Snapeの英語指南

英語長文対策、英語速読法、英語学習法、高校生、中学生、社会人の英語学習に役立つヒントを紹介。

感嘆文には否定形がない!

2010-04-15 09:24:19 | なるほど英文法 

感嘆文とは、驚きや感動を表す文で、What か How で始まり、感嘆符(!)で終わる文である。

例: 

1) How fast he swims!  = 何て彼は速く泳ぐんだろう!

2) What a pretty girl she is!  =  何てかわいいコなんだろう!

 

さて、上記の2つは、典型的な感嘆文であるが、どちらも肯定形である。

感嘆文はもっぱら肯定形だけで、否定形の感嘆文というものは存在しない。これはあまり参考書でもはっきり明記しているものがないし、英語の授業でもめったに触れられることがない。しかし、私には非常に面白い、興味の尽きないテーマである。実際、上記の文で否定形が作れるかどうか試してみよう。まずは、日本語でやってみよう。

 1) 何て彼は速く泳がないんだろう!

2) 何てかわいいコじゃないんだろう!

 どうだろう。こんな文は日本語でも見たことも聞いたこともないだろう。文を作れないことはないが、日本語でも意味をなさないことは明らかである。1) は、けっきょく、彼は泳ぐのが遅いということなのか?期待したほど速くないということか?何に感嘆しているのか不明である。 2)でもそうである。そのコがブサイクであることに驚いているのか?容貌がフツーであることに感動しているのか?限りなくアイマイな、おかしな文である。否定形の感嘆文というものは日本語、英語以前に、論理的に成り立たないように見える。

さて、実は、英語の文の種類は以下のように4種類あって、感嘆文はふつうその一番最後に出てくる。実際ふだん目にする英文でも、だいたいこの順に多い。つまり平叙文が最も多く、感嘆文が最も少ない。新聞でも、小説でも、ネットでもそうである。

平叙文、 疑問文、 命令文、 感嘆文

そして、これら4種類にそれぞれ肯定形と否定形が想定されて、全部で8種類になりそうなのであるが、実際は7種類なのだ。というのは、感嘆文だけには否定形が存在しないからである。

”平叙文” という言葉は知らないひとも多い。これは要するに、疑問文でも命令文でも感嘆文でもない、ピリオドで終わるフツーの文のことである。あまりにもありふれていて、呼び名があることもあまり知られていない文の種類である。

平叙文:

(肯定形) He often goes to the library to read several magazines.

(否定形) We haven't had any rain this summer.

 

疑問文:

(肯定形) What made you try to do such a thing?

(否定形) Why didn't she come to school yesterday?

 

命令文:

(肯定形) Please ask me any questions about our school.

(否定形) Don't leave the windows open when you go to bed.

 

感嘆文:

(肯定形) How strange that dog is!   What a strange dog that is!

(否定形)  存在せず。

 

それでは、なぜ感嘆文には否定形がないのか?すでに最初に、論理的に成り立たないように見えると書いたが、さらに、それではなぜ論理的に成り立たないのか?おそらく、感嘆文の元となる”驚き”、”感動”というものは、現実をそのまま受け入れることにおいて出てくる感情だからではないか。話し手の頭の中で構文的に否定の操作を経ることじたいが、驚き、感動を不可能にしてしまうのではないか。

そもそも”否定”には対象の像を結ばない性格がある。これは英語、日本語いぜんの論理学の話になる。たとえば、「彼は医者ではない。」 He is not a doctor.  という文を考えてみよう。この文は「医者ではない」とは言っていても、それでは彼が何なのかについては何も言っていない。医者でないとしても、じゃ、教師なのか、会社員なのか、画家なのか、エンジニアなのかについてもまったくわからない。”像を結ばない”というのはこのことを言っている。像を結んでいない対象に感動したり、驚いたりすることじたいが不可能なのだ。

また、感嘆文の否定形は、How strange that dog is!  ではなく、How not strange that dog is!  や What not a strange dog that is! であるという指摘があるかもしれない。しかし、これらの文はさらに無理がある。まず、How not strange はどうか。感嘆文での How は次にくる形容詞か副詞の度合いが大きいことを意味するはずであるが、” not strange ” の度合いの大きいこととは何か。”奇妙でないことの度合いの大きいこと”とは何か。How の直後に not がくることは論理的に成立しないだろう。それでは、What not a strange dog ! はどうか。これこそ、”像を結ばない”対象に感嘆することの困難さの極みである。そもそも、What not  a strange dog! にしても、 What a  not  strange dog! にしても、文法的に不可能である。かろうじて可能なのが、What a strange dog that is not であるが、これは像を結ばない、意味不明の文に終わっている。

公園で奇妙な形の犬を見たとする。それを見たあなたがいっしょに歩いていた友人にこう言う、「何て奇妙な犬なんだろう!」と。その犬が変わっていることを構文的に否定形で言おうとすると、「普通じゃない」となるかもしれない。しかし、「何て普通じゃない犬なんだろう!」とは言えない。英語でいえば、 XHow not ordinary! とは言えない。しかし、否定的な意味の形容詞を使って、How extraordinary!  とは言えるのだ。 XHow not usual! とは言えないが、How unusual! とは言えるのだ。How not normal とは言えないが、How abnormal! とは言えるだろう。

つまり、否定が成り立たないのは、意味的にではなく、構文的に成り立たないだけである。

また、こう考えることもできる。感嘆文には、文中に形容詞か副詞が必要である。What 型でも How 型でも、必ず形容詞か副詞が入っている。 How slowly he speaks!  What a stupid girl you are! そして、感嘆の対象はその形容詞や副詞で表わされる意味の度合いが大きいことである。その度合いが大きいことに驚いたり、感動したりしているはずである。How small the dog is! の場合は、小ささの度合いが大きいと考えてほしい。そして、度合いが大きいということは、度合いいぜんにその対象が存在していなければならない。

How slowly he speaks! では、 he は少なくとも speaks していなければならない。であるから、否定形にして How slowly he doesn't speak! という文は成立しないことになる。同様に、What a stupid girl you are! では、stupid の度合いが大きいことに驚いているわけである。であるから、もし、 ... you aren't! としてしまうと、驚きの対象であるはずの "stupidity"の存在、stupid の度合いいぜんの”馬鹿さ加減”じたいすらもが消されてしまうのだ。

たとえて言うと、色の濃いことに感嘆するはずなのに、否定形にすると色の濃淡いぜんに、その色じたいが存在しなくなってしまうのだ。


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2016-03-11 00:09:18
感嘆文は既に倒置の状態なので倒置 (疑問文) にするのは不自然ですね。
wh詞は聞き手に分かりやすくする為 文頭に付け、通常の gap (穴) は空いていませんね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。