西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

蓬莱

2010-07-22 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
120-「蓬莱」(1836・天保7年)


中国に伝説の山、蓬莱山がある。
はるか東の海上にある霊山で、
そこには不老不死の仙人が住んでいるとか。

「新曲浦島」で、坪内逍遥が、
『それ、渤海の東 
 幾億万里に際涯(そこひ)も知らぬ
 壑(たに)在るを』
と詠んだのは海底にある、伝説の巨大な溝、”ききょ”だが、
そのあたりに蓬莱山はあるのだろう。

蓬莱山を縁起物の置物にしたのが、蓬莱の島台。
そこには、鶴亀・尉と姥などが住む。 

吉原好きの杵屋六三郎(4世)は、
蓬莱山の仙人を、遊女に見立ててこの曲を作った。

『萩の白露 
 起き伏しつらき
 色と香の
 繁りて深き床の内
 今朝の別れに
 袖濡らす
 しょんがえ』

●遊女というのは寝ても覚めてもつらいもの、
 客とどっぷり愛しあっても、
 朝が来れば涙の別れが待っているのだから。
 やれやれ…

これは深川の色町で流行っていた小歌。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚