批判し、見直そうとしている【菅義偉・官房長官、11月4日】。
 除染、廃炉、汚染水対策に国費(税金)を投入し、国が積極的に関与する、という方針転換だ。
 安倍晋三・首相が、9月、汚染水対策として国費470億円の投入をぶち上げたが、さらに踏み込んだ形だ。

 (4)前政権が作った今の仕組みは、国が原子力損害賠償支援機構を通じて5兆円まで東電に貸し付け、何十年もかけて東電と電力業界に返済させる。東電を潰さず、政府も賠償責任を直接は負わない枠組みで、国民に税負担を求めない建前だった。
 だが、この仕組みはもはや限界に達しつつある。
 現時点で、対策費用は貸し付け上限の2倍の10兆円を超える見通しだ。
 しかも、東電は、環境省が請求した除染費用の大半について支払いを拒否している。

 (5)菅官房長官発言に先立って自民党復興加速化本部がまとめた提言は、次のようなものだ。
  (a)すでに計画がある2兆円強の除染費用 → 東電が負担
  (b)「追加発生」の除染費用 → 「公共事業」として国(民)が負担
  (c)除去した汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設にかかる1兆~2兆円 → 国(民)が負担
 東電が黒字を出す一方で、巨額の国費が投入されるのだ。
 被害者である国民の税金を投入するのであれば、まずは東電を破綻処理(法的整備)し、東電の株主や貸し手である金融機関の責任も追及すべきだ。【伴英幸・NPO法人原子力資料情報室共同代表】

 (6)責任論がウヤムヤのまま話が進んでいくのには、理由がある。
 東電黒字化と、政府の国費投入決定は、一見矛盾する動きだが、内実は連動しえいるのだ。その目的はただ一つ。「東電を破綻させない」=「銀行の債権を守る」ことだ。
 銀行がこれまでつぎ込んだ4兆円の出融資を守り、すべてを国民にツケ回すのだ。
 タイミングは、12月に予定されている2,000億円の借り換えと、3,000億円の追加融資だ。
 今回、政府が全面的にかかわることを表明したのは、銀行に対し、国がカネを入れるので絶対に大丈夫だ、と示すため。
 東電や銀行の責任をウヤムヤにして、悪い部分はすべて国が引き受ける、という話だから、廃炉事業を切り離された東電【注】は健全な会社となり、銀行にとって最高のお客さんになる。
 政府の姿勢は一貫している。
 9月時点で、首相自ら染水対策をぶち上げたのは、10月にあった800億円の借り換えのタイミング。今回の東電の黒字決算も、12月の融資継続のためのシナリオに沿うものだ。
 官邸も経産省も原子力規制委員会も、東電がいかにひどいかを叩きまくっている。それで、国民やマスコミから、国がもっと前面に出ないとダメだ、と押される形を演出した。実は、これで国民は4兆円損をする。「前政権が」と民主党のせいにするが、その仕組みは自民党も一緒になって作った。

 (7)割りをくうのは、いつも国民だ。
 これまで、原発が動いていなくても、電力は十分に足りている。
 にもかかわらず、全国に50基ある原発の維持費は、電気料金に上乗せされ、家庭や企業が負担している。
 その学は1.4兆円(2012年度)。この莫大な費用を考えても、、事故リスクy、ありがとうございます。住民に不安を強いてまで原発を続ける理由はない。

 【注】東電は、フクイチの廃炉事業を「社内分社」の下で進めることを検討中。

□本田靖明・鈴木毅(編集部)「電力好決算のカラクリ 電力・政府・銀行「鉄のトライアングル」の思惑が透ける」(「AERA」2013年11月18日号)
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 【参考】
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【原発】米国の原発の相次ぐ閉鎖 ~費用対効果~

2013年11月20日 | 震災・原発事故
 (1)今年8月下旬、電力大手エンタジー社は、その運営するバーモントヤンキー原発(米バーモント州)を閉鎖することを決めた。
 同原発は、1972年に運転開始し、2011年に米原子力統制委員会(NRC)から20年間の運転延長を認められたばかりだった。
 同社は、閉鎖の理由として、収益の厳しい見通しを挙げる。
 今年5月に運転停止したキォーニー原発(ウィスコンシン州)も、2011年に20年間の運転延長を認められたばかりだった。
 同原発を運営する電力会社は、「純粋に経済性に基づく判断」とする。

 (2)原発は、福島第一原発事故まで、建設まで多大なコストがかかるが、運転を始めれば、その後の経費は他のエネルギー源に比べて安い、とされてきた。
 その構図が崩れたのだ。

  (a)最大の要因・・・・シュールガス普及により、火力発電の燃料となる天然ガスの価格が下がっている。
    天然ガスの価格は、2008年ごろに比べて3分の1程度になった。
    加えて、原発は認可から建設まで5~10年かかるが、天然ガス発電所は数年ですむ。
    石炭に比べて温室効果ガスの排出が少ない点も、天然ガスへの追い風になっている。

  (b)老朽化した原発は、維持管理費に経費がかかる。
    加えて、福島第一原発事故以後、追加の安全対策を求められる。
    地域によっては、風力発電と比べてもコスト面での優位性を失いつつある。

 (3)来年、バーモントヤンキー原発が運転停止すれば、米国で稼働する原発は99基となる。
 さらにあと何基か、早期閉鎖を迫られる原発が出てくる、と目されている。

 (4)新規建設は進んでいない。
 ブッシュ前政権時代、原発建設のための資金調達をしやすくする推進策が導入され、オバマ政権も引き継いだ。2007~09年には、30基近くの新規申請が提出された。
 ところが、昨年、34年ぶりに2ヵ所4基で建設・運転が許可されたものの、後続の見通しはない。
 使用済み燃料の最終処分場計画も、一向に進んでいない。周辺住民の理解は、ますます得にくくなっている。計画の取り下げも出ている。

 (5)「シュール革命」のおかげで、米国は天然ガスの生産が、ロシアを抜いて世界一になった(2009年)。2020年ごろには、石油生産でも、サウジアラビアを抜いて世界一になる。2030年ごろには、中東への石油依存はゼロになる。
 オイルショック以降の念願だった「エネルギー自給」が実現する見通しだ。
 その陰で、安全保障が揺るぎつつある。これまで米国が世界における原子力の平和利用推進と核物質の管理を主導できたのは、厳密な核不拡散の条件の下、各国に信頼させる技術、核燃料、サービスを提供できる能力があったからだが、原発の退潮により、原子力技術や核物質管理に新たなリスクを抱えこむことになった。
 2030年までに、中国、インド、ロシアが世界の原子力発電の4割を占める、と予測されている。

□行方史郎(朝日新聞ワシントン総局)「米原発の相次ぐ閉鎖」(「AERA」2013年11月18日号)
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 【参考】
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【原発】震度6でフクイチが崩壊する日 ~液状化~
【原発】東電による汚染と、東電の「汚染」 ~隠蔽体質~
【原発】太平洋に拡散する放射性物質 ~シミュレーション~
【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~
【原発】【食】魚への影響 ~過去・現在・未来~
【原発】銀行はボロ儲け ~汚染水に国費投入~
【原発】【食】関東の食材からセシウム ~安部首相的「安全」の実態~
【原発】最悪の事態を防いだ2つの幸運 ~失われた沃野と海~
【原発】汚染水を浄化できるか ~福島第一原発はどうなっているのか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(3) ~次の震度6~
【原発】今、そこにある汚染水危機(2) ~汚染水は海で薄められるか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~
【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~
【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~
【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~
【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~
【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~
【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~
【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~
【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~
【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~
【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~
【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~
【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出

【食】偽装表示と景品表示法違反 ~問題の本質が隠蔽~

2013年11月19日 | 社会
 (1)ホテルやデパートなど巨大組織になると、どうしても客の一人一人の顔が見えづらくなる。その分、消費者への責任感が希薄になっている。

 (2)今回明らかになった食品業界の体質を見ると、たとえ消費者の健康に関わるような問題でも、都合が悪いことは隠されてしまう危険性がある。
 加工肉を和牛ステーキと偽ったりする背景に、小売業と違い、レストランなどで提供される食品には表示義務がないことがある。
 レストランでは、シェフなどから材料や産地について、客が直接聞くことができる・・・・というのが表示義務のない理由の一つだ。しかし、店の人と客が親しいケース以外は、実態と乖離している。
 新しい食品表示法では、加工食品の栄養が表示義務化されている。

 (3)ブロイラーを地鶏と表示する(今回発覚した)など、実際よりも優良な製品に見せかける行為は、景品表示法の「優良誤認」にあたる。処分対象となる。消費者庁の措置命令に従わない場合、代表者は2年以下の懲役または300万円以下の罰金、事業者は3億円以下の罰金が科せられる。
 しかし、景品表示法は穴だらけだ。
 景品表示法で問題になっても、一時期騒がれるだけで、「もうやめました」「改善しました」と言えば、実際にはお咎めなし。やりたい放題なのだ。
 原材料をそのまま顧客に売っているスーパーは、まだ気を付けているほうだが、外食産業はザルだ。
 チェーンの居酒屋などは、そのあたりをよくわかっていて、「九条ネギ」と書かれたメニューに、小さい字で「シーズンによっては他の材料に切り替えることがあります」と書かれている。

 (4)産地や成分表示を厳しくチェックされてきたスーパーなどの小売りに比べ、外食産業は法の網の目が緩かった。
 バナメイエビだとか、加工肉の話は昔からあった。それが表示厳格化の流れのなかで表に噴出してきた。
 インジェクション(肉に脂を注入して人工のサシを造る技術)それ自体は悪くない。大手弁当チェーンのステーキ弁当には「やわらか加工を施しています」と注意書きが記されている。これが加工肉だ。
 インジェクションは、豚や馬肉にも応用されている。
 結婚式で、コース料理のメインに丸い筒状の牛のヒレ肉が出てくる。あれは、かなりの割合で成型している。本来、ヒレ肉はヒモ状の部位で厚みがまちまちなので、2本のヒレ肉を結着剤でくっつけてから、形を整えている。

 (5)どこまで客を騙す意図があったかはさて措き、表示と違う食材は、あらゆる食品に入っている可能性が高い。
 高島屋の後にも、三越伊勢丹、そごう・西武、東武、西武、松屋、丸井、東急、帝国ホテル、ホテルオークラでも同様の問題が発覚した。
 これが、スーパー、コンビニ、ファーストフード、食品を扱うネット通販に拡がれば、全国で謝罪返金騒動が起きる。

 (6)次々と行われる謝罪会見、トップの辞任。
 消費者が被害者なのは間違いないが、この騒動の結果、誰が得をするのか。
 この事件が収束した頃、食べ物の価格は高くなっているだろう。偽装表示ができなくなるから、採算がとれるまっとうな価格設定になる。普通に考えれば、和牛弁当が数百円で買えるはずはないのであった。

 (7)阪急阪神ホテルズの件で偽装とされた47品目のうち、景品表示法違反にあたる可能性があるのは、産地が異なるのに「桐島ポーク」とした件と、津軽鶏を「津軽地鶏」とした件くらいだ。【郷原信郎・弁護士】
 では、なぜここまで大騒ぎになったかというと、阪急阪神ホテルズのコンプライアンスと危機対応があまりに拙劣だったためだ。たとえば47品目を一覧表にしてしまったので、高級レストランでたくさん偽装が行われている印象を与えてしまった。実際は、ほとんどなかったのに。客の申告に基づいて返金したり、食事券を渡しているが、完全にやりすぎ。そもそも自分たちの料理の価値が損なわれたのではなく、表示の問題だったわけだから。高島屋のテナントが偽装したことにより、高島屋の幹部が頭を下げたが、これもテナントが個別に対応する問題だ。【同】

 (8)1社が過剰対応し、それが前例になると、続く各社はたとえ大して反省していなくても、とりあえず発表して頭は下げておこう、うるさい客にはカネを返そう、という発送になりがちだ。
 横並び謝罪によって、問題の本質が覆い隠されてしまった。それでいて、自らは偽装した、とは絶対に言わない。社長が何人か辞任したが、本当に悪いのは誰か、責任の所在がはっきりしない。これは学校がイジメを認めないのと同じだ。認めると処罰を受けることになるので、何が悪いのかはっきりさせない。要は、横並びで身を守ろう、というわけだ。【竹内洋・京都大学名誉教授】
 ここ15年間のデフレが、かかる習慣を食品を扱う業者に定着させてしまったのだ。バブルのころは、よりいいものを求める文化があった。それが、どれだけ高級感を出して、値段の手ごろ感を出すか、に移ってしまった。そして、ごまかしとなり、やがて誤表示となり、偽装となっていった。 

□記事「「食材偽装」緊急役員会議」(「週刊現代」2013年11月23日号)
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 【参考】
【食】食材偽装の真の原因 ~円安政策の犠牲者~
【食】消費者へお詫びしない体質 ~多発する食品偽装事件~
【食】中国から輸入している肉エキスの危険性
【食】「肥満の元凶」は小麦 ~ベストセラー『小麦は食べるな!』~
【食】偽装の背景 ~消費増税により偽装が拡大~
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【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出

【食】食材偽装の真の原因 ~円安政策の犠牲者~

2013年11月18日 | 社会
 偽装表示をしていた一部のホテルや百貨店は、「メニュー表記は取引業者を信頼して、あらためて確認しなかった」などと説明している。
 しかし、ホテルや百貨店に食材を納入している業者(下請けの食材業者)は、まったく違う説明をする。いわく、

 近年、食材の原価が上がってきている。
 にもかかわらず、ホテルや百貨店はデフレ下の競争で、年ごとに「価格を下げよ」と食材業者に求める。現に、納入価格は年々下がっている。
 最近は安部政権の円安政策のせいで、輸入品の原価がさらに上がってきた。
 食材の原価が上がっているのに、無理やり安い価格で納入しなければならない。しかし、品質を落とすことは認められない。
 こうしたどうしようもない矛盾の中で、食材業者はどう生きればよいのか。

 要するに、食材偽装の氾濫は、業界のズサンさ、いい加減さのため、というより、むしろ下請け業者の悲劇的な苦境の産物だった。

□田原総一朗「ホテル・百貨店を揺るがす食材偽装の「真犯人」は誰だ ~田原総一朗のギロン堂 751~」(「週刊朝日」2013年11月22日号)

   *

【食】食材偽装は消費行動が解決する

 (1)食材偽装問題は、悪いのはホテルや百貨店なので、厳罰で臨むべきなのは確かだ。
 しかし、規制のため新たな法律を作り、監視機関を設置するのはいかがなものか。そのコストを税金で賄うならば、消費者=国民の負担が増える。

 (2)レバ刺し問題もそうだが、経済原則から考えれば、政府が管理すべき問題ではなく、あくまでも個人が自分の判断で防衛すべき問題だ。
 理屈は資産防衛と同じ。資本主義は、常にハイリスク・ハイリターンだ。リスクを負うからリターンも高い。
 そもそも、「安くて、おいしくて、かつ安全な食材」など存在しない。どう考えても、トレードオフ(一方を取れば、他方は犠牲になる)の関係だ。
 <例>高島屋は「ブラックタイガーを車海老と誤表示した」などと発表し、そのように報道されている。・・・・が、車海老がどれだけ高いものかを認識していれば、高島屋の「フォション」といえども、あの値段で売ること自体が怪しい。「車海老のテリーヌ」が578円で販売されていた時点で「ダウト」だ。

 (3)「なんか違う」と気付いて、そんな商品は買わない。
 あるいは、「高島屋も落ちたものだ」と見限って、ほかの商品も買わない。
 そういう消費者行動をとることが、高島屋に危機感を抱かせ、つまるところ消費者サイドに有利に働く。
 それが経済原則だ。
 その経済原則に政府が介入し、税金を投入し、つまり国民がそのコストを負担するのは、明らかにおかしい。

 (4)そもそも、車海老とブラックタイガーの味の違いがわからない消費者が存在するのだ。
 倫理はさて措き、経済原則からすれば、そこに「誤魔化そう」とするインセンティブが働くのは明らかだ。
 ブランドイメージを壊したくない、という経営判断との軋轢が、そこにあるだけだ。
 食材偽装問題は、過剰反応は禁物だ。

□ぐっちーさん「食材偽装は消費行動が解決 ~ぐっちーさんのここだけの話~」(「AERA」2013年11月18日号)
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 【参考】
【食】消費者へお詫びしない体質 ~多発する食品偽装事件~
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【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~
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【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~

2013年11月17日 | 震災・原発事故
 (1)「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」(以下、「委員会」と略記)では、10月末から事故検証課題別ディスカッションが始まっている。6つの課題を順次検証する。
   <例1>シビアアクシデント(苛酷事故)対策
   <例2>地震動による重要危機の影響
 福島第一原発事故の原因が地震か津波か、まだ結論が出ていない問題にも切り込む。
 「委員会」における議論が全国の原発再稼働に大きな影響を及ぼすのは確かだ。

 (2)9月27日、泉田裕彦・新潟県知事は、柏崎刈羽原発の規制基準適合審査申請を条件付きで承認した【注】。
 ただし、再稼働が規定路線となったわけではない。
 10月6日、記者会見で、泉田知事は、「(今回の承認は)条件付きの仮承認」にすぎず、「再稼働申請の了承ではない」と強調した。「(県民の)『健康に影響がある被曝をしうる』ということになれば、『仮了承』は無効、フィルターベントは使用できなくなる」と説明した。

 (3)原発に係る新基準は、沸騰水型炉(BWR)に、「フィルター付きベント」(原子炉容器の圧力を下げる)の設置義務を課す。
 このため、東電は10月22日、この設備の本格工事に入った。
 だが、設置されても、「委員会」が、「ベント使用不可」という結論を下す可能性もある。

 (4)泉田知事は、「福島原発事故の検証が先」という立場を貫いている。
 地震原因説(原発事故が津波ではなく、地震で配管など重要機器が損傷したことが原因とする)に係る質問に対して、次のように回答している。
 「国民の多くの方が(フクイチで)一体、何があったかを知りたがっている。そのポイントの一つなのだろうと思います。今度、ディスカッションという形で専門家の委員の方々に深堀をしていただいて事故原因に迫ってほしい」

 (5)「委員会」委員の一人は、国会事故調の委員を務めた田中三彦・元原発技術者だ。いちはやく地震原因(損傷)説を提唱し、津波原因説を提唱してきた東電と対峙。
 「委員会」の検証課題別ディスカッションでは、「地震動による重要機器の影響」を担当し、この議論には東電も参加する(予定)。

 (6)廣瀬直己・東電社長は、9月26日の泉田知事との面談で、「第一ベント」(地上に配管)に加えて「第二ベント」(地中に配管)の設置も提案し、これが評価されて翌日の承認となった。
 にもかかわらず、津波原因説をとる東電は、第一ベントが完成すれば柏崎刈羽原発の再稼働は可能、という考えを採っている。
 しかし、地上の配管が地震損傷する可能性が無視できなければ、第一ベントだけでは不十分で、第二ベント完成までは再稼働は不可能となる。
 第二ベントは、設計に入ったばかりで、完成時期は数年遅れる。「来年からの再稼働」を前提に、金融機関からの融資を受けている東電の経営計画が崩れてしまうことになる。

 (7)新潟県中越地震(2007年)で発生した火災は、地震による配管損傷が原因だった。だからこそ、泉田知事は
  (a)「福島原発事故の検証が先」という立場を崩さず、
  (b)課題別ディスカッションで事故原因についても議論する場を設け、
  (c)第二ベントの設置を求めた。
 (b)が今後注目を集めるのは確実だ。地震原因説が採用されたら、耐震性強化が必要になるから、新潟を含め全国の原発再稼働に影響を及ぼす。

 【注】「【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~

□横田一(ジャーナリスト)「地震か津波か、原因に切り込む 新潟県で東電の福島原発事故検証がスタート」(「週刊金曜日」2013年11月15日号)
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 【参考】
【原発】東電が隠す放射能拡散のリスク ~4号機核燃料の搬出~
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【原発】東電が隠す放射能拡散のリスク ~4号機核燃料の搬出~

2013年11月16日 | 震災・原発事故
 (1)東京電力福島第一原発4号機の燃料棒取り出し作業が近く始まる【注】。
 一歩間違えれば「殺人兵器」と化した放射性物質が拡散する危険性がある。わけても危険なのは、使用済み燃料棒が持つ「超高線量」だ。

 (2)使用済み燃料が空中にあれば、近くにいる人は全員即死する。・・・・これは、東電の原子力技術課の課員が後輩に教えていることだ。
 昨年、試験的に取り出した新燃料は2、3mSvだったが、これが使用済み燃料にあてはまるわけではない。
 使用済み燃料の表面から放出されるガンマ線は、およそ2万Sv/時だ。【4号機を造った日立製作所がまとめた資料】
 あるいは、10万Sv/時だ。【原子力安全研究協会が作成した資料、経産省保管】
 もしくは、1千Sv/時だ。【東電】
 数字にバラつきがあるのは、冷却期間によっても線量が変わるからだ。

 (3)人は、7Svの急性全身被曝でほぼ100%死亡する。遮蔽されていない使用済み燃料は、人を即死させる「殺人兵器」と同じだ。
 燃料プール内の燃料は、すでに数年冷却されていることを差し引いても、まだ数千から数万のオーダーで放射線を出している。広島の爆心地は103Svだった。その100倍に匹敵する威力を持つものが使用済み燃料だ。ことほど左様に恐ろしいものを、壊れた4号機からだけでも1,331体(新燃料は202体)取り出さなければならない。
 しかも今回は、平常時の作業とは違い、水素爆発で壊れた不安定な原子炉建屋から搬出する、という大きなリスクがある(世界初の試み)。

 (4)使用済み燃料プールから共用プールへ移動する手順は次のとおり。
  (a)水中にある燃料ラックに収納されている燃料集合体(長さ4.5m)を専用の機械で1体ずつ掴み取り、同じく水中にある輸送容器のキャスク(長さ5.5m、直径2.1mの円筒形、重さ91トン)に詰める。
  (b)まる2日かけて22体を収納したら、キャスクを天井クレーンで吊り上げ、蓋締めと除染を行い、32m下の地上で待機するトレーラーに吊り下ろす。
  (c)50mほど離れた共用プールへ移動し、逆の手順でプール内の燃料ラックに収納する。
 (a)~(c)の1サイクルをこなすのに、東電によれば、だいたい1週間程度かかる。
 想定されるトラブルは、
   ①燃料棒を燃料ラックからスムーズに引き上げられるか。・・・・水素爆発の際、多くの瓦礫が燃料プールに混入した。大きなものは既に取り除かれたが、小さなものまで取りきれていない。ラックの中に挟まりこんだ瓦礫fが邪魔したら、抜き取りに時間がかかり、それだけで計画が後ろにズレ込む。
   ②100トン近くのキャスクが地上32mから落下する(大きなリスク)。クレーンで吊り下げているときに、大地震など不測の事態が起こらないとも限らない。・・・・1年に及ぶ作業の途中で、地震は確実に起こる。吊られているキャスターは、ワイヤーの長さによって固有周期がある。それと地震の持つ固有周期が同期してしまうと、一気に揺れ幅が大きくなる。建屋にキャスクがぶつかり、燃料が損傷したりすれば、放射能を帯びた希ガスが出る。中の燃料が溶融して漏出したりすれば、それこそ作業どころではなくなる。

 (5)使用済み燃料の移動に関わる作業は、3つに区分され、1サイクルを担当する作業員は総勢42~47人。作業は防護マスクと全面マスクという通常装置で行われる。
 震災前から炉心回りで働いているベテラン作業員にとっては手慣れた作業だ。作業員は皆、心配していない。だが、長期にわたる作業だ。人出不足から経験の浅い作業員が配置されるようになったら、その時が危ない。

 (6)仮に4号機の1,533体の抜き取りを無事終えても、メルトスルーして手が付けられない1~3号機には計,573体、5、6号機にも計1,934体の燃料が眠る。
 リスクを冒してでも、これらすべてを抜き取らなくては廃炉にできない。
 前途遼遠だ。 

 【注】東電の発表によれば、11月18日から燃料取り出し作業が始まる。【2013年11月16日付け朝日新聞】

□桐島瞬(ジャーナリスト)「東電が隠す放射能拡散、これだけのリスク いよいよ4号機核燃料の搬出が開始される」(「週刊朝日」2013年11月22日号)
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 【参考】
【原発】秘密裡に銀行が進める債権保全策 ~東電と経産省~
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【原発】最悪の事態を防いだ2つの幸運 ~失われた沃野と海~
【原発】汚染水を浄化できるか ~福島第一原発はどうなっているのか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(3) ~次の震度6~
【原発】今、そこにある汚染水危機(2) ~汚染水は海で薄められるか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~
【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~
【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~
【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~
【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~
【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~
【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~
【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~
【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~
【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~
【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~
【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~
【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出