西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

俄獅子

2009-02-14 | 曲目 (c)yuri saionji
例によって意訳を記す。

『みんなびっくり
花のパラダイス吉原
四季折々にイベントあり
今日は俄の晴れ舞台』

次は「相生獅子」の獅子奮迅の乱拍子を茶化している。

『花魁の 手紙に誘われ客が来る
座敷遊びの狂態は
ひらりひらりと夜具の上
酔いがまわって
足もとふらふら』

次は「相生獅子」にはない、六三郎のオリジナル。
木遣りくずしで花魁と間夫(まぶ。情夫)の痴話げんかを綴る。

『夜更けて逢うのが間夫の客
いつもわちきが待ちぼうけ
豆腐にかすがい ぬかに釘
ぬらりくらりと 言いわけばかり
にくらしいったらありゃしない
思いっきりつねってやったら
青いあざ ああーいい気味だ』

そして再び「相生獅子」に戻る。
ここは傾城奧州が、
恋人巴之丞との楽しかった昔を思い出す件のもじり。

『人目を忍ぶ逢い引きは
裏通りのラブホテル
こんなにぞっこん惚れさせて
いったいどうしてくれるのよ』

『目移りするような女たち
日暮れて華やぐ仲の町
さあさあ、目もくらむような
花魁が現われますぞ』

次の件は「獅子物」定番の”シシトラ”。
獅子団乱旋(ししとらでん。舞楽の曲名)
と、唄い始めるところからきた称だ。

『舞えや踊れや
ゲイシャ幇間引き連れて
酒と肉に大金散らす男ども
金の奇特はあらたかにして
みーんな諸君に靡きますぞ
めでたしめでたし』


この曲は「相生獅子」のパロディーで、
”狂い”(獅子の狂いの合方)も”シシトラ”も備えているのだから
厳密にいえば、”石橋物”といえなくもないのだが、
あまりにもおふざけがすぎるせいか、
”獅子物”(石橋物の別称)の範疇に入っている。

では、どうやって石橋物と獅子物とを区別するのか。
長唄に限っていえば、「越後獅子」「角兵衛獅子」など、獅子踊りを題材にしたものが獅子物。
謡曲「石橋」から派生し、狂い、シシトラを備えている曲が石橋物、
と定義付けているのではなかろうか。

しかし、それにしても瀬川菊之丞の「相生獅子」「夫婦獅子」「枕獅子」、
中村富十郎(初代)の「英執着獅子」と、何と本筋からはなれてきたことか。
六左衛門が、外記節「石橋」で軌道修正をしたのも理解できる。






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