窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

心理的安全環境がもたらす自律型組織の作り方ー岩出雅之氏講演メモ

2023年10月21日 | その他


 10月19日、帝京大学スポーツ局長で帝京大学を前人未到の9連覇を含む10度の優勝に導いた元ラグビー部監督、岩出雅之氏のお話を拝聴する機会がありました。実が岩出氏は大学の後輩の叔父さんでもあり、秩父宮ラグビー場でもお見かけしたことがあったので、何となく親しみもあり、今回のお話を非常に楽しみにしていました。ご著書、『常勝集団のプリンシプル 自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント』も5年前に拝読しています。

 学生スポーツは毎年学年が入れ替わるため、連覇が難しいと言われています。大学ラグビーも例外ではなく、2009年に帝京大学が初優勝を成し遂げるまでの44年間、大学選手権を三連覇したのは1982年‐84年の同志社大学のみ。明治、早稲田、慶応といった創部100年を超える伝統校、90年代後半から2000年代にかけて一時代を築いた関東学院も三連覇はありません。そう考えると、帝京大学の9連覇というのがいかに偉業であったかが分かります。

 単に大学チームとして強いというばかりでなく、現在開催中のラグビーW杯フランス大会でも日本代表の内7名が帝京大学OB。そして社会人のリーグワンでも加入1年目、2年目の卒業生がキャプテンに抜擢されることも珍しくありません。こうした「人づくり」の側面は、かつて無名の関東学院大学を6度の大学王座に導いた春口廣元監督同様、ラグビーの監督である以前に教員であることが大きく影響しているのかもしれません。実際、岩出氏が行ってきたことは、大学卒業後に教員として勤務した中学校、高等学校での経験がベースとなっているそうです。ここでは伺ったお話の内容を、1.心理的安全性、2.サポートと育成、3.経験学習サイクルの3つに分けてまとめたいと思います。もちろん、これらは互いに強く関係しあっているので、3つの別々のテーマというよりは、いかにこれらが密接に結びつくことで「強い組織」を作り上げているのかに着目していただければと思います。

1.心理的安全性

 2015年、Googleの調査結果で「チームの生産性・パフォーマンスを高める最も重要な要素は、心理的安全性である」と発表されたことで、「心理的安全性」という言葉が一躍注目されるようになりました。心理的安全性とは、「組織や集団の中でも自然体の自分でいられる環境」のことを言います。しかし、岩出氏はそのような言葉が認知されるようになるはるか以前から、心理的安全性のある組織づくりに取り組んでいました。2015年時点では、既にそうした取り組みが実を結び、帝京大学は7連覇を達成していたのです。

 チームにとって個々のメンバーの有能性はもちろん大事ですが、協力関係はより重要な意味を持ちます。組織の風通しが良ければ、人間関係が改善し、個々の集中力が増し、パフォーマンスの増大につながります。そのために、遣り甲斐、成長、幸せを感じられる組織をいかにつくるか?

 帝京大学ラグビー部では、1年生の内から、試合や練習の場だけでなくあらゆる場で意見を出させ、能動的空気感をリーダーだけでなく全員で作り上げていきます。そうすると1年生も遠慮なく発言できるようになり、情報交換が増えることでチームの知識量が増え、多様な価値観からイノベーションが生まれます。ただし、心理的安全性とは環境要因であってそれ自体が目的ではありません。

 ラグビーという競技は、監督は原則スタンドにいて、試合中は選手に干渉できません。フィールド内では選手たちが自分たちで判断してプレーしなければなりません。また、フィールド内も広いので、15人のプレイヤー全員が意思疎通を図れる機会は事実上ほとんどありません。せいぜい近いポジションの2名ぐらいです。したがって、選手が自分で考え行動する自律性を養うことが不可欠であり、そのために150人いる部員一人一人と向き合います。人を育てるには時間がかかりますが、その秘訣は常に「何故なのか」を説明すること。人は納得すればその先に可能性を見るからだそうです。

2.サポートと育成

 帝京大学ラグビー部のチームスローガンは、「Enjoy&Team work」、理念として「ダブルゴール」を掲げています。「エンジョイ・ラグビー」と言えば、古くはTVドラマ「スクールウォーズ」でもそんなスローガンが出てきましたし、前述の春口廣元監督の著書にも同様の言葉が出てきたと記憶しています。岩出氏は、エンジョイ(enjoy)とは、「楽しむ」と訳されるが、元々の成り立ちはen(作る)+joy(喜び)、即ち「喜びを作る」ことだと言います。ラグビーを楽しむのみならず、その根底にある「喜び」を作り出すことが大切です。

 一方、ダブルゴールとは、大学時の目標と社会に出てからの目標を同時に設定させ進めていくという考え方です。つまり、大学選手権優勝などは短期の目標ではありますが、長期の目標から見れば通過点になります。また、その先のゴールから自身の目標を捉えることで、一見部活動としてのラグビーだけを見れば関係ないように思えることでも、意味のある物として捉えられるようになります。

 とはいうものの、150人の部員を抱えるラグビー部にあって、公式戦に出場できるのはAチーム、Bチームの一握りの部員たちです。Cチーム、Dチームになるとどうしても目標を見失い、焦り、諦めが出てくることもあります。そういう層の仲間たちに全員でどれだけ関わってあげられるか、サポートし、支援することができるかが極めて重要です。特にキャプテンには、自分からサポートし、支援するサーバントリーダーシップ(リーダーが部下に積極的に関わり、意見に耳を傾け、組織の進むべき方向を指し示し、奉仕することで人を導くリーダーシップ哲学のこと)が求められます。チーム愛とはその先に生まれるものであって、チーム愛を押し付けて部員を服従させるものではありません。

 こうした日々の習慣が繰り返され、組織文化(カルチャー)へと醸成されていきます。カルチャー(culture)とは「耕す」を意味するcultivateと同じ語源ですが、文字通り、カルチャーは組織という木を育てる土壌の役割を果たします。その喩えで言えば、心理的安全性とは木に降り注ぐ太陽のようなものと言えるでしょう。

 とりわけ現代は個と組織の関係が逆転し、若い世代は自分らしく、自己実現できる環境を求めています。これは内発的動機(自律性・有能感・関係性)に基づいた組織づくりという点で、むしろ真なのだと思います。岩出氏が1996年にラグビー部監督に就任して以降、心理的安全性のある環境づくりに取り組んできたのは、一つには教育者として強い組織を作るためにいわゆる「体育会系」のパラダイムを脱する必要を感じていたということがあると思いますが、もう一つには、ラグビー新興校としてそうする必要があったのだそうです。1996年監督就任時から初優勝する2009年までの期間は、大まかに言って早稲田と関東学院が覇を競っていた時代でした。1966年創部の帝京大学ラグビー部であっても、当時100年近い歴史を持っていた伝統校から見れば新興校であり、知名度は圧倒的に劣っていました。そのような環境の中で、優秀な高校生たちに帝京大学を選んでもらうためには、心理的安全性のある「脱体育会系」の魅力を打ち出す必要があったのだそうです。

 脱体育会系の最たる取り組みが、四年生を頂点とする、いわゆる体育会系ピラミッド型組織を逆転させたことです。帝京大学では、4年生が掃除や食事などの雑務をこなし、1年生にラグビーに専念できる環境を作ります。下級生も最初は戸惑いますが、そのような先輩の姿を尊敬するようになり、尊敬することで行動が変わってくるのだそうです。そうした下地があって、前述のような1年生も積極的に発言できる雰囲気が生まれます。さらに自分で考える自律型人間を育成するためのポイントとして、

①可視化…やってみせること。
②問いかけ…先輩が先回りして答えを言わない。下級生に考えさせる。
③最適難易度…一人一人の力量を見極める。

の3つがあります。これにより、下級生のみならずむしろ上級生の力量が高まります。例えば、僕も長年ラグビーを見てきて感心していましたが、帝京大学の主将は驚くほどスピーチが上手です。さらに、個々の力量を見極めることが習慣となることにより、試合の時に相手の力量も見極められるようになると言います。典型的な例として、3年生による1年生向けの新人研修があります。これは1年生のためであるのと同時に上級生になった3年生が学ぶ場でもあります。卒業生がリーグワンに行っても早くからキャプテンに選ばれ、また学年が入れ替わるが故に連覇が難しいとされる大学スポーツにおいて帝京大学が9連覇を成し遂げられたのは、この「勝つことではなく学び続ける姿勢」が受け継がれていくからではないかと思います。

 それから、人材育成に際して難しいことの一つとして「心」の問題があります。部員一人一人と向き合い、伴走したとしても「心」の変容は容易なことではありません。人の心というものは、その人の「特性」と「状態」と分けて考える必要があります。前者の心の特性は容易には変わりません、というより変えるのはムリなのです。大事なことは、心の「状態」に向き合い、その状態を作っている背景にアプローチしてあげることだそうです。例えば、ある選手のパフォーマンスの低下は、家庭での悩みが背景にあるかもしれません。心の状態の背後にあるものに踏み込むことができなければ、単純に「やる気がない」とか「たるんでいる」の一言で片づけてしまい、事態を悪化させることにもなりかねません。

 岩出氏が中学校教員時代に教わり、今でも大事にしている言葉に「子育て四訓」があるそうです。元はアメリカインディアンに伝わる子育ての名言と言われていますが、次のようなものです。

乳児は何があっても肌を離すな
幼児は肌を離せ、手を離すな
少年は手を離せ、目を離すな
青年は目を離せ、心を離すな

 これは子育てのみならず、「成人発達理論」における4つの発達段階、「利己的段階」、「他者依存段階」、「自己主導段階」、「自己変容段階」にも通じるサポートのあり方だと思います。また、これらの段階は、一つクリアすればその段階が消えてなくなるというものではなく、その人の心の状態が一時的にどの段階にあるかを知り、それに応じた適切なサポートをするための指標と考えることもできるでしょう。

 部員の成長を支援することで思いやりの文化が生まれ、クラブが好きになります。卒業していく先輩に恩返しをするのではなく、下級生に対して恩送りをしていくようになります。ラグビーにおいてボールを前に投げる「スローフォワード」は反則ですが、受けた恩を先へ送る「ペイフォワード」は大いに推奨されるべきことです。

3.経験学習サイクル

 日本能率マネジメントセンターによる意識調査によると、現代の若者は失敗を非常に恐れると言われています。したがって、挑戦を受け入れる関係が大事になってきます。たとえ失敗しても挑戦したプロセスを評価します。

 失敗は次の3種類に分けることができます。

①防ぐことができるもの
②複雑なもの
③知的なもの

 ①は回避可能だったものなので、次回改善すればよいということになります。②は複雑で予測が難しいものなので、単純化することで、少しずつクリアさせていきます。例えば、昨年の大学選手権決勝(忘れもしない、我が早稲田が73vs20という選手権最大の大差で敗れた試合です)で初出場の選手がいました。その選手は走攻守揃った非常に器用な選手でしたが、器用故に何が自分の強みなのかはっきりせず、パフォーマンスがどれも中途半端に終わっていました。大学生にとって最も重要な選手権決勝という国立競技場の大舞台、それも初出場という最も緊張する場面にあたり、その選手に求めるものを「ラン」1本に絞ったそうです。その結果、彼は大舞台で目覚ましい活躍をしました。③はイノベーションを起こすために生じたものであり、まさに「挑戦」です。これは失敗ではなく「未成功」と考えるのです。未成功と捉えることでさらなる挑戦を促し、挑戦の総量が増えることで心理的安全性に繋がります。

 そんな帝京大学も2018年シーズン、ついに連覇の途絶える時が訪れます。岩出氏曰く、「いつの間にかぬるい組織になっていた」と。そこで今一度、以下のような経験学習サイクルを徹底したそうです。経験学習サイクルとは、デイビッド・コルブが提唱したフレームワークで、一般に「経験、振り返り、概念化、実践」から成り立つサイクルを言いますが、内容はほぼ同じです。

①フィードフォワード(行動前の共通理解)
②リフレクション(内省、振り返り:自らの思い込みに気づき、行動を変容する)
③フィードバック(客観的事実を知る)

 とりわけ②リフレクションが重要なのですが、これができている組織は案外少ないのではないかとのこと。

 そして2021年シーズン、大学王座奪回をもって勇退。昨年から相馬監督に引き継がれ連覇。2023年シーズンの現在、関東大学ラグビー対抗戦も佳境に差し掛かっていますが、正直僕の目から見てですが、帝京大学が頭一つ、二つも抜きん出ており、再びの三連覇は堅いでしょう。構成する部員が毎年入れ替わっても学び続け、変わり続ける力。初優勝から14年経っても未だ他校がキャッチアップできない強さの本質。ひょっとすると伝統校はその「伝統」が頸木となっているのかもしれませんが、仮にそれが正しいとすれば、いかに本質的に重要なことを学び、そこから抜け出せるかがカギとなるでしょう。そして岩出氏のお話は、我々企業組織のあり方を再考する上でも大いに参考になるでしょう。



繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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人生のターニングポイントー第156回YMS

2023年10月12日 | YMS情報


 10月11日、「夢・あいホール」にて第156回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。



 講師は、株式会社ターニングポイント代表取締役、赤井知一様。「不登校生・発達障害・起立性調節障害のための自分の居場所~留学という選択肢~」と題して、留学を通じて不登校問題と向き合うお話を伺いました。



 赤井さんが現在のお仕事にたどり着くには、実は伏線があります。それは高校時代、大学時代の留学経験です。今のような「不登校」という問題が恐らくなかったわけではなく、表面化していなかった時代。赤井さんもどちらかというと学校に行きたくないと思っていたタイプだったそうです。そんな赤井さんの最初の留学経験は高校1年生の時。心配した親御様のすすめで高校1年生の時2週間アメリカにホームステイに行きました。そこでとても自由を感じたそうです。そしてホームステイ先では身の回りのことは全部自分でやらなければならない。例えば朝食を作るというようなちょっとした成功体験の積み重ねから自信が生まれたそうです。全く分からなかった英語も、帰国する頃には相手の言っていることは何となくわかるようになっていました。一方で、自分の感謝の気持ちを伝えられないもどかしさから悔しい想いもされたそうです。

 二度目の留学経験は大学生の時。卒業を控えやりたいことも定まらなかった時に研究室の教授の勧めでオーストラリアへ2年半の本格的な留学に旅立ちました。その経験で、ご自身の性格も大きく変わったそうです。帰国後は理科系の学部でしたが、留学経験を活かし留学を支援する会社に就職されました。以降、留学を支援する事業に従事すること25年、これまで5,000人以上を留学に送り出してこられたそうです。

 そんな時、留学を希望しカウンセリングに訪れる人たちの中に、社会問題化していた不登校児や発達障害の方の相談が見られるようになりました。普通、そもそも留学がしたいという動機を持つ人は自主性があります。したがって、大抵の場合、留学前のサポートの後は知らない間に留学に行き、自分で帰ってきてしまいます。しかし、不登校の方や発達障害の方は事情が違います。現地で放っておくという訳にはいかないので、担当カウンセラーによる現地での手厚いサポートが必要になる。しかし、当時大手の留学支援ではそこまでの手厚いサポートはできませんでした。しかし、ご自身が学校に行きたくないと思っており、留学で人生が変わった経験をもつ赤井さんは、その様な方たちにこそ、人生を変える転機を掴んでいただくためのサポートが必要なのではないかと考えました。そして一念発起して起業した会社が、「ターニングポイント」。読んで字の如しです。

 現在、小中校で30日以上欠席した児童、いわゆる「不登校児」は30万人にも上り、かつ年々増加傾向にあるそうです。その原因は、先生、校則、身体の不調、生活のリズムの乱れ(ゲーム、スマホの存在も一因)、学業不振、友人関係など様々ですが、いずれにせよストレスから不登校になるケースが多いようです。この問題に文部科学省も支援予防策を打ち出してはいますが、「不登校特例校」が「学びの多様化学校」と呼び名を変えた学校が全国わずか24校といった現状です。

 決して日本の教育が間違っているとか、悪いという意味ではなく、それに適応できないという方たちの選択肢として「海外」というのがあるのではないかというのが、赤井さんのお考えです。自分を取り巻いている生活環境から離れることで、確かに環境が変わることのストレスもありますが、自立できる機会、一人でやり遂げる自信、(不得意の克服ではなく)得意を伸ばす教育が得られる可能性があります。実際、肌感覚ではありますが、日本で不登校だった子が、海外ではほぼ朝ちゃんと起きて学校へ行くそうです。

 「留学」と聞くと敷居が高そうですが、赤井さんの会社では不登校や発達障害の方々が安心して海外に旅立てるよう、様々な留学スタイルを用意しています。例えば、最短3泊4日からでも可能ですし、英語力はもちろん不問、引率付きのグループツアーもあります。勉強よりアクティビティを多く取り入れ、体験を重視したりといった工夫もあります。もちろん、本格的な留学も可能です。留学の結果、価値観の変容、日本の学校への復学、人間関係改善、規則正しい日常生活、やり遂げた自信など様々な成果が得られています。

 さらに、前述の通り、留学に至るまでのサポートも非常に充実させています。不登校や発達障害の方は周囲の大人に対して壁があるので、留学の準備過程でまず彼らとの信頼関係を築かなければなりません。そこで、それぞれの人に合った個別カリキュラムの作成、定期的カウンセリング、マンツーマン英語レッスン(10回)、国内ホームステイ(海外をイメージした研修施設で模擬留学)、1泊2日のテイクオフミーティング、出発空港でのチェックインサポート、帰国後の報告会など、きめ細やかな支援が用意されています。



 不登校や発達障害の方たちは人並み以上に留学というのは敷居の高いものだと思います。しかし、だからこそ人生を変えるパラダイムシフトが起こせる潜在能力が留学にはあるのだという逆転の発想が、留学という経験の意義そのものを大きくしているように感じました。

心が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる

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過去のセミナーレポートはこちら
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大室山のパワーを浴びて-静岡県伊東市

2023年10月11日 | その他


 伊東に向かう途中、阿蘇の内輪山や霧島連山の御鉢を思わせるような、きれいな緑色の草に覆われた山が見えました。それが滞在先近くの大室山であるということが分かったので、昇ってみることにしました。

 行けば、小学校の卒業旅行で行った「伊豆シャボテン動物公園」のすぐ近く。ということは、38年前にここへ来たことがあるということになります。



 大室山は標高580mのスコリア丘で、山自体が国の天然記念物です。スコリア丘は、噴火活動によって地表にスコリア(岩滓)が放出され、それが火口の周りに堆積することで形成されたすり鉢状の丘を言います。上の写真はまさに御鉢の縁から火口を見下ろした景色になります。山全体が木ではなく草に覆われているのは、毎年春に山焼きが行われるためだそうです。この山焼きの伝統は700年くらい続いているのだとか。大室山ができたのは推定5,000年前で、最後の噴火は約4,000年前と言われています。山頂へはリフトで登り、現在徒歩での登山は認められていません。



 これがスコリアです。



 御鉢の縁はぐるりと一周できますが、とても素晴らしい眺望で気持ちがいいです。とても良い気、パワーをもらった気がしました。ちょうどからりとした青空、秋の夕方だったのも良かったのかもしれません。



 伊豆七島のうち、大島、利島、新島、神津島などが見えました。



 初冠雪が報じられたばかりの富士山も見えました。大勢いた外国人観光客の皆さんも喜んだと思います。改めて写真を見ても清々しい気分になりますね。

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実践型パーパス経営ラボ第9回勉強会に参加しましたー静岡県伊東市

2023年10月10日 | その他


 今年の1月から参加させていただいている、本業を通して社会の持続可能性を高めながら稼ぐ力を高める経営を探求する、「実践型パーパス経営ラボ」の第9回勉強会が、静岡県伊東市の古民家で行われました。



 正確に言うと、現代的な住宅の内装に囲炉裏や和室など古民家の資材を移築した施設で、「未来を作る人たちが集う場所として使って欲しい」という家主さんのご厚意で、今回開催の運びとなったそうです。木々に囲まれた静かな場所で、お風呂からは遠く海も臨めます。



 さて、勉強会は株式会社オーザック代表取締役西山基次さんによる自社のパーパス(社会における存在意義)およびコア・バリュー(核となる価値観)設定と、その社内共有した際の事例発表。連結金具や産業用吊り具等、金属加工、ステンレス加工を得意とする、広島県福山市にある創業70年の会社です。今回の会場の近くでは、静岡県三島市にある日本最長の吊り橋、「三島スカイウォーク」のワイヤーソケットにもオーザックの製品が使われているそうです。

 株式会社オーザックは西山さんの奥様の家系の会社で、三代目にあたるそうです。昨年6月に代表に就任し、パーパスとコアバリューを設定したのが今年の8月になります。従来も会社に「社是」・「経営理念」というものはありましたが、それらを改めて「パーパス」・「コアバリュー」として再定義した形です。

●社是
未来の可能性にチャレンジする
●経営理念
地域社会への貢献と使命
顧客第一主義の姿勢と顧客創造
全社員の幸せと自己規範の育成

●パーパス
人の力で、支えるを創造し、社会を調和させる
●コア・バリュー
全体視点で行動する
多様性を尊重する
変化とチャレンジを楽しむ
あたり前以上を提供する

 従来との違いは、より社会的存在意義が分かりやすく打ち出されたことですが、お話を伺っていて印象的だったのは、「支える」という事業ドメインが明確にされたこと、コア・バリューは、核心的価値観という名の通り、自社が辿ってきた70年の足跡を具に振り返り、そこに非明示的ながらも一貫して流れていた価値観を整理し、明示しているという点です。つまり、それらは代が変わっていきなり現れた価値観ではなく、既に会社の中で脈々と受け継がれ、事業を通じて表現されてきたものなのです。



 その上で、西山さんはご自身の人生も振り返り、自分が何を大切に生きてきた人間で、それがどのようにパーパスやコア・バリューと結びついているのかも整理して伝えられています。同じ価値観を共有していても、それを表現していくかには、少なからず歴代経営者の個性や時代感覚が反映されるでしょう。それを明確に社員に伝えることで、新たに設定されたパーパスやコア・バリューが、経営者本人とはかけ離れた単なるお題目でないことが明らかになるでしょう。何のために、どうして、そしてどこへ向かうのか?



 そして夜は囲炉裏で炭をおこし、バーベキュー。



 翌朝は手打ちの二八蕎麦、十割蕎麦もいただきました。とてもリラックスできる環境で、価値観を共有できる仲間たちと頭もお腹も満たす、とても贅沢な時間でした。

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2023年9月アクセスランキング

2023年10月02日 | 人気記事ランキング


 9月27日~29日、ポートメッセなごやにて、第82回全国産業安全衛生大会(緑十字展2023)が開催され、今年も出展いたしました。例年は18,000人ほどの来場者数が、今年は25,562名と大変多くの方にお越しいただきました。名古屋という場所の利もあったと思いますが、これはコロナ前の来場者数をも上回る、近年記憶にない盛況ぶりでした。

 さて、2023年9月にアクセスの多かった記事、トップ10です。まず定番記事ですが、102ヶ月連続でトップ10圏内を維持していた、「エコノミーとエコロジーの語源」が3ヶ月ぶりに返り咲き。それも3,083pvと2位の408pvを大きく引き離しての1位でした。正確な理由は分かりませんが、9月18日に突然3,274pvものアクセスがあり、それが大きく影響したものと思われます。

 それ以外の定番記事は以下の通り。

4位:「Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子」(24ヶ月連続)
8位:「久村俊英さんの超能力を目撃してきました」(40ヶ月連続)
10位:「初めてのスカイバーカウンター-日本プロ野球2019 横浜vs中日10回戦」(7ヶ月連続)

 前月まで3ヶ月連続でランクインしていた、「この界隈で人気の焼き鳥屋さんのようです-吾一 堂山店」は24位、かつての定番「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」は惜しくも12位でした。

 3位:「第2回大阪交流会―第154回YMS」、5位:「脱税はコスパ最悪ー第155回YMS」と、9月は2回開催したYMSの記事が上位に入りました。6位:「日本の歴史から見る統合型交渉のヒントー第61回燮(やわらぎ)会」は日本交渉協会の勉強会ですが、25日投稿と日数が少なかった割に多くのアクセスを集めました。

 9位:「樽が背もたれにちょうどいい…-樽座敷紀子(いわき市小名浜)」は、2月以来7ヶ月ぶりのランクイン。7位:「大貫3安打11奪三振、宮﨑初盗塁!-日本プロ野球2023 横浜vs巨人23回戦」、その後4勝1敗で昨日広島と並び2位となったベイスターズ。明後日4日の最終戦に単独2位、CSのホーム開催がかかります。

1 エコノミーとエコロジーの語源
2 トップページ
3 第2回大阪交流会―第154回YMS
4 Yema(イェマ)-フィリピンのお菓子
5 脱税はコスパ最悪ー第155回YMS
6 日本の歴史から見る統合型交渉のヒントー第61回燮(やわらぎ)会
7 大貫3安打11奪三振、宮﨑初盗塁!-日本プロ野球2023 横浜vs巨人23回戦
8 久村俊英さんの超能力を目撃してきました
9 樽が背もたれにちょうどいい…-樽座敷紀子(いわき市小名浜)
10 初めてのスカイバーカウンター-日本プロ野球2019 横浜vs中日10回戦

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