本日(8月30日)、大阪府教育委員会会議は、教科書採択を行いました。
国旗・国歌法(注)「一部の自治体で公務員への強制の動きがある。」
この、実教出版「日本史」の記述を巡って、東京都教育委員会は「使用はふさわしくない」とする通知を出し、神奈川県では、28校が選定していたにもかかわらずあの手この手で変更を余儀なくされ、結局、東京都も神奈川県も実教「日本史」採択はゼロでした。
そして、大阪ではそれ以上に露骨な政治介入がありました。8月27日大阪維新の会府議団は教育委員会に直接、実教「日本史」は不適切であるから採択しないようにと申し入れを行ったのです。
私たちグループZAZAは、府民の方々に、いま、何が起こっているのか知らせるためのビラを作成し、府庁別館前で1000枚を配布しました。教育委員会会議は多数の傍聴希望者がいたため抽選となり、残念ながら傍聴はかないませんでした。しかし、実教「日本史」排斥を許さないため府庁別館前に集まった約30名が、会議が開催されている公館に向かって、教育委員会が大阪維新の会に圧力に屈することなく、学校が選定した教科書を尊重し採択を行うよう要請しました。
傍聴した人の話によると会議は非常に紛糾したようですが、9校が選定した実教「日本史」は採択されました。但し、国旗・国歌法の記述を巡っては補完が条件とされました。
この結果は、東京都や神奈川県と比べれば「採択」されたのだから、ましではないかと思われる方もおられるやもしれません。しかし、今回起こったことはあまりにも異常なことです。日本史の教員が生徒の状況を見て選んだ教科書が、使えなかったり、補完的な教材を使えという条件がつくこと自体やはり教育への不当な介入です。
今回の教科書採択については、なぜこのようなことが起こったのか検証する必要があります。
まず、現場の教員が実教「日本史」をどのような観点から選定したのか、本日の教育委員会会議で資料として提出された選定理由書からいくつか抜粋したいと思います。そこから、実教「日本史」がどのような教科書であるのか見えてくるように思います。
実教「日本史」を選んだ理由―選定理由書より
・分野別表記のみならず、時代の流れを概観しやすいように、一つの歴史的事象を他多方面から説明しており、また主題学習の項目が、生徒の興味を引く内容となっており、生徒が自ら学習する際にも、適している。
・冒頭部分で前近代史のふりかえりをしっかり位置づけるなど、本校の生徒実態に合った構成がとられている。本編も写真・図などの資料やコラムが豊富であり、生徒の興味をふくよう工夫されている。コンパクトな本文構成の中に必須事項が十分に記載されているなど、使いやすさにも優れている。特筆すべきは各単元が「問いかけ」形式で構成されていることであり、本校がめざす「生徒に考えさえる授業」を展開するにふさわしい教科書だと判断し選定した。
・各章の冒頭に見開き2ページの世界地図を使い世界史との関連を明示する配慮が行き届き、生徒がそれぞれの時代を「世界の中の日本」として理解するのに有効である。また、現代も歴史の一部であると理解するために、生徒たちが生まれた1990年代以降の現代史の記述が14ページありとても充実している。
・本教科書は各単元において問いかける形の見出しで統一されており、見開き構成でコンパクトにまとめられている。その事は本校生徒の学習状況に極めてあっていると考える。内容については、近年しばしば話題となる沖縄(琉球)や北海道(アイヌ)を始めとした地域史や室町期などの民衆のダイナミックな動きを捉えた民衆史、さらには産業の発展と女性の役割などの記述にみられる女性史などの記述は豊富で、且つ理解しやすいもので魅力的といってよい。生徒たちが、多様な視点から日本史へのアプローチを可能にするものと考える。北東アジア史に関連した記述では、古代より近世に至る朝鮮などの近隣諸国との友好の歩みが過不足なく記述されており、未来の北東アジアの良き隣人としての関係作りには役立つものと考える。本校では近年生徒の家庭状況を考え、副読本の購入を控えてきた。その中で各ページの写真や地図などの視覚教材や史料に意味は大きい。教科書内の史料の意味は大きい。教科書内の史料の配置及び見出し・解説などのわかりやすさ、さらに各文化の項にまとめあげられた視覚教材とコメントの適格性は優れている。本教科書は、歴史を一面的な視点から取り上げるのではなく、多様な視点とその実証のための史料など、互いに補完し合いながら学ぶことを可能とする教科書であると考え、選定する。