窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

今求められるエンゲージメント向上と”複”業のはなし-第164回YMS

2024年05月09日 | YMS情報


 5月8日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第164回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 今回の講師は、株式会社ケーエムシーコーポレーション取締役/BRMz合同会社共同代表の熊澤祐喜様。前半/後半の二本立てで、今注目されているエンゲージメント向上と人手不足の問題解決に資する「クルージングを利用したエンゲージメント向上/複業人材活用のすすめ」というタイトルでお話しいただきました。



1.クルージングを利用したエンゲージメント向上

 エンゲージメントとは信頼や愛着といった意味で、これが従業員の生産性向上や組織への定着の基盤となることから、以前より労働力の流動性が高まり、かつ人手不足が深刻化する昨今、優秀な人材を確保・定着させるために注目されている概念です。従業員の会社組織に対する信頼/愛着であればそれは「従業員エンゲージメント」ですが、同じことが企業と顧客との関係についても言え、長期的/繰り返しの取引で売上を向上させる基盤として築く、顧客の企業に対する信頼/愛着であれば「顧客エンゲージメント」となります。

 エンゲージメントに対する注目の高まりを受け、近年ではエンゲージメント向上に関わる様々なサービスが登場しています。その中で、熊澤さんの家業の一つであるクルージング事業を従業員や顧客(友人や家族でも良いです)のエンゲージメント向上に役立てようというのが今回のお話しです。

 なぜエンゲージメント向上にクルージングが資するのか?それはクルージングという「体験の共有」ができるためです。社会心理学者のレオン・フェスティンガーによると、体験の共有は、たとえそれが逆境や試練であってもエンゲージメントを高めるのだそうですが、かなり前にこのブログでとり上げた経営コンサルタント、パインとギルモアの「経験価値」のように、その体験が娯楽・教育・脱日常・美的という4つの要素が組み合わさることによって生み出された感情的、身体的、知的、精神的レベルにポジティブに働きかけるものである場合、満足感やロイヤリティが向上します。

 従来も従業員や顧客のエンゲージメントを高めるため、社員旅行、飲み会、運動会、接待といった試みがなされてきました。しかし、そうした試みが時代の変化に伴い効果的でなくなってきたのには様々な理由があるでしょうが、一つにはこれらの試みには「娯楽・教育・脱日常・美的」という要素が欠けていたためではなかろうかと個人的に思います。いずれにせよ、従来の試みに代わる新たなエンゲージメント向上手段が求められているのであり、その選択肢の一つとして東京湾に面する横浜や東京においてはクルージングがあるのではないかということです。

 クルージングは、先に挙げたような従来のエンゲージメント向上手段と比べ、特別感があり、参加容易性があり、時間がかからず、アクセスが良く、価格も手ごろといった特徴があります。さらにクルージングには、

娯楽/教育:海側から見る陸地の美しい景色、パーティー、船上での音楽など
非日常:船上という空間にいること、ゴージャスな船内や食事など
美的:やはりゴージャスな船内、美しい景色など

というように、前述の四要素がふんだんに詰まっていることが分かります。その性質が、特別な経験を提供し、エンゲージメント向上に役立つという訳です。

 質疑の中で出てきたことですが、今後心理学的な側面からクルージングのエンゲージメント向上に寄与する効果測定ができたら面白いと思います。

2.複業人材活用のすすめ

 後半は「復業人材活用」についてのお話しです。ここで敢えて「副業」ではなく「複業」の字を用いているのは、「本業の片手間」という意味ではなく、「複数の仕事をする」人材を指しているためです。近年、あらゆる産業が人材不足に悩まされています。しかしながら採用は遅々として進まず、時間とコストがかかり、仮に雇ったとしても、育ったら離職してしまう。一方で解雇は容易ではない。このような企業が抱える問題に対する解決策の一つに前半部の「エンゲージメント向上」があるとも言えますが、また別の、採用に代わるアプローチとして考えられるのが、後半部の復業人材です。

 30年ほど前、企業組織のダウンサイジングの一環として、アウトソーシングが流行りました。しかし、このアウトソーシングは、業務を外部委託する代償として、業務ノウハウの蓄積ができない、コストが高い、業務内容について逐一相談、指示する必要があるといった欠点があります。これと比べると復業人材は低コストで、そもそも副業や転職希望者ではないので、転職市場に現われてこない人材を獲得できる利点があります。実際、復業人材活用に取り組む企業の数は年々増えており、復業人材サービスを提供するプラットフォームも5年間で4.2倍に増加しています。

 もちろん復業人材活用にあたっても注意点はあります。一つにはマッチングサイトを利用すると人材の質にバラツキがでること、時間に制約があり、成果にどれだけコミットしてくれるか不透明であること、依頼事項が明確にできていないことなどです。このような点を曖昧にしたまま復業人材を活用すると、契約した人材が課題に応えるスキルを持っていなかったり、どこまで実務にコミットするかについて双方齟齬があったり、求める成果の認識に差があったり、結果として何も進まないという失敗につながる可能性があります。

 そこで熊澤さんが共同代表を務めるBRMzでは、クライアント企業の課題と目標を明確化し、課題解決や目標達成に必要なプロセスやスキルを洗い出し、その上で適切な人材の割り当てを提案します。例えば、課題が「営業活動の生産性向上」であったとした場合、その課題を細分化していくと下の図のようになります。



 その様にして細分化された課題の内、今回は何に取り組むのかによって適した人材が異なってくるはずです。復業人材はあくまで選択肢の一つであり、場合によっては社内人材を活用したり、採用に動いた方が良い可能性もあります。

 数ある復業人材系プラットフォームの中で、若手中小企業診断士からなるBRMzが提供するサービスは、前述のように課題をヒアリングしてから人材を提供するので、複業人材活用や協業に慣れていない企業が利用するのに適しています。副業人材活用にはメリット/デメリットがあり、どのように使うかも千差万別であるため、まず「何を実現したいのか?」という利用する側の目的意識が大切だと言えるでしょう。

 一見全く違ったテーマでのお話しのようですが、このように通してみれば、いずれも企業が抱える「人材」に関する課題へのアプローチであることが分かります。個人的には、このような選択肢もあるのだという新鮮なお話しで勉強になりました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

過去のセミナーレポートはこちら

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