ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

劔岳・再びの奉納 「お花畑に癒されて」①

2024年02月16日 21時28分44秒 | Weblog
入山三日目、最終日。
今日は室堂を目指しての下山、そして帰宅。
昨夜は少々胸が高まりあまり眠れなかったが、日中かなりのカロリーを消費していることもあり空腹感だけはいつも以上にあった。

腹を満たし外へと出た。
天候はこの三日間で最高に良い。
贅沢を言ったらきりはないが、今日がアタック日だったらなぁと思ってしまう程のピーカンだった。
それともう一つ、多賀谷さん達のグループと同じ行程で劔を目指すことになっただろう。
このことは本音を言えば残念で仕方がなかった。

そんなことを考えながら一服していると、多賀谷さん達のグループが小屋を出発しようとしてザックを背負い始めていた。
「天気に恵まれて良かったですね。でも暑くなりそうですね。」
「はい、まぁのんびりと行きますよ。」
「どうぞお気をつけて。またお会いできることを願っています。」
「また来年劔で会えたら嬉しいですねぇ。では行ってきますね。」

そんな言葉を交わしながら多賀谷さん達の後ろ姿を見送った。
すると姿が見えなくなる直前、多賀谷さんが振り返り自分に軽くお辞儀をしながら「行ってきます」の意味を込めて小さく手を振ってくれた。
自分もお辞儀をし、姿が見えなくなるまで小さく手を振った。
そんな些細なことではあるが、自分にとっては山の生き神様とのかけがえのない思い出となっている。

「さぁて、自分たちももちぼち取りかかりますか。」
そう言って部屋へ戻り下山に向けての最終チェックをした。
そうそう、忘れてならない事が一つあった。
毎年この小屋で購入している絵はがきに、ご主人の新平さんに一筆書いていただいているのだ。
昨日購入した絵はがきを持って新平さんの所へ行き「またお願いしてもいいですか?」と聞いた。
「あっ、いつものですね。もちろんですよ。」

小屋を去る直前にも新平さんの所へ行き挨拶とお礼を言った。

またこの時が来てしまった・・・
この小屋を去る時、そして劔を去る時に感じる例えようのない淋しさだ。
充実した登山だっただけに、良き人たちとの出会いであっただけに感じる淋しさ。
だからいつも小屋を出てしばらくは無口になってしまう自分だった。


劔沢小屋の前で一枚。
本当にお世話になりました。 m(_ _)m


劔岳をバックに一枚。
ありがとうございます劔岳。
また来年の夏に登りに来るから待っていて下さい。

6時30分、小屋を出発し先ずは別山乗越を目指した。
ここから乗越まではほぼひたすら登りルートとなる。
きつい登りではないが、心がきつい。
つまり淋しいと言うことだ。

ついつい小屋と劔岳を振り返ってしまう。
もう二十回以上も通い詰めているはずなのに・・・


劔沢小屋と劔岳。
見慣れているはずの風景が愛おしくて仕方がない。

スタートして約30分、まだ身体が出来上がっていないこともあり小休止を取った。
振り返れば、その雄々しいまでの姿を隠しているものは何も無かった。
本来ならザックは下ろさず立ったままでの一息なのだが、どうしてもじっくりと見ていたくなってしまった。
一服しながら唯々劔を見つめる。
「多賀谷さん達、どのあたりかな・・・もう一服劔は越えたかな・・・」
「気になりますか? (笑)」
照れ笑いでごまかした。


Uさんがいつの間にか撮ってくれた一枚。(結構気に入っている)

ここから別山乗越までは高山植物の宝庫となっている。
疲れはないが、心底癒される思いだ。


お花に夢中なUさん。
今日はのんびりと下山だから気の済むまで撮ってほしい。


自分の好きな花の一つ「タテヤマリンドウ」。
晴天時なので花は開いていた。
淡い青紫の花の直径は約1㎝程度。
とにかく可愛くて可憐な花だ。


別山乗越の小屋が見えてきた。
この区間の左右には、タテヤマリンドウ、ウサギギク、チングルマ、ハクサンイチゲ、コイワカガミ、ヨツバシオガマ、コバイケイソウ、ミヤマダイコンソウ等々が咲き乱れている。
花好きな登山者にはたまらないエリアだろう。

スタートしてほぼ一時間、予定通り別山乗越に着いた。
ここでちょっと贅沢な休憩を取ることにした。
何のことはない、ドリップ珈琲を飲むだけだがこの風景でこの景色。
いつもの何倍も美味しいと感じる珈琲だ。


お湯が沸く間も劔を見つめていた。
「もう一度登りたいですか?」
突然の質問だったが
「上手くは言えないんですけど、なんかこう・・・淋しいんですよ。ここへ来ると尚更なんですよね。ここを下ったらもう劔は見えなくなってしまうんですよね。」
よくもこんな事を恥ずかしくもなく言えたものだと自分でも感心する(笑)。


今年の劔もここで見納めだ。
感謝の一杯ってところだろうか。
よく見ればこのマイカップは至る処キズだらけだ。
購入してもう十数年は経っているだろうか・・・
(「こいつともいろんな山に登ったなぁ。」)
そんなことを思いながら美味い珈琲を飲んだ。

室堂まであと二時間。











































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