家族旅行
想えば、両親は旅行好きでした。
小さい頃から、私たち三兄弟を連れて
ふたりが行きたいところへどこまでも。
絶対大変だったろうに。
ほとんど覚えていないけれど、
九州の温泉巡り、
北海道の長万部
岩だらけの登山
恐山も行った記憶ある。
いわゆる「観光」的なところは嫌いで、
秘湯とか
自然と野生とか
が好き。
1,2か月に一度はどこかへ連れ出されていた。
旅行というのは不便で長距離移動しなくてはいけないもの
と小さい頃は思い込んでいて、
大人になってから
観光化された場所は交通の便も効率もすこぶる良いということに気がつきました。
それを思い出したのは両親の家に行った娘が
ふたりの最近の温泉旅の話を私にしてくれたからです。
「湧き水を汲んできて、それでご飯炊いたんだって」
そんなことある?
何その水。
というのが湧き水を知らない娘の感想。
今や山のブランドを謳ったペットボトルの水が売っていますけれど、
我が家は昔から
地元の人が汲みにくる
山のふもとの給水所へ旅の途中で寄り、
タンクに汲んで家に持って帰る
ということをしていました。
今から考えて、合法か?と思うけれど、
それが両親の楽しみで、
「ご飯の味が」「お茶の味が」違う
と得意顔をするのでした。
私たち兄弟は汲んでいる時間つまんなそうに車で待っている。
その光景が記憶に残っています。
娘によると「お茶の味の違いはわからなかった」とのこと。
違いがわからなかったら、それはセーフです。
あるとき、確実に泥水の味がしたことあります。
ただ本人たちは、汲んできたありがたいお水、という先入観が捨てきれず、
絶対に認めようとしなかった。
あれ、ムカついたな―。
それを七十八十のおじいさんおばあさんになっても
やるんだね。
というか、
私たちが連れ出された頃は
三十代くらいだったから、
だいぶ渋い趣味だ。無料、っていうのが好きなんだよね。
父にモーニング奢ってもらいました。