「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

     松岡農水相の自殺と林業の危機

2007-05-30 05:20:09 | Weblog
「政治とカネ」でとかく疑惑の多かった松岡農水相が林業談合追及の
渦中自殺した。多少、日本の林業を知っている僕には、松岡農水相の
自殺は、日本の林業の危機を象徴する事件で、改めてある意味では大
臣に同情しお悔やみを申し上げたい。

僕は林業の専門家ではないが、外国人の林業研修のお手伝いで、北は
帯広から南は屋久島まで林業施業現場や研究施設を20数か所視察して
いる。日本の領土の70%以上が山地だが、今ここに植えられている山林
が荒廃していることは関係者以外あまり知られていない。

荒廃の一番の原因は人手不足と不在森林地主が多いため、人工林の手入、
間伐が出来ない。これに加えて外材との価格競争に負け、ここ10数年衰退
の一途である。最近、自然災害が多いのも林業の衰退に原因していると指
摘する向きがある。かって若者に人気のあった林業高校も現在、東京など
19都府県では一校もない。

林業関係者は本業だけは生活できない。そこで国の「林道」事業に頼らざ
るを得ない。現金収入は「林道」造成といっても過言ではない。林道を
造っても間伐材を切り出せなくては危機解消にはならないのだが。

松岡農水相の地元の阿蘇にも、彼の母校があり、姻戚の政治家のいる鳥取
に超立派な林道が走っている。「林道」建設はは政治家の票である。かくして
林業危機の根源は解消されず、深まるばかりである。松岡農水相は、この
矛盾を一番知っていた政治家だったが、そのために命を絶った。悲劇である。