カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

春の。

2017-04-10 07:44:35 | Weblog

fictionの文体練習。。

 

〈某国〉の薄温かな春。国民統合象徴の〈王室〉制度は数十年前に強権行使横暴の政権党によって〈制度〉廃止〈王統〉追放の強行採決が密かに謀られ、〈決定〉。以来〈王統〉は行方知れずになり、三百年来〈議会〉制民主主義を標榜するも、古人の叡智が詰まった〈永遠平和主義憲法〉は堂々と軽視無視され、薄汚い利権に毒された〈勘違い為政者〉たちが世の中に吹かせ始めたおかしな風の勢いがますます強まっているようだ。今日も身体を酷使したしごとのあとの夕つ方。〈宮殿〉前の寂しい並木道の入り口に佇んで夕暮れの風に散っていく満開の桜花を見ていた。〈国家〉の醜い酷い体たらくを恥ずかしげもなく晒し続ける〈某国〉に寝起きしている人間でいまが〈革命前夜〉であると喝破できない御仁がいるとしたらよほど〈鈍感〉か〈浮き世離れ〉か〈お目出度い〉かのいずれかであろうなどと思念しつつ、じゃあ俺はどうだ、と振り返り、昨今ますますこの〈某国〉に所属している感覚が稀薄になって〈居場所のない浮遊感〉が増していることを思い出し、暗澹たる気分になった。

桜は結局楽しくなかった。コムソモーリ通り434番地。アパートメント入り口扉のドアノブに触れると、直ちに扉内側で生体認証審査が行われ、数秒の後ガタンと鈍い音がして解錠された。扉を潜り階段脇の各部屋別の郵便ポストを覗くと、自分のポスト口から大きめの青い封筒端が溢れているのが見えた。

封筒を掴んで階段を八階まで上がり、屋根裏の部屋に帰った。灯りをつけ、ベッドに腰掛けて封筒を見た。封筒表には赤ペンの手書きの太字で〈王国士官募集要項〉とある。〈王国士官〉とはついぞ聞いたことがないぞと思いながら封を切った。

 

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