窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

【WBN】開幕直前、ラグビーW杯の楽しみ方

2019年09月19日 | WBN情報


  9月18日、WBN(早稲田ビジネスネット横浜稲門会)の分科会に参加してきました。



  今回は、本会会長の原さんより、いよいよ今月20日に迫った、ラグビーワールドカップ日本大会の楽しみ方についてお話しいただきました。



  当ブログでは時々ラグビー観戦記を掲載していますが、このテーマが分科会として取り上げられることから見ても、日本全体としてラグビーはマイナースポーツ。よく見かけるのですが、上の写真のようにアメリカンフットボールのボールとラグビーボールの違いも良く分からないというのが、一般的な認知ではないかと思います。

  それでも1990年頃までは、冬の花形スポーツとしてそれなりにラグビーは人気があったのです。特に大学ラグビーの早明戦は、「(6万人入る)国立競技場を埋められる唯一のスポーツイベント」とさえ言われていました。僕も早明戦のチケットを入手するために抽選ハガキを200枚書き、ようやく1枚のチケットが当たった思い出があります。また、70年代、80年代はラグビーを題材にした青春ドラマも多く作られていました。

  しかし、1993年のJリーグ開幕による、サッカー人気の飛躍的な高まり。映画『インビクタス』でも取り上げられた、1995年の南アフリカ大会において、ニュージーランドに17対145という歴史的大敗を喫したこと。またその時期に始まった世界的なラグビープロ化の流れに乗り遅れ、世界との差がさらに開いてしまったこと。様々な要因があると思いますが、その後ラグビー人気は下がり続け、現在に至っています。競技人口で見ると、野球(812万人)、サッカー(636万人)に対してラグビー(11.5万人)。4年前のイングランド大会で、日本は強豪南アフリカを破る大金星を挙げ、1大会で3勝(過去7回のW杯戦績は1勝24敗2分)を挙げるという活躍を見せましたが、この4年間で一般的な認知にあまり変化はなかったように思います。

インビクタス 負けざる者たち (字幕版)
クリント・イーストウッド,アンソニー・ペッカム,ロバート・ロレンツ ,メイス・ニューフェルド ,ロリー・マックレアリー ,モーガン・フリーマン ,ティム・ムーア ,ゲイリー・バーバー ,ロジャー・バーンバウム
メーカー情報なし


  それでも世界的に見ると、ラグビーW杯は、オリンピック、サッカーW杯に次ぐ、世界三大スポーツイベントの一つなのです。その一大イベントが、9回目にして初めて日本で開催されます。しかも、「ティア1」と呼ばれる強豪10ヶ国以外の国で開催される、初のW杯でもあるのです。
 
  優勝を争うと目されるのは、ティア1の中でも特に上位6ヶ国。最新の世界ランキングは次のようになっています。

1.アイルランド
2.ニュージーランド
3.イングランド
4.南アフリカ
5.ウェールズ
6.オーストラリア

  因みに、日本は現在105ヶ国中10位です。そして日本が属する予選プールAには、1位のアイルランド、7位のスコットランドがいます。その他、サモアもランキングこそ現在16位ですが、つい数年前まで歯が立たなかった難敵。初戦のロシア(20位)も徐々に力をつけており、油断なりません。日本はこの4年間で力をつけていますが、20日のロシア戦に注目しましょう!

  次に、原さんが挙げられた世界の注目選手です。

1.ボーデン・バリット(ニュージーランド)

  ニュージーランド代表の司令塔(スタンドオフ)。187㎝、91kgs。俊足で判断力に優れ、キックやパスも正確という、まさにスーパースターです。

2.リエコ・イオアネ(ニュージーランド)

  世界最高のウィングと評されます。名前が「リエコ」ですが、兄の名前は「アキラ」。冗談ではなく、本当に日本人の名前からつけたようです。というのもイオアネ兄弟の父、エディー・イオアネはかつて日本のリコーでプレーしていたことがあるからなのだそうです。

3.デビッド・ポーコック(オーストラリア)

  オーストラリア代表の元キャプテン。実は2016年、17年、日本のパナソニックでもプレーしていました。W杯終了後、またパナソニックにやってくるそうです。強靭な体で相手のボールを奪うプレーに注目です。因みに、原さんとも友達だそうです。

4.マルコム・マルクス(南アフリカ)

  まだ若いですが、世界最高のフッカーとも言われています。大柄な選手の多い南アフリカのフッカー(スクラムで一列目中央のポジション)としては小柄(それでも189㎝、112kgsあります!)。高校時代は走力も求められるフランカー(スクラムで左後方端から押し込むポジション)だったそうで、自らトライを挙げられる決定力のある選手です。

5.ヘンリー・スレイド(イングランド)

  188㎝、95kgsのセンター。運動科学の理学博士号を持つという異色の選手。2月に行われたシックス・ネイションズ(欧州6ヶ国対抗戦)では、ファン・オブ・ザ・マッチに選ばれました。

その他、ワールドカップの楽しみ方。

1.ラグビーはできれば生で。そうでなくてもみんなで観戦しよう!

  僕も4年前、Hubなどラグビーを中継していそうなパブで、外国人を含む知らない人たちとワイワイ観戦しましたが、コンタクトの激しいラグビーは迫力があり、トライ局面でなくても盛り上がること必至です。

2.ラグビーと言えば、ビール

  ラグビー発祥の地、イングランドでは、ラグビー観戦者はサッカー観戦者の6倍もビールを飲むそうです。日本でもW杯にビールの供給が間に合わないのではないかという心配がされていましたね。

3.ウェールズの国歌

  大声で歌うウェールズの国歌は、それだけですごい迫力があるそうです。

4.「ハカ」に注目

  ニュージーランド代表が試合前に披露する、先住民マオリ族の戦い前の踊り「ハカ」。1987年の第1回W杯の後、日本でも一時流行りましたので、ご存知の方も多いのではないかと思います。



  英語ではウォー・クライ(闘いの雄叫び)と言いますが、ウォー・クライはニュージーランドだけでなく、南太平洋の国々の代表チーム(トンガ「シピ・タウ」、フィジー「シビ」、サモア「シヴァ・タウ」)もやりますので、ぜひ注目してみてください。

  最後に、「日本代表は何故外国人ばかりなのか?」という、よく聞かれる疑問について。これは日本に限ったことではなく、世界最強と言われるニュージーランド代表も多くの外国人がプレーしています。また、15人の中で外国人が占める割合も、日本が特別多いという訳でもありません。これは歴史的にイギリスが大英帝国内でラグビーを普及させるため、各地の代表になれる資格基準を緩やかにした伝統が引き継がれているからなのだそうです。

  何はともあれ、楽しみましょう!

ラグビー知的観戦のすすめ (角川新書)
廣瀬 俊朗
KADOKAWA


繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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司法現場での交渉学活用法-第43回燮会

2019年09月13日 | 交渉アナリスト関係


  2019年9月6日、日本交渉協会の第43回燮会に参加してきました。燮会は交渉アナリスト1級会員のための交渉勉強会です。



  いつもの通り、二部構成の第一部は「交渉理論研究」。第8回は意思決定の理論である「決定分析」の三回目。今回は平日開催で土曜開催の燮会よりも時間が短かったため、理論上意思決定の基準となる「貨幣価値」、意思決定者の選好強度を反映した「望ましさの価値」、さらに意思決定者のリスク態度を反映した「効用価値」についてお話ししました。

  とりわけリスク態度については、人は自分を標準的だと見なしていることが多いため、口頭の説明だけでは分かりにくい部分もあったかもしれません。しかし、実際にあるリスクの例に対してそれを取るかどうかの挙手を求めたところ、今回参加された皆さんは驚くほど(「驚く」というのも僕の主観ですが)リスク回避的であることが明らかとなり、分かりやすい例になったのではないかと思います。

  次回は「意思決定にあたり、人は効用最大化を目指す」という「期待効用理論」に対する様々な批判を取り上げる予定です。



  第二部。今回の講師は1級会員で弁護士専門コンサルタントの向展弘さんと、同じく1級会員で最近メディアの露出も大変多い、弁護士の指宿昭一さん。「司法現場での交渉学活用法」と題し、司法の現場に交渉学を持ち込んで成功した事例と、それによって弁護士としての業務効率も改善した実績についてお話しいただきました。向さんは、2012年6月の「第5回燮会」以来の登壇になるかと思います。

  そもそも世界で初めて交渉学の講義を始めたハーバード大学において、交渉学は主にロースクールとビジネススクールを母体に発展してきました。そうした背景に加え、一般的にも弁護士は相手側弁護士や裁判官、さらには裁判員(陪審員)と丁々発止の交渉を繰り広げる、「交渉のプロ」のイメージがあります。確かに経験的にはその通りなのですが、実はそうした弁護士が交渉学を体系的に会得し、活用しているかと言えばそうでもないようなのです。少なくとも日本の司法界においては、交渉に関する教育はほとんど行われていないというのが実態だそうです。実際、日本の弁護士が実務において失敗したと感じるのは、法律面のことよりもむしろ交渉学を始めとするコミュニケーションに起因することが多いのだとか。

  指宿さん自身、交渉アナリストの古参である向さんとの交流を通じ、またご自身が交渉学を学ばれ、実務に応用した過程を通じて、「弁護士こそ交渉学を学ぶべきである」との思いを強くされたそうです。とりわけ相手とのWin-winを指向する「統合型交渉」は、時間とコストをかけて勝ち負けを争う訴訟よりも、訴訟前の和解を重視する司法界の世界的な潮流の中で、極めて親和性が高いということです。今回は、まずそのような交渉学を用いた成功事例を三つほどお話しいただきました。

  事例1は、相手側との価値交換を通じて原告側は合理的な範囲で和解金を上げることに成功し、被告側は逮捕・勾留を免れたというものです。ポイントは、相手側弁護士さえも味方につけ、被告側にとって真に重要な価値を明らかにしたことです。「統合型交渉」の条件の一つは、「お互いの価値に相違がある」ということです。この価値の相違を利用し、互いの価値を交換することでより良い結果を創造することを「価値交換」といいます。特に、こちら側にとって価値の低いものが、相手側にとって高い価値を持っているような場合、交換によってより高い付加価値を創造することができます(不等価交換)。また、この事例では、価値交換によってわずか3日で解決したという、費用面でも、お互いの精神的負担の面でも好影響をもたらす結果となりました。

  事例2は、「分配型交渉」の基本である「出発点」、「目標点」、「留保点」を明らかにすることによって、望ましい結果を計画的に導くことができたというものです。しかし、この事例では問題点が2つありました。一つ目は、あくまで目標点に到達するために設定した出発点に、設定したクライアント自身がアンカリングされてしまったという点です。アンカリング(アンカー効果=係留効果ともいいます)とは、あたかも係留された船のように、意思決定が初期値(出発点)に縛られてしまうことを言います。この効果は通常、初期値を提示された側が影響を受けるとされるのですが、実はこの事例のように提示した側が影響を受けることもあります。諺に言う「ミイラ取りがミイラになる」」現象です。

  二つ目は、感情の問題です。交渉理論に「コンフリクトのエスカレーション」というものがあります。意思決定者が本来の目的達成よりも勝ち負けに固執してしまう心理的な現象です。『孫子』(作戦篇)に「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり」(たとえ勝ち方に不十分な点があったとしても、目的を達したならば、速やかに終結に導くのが良策である)という言葉がありますが、人は頭では合理的に考えることができても、感情的な問題で不合理な決定をしてしまうことが多々あるのです。また、このようなクライアントの不合理な態度に、弁護士も感情的に反応してしまうという落とし穴があります。この事例においては、感情的な問題に対して、あたかもカウンセリングを行うような要領でクライアントに認知の転換を図ることができたことが成功に結び付きました。自らの感情のコントロールについては、「第15回ネゴシエーション研究フォーラム」の「怒り」に関する研究が役立ちそうです。

  事例3も、感情の問題です。訴訟は金銭的、時間的、精神的負担が大きいので、クライアントは訴訟が長期化すると訴訟そのものが目的となってしまい、早期の和解によって訴訟が終わってしまうことを逆に不安に思うようになることがあると言います。また、クライアントが常に合理的、理性的であるとは限りません。感情の問題のみならず、情緒のバランスを崩してしまう場合もあります。この事例でもクライアントはいくつもの不合理な妄想に駆られていました。このような場合、合理的な説得は禁物です。クライアントに寄り添い、粘り強く傾聴と共感を続けるしかありません。

  交渉は交渉テーブルの向こう側にいる相手とだけ行う(外部交渉)ものではありません。むしろ交渉者の背後にいるクライアントや複数の利害関係者の合意を取り付ける内部交渉の方が交渉に占める割合が大きい場合も多々あります。この事例も、外部交渉以前に内部交渉の難しさを示していると言えます。この事例では、結果的にクライアントを説得するのに相手側代理人や裁判官までもが協力する形となりました。

  さて、弁護士が交渉学を身に着けることには、上記のような問題解決に資するのみならず、弁護士の事業そのものにも様々な好影響があるようです。例えば、

1.迅速な解決→クライアントの満足向上、資金繰り改善につながる
2.付加価値の創造→クライアントの満足・信頼向上
3.2により、紹介やリピートの増加→収入増
4.ストレスと時間の軽減
5.弁護士としての成長

などを指宿さんは挙げておられました。こうした交渉学を会得することのメリットは、弁護士業務のみならず広くビジネスに携わる我々に共通することではないかと思います。それを大変分かりやすい事例で示してくださったことは、我々にとって大きな刺激となりました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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ボール一つで心と体を解き放つ-第112回YMS

2019年09月12日 | YMS情報


  9月11日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第112回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回は、俳優、道化師、テーブルクロス引きのスペシャリストと多くの顔をお持ちで、かつジャグリングを日本に初めて紹介しシガーボックスを広めた、ダンディGOこと三浦剛先生にお越しいただきました。テーマは、「爽快!ジャグササイズ~脳と体の健康体操~」。今週日曜日から月曜日にかけて関東地方を直撃した超大型台風15号が去り、とてつもなく蒸し暑い中、疲れた体と心にとても良いエクササイズを教えていただきました。



  初めに驚いたのが、先生の今年59歳とは思えないほどのお若さ。見た目もさることながら、体重も20代の頃をキープしているそうです。その秘訣が、ご本人によればジャグリングを応用した健康体操、ジャグササイズなのだそうです。

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  ジャグリングとは、一言で言えばボールやモノを使ったお手玉。しかし、一見単純に見える動作には、手足バラバラの動き、正しい姿勢、バランス、リズム、視覚、聴覚、触覚、空間感覚など脳を刺激する要素が数多く含まれています。つまり、ジャグリングは脳に良いということが言えるのです。

  実際、英国の科学雑誌『ネイチャー』に掲載された記事によれば、ドイツのレーベンスブルク大学にて、2004年、被験者に3カ月間ジャグリングを行わせたところ、大脳皮質の視覚を司る領域が強化されたということです。また2009年に英国オックスフォード大学で行われた実験でもジャグリングが脳の高次機能を司る領域、白質を強化することが確認されているそうです。1990年代まで、脳は年齢と共に衰えるというのが常識とされてきましたが、ここ20年の脳科学の発達により、脳は可塑性を持っており、成人してからも発達することが明らかになっています。

  その他にも医学的に見て、複数の動作(デュアルタスク)を同時に行うジャグリングは前頭葉、末梢神経を刺激し、内臓の血行を良くし、リズミカルな動きがセロトニンの分泌を促すなど、心と体に良い効果が期待できるそうです。



 ジャグリングにはジャグリング専用のボールを使います。「第110回YMS」で登場したボッチャのボールに似ていますが、粟を合皮で包んだ柔らかいボールは、ただ握っているだけでもリラックス効果がありそうです。しかし、いきなり複数のボールを使うというのは敷居が高いので、今回はボール1個のみを使った基礎中の基礎の動作を行いました。

1.トス…ボールを上に挙げ反対の手で捕球する
2.パス…トスを水平にした動作
3.腕の下まわし…ボールを反対側の腕の下から投げ上げ、反対側の手で捕球する
4.クロウ…トスしたボールを反対側の手で上から掴むように捕球する
5.スイッチ…上半身を左右にひねりながらパスを行う。その際、投げた方と反対側の足を一歩前へ踏み出す
6.脚の下まわし…ボールを反対側の腿の下からトスし、反対側の手で捕球する

  これら手の動作を胸の前、腰の後ろ、顔の前、頭の後ろなどで行います。さらに足を前後に踏み出すという足の動作が加わります。これら一つ一つは単純な動作ですが、組み合わせることにより無数のバリエーションが生まれます。



  普段あまり行わない体の動きに、最初は戸惑い、笑ってしまう位ポロポロとボールをこぼしていた参加者も、たちまち慣れてリズミカルな動きができるようになりました。捻る、回す、伸ばすといった体の動きは、凝り固まった筋肉をほぐし、血流が良くなり、体幹から熱くなっていくのが分かります。また、上手くやるためには頭で考えるのではなく、体に心の目を向けなければなりません。集中力が高まり、酸素が行きわたったのか脳が晴れ晴れとしていきました。その結果、「部屋が明るく見えるようになってきた」とおっしゃる方もいらっしゃいました。



  最後は、ペアまたはグループになって、以前野原秀樹先生の研修でも行った「わたし・あなた」ゲームをボールを使って行いました。複数で行うと、相手への配慮や呼吸を合わせるなどさらに複雑な認知機能が求められます。個人にとって良いばかりでなく、場の雰囲気を盛り上げ、コミュニケーションを促す、チームビルディングの効果も期待できる一石二鳥のエクササイズでした。

  老若男女を問わず行うことができ、場所や時間を選ばないジャクササイズ。その応用範囲はかなり広そうです。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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やさしいアーユルヴェーダ入門-トリカトゥとギーづくり

2019年09月09日 | その他


  9月8日、Webマガジン“Ho’ailona”さんが主催するワークショップ、「やさしいアーユルヴェーダ入門」に参加してきました。たまたまFacebookでシェアされていた開催告知を何気なく読んでいて、面白そうだなと思ったので、直感の命ずるままに飛び込んだ次第です。アーユルヴェーダについては、名前を聞いたことがあるというレベルで、知識は皆無でした。

  ワークショップは午前と午後の二部制。午前は家庭療法(ホームレメディ)の一つである「トリカトゥ」と呼ばれるスパイスづくり。午後はインドに古くから伝わる、食用でもあり薬でもあるバターオイル「ギー」づくりでした。講師はアーユルヴェーダ料理家のCHIHARUさん。会社員時代にチリのパタゴニア地方を訪れた際、現地の夫婦の自然と繋がった生活の中に、自然-健康-幸福の三位一体を感じ、現在は沖縄県宮古島を拠点に活躍されているそうです。アーユルヴェーダの料理については、ヨガの師より学び、以降毎年インドに渡っては研鑽されているそうです。僕もインドへは仕事で何度か行ったことがありますが、今回参加された女性の中にも度々インドへ行ってヨガなどの勉強をされている方が数人いらっしゃったのには驚きました。僕にはとても真似のできない行動力です。

  さて、この日のワークショップを理解するため、初めにアーユルヴェーダについての説明がありました。アーユルヴェーダとは、インドやスリランカに5000年前から伝わる、中国医学、アラブのユナニ医学と並ぶ世界三大伝統医学の一つ。「アーユス(生命)」と「ヴェーダ(叡智)」で、生命の科学を意味します。アーユルヴェーダでは、生きているものはヴァータ(空・風)、ピッタ(火・水)、カパ(水・土)の三要素、トリ・ドーシャ(三つの病素)を持っていると考え、このバランスが崩れると病気になると言われています。人にはそれぞれ優勢なドーシャがあり、主たるドーシャのバランスを整えることが病気の予防へと繋がります。また、一日の時間帯、季節、人生の年代にもそれぞれ優勢なドーシャがあるそうです。

  トリ・ドーシャは火・空・風・水・土という、万物を構成する五元素の組み合わせです。これは中国の五行(火・水・木・金・土)やギリシャの四元素(火・空気(風)・水・土)と似ていますね。恐らくギリシャ→インド→中国と伝わっていったのではないかと思います。いずれの場合も、これらは物理的な火や水を指しているのではなく、それらが象徴する性質や気質を表しています。

  アーユルヴェーダでは、消化を重視します。これは単に食物を消化することばかりでなく、呼吸を通じて体内に取り込んだ空気であったり、五感を通じて感じた情報といったものも含まれます。これらのインプットが過剰、もしくは優勢なドーシャの性質に合わないものであったりすると、それは未消化物(アーマ)となって体内に蓄積されます。このアーマが心や体の様々な不調の原因とされるのです。このため、アーユルヴェーダでは、アーマをためないようにするための予防と、アーマを取り除くための浄化→投薬やマッサージ→栄養といった治癒の両面からアプローチします。



  さて、アーユルヴェーダの基本をざっと理解したところで、いよいよ午前の部、トリカトゥづくりです。初めに、ピパーチと月桃(げっとう)のお茶が出ました。



  ピパーチ(ヒハツモドキ)は「島胡椒」とも呼ばれ、沖縄では香辛料として使われています。上の写真は、宮古島に自生しているピパーチで、齧ってもそれほど辛くはありませんが、だんだんじわじわと胡椒のような辛みが出てきます。青臭さと相俟った、爽やかさを伴う独特のスパイシーな香りがします。



  月桃はこちらの朝顔の種のようなもの。ショウガ科の植物で、沖縄ではどこでも自生しているそうです。

  この二つで作ったお茶は、初め生姜湯かと思いましたが、飲んだ後で胡椒と唐辛子を合わせたような辛みが後を引きます。このお茶に代表されるように、午前の部はゆるやかに身体を温めるハーブがテーマ。



  さて、本題のトリカトゥづくりです。「トリ(3つ)」と「カトゥ(辛味)」で、三つの辛みを合わせたスパイスということです。因みに、“Tri”はギリシャ語由来の語でも「3」を表す接頭辞ですね。広くインド・ヨーロッパ語系で同じルーツを持つのかもしれません。使用するのは、ピパーチと黒胡椒、沖縄産の粉末生姜です。



  ピパーチは、5分間蒸した後乾燥させます。できれば天日干しが理想。乾燥したピパーチは、ミルにかけて粉末状に。



  三つの粉末を1:1:1で混ぜ合わせれば出来上がり。スパイシーなとても良い香り。トリカトゥは、代謝を上げ、血行を良くし、老廃物(アーマ)を排出するデトックス効果があります。先に挙げたどのドーシャの体質にも合い、手軽に作ることができる上、調味料にもなりますし、健康のため1日朝と夜の二回、スプーン1/2杯ほどをお湯に溶いて飲むという使い方もあります。僕はこの日の夜、鶏肉を焼いたのが出てきたので、早速トリカトゥをまぶして美味しく食べました。



  余ったピパーチを、バニアラアイスにまぶしたり、油と塩で炒めたズッキーニにまぶして食べました。油とピパーチは相性が良いようです。甘いバニラアイスにスパイシーなピパーチの組み合わせは意外なようですが、僕はよくスパイシーな味わいで有名な「タリスカー10年」というスコッチ・ウィスキーをバニラアイスにかけて食べますので、この組み合わせの良さは理解できます。

  なお、アーユルヴェーダの考えでは、食事中の水分の取り過ぎは良くないのだそうです。できれば食前・食後30分も取り過ぎない様にした方が良いとのこと。一方、白湯は全てのドーシャのエネルギーバランスを整え、体内を浄化してくれる、大変優れた飲み物なのだそうです。また、蜂蜜は加熱すると却ってよくないとのことです。



  お昼の休憩は、会場のすぐ近くに「Shuhariの台所」という、民家を改造したカフェで「ピリ辛ぶっかけ豚汁定食」という、身体に良さそうな定食を食べました。午前中にトリカトゥを摂取した効果でしょうか。普段は激辛ラーメンを食べても汗をかかない僕も、身体から汗が吹き出しました。

  隣の写真は、店内で買われているカメ。8年前は500円玉くらいの大きさだったのが、こんなに大きくなってしまったのだそうです。この時はお昼の休憩中でしたが、普段は放し飼い状態なのだとか。

Shuhariの台所



東京都港区南青山4-25-2





  午後の部は、「ギー」づくり。午後も初めにハーブのお茶が出ました。パッティンガムというインドのハーブで、乾燥させた木の幹を煮出すと、このような鮮やかなピンク色になります。ほとんど無味・無香でクールダウン効果があるそうです。午前とは反対に、午後は身体のクールダウンがテーマですね。

  ギー(Ghee)は、インド料理に欠かせないバターオイル。よく行くインド料理店「ガナパティ」で出てくるナンに塗られているオイルもこれだったのかもしれません。ギーは無塩バターを煮詰め、水分や蛋白質などの不純物を取り除いた、より純粋な乳脂肪です。医食同源の考え方はインドでも同じようで、ギーは料理に使われるほか、マッサージオイルとして、また薬として目に入れたりもするそうです。僕も少し肌に刷り込んでみましたが、思いのほかベタベタせず、バター臭いにおいも余りしませんでした。クールダウン効果があることから、蒸し暑くて眠れない夜など、足裏に塗っても良いようです。最近では、コーヒーにギーを入れる「バターコーヒー」も人気なようです。なお、保存は冷蔵庫に入れず常温で。



  さて、作り方はまず無塩バターを中火で溶かします。150gのバターから、130㎖のギーができるそうです。



  バターが完全に溶けたら、弱火にします。通常のガスコンロですと弱火でも火が強すぎるため、鍋とコンロの間に金網を挿入し、さらに火を遠ざけます。この状態で40分ほど煮詰めます。



  次第に蛋白質を含んだ脂が浮いてきはじめ、増えてきます。煮詰めるにつれ、沸騰した泡の粒がだんだんと小さくなっていき、やがてシュワシュワと炭酸飲料のような音を立てるようになります。この音が出来上がりの目安です。



  ザルに不織布を敷き、ゆっくりと濾していきます。



  濾されて澄んだ黄色い油、これがギーです。



  透き通ったとても美しい黄色。神秘的な感じがします。



  最後は、濾した時に取り除いた、蛋白質を含んだ油で炒めたブロッコリにクミン、ターメリック、ガランマサラ、まさにインドカレーに使われるスパイスを加えたものです。これがとても美味しくて、ぜひ家でも作ってみたくなります。

  何も知らずに飛び込みで参加した半日のワークショップでしたが、時間の経つのも忘れるほど楽しく、勉強になりました。新しい世界に触れさせていただいた皆様に感謝申し上げます。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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2019年7月アクセスランキング

2019年09月01日 | 人気記事ランキング


  厳しい残暑が続いておりますが、風の涼しさなどに着実に秋が近づいているのを感じます。皆様、いかがお過ごしでしょうか?
 
  さて、2019年7月にアクセスの多かった記事、トップ10です。
 
  まずは2018年10月以来、9カ月ぶりに個別記事「エコノミーとエコロジーの語源」(28カ月連続)がトップに立ちました。その他定番の6位「Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子」(7カ月連続)、9位「『上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会』に参加してきました」(3カ月連続)は今回もランクインしています。

  もう一つ、かつての定番だった「久村俊英さんの超能力を目撃してきました」が2018年8月以来、11カ月ぶりにランクインしました。

  その他は7月に投稿した記事ですが、弊社の重要行事の一つである「キックオフミーティング」が、今年も7月に開催されました(3位)。今年は創業85周年の節目でもあります。

1 エコノミーとエコロジーの語源
2 トップページ
3 創業85周年の集い-キックオフミーティング2019
4 久村俊英さんの超能力を目撃してきました
5 出現する未来-第110回YMS
6 Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子
7 初めてのスカイバーカウンター-日本プロ野球2019 横浜vs中日10回戦
8 市民酒場「常盤木」へ行ってきました-横浜・戸部町
9 「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました
10 お通しの枝豆から美味しい-汁いち(京風おでん、豚しゃぶ)

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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