サウジが原油価格の下落を容認しているのは、米国と協調して、ロシアへの制裁圧力を高めるために進めている(または容認する)のか、イスラム教スンニ派王制のサウジは、イスラム教シーア派のイランへの圧力強化という宗教対立なのか、サウジが米国のシェールガス業者を潰そうと仕掛けているのか、専門家の見方が分かれていることに触れていました。
北海道大学の木村名誉教授は、これまで資源を外交に絡めてきたロシアのお株を米国が逆手に取って、原油価格下落を進めていると指摘しておられます。
サウジの原油価格下落容認の意図は - 遊爺雑記帳
米国、サウジアラビアはそれぞれの政敵たるロシア、イランを経済的、外交的に苦境に陥らせる戦略を採っているとの説です。
そして、原油の国際価格が70ドルから60ドル台にまで落ちるならば、ロシアは「レジーム・チェンジ(政体変更)」の危機にさらされる可能性が生じてくるとのことです。
就任以来、資源高騰の恩恵で国内経済活性化を推進し、ロシア帝国時代の繁栄に回帰するとしていた帝国シンドロームのプーチン大統領。窮地にたつことになります。
米国でのシェールガス生産コストは下がってきていて、今や60ドルになってきているとのことです。一方、原油価格も60ドルにまで下がる可能性が見えてきています。
販売価格が60ドルにまで下がれば、米国のシェールガス開発業者は、中小業者が多く価格競争の体力勝負には耐えられない。既に倒産が出始めている様ですね。
サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が石油輸出国機構(OPEC)総会で、米国のシェール油ブームに対抗する必要があるとして、減産に反対していたことが分かったのだそうです。減産を見送ることで原油価格を抑制し、米国のシェール油生産業者の収益を圧迫すべきと強調したのだそうですね。
米シェール油に価格戦争宣言、OPEC総会でサウジ石油相
今回の原油価格下落騒動の前、去年末頃から、シェールガス業者の採算悪化は話題になっていたのですね。サウジはシェア争いで脅威となってきていたシェールガスを叩くのは今しかないと、資本力での勝負に出たのでしょうか。
なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
原油価格のOPECによる管理の時代から、市場原理での決定の時代に変わるのか。ひきつづき注目が必要です。
# 冒頭の画像は、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相
サクランボ
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北海道大学の木村名誉教授は、これまで資源を外交に絡めてきたロシアのお株を米国が逆手に取って、原油価格下落を進めていると指摘しておられます。
サウジの原油価格下落容認の意図は - 遊爺雑記帳
ロシアを脅かす原油安の「悪夢」 (12/1 産経 【正論】 北海道大学名誉教授・木村汎)
ロシアは、己の外交目的達成の手段としてエネルギー資源を最大限に活用しようとしている。昨年末から今日まで続行中の「ウクライナ危機」ひとつを例にとっても、このことは明らかといえよう。ロシアは、例えば天然ガスの供給を停止したり再開したり、またその販売価格を上下させたりすることによって、政治・外交上の譲歩を入手しようとする。ウクライナに対してばかりでなく、欧州連合(EU)諸国に対しても、そのような戦術を用いている。
≪一元的パワーに潜む脆弱さ≫
しかし、エネルギー資源分野でのロシアの強みは次第に失われつつある。その主要事由は次のとおり。まず、肝心要の西シベリアでの油田が枯渇しはじめた。他方、代替が期待される東シベリア、ロシア極東、北極海は、気候や技術の点で採掘が困難なうえに、米欧諸国の金融制裁なども作用して開発が思うように進まない。
加えて、シェールガスなど非在来型資源、その他の代替エネルギーの開発などによって、例えばEUはロシア産資源を以前ほどには必要としなくなりつつある。
かつてのソ連は軍事力偏重の一元的パワーであり、米国との冷戦に事実上、敗れたのもそのことと無関係でなかった。ウクライナ危機を契機として再発した米露間の対立を、仮に“ミニ冷戦”と名づける場合、この闘いでロシアはエネルギー資源を最大の外交手段にしようとしている。
もしそうならば、ロシアは冷戦時代の誤りを繰り返すおそれが否めない。それは、国力や外交の基盤を単一のものに置こうとする「モノ・カルチャー」思考を行っているからである。現代の「戦争」や闘いは、「総力戦」もしくは「ハイブリッド戦」の様相を強めつつある。単一要因に過度に依存する「一元主義的なパワー」は、最終的勝利を収めえない。
いや、そればかりではない。米国は、現ロシアがもっぱら資源依存型の一元パワーであることを逆手にとり、プーチン政権を経済的のみならず、政治・外交的にも追い詰めるキャンペーンを始めた。
今年後半に発生中の国際原油価格の急落が、それである。プーチン政権の命綱ともいうべき原油の値段は、同年6月の1バレルあたり115ドルをピークにして、下落の一途をたどっている。
≪政敵追い詰める「陰謀論」?≫
原油価格の国際的な急落の原因は、複数存在するかもしれない。例えば、世界経済の一般的な低迷。とりわけ欧州や中国は経済成長を鈍化させ、需要や生産の拡大意欲を示していない。だがこれら客観的な事情に加えて、次のような人為的な要因が作用している。
つまり、米国、サウジアラビアなど一部の産油国が結託して、意図的に石油の増産に努め、国際的な原油安を招来しようともくろんでいる。もとより、そうすれば、これらの諸国は己に商業的なマイナスを導く。だが、米国、サウジアラビアはそれぞれの政敵たるロシア、イランを経済的、外交的に苦境に陥らせる戦略のほうをより重要視するもようである。
これは、主としてロシア側による「陰謀論」的な説明法とはいえ、真相に近いように思われる。
ロシア連邦の2014年度予算は、原油価格1バレルあたり約100ドルで均衡するように作成されている。同価格が1ドル下がるごとに、ロシアの国庫収入は少なくとも約20億ドルの減少になる。14年6月から10月の数カ月間に実際そうだったように、同価格が80ドルへ落ち込むと、それだけでロシアの国家予算は約400億ドルの減収になる。ロシア国内総生産(GDP)2兆ドルの2%を失う。
もし米国やサウジアラビアによる「陰謀」が功を奏して、原油の国際価格が70ドルから60ドル台にまで落ちるならば、ロシアは「レジーム・チェンジ(政体変更)」の危機にさらされるだろう。このような見方さえささやかれ始めた。
≪武器を逆手に立場逆転も≫
もちろん、これは極論である。ロシア国民の負荷耐久能力を過小評価している。ロシア人は、1998年の経済危機も、2008年の世界同時不況も乗り越えることができた。プーチン下の現ロシアは、5千億ドルにも及ぶ「安定化基金」や「国民福祉基金」という経済変動に対するショック・アブソーバー(緩衝器)の制度も備えている。ソチ五輪の成功、クリミアの併合後、プーチン大統領の人気は、空前絶後の高さ(83~87%)を誇っている。
以上にもかかわらず、われわれは1つの皮肉の発生に気づかざるをえないだろう。プーチン氏は、原油価格の国際的な高騰という僥倖(ぎょうこう)に恵まれたラッキーな政治家だった。これまで天然エネルギー資源という武器を政治、外交上の目標を達成するために十二分に活用してきた。ところが、今や立場は逆転したといえはしないか。
つまり米国、サウジアラビアなどの諸国が、かつてロシアが得意とした同一の武器を逆手に用い、そのことによってロシアが苦境に立たされる。このような皮肉が現出しかけている様子なのである。(きむら ひろし)
ロシアは、己の外交目的達成の手段としてエネルギー資源を最大限に活用しようとしている。昨年末から今日まで続行中の「ウクライナ危機」ひとつを例にとっても、このことは明らかといえよう。ロシアは、例えば天然ガスの供給を停止したり再開したり、またその販売価格を上下させたりすることによって、政治・外交上の譲歩を入手しようとする。ウクライナに対してばかりでなく、欧州連合(EU)諸国に対しても、そのような戦術を用いている。
≪一元的パワーに潜む脆弱さ≫
しかし、エネルギー資源分野でのロシアの強みは次第に失われつつある。その主要事由は次のとおり。まず、肝心要の西シベリアでの油田が枯渇しはじめた。他方、代替が期待される東シベリア、ロシア極東、北極海は、気候や技術の点で採掘が困難なうえに、米欧諸国の金融制裁なども作用して開発が思うように進まない。
加えて、シェールガスなど非在来型資源、その他の代替エネルギーの開発などによって、例えばEUはロシア産資源を以前ほどには必要としなくなりつつある。
かつてのソ連は軍事力偏重の一元的パワーであり、米国との冷戦に事実上、敗れたのもそのことと無関係でなかった。ウクライナ危機を契機として再発した米露間の対立を、仮に“ミニ冷戦”と名づける場合、この闘いでロシアはエネルギー資源を最大の外交手段にしようとしている。
もしそうならば、ロシアは冷戦時代の誤りを繰り返すおそれが否めない。それは、国力や外交の基盤を単一のものに置こうとする「モノ・カルチャー」思考を行っているからである。現代の「戦争」や闘いは、「総力戦」もしくは「ハイブリッド戦」の様相を強めつつある。単一要因に過度に依存する「一元主義的なパワー」は、最終的勝利を収めえない。
いや、そればかりではない。米国は、現ロシアがもっぱら資源依存型の一元パワーであることを逆手にとり、プーチン政権を経済的のみならず、政治・外交的にも追い詰めるキャンペーンを始めた。
今年後半に発生中の国際原油価格の急落が、それである。プーチン政権の命綱ともいうべき原油の値段は、同年6月の1バレルあたり115ドルをピークにして、下落の一途をたどっている。
≪政敵追い詰める「陰謀論」?≫
原油価格の国際的な急落の原因は、複数存在するかもしれない。例えば、世界経済の一般的な低迷。とりわけ欧州や中国は経済成長を鈍化させ、需要や生産の拡大意欲を示していない。だがこれら客観的な事情に加えて、次のような人為的な要因が作用している。
つまり、米国、サウジアラビアなど一部の産油国が結託して、意図的に石油の増産に努め、国際的な原油安を招来しようともくろんでいる。もとより、そうすれば、これらの諸国は己に商業的なマイナスを導く。だが、米国、サウジアラビアはそれぞれの政敵たるロシア、イランを経済的、外交的に苦境に陥らせる戦略のほうをより重要視するもようである。
これは、主としてロシア側による「陰謀論」的な説明法とはいえ、真相に近いように思われる。
ロシア連邦の2014年度予算は、原油価格1バレルあたり約100ドルで均衡するように作成されている。同価格が1ドル下がるごとに、ロシアの国庫収入は少なくとも約20億ドルの減少になる。14年6月から10月の数カ月間に実際そうだったように、同価格が80ドルへ落ち込むと、それだけでロシアの国家予算は約400億ドルの減収になる。ロシア国内総生産(GDP)2兆ドルの2%を失う。
もし米国やサウジアラビアによる「陰謀」が功を奏して、原油の国際価格が70ドルから60ドル台にまで落ちるならば、ロシアは「レジーム・チェンジ(政体変更)」の危機にさらされるだろう。このような見方さえささやかれ始めた。
≪武器を逆手に立場逆転も≫
もちろん、これは極論である。ロシア国民の負荷耐久能力を過小評価している。ロシア人は、1998年の経済危機も、2008年の世界同時不況も乗り越えることができた。プーチン下の現ロシアは、5千億ドルにも及ぶ「安定化基金」や「国民福祉基金」という経済変動に対するショック・アブソーバー(緩衝器)の制度も備えている。ソチ五輪の成功、クリミアの併合後、プーチン大統領の人気は、空前絶後の高さ(83~87%)を誇っている。
以上にもかかわらず、われわれは1つの皮肉の発生に気づかざるをえないだろう。プーチン氏は、原油価格の国際的な高騰という僥倖(ぎょうこう)に恵まれたラッキーな政治家だった。これまで天然エネルギー資源という武器を政治、外交上の目標を達成するために十二分に活用してきた。ところが、今や立場は逆転したといえはしないか。
つまり米国、サウジアラビアなどの諸国が、かつてロシアが得意とした同一の武器を逆手に用い、そのことによってロシアが苦境に立たされる。このような皮肉が現出しかけている様子なのである。(きむら ひろし)
米国、サウジアラビアはそれぞれの政敵たるロシア、イランを経済的、外交的に苦境に陥らせる戦略を採っているとの説です。
そして、原油の国際価格が70ドルから60ドル台にまで落ちるならば、ロシアは「レジーム・チェンジ(政体変更)」の危機にさらされる可能性が生じてくるとのことです。
就任以来、資源高騰の恩恵で国内経済活性化を推進し、ロシア帝国時代の繁栄に回帰するとしていた帝国シンドロームのプーチン大統領。窮地にたつことになります。
米国でのシェールガス生産コストは下がってきていて、今や60ドルになってきているとのことです。一方、原油価格も60ドルにまで下がる可能性が見えてきています。
販売価格が60ドルにまで下がれば、米国のシェールガス開発業者は、中小業者が多く価格競争の体力勝負には耐えられない。既に倒産が出始めている様ですね。
サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が石油輸出国機構(OPEC)総会で、米国のシェール油ブームに対抗する必要があるとして、減産に反対していたことが分かったのだそうです。減産を見送ることで原油価格を抑制し、米国のシェール油生産業者の収益を圧迫すべきと強調したのだそうですね。
米シェール油に価格戦争宣言、OPEC総会でサウジ石油相
今回の原油価格下落騒動の前、去年末頃から、シェールガス業者の採算悪化は話題になっていたのですね。サウジはシェア争いで脅威となってきていたシェールガスを叩くのは今しかないと、資本力での勝負に出たのでしょうか。
なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
原油価格のOPECによる管理の時代から、市場原理での決定の時代に変わるのか。ひきつづき注目が必要です。
# 冒頭の画像は、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相
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