ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

雲龍渓谷 「期待が膨らむ」

2022年05月21日 23時13分58秒 | Weblog
稲荷川を数回渡渉すると、軽いアップダウンを数回繰り返しながら進むルートになる。
この辺りからアイゼンの必要性が高まってくる。
軽アイゼンでも良かったのだが、久しぶりの積雪ルートでもあり今日は本格的な12本爪アイゼンとした。
実を言えば、渓谷だけなら軽アイゼンでも特に問題はないのだが、氷柱があるポイントから先へのルートとなると急に斜度が増し、危険なルートへと変わる。
12本爪がここからものをいうことになる。


距離は僅かだが、そこそこ急な下りのポイント。
ここで滑ってしまうと結構やばいことになりかねない。

再びの渡渉の後に斜面を登るのだが、冬期以外にここへは来たことがないので無雪期は一体どうやって登るのだろうといつも思う。
雪があるからこそ登攀できるようなポイントだ。
さぁここさへ登り切れば通称「広場」と呼ばれるポイントへと着く。
そうなればいよいよ氷の世界へと突入だ。

広場で一端休憩した。
ここにザックをデポし雲龍瀑まで往復してから昼食を食べることも考えたが、久しぶりの雲龍だしどうせなら氷の世界の中で昼食をとる予定とした。


広場から見た「友知らず」「氷柱」「雲龍瀑」方面。
画像では小さくて良く見えないが、友知らずの氷壁が目視できた。
いよいよだという期待感に胸が膨らむ。
「どうか大きく発達していますように」
と、祈る思いだった。

積雪だけでなく、アイスバーン混じりの階段を降りる。
ここはかなり危険なポイントだ。
一度スリップしたら途中で止まることは先ず無理で、大きな怪我にも繋がりかねない。
慎重にゆっくりと下る。
そして三度(みたび)河川敷の様なルートとなるのだが、ほぼ雪で覆われており、おそらくこの下は川が流れているのだろうと推測できるポイントもある。


肉眼でもはっきりと友知らずの氷壁が確認できた。
写真映えするスポットでもあり、人も多い。

「今年はいい感じだね」
「たくさん写真を撮りたいですよ」
少々浮かれ気味の二人だったが、この時季限定の自然の造形美だけに無意識で顔がにやけてきてしまう。

進行方向左手の岩壁に張る氷の壁。
そこは通称「友知らず」と呼ばれている。
自分が初めてここを訪れた頃は、距離にして100m程の氷壁だったが、ここ数年はそのような長い距離までは発達することはなかった。
これも暖冬、或いは地球温暖化との関係だろうか・・・。


友知らず入り口付近の氷壁。


アップにした氷壁。

対岸に行かなければこの氷壁に触れることはできないので、もう少し進んで渡渉できるポイントを探すことにした。
実に楽しみだ。 

雲龍渓谷 「二年ぶりの雲龍渓谷」

2022年05月16日 00時14分11秒 | Weblog
自分の山仲間にO氏という男性がおり、仕事の関係で約三年間アメリカへ行っていた。
コロナ禍の影響もあり向こうではなかなか大変だったようだが、やっと帰国となりすぐに自分に連絡をくれた。
開口一番「どこか山に行きましょうよ」。
時期も時期であり、日帰りの雪山となれば行き先はかなり限定される。
まぁ帰国後すぐでもあり、お手頃な場所として選んだのが日光の奥地にある「雲龍渓谷・雲龍瀑」。
雪山と言う程のものではないが、体慣らしには丁度良いだろうと即決した。
しかし、仕事の都合上どうしても土日しか行けない。
混み合うことは必至。
でも行きたい・・・
できるだけ朝早く出発すれば大丈夫だろうと思い、2月5日の土曜日早朝5時に集合し日光へ向け出発した。

さすがにこの時季の早朝は寒かった。
好天が予想されるだけに、尚のこと寒さを感じながら車を走らせる。
車内は暖かいが、現地に着き車外で身支度・装備を整える時は指先が悴んだ。

スタート周辺はまだそれほど積雪はなく、アイゼンは不要。
だがアイスバーンのエリアも多く、何度も転びそうになった。


稲荷川に架かる堤防を渡り対岸の登山道を歩く。
この辺りはまだ人はまばらだった。

雲龍渓谷と雲龍瀑へ向かうルートは大きく二つあり、一つはつづら折りの坂道を一時間程掛け標高を稼ぎ進むルート。
もう一つは、一気に標高を稼ぐことはないがルート状況に変化が多いルート。
ここしばらくは後者を目的地へのルートとして決めている。
理由は簡単で、それなりに変化があることで飽きることがないからだ。

しばらくは稲荷川を見下ろすようにして川沿いを歩く。
徐々にだが標高を稼ぎ、やがて稲荷川の広い河川敷へと出る。


稲荷川河川敷。
ここまで来ても思っていた以上に積雪量は少なかった。
雲龍渓谷はまだ先だが、こんな雪の量で渓谷は大丈夫だろうか。
そして雪よりも氷の発達状況はどうだろうか・・・。
事前に調べた限りでは、氷(氷柱や滝)は例年よりも発達しているとのことで安心していたのだが、一抹の不安を覚えながら川を横断した。

本来の登山道へと合流し、次に向かうのは「洞門岩」と呼ばれるポイント。
殆どの場合、ここでアイゼンを装着する。
洞門岩が近づくに連れ、積雪量は増えていった。
嬉しい限りであるが、嘗ての状況を知っている自分にとってはまだまだ不十分な量だった。

O氏のアメリカ在住時の話を聞きながら歩いた。
日本にいた頃程山には登ってはいなかったが、山そのもののスケールはとてつもなく広大だったそうだ。
日本の山しか知らない自分にとっては、たとえ有名な山でなくても一度はトライしてみたい思いに駆られる。
そんな話をしながらやっと洞門岩へと到着。
さすがに土曜日、それなりの登山者が休憩を兼ねアイゼンを装着していた。
今シーズンアイゼンを装着するのはまだ三度目で、決して多いとは言えない。
しかし心は躍る。
大自然の美しさは冬が一番だからと思っているからだ。
冬の厳しい寒さの中にこそ自然の美しさが映える。
もちろん夏山よりもリスクは高く大きいが、そのリスクを乗り越えてこそ見ることができる造形美がある。
ただし、決して無理は禁物だ。


洞門岩にてアイゼンを装着。
実は数年前のこと、この先で遭難事故が起き残念ながら亡くなられた人がいる。
「なんでこんな程度のところで・・・」と思ったが、こんなところで起きるのが自然の怖さでもあると改めて痛感した。


アイゼンを付けると「いよいよだ」という思いになり身が引き締まる。
安全のためでもあるが、このギアがなけれ辿り着けない場所でもあるということに他ならない。
慎重に、そして楽しく行こう。


再度、稲荷川へと下り渡渉する。
本来ここは川の中であり、冬期であるが故に渡渉程度で済んでいるに他ならない。
この先まだ数回は渡渉しなければならないポイントがある。
バランスを崩さず落ちないように注意が必要だ。

北八ヶ岳 「畔にて」

2022年05月09日 23時28分21秒 | Weblog
高見石小屋から白駒池への下山ルートは、やはり殆ど日の差すことのない樹林帯だった。
だが気持ちとしてはそれほど辟易することもなかった。
これも小屋の裏山から見下ろしたあの景色のおかげだろう。

池までは約30分程度、登山という程のレベルではないだけに、スニーカーで登ってくる人も多くすれ違った。
「池に着いたらゆっくり珈琲を飲みたい」
そう思いながらのんびりと下山。
やがて湖面らしき光の反射が木々の隙間からのぞき見ることができた。

畔に佇む「白駒荘」。
登山者だけでなく、観光目的で利用する人も多い。
その小屋の裏手に下りてきた。
紅葉も盛りとだけあって、むしろ観光者の方が目立った。
池の畔を目指して歩く。
皆カメラを手に歩いている。
「これを目にしちゃ誰もそうだよなぁ・・・」と納得するには十分すぎる美しさが広がっていた。


風はごく微風で湖面の波は殆ど無い。
雲も無くピーカンであることで、水面の青と空の碧とが実に美しいハーモニーを奏でていた。
そしてその青と碧との境界線を作るようにして伸びている緑と紅葉。
飽きることなく堪能することができた。


少し歩いただけでまた違った風景を愛でることができた。


同じポイントからでも、ちょっと角度を変えただけでまた違う景色にも見えてくる。

この辺りにしようと思い、ザックからバーナーを取り出しお湯を沸かし始めた。
今日はこの時のためにと思い、スティックタイプのインスタントではなく、ドリップ珈琲も用意してきた。
天候に恵まれたこともあり、美しい景色を眺めながらの珈琲ブレイクは実に贅沢なひとときだった。
「おいしそうですね。いい香りがしてきますよ。」
と嬉しい言葉を掛けてくれた方もいた。
そんなこともあり、煙草を吸いたかったがここでは我慢した(笑)。

珈琲を飲み終え駐車場へと向かったが、その途中でもシャッターチャンスと思えるポイントがあった。


紅葉をより間近に感じることができる。

そして以前に訪れた時に知ったお気に入りの場所。
ごく小さな休憩用の小屋になっており、ここから眺める風景が忘れられなかった。


自分が山に持って行くのはコンパクトデジカメ。
自分に知識と技術と一眼レフカメラがあれば、もっと素晴らしい景色を撮ることができるんだろうなぁと思いながら畔を後にした。

今回の山行は、ごく軽めの北八ヶ岳縦走。
縦走と言える程のものではないかも知れないが、飽きる程の樹林帯も今となっては良い思い出となっている。
年に一度くらいは、時季限定ならではの紅葉目的の登山もかえってリフレッシュになってくれた。

北八ヶ岳 「見たかった風景」

2022年05月08日 21時39分47秒 | Weblog
やや辟易としながらも高見石小屋へと着いた。
この山小屋の名物は「揚げパン」。
一度は食べてみたいと思ってはいたが、それよりも今回の山行の第一の目的は、この小屋のすぐ裏手から見下ろす風景を愛でることにある。
「花より団子」ではなく、「揚げパンより景色」だろうか。

ザックを小屋にデポし、裏手にある小高い岩山を登った。
登ると言っても時間にして僅かに数分でその場所にたどり着く。
多くの人で賑わってはいたが、どうしても見たかった景色はすぐに視界に入ってきてくれた。
天候に恵まれたこともあり蒼空と紅葉の入り交じった樹林帯とのコントラストが素晴らしかった。


白駒池を見下ろす。
スタート地点がよくわかるし、ルートは見えないまでも、地図を基に見比べれば自分が登ってきたルートがどの辺りかは見当が付いた。

これが見たかった。
ただ見るだけなら、白駒池から直接この小屋へ登ってくればいいのだが、それじゃあまりにもあっけない。
ため息混じりで越えてきた樹林帯を越えてきたからこその感動があった。


別角度でもう一枚。

岩の上に座り、しばしこの景色を眺めた。
人気のポイントとだけあってあまりの登山者の多さに喧噪っぽささへ感じる程にぎやかだが、まぁ致し方あるまいか・・・。
それでも十分満足できる風景に、小屋に戻ってからすっかり揚げパンのことを忘れてしまいそのまま池まで下山。
途中で「あっ、揚げパン!」と思い出したが、また登り返すのが億劫で池へと向かった。

白駒池には、また素晴らしい景色が待っていてくれた。

北八ヶ岳 「三度目の樹林帯」

2022年05月06日 21時38分44秒 | Weblog
中山展望台で思い切り「伸び」をさせてもらった。
時間にゆとりはあったが「そろそろ・・・」と思い高見石小屋へと向け下山開始。

地図上では、高見石小屋へは一本道のルートでほぼ真北へと標高を下げる。
一応地図記号で周囲を確認した。
もう嫌な予感しかしなかった。
「またあれか・・・」
自然の中のルートであり、どうすることもできないことはわかりきったことだったが、それでもため息が漏れた。
「まっ、行くしかないか・・・」
諦め・・・と言うよりは半ば「もうどうでもいいか」という思いに近かった。


この辺りはまだ日が差しており、ましな方(笑)。

周囲の状況はもうどうでも良かった。
ひたすらに標高を下げ小屋を目指すことにした。
しかしいくら進めど一向に変化は無し。


徐々に日も差さなくなってきた。
この時、ふと石川啄木の短歌を思い出した。
決して氏の歌を揶揄するわけではないということをお断りしておく。

「下れども下れども 猶わが周囲明るくならざり ぢっと空を見る」

苦手なコース状況に耐える・・・のではなく、「気にするまい」の心境だった。
小屋に行って一息ついて、早く白駒池を見下ろすポイントで絶景を拝みたい。
その一点のみだ。


途中にあった「オコジョの森」
どうでもよくなってきている(笑)。
唯々樹林帯、唯々苔むす森、唯々段差のある岩を下る。
そしてやっと、本当にやっとルートがフラット気味になってきた。
高度計と地図で現在地を確認した。
「おっ、もうすぐそこだ!」
小屋は近いと確信できた。

展望台から小屋までの一般コースタイムは約40分となっているが、時間は一切気にせずダラダラと下ってきた。
おそらくは一時間程かかったのではないだろうか。


遂に高見石小屋に到着。
数時間を掛けここまで辿り着いた様な感覚となっていた。
さて、気分転換を図らせてもらおう。

北八ヶ岳 「思い切り・・・」

2022年05月02日 21時53分24秒 | Weblog
分岐点から中山展望台へはひたすら登りとなっている。
やや息が切れそうにもなったが、展望台と言われているその所以に期待に胸が膨らむ思いだ。

空が見える。
一切の雲がない碧い空が見えている。
「もうすぐもうすぐ」と心の中で呟きながら一歩、そしてまた一歩。


今までとは明らかに違う樹林帯の様子に、展望台が近づいてきているのがわかる。

遂に遮るものなど何もないその地に登ってきた。
「よし、写真を・・・」と思ったが、それよりも空を見上げ無性に深呼吸がしたくなった。
大きく高く両手を挙げ、ゆっくりと深く息を吸い吐いた。
当たり前のことだが、心底空気が美味いと感じた。
そして、しばしその開放感溢れる景色に魅せられた。


中山展望台の指標。
少し奥まで歩きもう一度深呼吸をした。
「来て良かった」
素直にそう思える。


これほど広いとは・・・
事前の画像検索で見た以上の広さを感じた。
ここに来るに至るルートの約9割は鬱蒼とした樹林帯の中だった。
嫌気が差してくる程の思いに駆られながらも、その思いから一気に解き放たれたような感覚だった。


太陽の位置から見て、おそらくは天狗岳の双耳峰。
そのほぼ反対側には蓼科山も見えた。

平日ということもあってか、登山者はそれほど多くはなかったが昼食を食べている人が殆どだった。
「そうだよねぇ・・・ここで食べたら美味いだろうなぁ。」
としみじみ思える。
予定では、下山し白駒池の畔で昼食をと考えていたのだが、こんな景色を見せられては(魅せられては)、ここで食べなきゃ損だ。
即決だった。

適当なポイントを見つけ腰を下ろし、お湯を沸かした。
先ずはゆっくりと珈琲を飲みたい。
飯はそれからだ。

いつもはどれほど絶景の景色の中でも、「まだ途中だ」「後半戦が待っている」「無事下山しなきゃ」と、何処かに緊張感を抱いたまま心からのんびりゆったりとした食事ができることはあまりない。
せめて今回くらいは時間を気にせず、これからのルートのことも気にせず景色を味わいながら食べたい。

高見石小屋へ向けての下山前に、近くにいた方にお願いして一枚撮ってもらった。

気分も腹も満たした。
さて、のんびりと下山だ。