電脳筆写『 心超臨界 』

悲しみは二つの庭を仕切るただの壁にすぎない
( ハリール・ジブラーン )

◆『菊と刀』《「道義国家」から「町人国家」に 》

2024-05-23 | 05-真相・背景・経緯
◆『菊と刀』《「道義国家」から「町人国家」に 》


「新教育方針」は、戦争の原因は国民性、すなわち「日本人の物の考え方」の欠点にあったとして、封建的、非合理で独りよがりなどを強調し、このような「国民性」を「反省」して「改造」することを目指した。この「精神的武装解除」戦略はみごとに奏功し、日本人の美しい心、道徳の中核であった報恩感謝、義務、責任、名誉などの民族の価値観に巨大な疑問符が投げかけられ、自信と誇りを喪失し、「道義国家」日本は戦後、経済優先の「町人国家」になってしまった。


戦争の原因は伝統的子育てという幻想――高橋史朗・明星大教授
( 「解答乱麻」産経新聞13.01.19 )

昨年12月、『菊と刀』の著者ルース・ベネディクトの文書を研究するため、米ニューヨーク州のヴァッサー大学を訪れた。英国の社会学者ゴーラーと米国の文化人類学者ミードが『菊と刀』に与えた影響について研究するためである。わが国の戦後の教育改革をリードしたGHQの民間情報教育局の幹部は、対日心理戦を主導し、「精神的武装解除」という目的を達成するために、日本人の「国民性」に起因する侵略戦争への「反省」を促すという宣伝戦略を立てた。

『菊と刀』と『新教育方針』(教師指導用マニュアル)とウォー・ギルト・インファーメーション・プログラム(戦争贖罪(しょくざい)情報宣伝計画)がこの戦略遂行上、大きな役割を果たした。

ベネディクトは戦時情報局の「国民性研究チーム」の一員として、「日本人の徹底抗戦の決意をくじく」ための対日宣伝のために、「菊と刀」に象徴される国民性の矛盾の解明を研究課題とした。日本人の国民性には「奇妙な矛盾」があると同チームは考えたが、その土台となり「バイブル」となったのが、ゴーラーの論文「日本人の性格構造とプロパガンダ」であった。

米国の対日占領政策の骨格を決定した太平洋問題調査委員会の昭和19年12月の「日本人の性格構造」をテーマとする会議(ミードが調整役)で指導的役割を果たしたゴーラーが『菊と刀』に決定的な影響を与えた。

家庭、学校、地域社会が教育の3本柱であったが、一体なぜ教育基本法から家庭教育が排除されてしまったのか。厳しい躾(しつけ)や罰を与える伝統的子育てによりトラウマが生じたという仮説に、フロイト理論に基づく強迫的な「神経症患者」(集団的な精神障害)という「劇的な概念」(ジョン・ダワー)が付け加えられ、それが「暴発」して侵略戦争になったという、とんでもない幻想が広がってしまったという背景があった。

前述した会議を主導したゴーラーやミード、精神分析学者らの主張が「日本人の精神年齢は12歳」というマッカーサーの理論的根拠となり、『菊と刀』にも大きな影響を与えた。

また、「新教育方針」は、戦争の原因は国民性、すなわち「日本人の物の考え方」の欠点にあったとして、封建的、非合理で独りよがりなどを強調し、このような「国民性」を「反省」して「改造」することを目指した。この「精神的武装解除」戦略はみごとに奏功し、日本人の美しい心、道徳の中核であった報恩感謝、義務、責任、名誉などの民族の価値観に巨大な疑問符が投げかけられ、自信と誇りを喪失し、「道義国家」日本は戦後、経済優先の「町人国家」になってしまった。

この戦後の呪縛から脱却、国民精神の復興なくして「美しい国・日本」の再生はない。日本の家族制度を男が女を支配する階層制度として捉え、「結婚とは、子供をもうけて“孝”を果たすこと」と捉えたベネディクトの家族観、結婚観には「ジェンダー」研究の先駆者ミードとゴーラーの影響があったと思われる。

ベネディクト文書研究に加え、英サセックス大学のゴーラー・コレクション、米議会図書館にあるミード文書の研究、また、ベネディクトとは日米双方で対照的に評価されたヘレン・ミアーズの文書(米スワースモア大学所蔵)との比較研究調査のために数カ月渡英、渡米し、これらを集大成した第1次史料に基づく実証的研究の書を世に問いたい。
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