新潮文庫:毎日新聞旧石器遺跡取材班
実は自作自演だった上高森遺跡での発掘捏造はなぜ起きたのか? 一部で暴走する考古学と、それを止められなかった学界の体質。さらに報道のあり方と使命を、毎日新聞旧石器遺跡取材班が自戒も込めて総括・検証する。(amazon)
4年前の有名なスクープ報道に至るまでの取材過程を記録したドキュメント。読み応えあり、一般人向けの多角的な検証や考察もコンパクトにまとまっていて、なかなか面白い。
発掘された物自体が「事実の実証」と考える考古学そのものの問題、チェック機能をもたず、記者会見でのセンセーショナルな発表を鵜呑みにして新聞記事にする報道のあり方など、奥の深そうな問題が露にされる。
決定的瞬間のビデオ撮影に成功する瞬間に向かって高まっていくスリルもドラマティック。つうか、実際にスペシャルドラマが作れそうなくらいネタがいっぱい。藤森氏のその後の告白がある続編も読もう。