なかなか寝付けなかったが、ひそひそ話の声よりも睡魔が上回ってくれたおかげでいつしか眠りに就いてしまったようだ。
翌朝は5時起床の予定だったが6時に変更し、7時小屋発とした。
早朝6時丁度に起き、軽く朝食を済ませた。
ガサゴソとどうしても音は出てしまうが、深夜まで明かりを灯しおしゃべりをし続けているよりはまだ自分たちの方がまともだろう。
身支度を済ませアイゼンを装着した。
小屋のドアを開けた途端、予想していた通りの光景が目の前に広がっていた。
ストロボ撮影でこの有様だ。
ガスと降雪と猛烈な風が吹き荒れている。
やや心が挫けそうになってしまいそうな天候だったが、無理はせず行けるところまでは行こうとなった。
夜明け前の雪山は夏山と比べて怖さを感じる。
ましてやこれだけの強風、そして雪は雨まじりのみぞれ状態だった。
トマ・オキのPEAKは避けて「一ノ倉岳」山頂を目指す。
まだほの暗い雪山はルートファインディングのミスを誘発しやすいだけに、地図とコンパスで現在地と進行方向を確認しながら進むことがより大切になってくる。
幸い例年よりも降雪量が少なかったこともあり、夏道に設置してある分岐点の指標はヘッデンの灯りで確認することができた。
ヘッデンの光量を強くしてはいるが、ガスの濃さによっては有効視界は15mほどになっていた。
「早く日の出になってくれないものか・・・。そうなれば少しは安心できるんだけど・・・。」
アルパインジャケットとザックに間断なく大粒の雨が当たる音がする。
かなりのみぞれであることがわかるが、同時にこの強風が盛んに不安を煽っている。
お互い殆ど会話はなく、無言でひたすら一ノ倉岳を目指した。
ほどなくして「浅間神社奥ノ院」に到着した。
冬期に登頂してこの鳥居を目にしたことは殆ど無かった。
ましてやこれだけはっきりと鳥居全体が雪に埋もれていない状態の時など記憶がなかった。
「まぁ目印にはなってくれるから、これはこれでありがたいかな(笑)」
この時は声にこそ出さなかったが、表情だけは笑っていたような覚えがある。
しばらくは稜線づたいに進むのだが、みぞれはほぼ雨へと変わってきた。
下界にいても冬の雨の冷たさはそれなりのものであるわけだから、ここ標高約2000mでの雨の冷たさときたらたまったもんじゃなかった。
「せめてこの風だけでも収まってくれれば助かるんだけどなぁ。」
ずっとそう思いながらも足だけは動かし続けていた。
比較的安全なポイントや区間はN君に先導を譲った。
これもルートファインディングを初めとした経験に繋がる。
右に寄り過ぎさへしなければ大きな危険は無いだろうし、後ろからアドバイスもできる。
ただ、何もこんなことをしてまでも経験値を積む必要は無いのかも知れない。
もっと天気の良い時にすればいいだけなのだろう。
ふと気付けばヘッデンの灯りも必要のないくらいに明るくなっていた。
これはこれで大変助かる。
いくらガスが濃いとは言え、ある程度は視界が効くだけにあとはコンパスで進行方向を確認すればよい。
それでもこの雨と強風だけは止まないだろうなぁ・・・。
トレースなどはもとより無く、足元の踏み抜きにはかなりの注意が必要だった。
「踏み抜きに気をつけて進む方向を間違わなければ大丈夫だ。」
そう言い続けながらアップダウンを繰り返し稜線を進む。
風が一層強さを増してきたようだった。
スタートした時よりも体が大きく煽られる。
今はまだ地形的にも助かってはいるが、一ノ倉の頂上稜線に出たらどれほど煽られることか・・・。
無理はできないかもしれない。
そして休憩も必要であることは分かってはいたが、この寒さの中で短時間とはいえじっとして動かないでいる事の方がかえって低体温症になりかねないような気もした。
翌朝は5時起床の予定だったが6時に変更し、7時小屋発とした。
早朝6時丁度に起き、軽く朝食を済ませた。
ガサゴソとどうしても音は出てしまうが、深夜まで明かりを灯しおしゃべりをし続けているよりはまだ自分たちの方がまともだろう。
身支度を済ませアイゼンを装着した。
小屋のドアを開けた途端、予想していた通りの光景が目の前に広がっていた。
ストロボ撮影でこの有様だ。
ガスと降雪と猛烈な風が吹き荒れている。
やや心が挫けそうになってしまいそうな天候だったが、無理はせず行けるところまでは行こうとなった。
夜明け前の雪山は夏山と比べて怖さを感じる。
ましてやこれだけの強風、そして雪は雨まじりのみぞれ状態だった。
トマ・オキのPEAKは避けて「一ノ倉岳」山頂を目指す。
まだほの暗い雪山はルートファインディングのミスを誘発しやすいだけに、地図とコンパスで現在地と進行方向を確認しながら進むことがより大切になってくる。
幸い例年よりも降雪量が少なかったこともあり、夏道に設置してある分岐点の指標はヘッデンの灯りで確認することができた。
ヘッデンの光量を強くしてはいるが、ガスの濃さによっては有効視界は15mほどになっていた。
「早く日の出になってくれないものか・・・。そうなれば少しは安心できるんだけど・・・。」
アルパインジャケットとザックに間断なく大粒の雨が当たる音がする。
かなりのみぞれであることがわかるが、同時にこの強風が盛んに不安を煽っている。
お互い殆ど会話はなく、無言でひたすら一ノ倉岳を目指した。
ほどなくして「浅間神社奥ノ院」に到着した。
冬期に登頂してこの鳥居を目にしたことは殆ど無かった。
ましてやこれだけはっきりと鳥居全体が雪に埋もれていない状態の時など記憶がなかった。
「まぁ目印にはなってくれるから、これはこれでありがたいかな(笑)」
この時は声にこそ出さなかったが、表情だけは笑っていたような覚えがある。
しばらくは稜線づたいに進むのだが、みぞれはほぼ雨へと変わってきた。
下界にいても冬の雨の冷たさはそれなりのものであるわけだから、ここ標高約2000mでの雨の冷たさときたらたまったもんじゃなかった。
「せめてこの風だけでも収まってくれれば助かるんだけどなぁ。」
ずっとそう思いながらも足だけは動かし続けていた。
比較的安全なポイントや区間はN君に先導を譲った。
これもルートファインディングを初めとした経験に繋がる。
右に寄り過ぎさへしなければ大きな危険は無いだろうし、後ろからアドバイスもできる。
ただ、何もこんなことをしてまでも経験値を積む必要は無いのかも知れない。
もっと天気の良い時にすればいいだけなのだろう。
ふと気付けばヘッデンの灯りも必要のないくらいに明るくなっていた。
これはこれで大変助かる。
いくらガスが濃いとは言え、ある程度は視界が効くだけにあとはコンパスで進行方向を確認すればよい。
それでもこの雨と強風だけは止まないだろうなぁ・・・。
トレースなどはもとより無く、足元の踏み抜きにはかなりの注意が必要だった。
「踏み抜きに気をつけて進む方向を間違わなければ大丈夫だ。」
そう言い続けながらアップダウンを繰り返し稜線を進む。
風が一層強さを増してきたようだった。
スタートした時よりも体が大きく煽られる。
今はまだ地形的にも助かってはいるが、一ノ倉の頂上稜線に出たらどれほど煽られることか・・・。
無理はできないかもしれない。
そして休憩も必要であることは分かってはいたが、この寒さの中で短時間とはいえじっとして動かないでいる事の方がかえって低体温症になりかねないような気もした。