ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

ラストジャンダルム「直登」

2021年04月23日 20時29分35秒 | Weblog
最大の難所と考えていたロバの耳の下りを終え、刹那ではあったがコルで一息ついた。
次は岩壁の直登となる。
見上げればほぼ90°にしか見えない岩の壁だが、下りと比較すればまだ気持ちは楽な方だ。
しかし往路において、この壁の途中で胸を強打してしまったという苦い事実を思い出した。
(「集中力を切らせてしまったんじゃないんだけどなぁ・・・」)
そう振り返りながら患部に手を当ててみる。
触れればやはり痛かった。

ここを登り切り馬の背を越えれば奥穂の頂が見える。
さぁ集中して登ろう!

一挙手一投足に集中、ゆっくりと動かしながら標高を稼いだが、(「ぶつけたのはどの辺りだったかな」)と、
何度か考えてしまった。
いかんいかん、今はホールド・スタンスポイント、そしてルートファインディングに集中だ。


途中に何とか立っていられるポイントがあり、N君が撮ってくれた。
こうして後から画像で見てもやはり「壁」だなぁとしみじみ感じる。

やがて壁を登り切り、フラットなポイントへと着いた。
「ふぅ~」と息をつく。
この先の馬の背に向けてここでも一息ついた。


振り返りジャンを見るN君、何を思う。


自分も撮ってもらった。
「あぁ登ったんだなぁ・・・。最後のジャンだったなぁ。」
などと感傷に耽ることはなかった。
まだまだ集中しなければならない危険ルートが続くからだ。

先を見れば馬の背の全容が見える。
そしてもう一度指先を向けながら「あそこを行って、次に左から回り込んで、でもって壁にしがみついて・・・」
将に現場に勝るイメージトレーニングはないと感じた。


手前の馬の背と奥の岩肌とが重なって見えるが、馬の背は完璧なまでのナイフリッジである。
ポイントによっては幅50㎝にも満たない岩の線だ。
それでいてどこかワクワク感は否定できない。
最後の馬の背になるであろうこれからを堪能する思いで挑みたい。

花盛り

2021年04月19日 23時01分51秒 | Weblog
ささやかながら庭があり、ささやかながらガーデニングを楽しんでいる。

暖かくなる春、色とりどりの花が咲き目を細めて見ている。
春の花とは言っても、残念ながらすべてを同時に咲かせることに無理はあり、特にチューリップは品種により少しずつ開花時期がずれて咲くようだ。

4月上旬、原種咲きのチューリップが咲き始めた。
娘が選んだ球根であり、この種が咲いてくれたことには娘への思いがある。
だから例年とは違った嬉しさがあった。


一番手前の小さな赤いチューリップと、左側の淡いピンク、そしてツンと伸びた黄色と赤の二色。
この三種が娘が選んだもの。
画像を添付し送ってあげた。


メインの花壇。
三列のパンジーがメインなのだが、周囲のアイフェイオンに完全に飲み込まれてしまっている(笑)。
まぁこれはこれで綺麗だと素直に思える。
しかし、4月上旬ではまだ通常のチューリップは咲いてはいなかった。


入り口横のごく小さな花壇。
恥ずかしいことを承知で綴るが、手前のオレンジのパンジーが一番好きな春の花である。
特に花びらの中央部分に焦げ茶色の「ブロッチ」が入っているものが好きなのだが、何故かオレンジパンジーのブロッチ入りのものは売られている店が少なく、売っていたとしても数が少ない。


休日の散歩ついでに撮った「宗次郎」。
相変わらず落ち着きのない犬だが、それがまた憎めない。


4月中旬になり、更に勢いを増してきた花々。


メインの花壇だが、アイフェイオンだけが目立ってしまった。


反対側からの画像。
チューリップも咲き、やっと揃ってくれた。

そして宗次郎とのいつもの散歩道。


八重桜が満開となり、日陰を作ってくれている。


狭い川を挟んだ対岸からの画像。
風の強い日には、花びらが我が家の庭にも舞い込んでくるが、決して迷惑だと感じたことはない。
コンクリート敷きの駐車場に花びらが落ちていれば、「モノトーンの下地にピンクの花びらか・・・いいもんだなぁ。」
などと柄にもないことを思う。
夏の花もいいが、暑さを感じる時期よりも暖かさを感じる春の花が好きだ。

つい先日、今年の夏もいつもの通りの花でいいかなと思いつつ、何か他に手軽な花があればと思い調べてみた。
ひとつ候補があった。
「アガパンサス」
聞いたことのない名前だった。
育成の手軽さもあったのだが、もう一つ候補に挙げた理由は「色」だ。
夏の花は白や黄色・青もあるのだが、圧倒的に濃淡様々なピンク・赤・オレンジ系が多い。
大好きな青系を植えたくても、せいぜいブルーサルビアかサフィニア程度だ。
アガパンサスは正確に言えば淡い青紫に見えるが、背丈もあり高低差を設けるにはもってこいかも知れない。
果たして苗は売っているかな・・・。

ラストジャンダルム「帰ろう・・・」

2021年04月18日 18時56分51秒 | Weblog
「○○さ~ん!」と声を掛けられ振り向いた。
瞬時にポーズを撮り一枚撮ってもらった。
おそらくはこれがジャンでの最後の写真になるだろう・・・。


今にして思えば、最後になるだろうから何かもっとカッコイイポーズでもとれば良かったかかと思う(笑)。


N君も最後にもう一枚。

テン場へ戻るコースタイムを考えればもう下りなければならない。
後ろ髪を引かれる思いでジャンを去った。
「いつまでも感傷に浸っていることは危険だ。気持ちを切り換えなきゃ。」
そう思いジャンの側壁にへばりついた。


撮ってくれるのはありがたいが、「ここで撮るのも最後かな」という思いが出てしまう。
いかんいかん!
集中しなければならない。

ロバの耳の下りとなった。
この下りの区間が今回最も慎重に、そして緊張を強いられた区間だった。
下れそうなルートが二つあった。
どっちを選択すべきか・・・。
暫し考え選んだのは左側のルートだった。
本来のルートなのだろうが、右からも行けそうな気がしてならなかった。
「登ることはできても下りるのはまた別」という当たり前のことがプレッシャーとなり、どうしても決めきれない。
「先ず俺が行ってみる。もし無理そうだったら戻って別ルートだ。」
そう言って下り始めた。
見えているスタンスポイントに脚が届くだろうか・・・。
届いてくれれば何とかなる。
その繰り返しだった。
岩を掴むホールドポイントでも何度か迷った。
「ここを掴めても次がどうか・・・」
迷いは言葉には出さなかった。
出せばN君にも影響が出てしまうだろうと思ったからだ。
できるだけポジティブに考え、表情だでも「次があるさ!」みたいな感じで下った。

「おっしゃぁ~! クリア!」
本音を言えばホッとした。

今度はN君の番だ。
上からある程度のポイントは見えていたから参考にはなるだろう。
自分は下からアドバイスを送った。


慎重にゆっくりと、ここは一番ゆっくりと動くべきポイントだ。


よっしゃ! 
そこまで下りればもう大丈夫だろう。

なんとか最大の難所をクリアできたことでお互い顔がほころんだ。
この先にも「馬の背」が待ち構えてはいるが、復路は馬の背を登ることになる。
だが下りと比べればやや楽になる。

ラストジャンダルム「Last Gendarme」

2021年04月04日 12時15分31秒 | Weblog
胸の疼きのことはすっかり忘れていた。
確かにずっと痛みはあったのだが、この時ばかりは柄にもなく物思いに耽っていた。

(「もうこの景色をこの場所から見ることはないだろうな・・・」)
体力の衰えは感じてはいるが、技術的な意味ではまだ自信はあった。
だが、そろそろ危険な登山はやめるべきなのかも知れないという思いが芽生えていた。
理由は色々あるのだが、最たる理由は年齢だろうか。
学生時代から30代後半までずっと続けてきたバレーボールの無理が、この歳になって一気に節々に現れてきたような気がする。
膝は過去4度同じポイントにメスを入れた。
足首は靱帯断裂で人工靱帯を入れている。
肩も腱が2本切れてしまい大がかりなオペとなった。
そして腰。
20代の頃に椎間板症と言われ、ずっと時限爆弾を抱えた状態となっている。

体は正直だ。
つい5年前の自分と比べても登山における体力の低下も否定できないし、そう感じている。
自分のためだけではなく、妻のためにももう無理な登山はすべきではないだろう。
だから今日この時、今が “Last Gendarme” でいいのかも知れない。

絶景を見つめながら煙草を吸うこともなく、そんなことを考えていた。


N君がいつの間にか撮ってくれた画像。
この時ばかりはちょっとメランコリーだったが、復路に向けて気を引き締め直さなきゃならない。