ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

庵滝:まさかだよなぁ

2019年05月30日 23時26分52秒 | Weblog
21時を過ぎてシュラフに入り眠りに就いた。
しかしこの後「まさか・・・」の事態を経験することになった。

目が覚めた。
風の音すら聞こえない静まりかえった深夜だ。
時計を見るとまだ11時を過ぎたばかりだった。
目が覚めた理由はたったひとつ。
寒さだった。

「まさかだな・・・」
そう思いながらもまだ眠気が勝っており目を閉じる。
再び何度も寒さで目が覚めた。
背中、そして下半身に寒さを感じる。

夏の低山において暑さで眠れなかったことはあったが、それよりも寒さで眠れない事の方が遥かに辛いことは何度も経験しておりわかりきったことだ。

「まさかだよなぁ。標高だって1600mくらいしかないのに・・・。こんなに寒さを感じるなんて想定外だよ。」
そう思いながらも何ら寒さ対策を取ることはなく、「どうせ眠れるだろう」と現状を軽視していた。

数日前の準備の時。
天気予報、標高、そして今までの経験を踏まえて寒さへの備えをした。
「シュラフカバーか・・・。たぶんいならいなぁ」
とザックへは入れなかった。
貼るタイプの使い捨てカイロは必要と思い準備はしたが、まさかシュラフカバーまではと深くは考えなかったのだ。
それが本当に「まさか」となってしまった。

シュラフの中で両足を抱え込むようにして体を小さくし、寒さへ対抗したがどうにもならなかった。
「どうせ眠れるだろう」という浅はかな推測は脆くも崩れ、背中の寒さは増す一方のようにさへ感じた。

「やっぱり無理か」
ヘッデンの灯りを付け、シュラフから上半身を出しガサゴソとザックの中をあさりはじめた。
取り出したのは予備のフリース。
だがこれだけでは厳しいかなと思い、結局はアルパインパンツをはき、アルパインジャケットを着て再びシュラフへと潜り込んだ。
結局はありったけの衣類すべてを着込んだことになる。
こんなことまでしたのは本当に久しぶりのことだった。

多少は窮屈感は感じるが、僅かでも温かい方が当然眠れる。
「まさかだよなぁ・・・」
何度もそう思いながらもやっと熟睡できたのは3時過ぎだった。


おかげで翌朝は7時過ぎまで目が覚めることがなく、予定していた起床時刻をオーバーしてしまった。

庵滝:作ってくれた人への感謝

2019年05月22日 23時14分33秒 | Weblog
時刻はなんだかんだで17時を過ぎてしまっていた。
決して慌てることはないのだが、できれば暗くなる前に水作りを済ませのんびりと食事をする。
これが予定だった。
「まっ、いいか。どうせ俺一人だし・・・」


持参してきた水が約2リットル有り、融雪で3リットルも作れば十分だった。
3リットル程度であればそう大して時間はかからなかった。
「よっしゃ、次は飯だ。」

かなりの空きっ腹状態。
早速夕食作りに取りかかった。
今夜のメニューは冷凍食品をメインにしたもので、チャーハン、ビーフシチュー、コンソメスープ。


レトルトのビーフシチューを温めておき、冷め切らぬうちにチャーハンを炒める。
調理時間は10分を予定している。


大好きなビーフシチュー。
レトルトだが、味は試し済みでなかなかいける。
残念ながら肉が少なめだったこともあり、ここはいつものコンビーフで肉増し!


お湯で3分温めた後はフライパンでチャーハンを炒める。
実はこのチャーハンの量は、自分が持っているフライパンの大きさで何とか一気に炒めることができるギリギリの量だった。
再度ちょっとだけビーフシチューを温め直し、後は固形コンソメをお湯で溶かせばすべて完成。

細かなことになるが、実は今夜のコンソメスープはいつものものとは少し違っている。
固形のコンソメだけでなく、そこに固形のブイヨンを合わせて溶かし作ってみた。
これがまた美味いのなんのって!
肉の旨味がギュッと詰まったスープになってくれた。
何のことはないささやかなことだが、登山、特に雪山においては実に嬉しいことなのだ。


テントの中にいい香りが充満している。

ではいただきます。 m(_ _)m


いつも感じることだが、家を離れ山の中で調理をし食べる。
女房の作ってくれる料理とはあまりにもかけ離れたメニューではあるが、それでも食のありがたみと美味さをしみじみと感じさせてくれる。

食べながらこんなことを思った。
食事をすることさへも普段は空気のような存在にしか感じないこともある。
非日常的な状況の中で自分で作り食べれば、そりゃぁ美味くて当然だろう。
だからこそ「美味しかったよ」の一言を何故「いただきます。ごちそうさま。」と同じように言えないのか。
今更の「照れ」もあろうが、自分を反省しながらの食事となった

珈琲カップを手に、外へ出て一服した。
当然のことながら寒い。
厚手のダウンジャケットを着ていても体の芯から寒さを感じた。


風はない。
木々の枝葉に積もった雪が時折落ちる音だけが聞こえたが、無音の世界と言ってよいかもしれない。

一服を済ませそそくさとテントの中に入った。
後片付けを済ませ、明日の朝食の準備をした。
「少し呑もうかな」
そう思い、バーボンと酒肴を探し出す。
ふと目に付いた文字。


「北方稜線行く!!」

いつだったか、まだ北方稜線へと足を踏み入れていなかった頃、テントにピンホール程の穴が空いていることに気づき、慌ててテーピングテープで補修した記憶がある。
その時に何故が「北方稜線行く!!」と書き記したものだった。
本来は下山後に本格的に修理すべきことだが、あの時の「思い」をそのまま残しておきたくて、未だ文字が書かれたままのテーピングテープを剥がさずにいる。

いい歳したオヤジが・・・
と、笑ってしまった。

庵滝:テン場を決めなきゃ

2019年05月11日 23時21分09秒 | Weblog
展望台からすぐ車道へと出て広い道を歩き始めた。


途中数名の登山者とすれ違い挨拶を交わす。
「今から庵ですか? 凄い荷物ですね。ひょっとしてテント泊ですか?」
ズバリの質問だったが「ええ、のんびりと楽しんできます。」と答えた。

ほどなくして「弓張峠」へと出た。
ここで車道ともお別れだ。
ここから先は一般の登山道ではなく、冬期のみのルートとなる。
広義で言えばバリエーションルートには違いないが、いたって楽なルートでありトレースもしっかりと残っていた。


庵滝へと向かうルート。
徐々に勾配が増しては来るが息が切れる程のものではない。

事前の下調べで分かってはいたが、問題はどこにテントを設営するかだ。
滝に近ければ近い程翌日は楽にはなるが、設営できる場所が無くなってくるらしい。
わずかに一張り程度のスペースがあればよいのだが、問題はスペースだけではない。
様々な面で安全を第一とし、安心して眠りにつけることが重要となる。
さすがに雪崩の心配はないが、夜中に鹿が現れてテントの周りをウロウロされることは避けたいと思っている。
こんな人里離れた雪山の中、真夜中に雪を踏む足音が聞こえただけでシュラフを頭からすっぽり被って不気味さと怖さに耐えなければならない。
動物の足音だろうという推測はできるが、やっぱり怖さが勝るだろう。


「さて、どの辺りにするか・・・」
なかなか決まらない。
「もう少し行ってみよう」と、なんだかんだで滝に近いポイントになってきた。

アップダウンが出るようになってきた。
「いい加減決めなきゃ・・・」
ルートから10m程離れた場所に比較的フラットなポイントを見つけた。
近づいて設営できそうか否かを確認した。
「よし、今夜はここで雪見酒だ」

早速ザックを下ろし、スノーシューで雪慣らしを始めた。
「おぉ~こりゃぁ早い。」
いつもはブーツだけで雪面慣らしをしているだけに、あらためてスノーシューの利便性を実感した。
あまり好きではないスノーシューだったが、この時ばかりは感謝だった。

続いてスコップで雪面を叩いて仕上げに移った。
せっかくなので、暗くなる前に自動でパチリ。


時刻は15時を過ぎている。
設営さへ終われ後はのんびりと融雪して水作り。
そして夕食作り。
でもって月と雪景色を愛でながらちびりちびりとやる。
そんな贅沢なひとときが待っていると思うと設営にも力が入る。


16時前には設営が終了した。
全くの無風で雪壁は不要と判断した。

先ずは一服しながら珈琲を飲んだ。
日が暮れればついさっきまで余り感じることの無かった冷えを感じ始めた。
本当は外で水作りをする予定だったが、テントの中ですることに決めた。
それなりに時間がかかるだけに、換気だけは十分に注意しなければならない。

庵滝:貴婦人の木

2019年05月02日 20時42分14秒 | Weblog
小田代原から「弓張峠」へと向かう最短距離をとろうとしたが、この先一切のトレースは無かった。
「けっこう埋もれるな・・・」と感心などしていられない程の積雪量となった。


やがて膝程まで雪に埋もれ始め、歩くことが厳しい。
この先にはそれなりに急登攀となる斜面が待っている。
これだけ大きいザックを背負い、アイゼン・ピッケルではなくスノーシューで果たして・・・。

「やめた! 遠回りでもいいから迂回しよう。」
現在のルートをあっさりと諦め、迂回ルートへまわるため来た道を戻ることにした。
時間は十分にある。
決して慌てることはない。

小田代原展望台へと向かうのだが、その途中からの景色がなかなかのものだった。
今いるポイントは小田代原の最西部あたりで、ここから北部の戦場ヶ原が一望できる。


空が青い分だけ、雪原の白が一層引き立つ。
3000m級の白銀の世界もいいが。これはこれで癒される思いの冬景色だ。

程なくして小田代原展望台へと着いた。


ハイキングで訪れる人の殆どはここで一息入れる。
柵から中へは入れないが、だからこそ手つかずの自然が保たれている。
嘗ては自家用車も自由に行き来できた車道もあるのだが、現在は低公害バスの定期便のみしか通ることができない。(一部営林署などの機関も通る)

残念ながらここは禁煙ポイントであり、一服することができなかった。
自分以外には誰もいないし、「まっ、いいかな」などと思ったが、後ろめたい思いをするよりは吸わない方が良い。
ここは我慢!

行動食を食べながら風景写真でもとディスプレイを覗いていると「ん? あれは・・・。ひょっとしてあれが・・・」
ちょっと気になる一本の樹木があった。

数年前、戦場ヶ原スノーシューハイキングの下調べをしていた時のことだった。
多くのHPで見かけた画像があった。
雪原に立つ一本の白樺の木だった。
誰がいつ名付けたのかは分からないが、それは「戦場ヶ原の貴婦人」と呼ばれていた。
今回の庵滝テント泊計画の時にも、何度も画像で見たばかりだった。


小さくて分かりにくいが、赤丸がその「貴婦人」と呼ばれている白樺の木だ。
敢えて見つけようとも思わなかったのだが、偶然とはいえちょっと得した気分だった。



確かにポツリと・・・しかし孤独というのではなく、凛として孤高にさへ感じる。