愛する子供が、治療法の見つかっていない難病に冒される。
脳の機能が低下し、数ヶ月から2年程度で幼い命が絶たれる事がほぼ確実。
絶望に嘆き悲しんでいた両親は、泣いていても何も始まらないと、病気と闘うことを決意。
どうやって?
以下ネタバレ。
銀行員の父親と、主婦だった母親が、この病気の見つかっていない治療法を見つけるために、独学で医学や薬学の勉強を始めるのです。
そして、様々な障害や困難にも諦めることなく、両親の不眠の努力の末に、ついに今まで解明されていなかった病気の進行を止める物質(ロレンツォのオイル)を手にするのでした。
なんの前知識もなしで、この映画を見始めたので、両親が自分達で勉強を始めたところでまず驚きました。え、これってそういう映画なの?
客観的に見ても、素人に何ができるんだろうと思います。当時、周囲にいた人たちから見れば、絶望の余り、気が違ったかと思ったことでしょう。
専門医、看護士、この難病の家族会、製薬会社、家族。
ほとんど全ての関係者が、無謀な挑戦に否定的で、時には障害として立ちふさがりますが、とにかくこの両親の意志の強さが半端ではなく、驚くべき執念でひたすら前進を続けます。
最後には決定的な謎が解明されて、製薬会社の協力を得て、子供に治療に必要なオイルが精製され、投与の効果が見られるところで映画は終わります。
この映画がすごく良かったところは、両親の目指す方向にとって障害となる立場の人々が、一方的に悪者として描かれることなく、それぞれの立場で正しい行動をとっていると分かるように、人物を表現しているところです。
例えば、この両親が諦めずにがんばればがんばるだけ、難病の子供の苦痛の時間は長引くのです。早く運命を受け入れて、子供を楽にしてあげることが、子供への愛情ではないかという立場の人が、猪突猛進の両親と対立します。
諦めない両親にとっては障害ですが、見ている私は明らかにそちらの立場が自分の心情に近かったです。子供の苦痛を長引かせてはいけない。
それでも、最後には両親は一つの勝利を得ます。
諦めないこと、信じないこと。それも一つの大切な真理です。
普通に作ったら、もう少し感動しやすい映画にもできたと思うのですが、こんな風に様々角度の視点で考えさせる手法にしたことで、単純な涙でない訴える力を持った映画になったのだと思いました。
映画は1992年のもの。
余命2年と宣告された少年は、現在も生存しているようです。
(ただし機能回復は一部に限られたまま)