とめどもないことをつらつらと

日々の雑感などを書いて行こうと思います。
草稿に近く、人に読まれる事を前提としていません。
引用OKす。

テクノロジー業界につきまとう奇妙な比率「90:9:1の法則」とは?

2017-04-05 23:43:44 | IT・ビッグデータ・新技術
思うに、ブラウザの占有比率が変化したように、この90:9:1の役の座の交替・変化は起こすことが出来る。
その瞬間の真理かもしれないが、しかし瞬間風速なだけで、未来永劫に役は固定されないのだ。


テクノロジー業界につきまとう奇妙な比率「90:9:1の法則」とは?
2016年02月06日 20時00分00秒
http://gigazine.net/news/20160206-90-9-1/

インターネット上のコミュニティーには、参加者よりも閲覧するだけの人(ROM)の方がはるかに多いという「1%の法則」があると言われています。これは、書き込みを行う人は全体の1%しかおらず、後は閲覧者であるという状況からきたものですが、これとは別に、テクノロジー業界においては「90:9:1」という別の興味深い比率にまつわる法則があると指摘されています。

90:9:1 – the odd ratio that technology keeps creating | Technology | The Guardian
http://www.theguardian.com/technology/2015/dec/12/ratio-technology-mozilla-firefox-os-90-9-1

OSやブラウザ、検索エンジンなどのITサービスにおいて、市場に参入する企業のシェアが90:9:1の比率になるという「90:9:1の法則」がささやかれています。これは、最も人気を獲得し多くの人の支持を得たサービスが市場の9割を独占し、2番手が9%を、3番手でさえも1%を確保するのがやっとで、他のサービスは数字上は存在しないに等しいという、弱肉強食の世界を指しています。

例えば、モバイルOSの市場シェアを例に挙げると、GoogleのAndroidが約83%、AppleのiOSが約14%、MicrosoftのWindows Phone(Windows 10 Mobileを含む)が約2.6%で、4番手以下は1%を確保できていないという状況で、おおむね「90:9:1の法則」が成立しています。この法則に従えば、モバイル版Firefox OSが消滅したのも、Tizenがなかなか成長できないのも当然ということになりそうです。

PC用のOSについて見れば、IDCのデータによるとMicrosoftのWindowsが約91%、AppleのMac OSXが約8%、Linuxが約1%でやはり「90:9:1の法則」が成り立ちます。

検索エンジンでは、Googleが約89%、MicrosoftのBingが約7%、Yahoo!が約3%で残りの1%に満たないシェアを他の検索エンジンが分け合っているという結果で、ほぼ「90:9:1の法則」に近い状況が見られます。

これは2015年11月時点でのイギリスの検索エンジンのシェアを示した結果。調査したStatCounterによると、他国でもほとんど傾向に変わりはないそうです。


ブラウザでは、かつて95%という圧倒的な市場シェアを誇ったMicrosoftのInternet Explorerが急激にシェアを失う一方で、GoogleのChromeが過半数のシェアを獲得し、さらにシェアを伸ばしつつあります。FirefoxやSafariなども現状維持がやっとで長期的にはシェアを失う傾向にあるので、いずれ、「90:9:1の法則」に支配される日がくるのかもしれません。

なぜ、ITサービスではダントツの存在が生まれてしまうのかという理由について、The Guardianは、無料であることとネットワーク効果を挙げています。多くのソフトウェアは無料で使え、メンテナンスコストもユーザーには発生していないという状況下では、ネットワーク効果によって大きなシェアを奪ったサービスはますます内容が充実するため、トップシェアのサービスだけが圧倒的な地位を築くことが多いというわけです。

さらには、サービスの排他性も指摘されています。普通のユーザーはスマートフォンを複数台使うこともなければ、調べ物によって検索エンジンを変えることはないため、複数のサービスを使う必要はなく、一つのサービスだけが使われ続けるため、ダントツの存在が成立し得るとのこと。

これを別の面から裏付ける結果は、ゲーム機のシェアに表れています。例えば家庭用ゲーム機について見れば、前世代のハードウェアであるソニーのPlayStation 3は8590万台、MicrosoftのXbox 360は8490万台、任天堂のWiiは1億120万台と拮抗した販売台数となっています。これは、ゲーム機には排他性があまり存在せず、ゲーム愛好家は1種類のゲーム機を使っていれば事足りるというわけではなく、複数のゲーム機を使うことがあるため「90:9:1の法則」が成り立たないそうです。

サービス導入コストが低く、ネットワーク効果を持ち、排他性のあるサービスは「90:9:1の法則」に縛られてしまうという事実からは、ITサービスにおいてはいかにして大きな市場シェアを素早く奪うかが、サービスの命運を大きく左右すると言えそうです。



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欧州共同研究、有機ELの電気エネルギーを光に変換で、ほぼ25%→100%の変換効率(ケンブリッジ大学・イーストアングリア大学・東フィンランド大学)

2017-04-05 23:32:38 | IT・ビッグデータ・新技術
ほんまかこれ


分子を回転させて光を生み出す新技術が開発中、より明るく・省エネ&長寿命なディスプレイへ - GIGAZINE
2017年04月05日 08時00分00秒
http://gigazine.net/news/20170405-rotating-molecules-lighting/

ケンブリッジ大学・イーストアングリア大学・東フィンランド大学の共同研究で、分子を回転させることで光を作り出すことに成功しました。 この技術を応用すれば、テレビ、スマートフォンのディスプレイ、ルームライトなどをより明るく、省エネで長寿命にすることが可能とのこと。

Rotating molecules create a brighter future | University of Cambridge
http://www.cam.ac.uk/research/news/rotating-molecules-create-a-brighter-future

High-performance light-emitting diodes based on carbene-metal-amides | Science
http://science.sciencemag.org/content/early/2017/03/29/science.aah4345

分子を使って光を作り出すという技術は有機EL(OLED)の1つとして1980年代に発明されました。有機ELは2017年時点でもテレビやPCのディスプレイに広く使われていますが、電気エネルギーを光に変換する効率性が悪いという根本的な問題を抱えています。

分子が並んだ素材に電力を通すと、分子全体は活動状態になりますが、そのうち光を生み出すのは25%で、残りの75%は暗い状態のままです。この暗い状態の分子は電気エネルギーを光に変換することができずエネルギーを無駄にしてしまいます。この状態の分子が生み出す熱量は、フィラメントを使う旧式の白熱電球より大きくなるとのこと。

そこで、これまでにはイリジウムといったレアメタルを用いて分子の回転を変え、暗い状態の分子を光らせるというアプローチもとられました。しかし、この方法は分子を回転させるまでに時間がかかりすぎてしまうため、エネルギーが蓄積しダメージを受けた有機ELが不安定になります。このため、実用化するのが難しいと考えられています。

一方でイーストアングリア大学の研究者らは、2つの有機分子を銅や金の原子で接合するという新しい技術を開発。接合された2つの分子はちょうどプロペラのような形で、暗い状態の分子が回転するプロペラ上でねじれることで、即座に回転を変え、電気エネルギーを光に変換することが可能になります。このとき、既存の方法のように有機ELにダメージを与えることなく、ほぼ100%の変換効率を実現することが可能とのこと。


研究を行ったケンブリッジ大学・キャヴェンディッシュ研究所のDan Credgington教授は「この新しい技術が初期の段階で、何十年も開発されてきた技術のパフォーマンスを打ち負かしたのは驚きです。私たちが発見した効果がスペクトル全体で活用できるようになれば、光を生み出す方法が変わるでしょう」とコメント。

研究者らは今後もさらなる研究を続け、今回発見されたメカニズムを利用して、最終的にはレアメタルを全く用いない新しい分子をデザインすることに注力していくと述べています。

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【はてな引用】「ソニー株式会社を退職しました 」

2017-04-05 23:32:34 | 労働

ソニー株式会社を退職しました
http://anond.hatelabo.jp/20170403094257

表題の通り、数年勤めたソニー株式会社を退職しました。

個別具体の退職理由はいろいろあってそれらは後述しますが、退職を決めた基本的な理由は、個人的なキャリアパスの設計と会社の方針のミスマッチ、労働観のミスマッチ、技術投資の考え方のミスマッチの三点に集約できると思っています。
キャリアパスの設計と会社の方針のミスマッチ

私はソニーでソフトウェアエンジニアとして働いていました。

ソフトウェアエンジニア(を目指す人間)にとってソニーと言えば、"自由闊達な理想工場"、エンジニアが自由に活躍できる会社、日本のメーカーなのにソフトウェアもちゃんとつくれる会社、などのイメージがあるかと思います。私もそう思っていました。

実際会社は説明会などでそういった説明をしましたし、そういったイメージを前提に私はソニーを選び、「エンジニアとしてプロフェッショナルになる。品質が高く、お客の求める体験を作り出せる人間になる」というふわっとしたゴールを設定し、いわゆる"プログラマ 35 歳定年説"をガン無視した一生エンジニア型キャリアパスを描いていました。

しかし、会社の求める人材像、少なくとも自分が配属された事業部で求められる人材像、キャリアパスは、上記と全く異なるものでした。

昇進の段階としては、現場業務(エンジニア)は基本的に常にマネジメント業務(中間管理職)に対して格下に位置得付けられており、一部オーバーラップする部分があるものの、昇進する = エンジニアをやめてマネージャーになるという状態でした。退職の原因になった上司からも「君は優秀なんだから、プログラミングみたいな低俗なことは早く辞めて人を動かせるようになれ。私が引っぱりあげてやる」(意訳)といったようなことを言われ、自身の「エンジニアとして生きる」というキャリア設計との相違は明らかでした。

もちろん、組織としてスケールするために、エンジニアが経験を活かしてマネジメントに移行することは否定されることではありません。ですが端から、エンジニアリングをマネジメントになるための踏み台として"しょうがなくやるもの"として扱うことには強い違和感と嫌悪感がありました。

退職の際の送別会で、部署の中でもエンジニアとしてレベルが高いと感じていた40代の先輩が、「ソニーではエンジニアリングは評価されない。俺はその方向に進んだけれど、給料は最近下がる一方だよ。君はいい選択をした」と言っていたのが、未だに記憶に残っています。
労働観のミスマッチ

私はいわゆるライトなオタクで、アニメやゲームが好きでコンテンツを消化する時間が無限に足りないと感じていたり、自分で何かを考えてものを作るという絶望的に時間を食う行為も好きだったりして、ともかく余暇の時間の確保が人生の重要課題です。

もうご推察されたことと思いますが、ソニーでの私の労働時間はそれなりに長かったです。企画・ビジネスユニット主導のスケジュールに開発部隊は圧殺されて、長時間労働が常態化していました。私も残業時間が 90 〜 100 時間程度の月が 3 ヶ月ほど続いたこともありました。部署の先輩には、残業時間の"平均"が100時間という方もいましたし、月の半ばで法規制が許す残業時間を"使い切ってしまう"ため月の中盤以降は"定時に帰ったことになっている"デバイス系の同期もいました。正直に告白すれば、私もチームリーダーに「打刻してから席に戻ってこい」と言われたことがあり、そのチームリーダーは次の日悔恨の表情で「昨日言ったことは忘れてくれ」と言っていましたが、数カ月後に突然辞めました。

前述の通り、趣味の時間が人生の意義になっていた私にとって、これは体力的だけでなく精神的にも非常にダメージの大きいものでした。上司からの「君のチームが他のチームに比べて残業時間が少ないので、(労使交渉で通常の上限の)60時間まで残業時間を埋めてほしい」という指示が決定打となり、退職を決意するに至りました。
技術投資の考え方のミスマッチ

昨今の、シャープ・東芝等のニュースで明らかになっているとおり、大企業だから安泰ということはもう過去の話です。そのため、自分の市場価値を高めておく必要があると私は強く感じています。

しかし、会社はエンジニアリング軽視であり、またその昇進先であるマネジメントについてもお世辞にもプロの仕事とは呼べないものであり(残業100時間を続けないといけないマネジメントとはなんでしょうか?)、ソニーで働き続けることは私の「労働市場で自分の市場価値を高める」という方針にとってリスクでしかありませんでした。

人事担当者に、現在のキャリアパスについて不安があるという相談をしたときにも「増田さんがソニーで(定年まで)働き続けることを考えると〜」のような発言をしており、会社がなくなる / 現状の待遇が維持されなくなるというリスクは全く考慮されておらず、いかにただただ嵐が過ぎるのを耐えるかという発想しかありませんでした。

エンジニアリングについても、昨今の汎用チップにスペック的に見劣りする高額のカスタムチップの開発、そのカスタムチップを使いこなすための C / アセンブラによる手動の最適化といった"職人芸"に対する信仰、大量のテスターを雇っての人力テストなど、エンジニアとしてのセンスとしてやや疑問符がつく、ともすればレガシーな開発手法がまかり通っていたりと、この技術・職場に適応したとして、その人物は一般的な問題に対応できるだろうか?その人物を市場は評価するだろうか?という疑問が拭えませんでした。

また、業務時間がまるで足りないからとコードレビューすらろくにできないので知見がたまらない、時間がないので勉強もできない(しない)、もちろん職場で最新の技術に対するディスカッションどころか雑談すら成り立たない、という状況で、私がこのような職場で業務に忙殺されている間にも、世界のエンジニアは勉強し技術力を高めているのかと思うと、相対的に自分の市場価値を毀損されていると感じ、焦燥感にはちきれんばかりの思いでした。
転職

こういった不安・不満があり、また会社の期待にも応えることが難しいということで、先ごろ無事ソニーを退職し、新しい職場で働き始めています。新しい職場は上記の 3 要件についてよくマッチしていると感じており、心穏やかに働けています。幸い年収も多少増える結果となりました。

色々書きましたが、これらはソニーが悪い会社だと言う話ではなくミスマッチだと思っています。上記の内容はすべて私の価値観を元にした一面からの評価になっており、他方でここで挙げたような会社の考え方(マネジメント優先・仕事優先・安定優先)に同調・納得できる方もいると思います。残念ながら私とはミスマッチだったというまでです。

また、あくまでこれらはソニーという(さらに言えば自分の配属された事業部という)組織に対する評価であり、尊敬できる先輩・同期もたくさんいましたし、そういった方々と出会えた、幸いにして現在も仲良くしていただいているということは、本当にありがたいことです。

みんながしあわせになるといいな。
おもしろ案件とお気持ち表明

ここからは単なるおもしろ案件共有コーナーです。

「私は断捨離を最近している。私のデスクにはラップトップしかない。エンジニアは席にぐちゃぐちゃ本を置きすぎ。読んだって忘れるし意味ない」 ー 退職原因となった上司
「60時間残業するしかない。隣のチームは100時間とか残業している人もいるし... あ、できれば休日出勤も」 ー チームリーダー
「オフショアに、ある UI が表示されないというチケット切ったら、戻ってきたコードが全部の UI 表示判別ロジックを無視して最後に必ず true を返すようになってた」 ー 先輩
「オフショアに出すときには割り算を使ってはいけない。彼らは割り算を理解できない」 ー 同期
「オフショアにこれだけ仕事を明け渡すことができ、こんなにコストカットできた!」(オフショアの人数が増えて社員の人数が激減してるグラフをみんなに見せながら) ー 退職原因となった上司
「2ヶ月ペンディングしてたプロジェクトを再開します。期限は以前のままで。(倒れている人が多すぎて)人は増やせません。そこの生きてる新人一人でお願いします」 ー 企画
「勉強はいいから早く書き始めて!」(社内独自フレームワークを使ったアプリ開発を初見の私ただ一人に任せた初日の言葉) ー プロジェクトマネージャー
「チケット読み上げるだけだったら、あのプロマネより初音ミクのほうがテンション上がる分いいよね」 ー 先輩
「これ、売上連動でボーナスが決まるってなってますけど、うちの事業部みたいな絶対この先下がるしかない事業部はボーナスが下がるってことですか?」「そこはビジネスユニットが生かさず殺さずの設t「事業計画に則ってちゃんと支給されるので大丈夫だよ」 ー 査定評価説明会にて
「若いうちに限界が知れてよかったんじゃないかな?」(私が長時間労働で倒れて復帰した際に) ー 退職原因となった上司

内定もらった時の風景は今でも覚えていて、友人と一緒に出かけていた先で内定通知の電話がかかってきて、本当に2人で喜んで、とても嬉しかったのを覚えている。どうしてこうなっちゃったんだろうなぁ。

ものつくりの現場で、エンジニアリングをバカにされたのは悲しかったなぁ。私がいる間だけでも、ものが作れなくなっていってるのが感じられたのも悲しかった。



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AIで仕事はなくならない ―― なぜか過剰被害妄想の日本の本当の危機

2017-04-05 22:59:35 | IT・ビッグデータ・新技術
グーグルの研究本部長ピーター・ノーヴィグさんとほぼ同意見なのは最初だけの模様。
2段落目から、安宅さん独自の意見が盛り込まれていて大変面白い。


AIで仕事はなくならない ―― なぜか過剰被害妄想の日本の本当の危機
Feb. 14, 2017, 01:20 PM
https://www.businessinsider.jp/post-827

「今の機械学習ベースの人工知能(AI)には、そもそもあまり語られていない『不都合な真実』があるんです」。そう話すのはヤフーのチーフストラテジーオフィサー(CSO)安宅和人氏。今、AIが語られる時に必ず出る文脈が「AIはどこまで人間の仕事を奪うのか」という点だが、安宅氏は 「AI vs 人間のように語ること自体、そもそも間違い。業務の何かが自動化されることは大量に起こるが、大半の人間の仕事がまるごと消えることは起きない。むしろ新しい仕事が色々増える可能性が高い」と話す。

そもそも「不都合な真実」とは何か。

安宅氏は日本ではAIに関する認識が大きく「ずれている」と指摘する。万能のように思われているAIだが、そもそもAIは計算環境と機械学習(深層学習を含む)、自然言語処理などの情報科学、訓練データを組み合わせて人間が実現を目指すゴール(「イデア」と安宅氏は表現する)に過ぎない。実際、「できない」ことはたくさんあり、むしろ、人間に比べてできることは限られている。ただ、できることが極端によくできる、そのことが万能に近いと誤解されているのだと。

「多くの仕事は大局的には問題解決です。まずは、どうなりたいか、という姿や目標、志を決める。現状を見立て、解決すべき点(問題)を整理する。問題を切り分け、それぞれ分析し、全体を俯瞰し、結論を出す。その上で、『こうやればいいよね』と関係する人たちに伝える。AIには意思がないので、人間が『こういう軸で判断をしてね』と目的を与えないと動けない。また、そういう『ガイドラインに沿って数値目標を単に設定する』とかではなく、『そもそもどうすべきだ』『この事業はどんな形にしていきたい』などという複合的かつ定性的で心に響くビジョンや最終型のイメージを描くことはAIには望むべくもありません」

「今、述べた問題解決の多くの段階でAIは『人間のように知覚する』ことが必要です。しかし、知覚は人間の身体(からだ)がなければできないことが随分多い。色や肌触り、味といった質感を得るには我々の身体を通した入力が必須です。我々と同じような知覚センサーを同じような密度で持つ、同じような固さや同じような動きをする身体で得ないと同じような入力にはならないからです。更に『知覚』は脳の中にしかありません。例えば、色や味、肌触りは物理量ではないのです。つまりAIは、わりと素朴な理由で、我々人間とは置き換えられないのです」

「また、我々の仕事の大部分は生産現場であろうが企画/販売の現場であろうが『対話』です。でも、AIには常識と呼ばれる我々の判断を置き換えることは極めて困難です。人がひとり入れ替わるだけで変わるような微妙な状況のセッティングや過去の経緯などのコンテキスト(文脈)を理解するのは当面ほぼ不可能です。したがって、正しいタイミングで、正しい相手に、正しく問いかけることはそのまま我々の仕事として残ります」

「意味を与えるのは人間なのです。AIには常識と文脈を踏まえた判断もできないし、人に伝える力もない。みなさんが思っているような問題解決マシーンじゃないんです」
「AI=ドラえもん」は日本の非常識?

総務省の調査(「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」平成28年)によると、日本の就労者の抱くAIのイメージは「コンピューターが人間のように見たり、聞いたり、話したりする技術」(35.6%)であり、「コンピューターに自我(感情)をもたせる技術」(27.4%)だという。

安宅氏は、こうした傾向は日本にかなり色濃く存在するバイアスだと指摘する。

「AIといえばヒューマナイズした姿だけを当然のように妄想しているのは日本特有だと思います。AIと表裏一体の構造にあり、現在の革新のもう1つのドライバーであるビッグデータがもたらしている変化に目を向けたり、AIと呼んでいるものの実体に目を向けず、AI、AIとばかり言っているのも極めて危なっかしい。AIと言った時にイメージしているものも、欧米とは相当違う。他の国の人の多くはもっとコンピュータやソフトウェアによる情報処理、自動化だとちゃんと理解している人が多い。人工知能といって、いま生まれつつある変化として、ドラえもんみたいなのを想定するというのは、夢としては正しいが、危な過ぎると言わざるを得ない」

「今、ビッグデータとAIによって起きている自動化には大きく言って3つあります。すなわち、情報の『識別』と『予測』、そして暗黙知的なものを取り込む『実行』です。たとえば、Google Photoは写真をアップしておくと、自動的に関連する静止画をつないでアルバムやコラージュ組んでくれたり、連続する画像を使って動画にしてくれる。これらはもちろん人間にもできるけれど、コンピューターの処理はすごく速い。ざっと普通の人の200万倍以上。200万人も雇っている会社なんてないし、高い人件費を使ってこんなことをやらせようなんて誰も思わない。どんな組織にもできないことを彼らはキカイにやらせている。つまり、そもそも人間では誰にもできないレベルのことをあっという間にやらせるということ。これは仕事の置き換えではなく、不可能だったことが可能になった『新しい価値』なんですよ」

「つまりAIに仕事が取られるんじゃなくて、人間にはこれまでできなかったことができたり、やったことのないことが可能になってきたということがいま起こっていることの本質なんです」
仕事は「なくならない」、でもリスクは「ある」

それでも、「AIに仕事を奪われるのではないか」との懸念の声はある。

2015年12月、野村総合研究所がイギリス・オックスフォード大学と行った共同研究によれば、「国内601種類の職業について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算した結果、10~20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られた」という(出所:野村総合研究所「国内601種の職業ごとのコンピューター技術による代替確率の試算」NRIとオックスフォード大学オズボーン准教授、フレイ博士の共同研究。本試算はあくまでもコンピューターによる技術的な代替可能性の試算であり、社会環境要因の影響は考慮していない)。

しかし、安宅氏は「大半の仕事そのものはなくならない」と言う。

「丸ごと自動化できる仕事なんて、ほとんどありません。ある種の作業が消えるということと、仕事が消えるということが混同されています。このイノベーションによって仕事がなくなってほしい人には申し訳ないですが、ほとんどの仕事は残るんです。週休3日とかは十分あり得るかもしれないけど、仕事そのものはなくならない。むしろこれらの自動化によって全く新しいタイプの仕事が劇的に生まれる可能性が高い。例えば自動走行車が普通に走るようになれば、移動中のクルマの中や自動で動くクルマを使った新たなサービス業が幅広く生まれることは確実です」

だからといって「危機」がないわけではない。その危機感の持ち方が「ものすごくずれている」のだという。

「これから本当に起きるのは『AI vs 人間』ではなくて、『自分とその周りの経験だけから学び、データやAIの力を使わない人とそれを使い倒す人』との戦いです」

「多くの知的生産の現場にはAIなどがアシストで入って来て、使いこなさないといけない。あらゆるところから入ってくるデータの力を解き放たなければならなくなる。使いこなせなかったら競争に負ける。多くの仕事は過渡期において二極化します。なくなる仕事があるんじゃなくて、同じ仕事なのに繁栄する人としない人に分かれていくんです。でも大丈夫。これまでの歴史を見ればわかるように、人間は必ず対応しますよ。人間に対応できないようなものは、そもそも価値がないですから」
本当の危機は「人材、技術、データの利活用」だった

むしろ、心配しなくてはならないのは、日本における「活用できる人材の不足」だ。「現状は極めて過酷」であり、「この国は内面から滅びつつある」と安宅氏は警鐘を鳴らす。その根底にあるのは、データ・リテラシーの低さと専門家の少なさ、そしてデータの利活用が広がらず、世界的な競争力を持てているとはいい難い日本の実態だ。

「今、アメリカのトップ大学の多くでは学部生の過半数が大学でコンピューター・サイエンスを主専攻として学んでいます。MITではほぼ100%です。副専攻まで入れるとこれがさらに上る。複数専攻(ダブルメジャー、トリプルメジャー)が可能だからということがありますが、基礎教養化しているんです。習得していないと将来食いっぱぐれることが分かっているから、みんな一生懸命。ここで落ちこぼれると、やりたいと思うようなイケている仕事につくことも無理になる。

でも、日本のトップ大学でこれらのデータ・リテラシーを習得できるコンピューター・サイエンスやデータ・サイエンスを所属の学部や学科を超え、誰もが持てる専攻のような形で提供し、学生がそれを競って履修している学校は存在しない。致命的ですよ。僕はこのところ国の省庁での委員的なお仕事が多いですが、そこでは文系・理系を問わずデータ・リテラシーを叩き込むべきだ、それに必要な数学も教えて欲しい、読み書きそろばんの一種としてやるべきだ、我々の子供たちにちゃんと武器を持たせなければまずい、と言っています」

「さらに大学と大学院で専門家をたくさん育ててほしい、また、国家プロジェクトを1000億円単位でいくつも立ち上げてリーダー層を育ててほしいと。つまり、リテラシーを高める、専門家育成、リーダー層育成の三位一体で育てなきゃいけないということも言ってきました」

この三位一体の取り組みに加え、既存のエンジニアとミドル・マネジメント層をAI&ビッグデータ時代に適した人材へ転換していくことが不可欠だというのが安宅氏の考えだ。

「今のAI×データ戦争には、3つの成功要件があります。データが大量にあってそれを幅広く使えるということと、それを回す力、そして回す人。今の日本はこのすべてが世界に伍していないんです。データも世界のトッププレーヤーに比べれば全然持ってない、使える場もない、データ処理しようとしたら電気代が高くて、コストが見合わない。ビッグデータ関連の技術も国外が大半。勝負になっていません。日本には才能のある人材はもちろんいます。でも、研究をする場、これらでワクワクを起こしているイケてる仕事がなかったら海外に出て行ってしまう。それでいいのかと言いたい」

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