九月の短歌メモから。
〈失踪中〉の部屋前に漂ふパンの香り 規制線の朝もふかく濃くありき
目を見つつ温かく話すひとだつた その朝はもう写真のみとなりて
〈事件現場の最後つ屁にはライムの香りあり〉と刑事が鼻をヒクヒクさせてゐる午後
セプテムバーの海に捨ててきた青きトマト 新宿駅の雑沓に拾ふ
その夏も〈あの人たち〉に裏切られた夏だつたから国会売店のトマト饅頭、トマト饅頭
デモ隊は手に手にトマトを齧りつつ海辺の首相公邸を目指す
〈あの人〉はトマトに似てゐるかもと今更に海への坂できみはぼそりと
〈恥〉を知らぬ〈あの人〉の前で麦わら帽のわれはトマトを投げつけてゐたり
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