ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

ラストジャンダルム「天使との再会」

2021年03月28日 12時58分02秒 | Weblog
「ジャンのてっぺんには天使がいる」
その天使に会いに行きたいと願い、ジャンを目指す多くの登山者がいる。
しかしそう簡単にたどり着ける場所ではない、それだけに憧れは大きくなる。

天使とは言ってももちろん本物の天使が存在する訳ではなく、天使のオブジェが設置されているだけ。
そのオブジェが、いつ、誰が、どのような理由で設置したのかは定かではない。
嘗てネットで調べたことはあったが忘れてしまった。
確か現在設置されているものは二代目の天使であることだけは確かだ。

N君が一歩、また一歩とジャンのてっぺんへと近づく。
そして遂に憧れのジャンダルムの頂上へ・・・。

おめでとう! 念願のジャンダルムだよ。

感無量だろう。
達成感と充実感で満たされていることだろう。
やっとの思いで、命の危険を感じながらの到達は簡単ではなかったはずだ。
今は十分に感動を味わってほしい。

自分がここに立つのはこれで5回目になるだろうか。
そしてその5回目で最後になる。
その意味では今までとはまた違った感動があった。

さっそく天使に挨拶をしなければと思い、天使を探した。


ちょうど槍ヶ岳をバックにして設置されていた。

「やっとこれに会えました。嬉しいですね! 僕一人ではとてもここまではこれなかったです。本当にありがとうございます。」
やや照れたが、自分は案内をしただけ。
技術、体力、メンタルはすべてN君ひとりの頑張りだと思う。


天使のアップ画像。

このオブジェの存在にどんな意味があるのだろうか・・・深く考えたことはない。
ただ自分なりに言えることは、「誰かは知らないけどにくいことをするね」と思う。
憧れや目標にもなるだろうし、辿り着いた者にとっては癒しにもなる。

このときふとある計画を思いついた。
来年の夏、劔岳に登るとすれば20回目の記念登頂となる。
自分も何かやってみようかと・・・。
まだ何も思いついてはいないが、せっかくの記念登頂だし、劔のオブジェでも置いてこようかと勝手に思いついた。(笑)


天使と一緒に「ハイ、チ~ズ♪」


今度は奥穂をバックにもう一枚。

「せっかくだから、これ持って」
と言い、N君に天使を持たせた。


いい笑顔だね♪

ここに来ることができたことも、天使に会えたことも、360°北アルプスの世界に浸れたことも嬉しいのだが、「これが最後になるなぁ・・・」と思うと、どこか淋しさがあった。
「忘れまいぞ! 目に焼き付けておこうぞ!」
何をするでもなく、唯ジャンダルムのてっぺんに佇み絶景を見つめた。

ラストジャンダルム「ジャンにへばりつく」

2021年03月23日 21時39分55秒 | Weblog
ジャンダルムの全容は、穂高岳山荘辺りから見たものと近づいてから見たものとではかなり違いがある。
山荘から見た形は丸いドーム型の様な岩峰に見えるが、実際に間近で見るとてっぺん付近は丸みを帯びていてもかなり平べったい形状だと言うことが分かる。


ロバの耳を越えてから見たジャンダルム。
「○○山」とか「○○岳」と言った名称はなく、あくまでもポイントとしての名前がジャンダルム。
因みにフランス語であり、「憲兵」などと訳されている。
ここの場合、おそらくは奥穂高岳に向けて立ちふさがるように屹立している憲兵とでも言えばよいだろうか。
頂上にはすでに数名の人が登っており、左側壁にもへばりついている登山者が目視できた。

ジャンへの登頂ルートについては事前に何度かN君に説明してある。
しかし、初めて訪れる登山者がこれほど間近で見たら「えっ、どこがルート?」と驚いてしまっても不思議ではない。

ジャン手前のナイフリッジを進む。
このリッジはそれほど危険ではない。(今までが危険過ぎただけ)


赤い線が予定している登頂ルートであり、過去何度も通過している。
20代の時、初めてここを通過した時はかなり濃いガスの中でのトラバースだった。
足元から数m下は全く見えず、どれほどの崖の上を通過しているのか分からなかった。
怖さはあったが、それよりもウェストポーチが岩の凹凸に引っかかってしまい、なかなか進めなかったことを覚えている。


N君がリッジを越える。
いよいよジャンへ取り付くことになる。
側壁のトラバースはさほど難しくはないが、そこを越えてから側壁を回り込む最後に一箇所だけ危険な下りのクサリ場がある。
距離は短いが、ボルトも埋められており慎重に下らなければならない。


進行方向左手(信州側)の側壁トラバース。
足元は幅の狭いルートだが、馬の背やロバの耳と比べれば楽勝だ。


ここを回り込んでクサリ区間を下りればジャンへの登頂ルートが見えてくる。


トラバース後にN君を待った。
次のクサリ場さへ越えればジャンのてっぺんが待っているぞ!

下りのクサリ場での写真撮影は止めておいた。
先ず自分の動きを見てほしかったからだ。
お手本とまでは言わないが、手足の動かし方を少しでも参考にしてほしかった。

距離は短いが、かなり危険性の高い区間だ。
ボルトを上手く併用しなければ通過することは不可能で、しかもややオーバーハング的なポイントでもある。
つまり、下りる時は脚を掛ける(置く)スタンスポイントが見えにくいということになる。
ゆっくりと慎重に下る。
そしてやっと見ることができたジャンへの文字。
岩肌に「ジャン ↑」とペンキで描かれていた。
思わず笑みがこぼれた。

少し進み、N君がクサリ場を下りてくるのを待った。
無事合流。
ここからならてっぺんまで5分もあれば登頂できる。
「さて、ここから先はN君が先頭だ。俺は何度も来ているからもう十分。先に登って感動を味わってね!」
と言い、先導をお願いした。


ジャンのてっぺんまでもうほんの少し。
「360°すべてが北アルプス」の絶景が待っている。

ラストジャンダルム「ジャンへあと一歩」

2021年03月20日 20時46分27秒 | Weblog
クサリ場を越えしばらく進めば、次は崖に沿った細いルートのトラバースとなる。
危険と言えば危険な区間だが、足元はしっかりと安定しており踏み外しさへしなければ問題ない。
むしろ腰を下ろして一息つけると思っている。


と言うことで、ほんの刹那の一息(笑)。
もちろん通行の邪魔になるので写真だけを撮ってすぐにスタートした。

岩にぶつけた右脇下は疼くような痛みが常にあった。
しかし体の動きをある程度でも制限すれば何とかなる程度のものだった。
今にして思えば、あの日はずっと緊張を強いられるコースだった。
この先に待っている「ロバの耳」をどれだけスムーズに登り切れるか・・・。
それを考えただけでも緊張感は走った。
おそらくはスムーズとは行かないだろうが、その緊張感が痛みを忘れさせてくれていたとも言えよう。


トラバース区間で振り返って撮ったN君。
「どう、座ったら?」
「いえ、無理です」
(本音だろう)
左隅の赤い線が下ってきたルートで、その途中でズルッと行ってしまった。

次は完璧な90°の岩壁を下る。
だが見た目よりもホールド・スタンスポイントはあり、更にクサリを用いれば比較的楽に下りることができる。


知らない人から見れば「えっ、どうやって・・・」と思われがちだが、馬の背やロバの耳と比べれば楽なものだ。

さて、いよいよロバの耳へ挑むことになった。
2016年の時はラッキーなことに比較的新しい残置ロープがあり、遠慮無くそれを利用させてもらい、それにより難なくクリアすることができた。
今回も淡い期待感はあったのだが、所詮は他人頼り。
フィックスロープなどあるはずもなく、自力で登攀するより方法はなかった。
もとより残置ロープというものは積極的に利用することは避けるべきもの。
何故なら、いつ・誰が残していったかも分からないものに頼ることがどれほど危険であるかは、火を見るよりも明らかだからだ。
利用している途中で「プッツン!」となってしまっても決して不思議ではない。
利用する時には細心の注意と判断が求められる。

ロバの耳を見上げた。
ほぼ直登気味に登ることは知ってはいたが、複数のルートっぽいポイントが見て取れた。
(「あそこまで行って、次にあそこに手を掛けて脚を掛けて、でもって次にあそこに・・・」)
しばらく安全確実なルートファインディングを検討し岩肌に手を掛けた。

この区間の写真は撮っていない。
せっかくなのにちょっともったいない気もしたが、安全第一で登攀するには写真はどうしても後回しとなった。

ほぼ中間地点まで登り終え、その先のルートファインディングをした。
ここでのルートファインディングのミスは致命傷となる。
間違いは許されない。
慎重にコース取りをし、N君に伝えた。

一つ一つの腕と脚を動かす方向を確認しながらなんとか登り終えたが、安堵感は無かった。
(「帰りはここを下る。果たして・・・」)
下山時の不安がよぎった。

N君が後から続く。
自分が上から指示をする。
彼もまたゆっくりと、そして確実なコース取りで登り切ることができた。
お互い笑顔こそ無かったが緊張感から少し解放された瞬間でもあった。

腕を大きく伸ばしたりしたためだろうか、あばら骨は痛かった。
それでもここまで来ればジャンまであと一歩だ。
ちょっと休憩すれば大丈夫だろう。


ロバの耳を登り終え、目の前に屹立するジャンダルムを見上げながら一服。
ジャンまでもうほんの少しだ。

ラストジャンダルム「迷いながらの登攀縦走」

2021年03月13日 23時22分19秒 | Weblog
N君には胸を強打したことは言わなかった。
「言うべきだったのか・・・」その時はかなり迷ったが、顔をしかめる程の痛みでもないし、心配を掛けてしまうことの方が嫌だった。
言えば「戻りましょう。また来年来ましょう。」という返事が来ることは十分予測できた。
右腕を無理に大きく動かさなければこの先の登攀はできるだろう。
そんな何の確証もない正常バイアス的な思いで先を進むことにした。


N君が下りてくるのを下から撮った画像。
なかなかの急斜面の岩崖だと言うことがわかる。

途中で一端追い越してもらいコルで合流することにした。
それには理由があった。
「まだ疼きがかなり残っており、もう少し落ち着くまで休むこと」
「ここの下りにおいての危険な区間はほぼ終わりだし、ここまで来れば一人でも大丈夫」
この二点だ。


コルまで下って行くN君。
上から見下ろしながらアドバイスを送った。

コルからジャンまでは、途中休憩を入れてもあと一時間もあれば着く。
今いるポイントから単純計算で往復二時間。
その二時間を無理したために強打した部分が悪化しないだろうか・・・。
迷いは尽きなかった。
最悪のケースも考えてみた。
つまり救助要請だ。
いや、それだけは何としても避けなければならない。
であればこそ無理は禁物。
分かっている。
分かってはいるが「行ける。できる。」という自信もあった。
それが正常バイアス的な自信であることも理解していた。
自分のしていることは決して褒められたことではない。
それも分かっていた。
考えながら、分かっていながら先を進んでいる自分。
登攀縦走しながらそのことが頭の中を掠めていった。


クサリ場の登攀区間。
この区間はクサリを補助的に用いながらとなるが、それでもけっこう厳しい。
ややオーバーハング的なポイントもあれば体を上下だけでなく左右斜めに移動しながらの登攀となる。

右腕を動かす度に痛みを確認した。
「この程度の動きなら問題ない。」
「ここまで動かせば痛みが走る。」
その判断基準となる材料が欲しかったのだ。
だがこの先の「ロバの耳」と呼ばれる最大級の難所区間ともなれば、腕は嫌でも大きく動かさなければならない。
そしてもうひとつ、時折咳をするのだが、その咳をする瞬間だけはかなり痛みが走った。

登攀縦走は続く。
最後と決めて臨んだジャンダルム、「ここまで来て・・・」
そんな損得勘定に駆られながら「唯の打ち身だろう。大丈夫だ。」
そんな暢気な思いがあったのも事実だ。

ラストジャンダルム「やってしまった・・・」

2021年03月09日 21時15分20秒 | Weblog
馬の背(首)のナイフリッジを終え、先ずは一息ついた。
平面な岩が堆積しているPEAKまで歩き、そこで腰を下ろし一服。
緊張の糸を一端ほぐすが、この先もまだまだ連続した難所が続く。
だが一応の安堵感、煙草が美味い。

このポイントからはこの先のルートと目指すジャンダルムが一望できる。
「近づくとますます凄さが伝わってきますね。」
と言うN君の言葉。
「ジャンダルムは憧れるけど、憧れだけじゃ辿り着けない場所だからね。体力や技術はもちろんだけど、それなりの覚悟も必要になってくるね。」
そんな会話をしながらこれから先のルート状況について再確認をした。


2013年の夏に単独で来た時の画像。

手前の平面な岩が堆積している場所が休憩しているポイント。
ガスってはいる画像だが、平面の岩から先がストーンと切れ落ちているのがもっとも分かりやすい画像だろう。
その先に見えているドーム型の岩がジャンダルム。


2016年の画像。
ほぼ同じポイントで撮ったもの。
ガスがかかっていないこともありこの先のルートとジャンが鮮明に見てとれる。

一体どこをどうやって進めばジャンへ辿り着けるのか・・・。
一見すると到底無理と思えるが、登山道はある。
あるのだが、メンタルも試される登山道だ。


これも2016年の時の画像で、ジャンダルムのPEAKから振り返って見たルートの画像。
左の赤○が穂高岳山荘で、右の赤○が奥穂高岳山頂。
赤い線が馬の背のナイフリッジルートで、線の最後はいきなり直滑降気味になっているのがわかるだろうか。
この区間が馬の首となる。
そして緑の○が馬の背(首)を越えての休憩ポイントで、今現在自分たちが居る場所となる。

この先は、緑の線に沿って岩肌を下らなければならない。
僅かにルンゼ(溝)っぽくなっているのがルートとなるが、標高差は50m以上はあるだろうか。
斜度は見た目よりもあり、ほぼ90°に近い。
それでも馬の背やロバの耳よりも難易度は低いと思っている。
・・・が、落ちれば確実に命はない。
基本に忠実に三点支持を取り、決して焦らずマイペースで下ることが大切だ。
ましてや「下り」であればリスクは上り以上に高くなっている。
慎重に行こう。

そう分かっていたはずなのだが・・・。

下り始めてどれくらいだったろうか、はっきりとは覚えていない。
右手で岩の突起を掴みスタンスポイントまで脚を伸ばそうとした時だった。
掴んでいたはずの岩が僅かに動いた。
「あっ!」と思った瞬間にその岩が更に下方へと動き、同時に自分の体も下方へと動いた。
いや、ずれたと言った方が正確かもしれない。
体を支えている左手は指先だけで岩に引っかけていたと覚えている。(記憶が定かでない)
左手の指だけでは持たなかった。
体は岩肌に擦れながら1m程落ちていったが、ただ落ちて行くだけでは済まされなかった。
その途中、右脇下に得体の知れない鈍痛を感じた。
「ぶつけたな・・・」と瞬間的に状況を理解したが、脚がすぐ岩に着いてくれたこともあり、その場で立ち尽くし痛みが引いてくれるのを待った。

見上げてみると「あの辺りだろう」と思えるピンポイントに岩が突き出ていた。
その突き出た岩に右脇下のあばら骨をぶつけたのだろう。

ぶつけて数秒間は鈍痛だけだったが、その直後経験したことのない痛みに変わった。
決して激痛というのではなく「何なんだこの痛み方は・・・打ち身とかじゃない痛みだ。」
腕や肩を動かせば痛みを感じ、大きく息をするだけでも痛みが走った。
骨をまともに痛打したことがないので上手く表現できない。

「この先どうするか・・・」
十分に我慢できる程度の痛みだったが、問題は果たしてこの先ずっとこの程度の痛みで済んでくれるだろうかということだった。
今日の日程はまだ半分にも至っていないし、明日の上高地までの下山もある。
判断に迷った。
「いや、先ずはここを下りて安全なポイントまで行くことが先決だ。」
できるだけ右腕の動きは小さく、そして大きく深呼吸はしない。
この二点に注意しながら何とか下り終えた。


下り終えてちょっと一息。
先を行くか否か迷っている。

春を感じて

2021年03月06日 22時37分10秒 | Weblog
ちょっと山のことから離れて綴ってみたい。

昨年の10月、娘と女房の三人で大型ホームセンターへと行った時のことだ。
このHCは大型とだけあってガーデニング関係も充実している。
毎年庭に植える花の苗や球根類も種類が豊富であり、新しい発見も多い。
「チューリップもたまには違うものがいいかな・・・」と何気なく言った一言に娘が反応した。
「これなんか可愛くていいんじゃないの。毎年咲くって書いてあるけど・・・」
球根が入っている袋の説明書を読むと確かにその通りで、「毎年咲く」という言葉が魅力的だった。

チューリップは基本一年きりのものであり、咲いた後に「お礼肥」を与え、その後掘り起こして手入れをしても次の年に咲いてくれるとは限らない。
だから一年だけと割り切っていた。

「原種咲き」、即ち背丈は通常のチューリップよりも半分程度だが、見た目の花は明らかに通常のものとは違う独特の花が咲く。
多くの種類がある中で、せっかくだから娘に好きなものを選んでもらった。

そしてもう一つ。
薄ピンク色のアイフェイオン。
淡いブルーのアイフェイオンはうじゃうじゃと庭に咲いているのだが、ピンク系のものが売られているとは全く知らなかった。
「お父さん、これってうちに咲いているのとは違うんじゃない?」
「へぇー知らなかった。」
「これも植えてみようよ。」
と言われ一緒に購入した。

今、春になり今年も球根類の芽が出始めている。
娘が選んだチューリップの原種咲きも随分と芽が伸びてきた。
ピンクのアイフェイオンも開花は間近だろう。


赤い○がチューリップの芽。
その周りに伸びている「ニラ」のような細長い葉がアイフェイオン。


こちらも原種咲きのチューリップ。

実は、球根が入っていた袋を捨ててしまい、どんな色でどんな花が咲くのかを忘れてしまった。
それだけに楽しみでならない。
花が咲いたら娘に写真を送ってあげたい。

おまえが選んだチューリップとアイフェイオンの花が咲いたよ・・・と。

ラストジャンダルム「命の危険を感じました!」

2021年03月03日 23時47分11秒 | Weblog
馬の首を通過し、足場の安定したポイントでN君を待つことにした。

いよいよ初めての馬の首越えとなるN君だが、それなりの緊張感は拭いきれないでいると推測した。
過度な緊張は余計な「力み」となってしまうことがあるが、この場合は一定の緊張感は持っていた方が良い。
いよいよトライだ。


馬の首の取り付き口。
ここはまだ序の口。
ゆっくりとマイペースで良いからそのまま行こう。


体勢を変えてスタンスポイントまで脚を伸ばす。
ここは腕の力のみで体を支えなければならない。
緑の○印辺りがスタンスポイントとなる。ガンバー!


数mのトラバースポイント。
一挙手一投足に集中して移動。
いい感じできている。


トラバース終了。
再び体勢を変えてナイフリッジへと向かう。


突起した岩を巻いて下る。
もう少し下りればちょっとは楽なポイントになる。


ここまで来ればそれなりに安心できる(と思える)場所となる。
残りも慎重に・・・。

時間にして5分足らずの区間だが、彼にしてみれば長く感じただろう。
「どうだった? 初めての馬の背は」
「命の危険を感じました。今までも大キレットやタテバイを経験しましたけど、一桁違うって感じでしたね。自分一人では絶対に越せなかったですし、一人では絶対に来ませんよ(笑)。」
本音だろう。
だが、北アルプスの難所を越えることができたという充実感はあるはずだ。
それにここを越えなければジャンダルムに登ることはできないし、まだ一つ目の難所をクリアしたに過ぎない。
ましてや復路もここを越えることになる。

ここを過ぎると、平面な岩が堆積したポイントへと出る。
広さは十分にあり腰を下ろして一休みできるのだが、このすぐ後には標高差50m以上のほぼ垂直に近い岩壁を下りなければならない。
緊張はまだまだ続く・・・。

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4年前にここを通った時よりも、7年前に通った時の良い画像があった。
その時は単独であったが故に、馬の背(首)を越えてからの画像だ。
ガスってはいたが、馬の背(首)の全体像が分かるだろう。


赤い線が通るルート。
信州(長野県)側から撮った画像であり、将にナイフリッジそのものだと言える。


やや位置を変えての画像。
馬の首の半分程度しか写ってはいないが、両サイドが切り立っているのが分かる。
ルートと言うよりは「線の上」を通過しているようだ。