昔に読んだ小林幸子先生の歌集『シラクーサ』(2004年刊)の中の「バスは死んだ」と付題された一連のことをいまでも時折思い出します。こういうふわふわとした不思議な時間を掬い上げた一篇の小説を無性に読みたくなります。。
〈バスは死んだ〉 小林幸子
てのひらの蜘蛛を窓より放ちしが肢がいつぽん残つてしまふ
高島屋前からバスに乗つて北極にゆくゆめをみてゐき
枇杷の花ひつそりと咲く停留所に待ちつつバスは死んだと思ふ
目覚むれば不思議なゆめを見てゐたといふはずなりし静かな身体
〈バスは死んだ〉 小林幸子
てのひらの蜘蛛を窓より放ちしが肢がいつぽん残つてしまふ
高島屋前からバスに乗つて北極にゆくゆめをみてゐき
枇杷の花ひつそりと咲く停留所に待ちつつバスは死んだと思ふ
目覚むれば不思議なゆめを見てゐたといふはずなりし静かな身体